昨年10月、Amazonはストリーミングデバイス 「Fire TV Cube (第3世代)」 を発売した。
新型Fire TV Cubeは、従来モデルから性能を強化した、Fire TVシリーズ史上最もパワフルなストリーミングメディアプレイヤー。内蔵プロセッサの性能が向上しているほか、Wi-Fi 6対応、ブルーレイ/DVDレコーダーやゲームコンソールを接続できるHDMI入力端子が設けられるなど、使い勝手が大きく向上しているのが特徴だ。
本製品の発売に伴い、アマゾンジャパンから実機を提供いただいており、数ヶ月じっくり使ってみることができた。製品の詳しい特徴はもちろん、どんな人にオススメなのか、筆者が気に入った部分なども紹介したいと思う。
Fire TVシリーズの特徴
まずはFire TVシリーズについて詳しく知らないという人のために、Fire TVシリーズとは何なのかをザックリと紹介しておきたいと思う。
Fire TVシリーズとは、Amazonが販売するストリーミングメディアプレイヤー製品群のこと。テレビやディスプレイに接続すれば、インターネット経由でPrime Videoをはじめ、Apple TVやDisney+、Hulu、YouTubeなどの多数の大手配信サービスを通じて映画やテレビ番組を視聴できる。
現在国内で販売されているFire TVシリーズは、「Fire TV Stick」 「Fire TV Stick 4K Max」 「Fire TV Cube」 の3種類。さらに、Fire TVを搭載したスマートテレビ 「フナイ」 シリーズも販売されている。
Fire TVシリーズには音声アシスタント 「Alexa」 に対応したリモコンが付属しており、リモコン上部にあるAlexaマークのボタンを押すことで、音声によって観たい番組を探すことができる。視聴したい映画やドラマのタイトルがわかるなら、「Alexa、『〇〇〇(タイトル名)』を観せて」 というだけですぐ再生を始めることが可能だ。
また、コンテンツ探しだけでなく、Alexaには様々なお願いをすることができる。これからの天気予報を教えてもらったり、Alexaに対応したスマートデバイスを操作してもらうことも可能だ。
Fire TV Cube (第3世代) のデザイン・仕様
今回レビューする新型 「Fire TV Cube」 は、Fire TVシリーズのラインナップのなかで最上位モデルにあたる製品だ。
上記写真が新型Fire TV Cubeの本体。名前のとおりキューブ状の形状をしており、側面にはEchoデバイスなどにも使われているファブリック素材が採用されている。筐体サイズは86 × 86 × 77mmと比較的コンパクトなので、テレビの横に置いても邪魔になりにくい。
各種ポートは本体背面に集約されている。搭載ポートは、HDMI 2.1ポートが2つと赤外線(IR)ポート、電源ポート、イーサネットポート、USB-Aポートだ。
2つのHDMI 2.1ポートのうち、左側が入力ポート、右側が出力ポートとなっていて、右側のHDMI出力ポートをテレビに接続することでFire TV Cubeから映像を出力できる。Fire TV Cube自体にHDMIケーブルは付属してこないため、自前のケーブルを用意しておこう。
Fire TV Cubeは、4K Ultra HDやHDR10+、Dolby Visionに対応しており、最大60fpsのビデオストリーミングが視聴できる。4K Ultra HD対応テレビやディスプレイを持っている人は、美麗映像を自宅で楽しむことが可能だ。
HDMI入力ポートは、Fire TV Cube (第3世代) で新しく搭載されたポートで、ブルーレイ/DVDレコーダーなどの機器をFire TV Cubeを中継して接続できる。もしFire TV Cubeをテレビに接続することでテレビ側のHDMIがすべて埋まってしまったとしても、もう1つだけ機器をテレビに接続することが可能だ。
ただし、Nintendo SwitchをFire TV CubeのHDMI入力ポート経由でテレビに接続してみたところ、映像と音声は同期されているものの、コントローラーの操作に対してわずかな遅延が発生していることが確認できたため、ゲームコンソールの接続は残念ながらオススメできない。接続するなら、ブルーレイレコーダーのような映像を視聴する機器だけにとどめておこう。
本体にはイーサネットポートがあるため、インターネットへの接続は無線・有線のどちらかを選べる。高速通信をするにはイーサネット経由で有線接続が一番、と思うかもしれないが、新型Fire TV CubeはWi-Fi 6に対応したため、Wi-Fi 6対応ルーターを使っているならWi-Fi接続でも十分な速度が期待できる。
筆者の自宅ではWi-Fi 6に対応したルーターを使っており、Fire TV CubeをWi-Fi経由でインターネットに接続しているが、ストリーミング中に映像が止まってしまうことはほぼなかった。
USB-Aポートにはウェブカメラが接続可能で、双方向通話を楽しめる。「Alexa、お父さんのEchoに連絡して」 のようにお願いすれば、指定したデバイスと通話することが可能。この方法でビデオ通話をするには、720p/30fps以上に対応したウェブカメラと、USB 2.0以上のケーブルが必要だ。
また、USB-AポートにはUSBストレージを接続することも可能だ。Fire TV Cube (第3世代) の場合はFAT32とNTFSのフォーマットに対応している。
Fire TV Cubeには、音声アシスタント 「Alexa」 とスピーカーが内蔵されている。スピーカーが本体に内蔵されているおかげで、テレビをオフにしていてもAlexaを呼び出して何かお願いできる。
スピーカーの性能はテレビ用としてはやや貧弱であるため、実際にはAlexaの音声を出力するためのものとなるが、ちなみにソフトウェア側の不具合なのか単体での音楽再生はできないこと、そして基本的にはテレビ等を介してコンテンツを再生するユーザーが多いことを想定すると、この点はあまり気にする必要はないだろう。そういう意味では、Alexaの受け答え用のスピーカーとしては十分な性能と言えるレベルになっている。
なお、音声の出力先をBluetoothスピーカーを外部スピーカーとして設定することも可能。この場合は 「Amazon Music Unlimited」 などで音楽を聴いたり、「radiko」 でラジオを聴くことも可能だ。
本体天面部分には各種操作ボタンが配置。上下の+とーボタンが音量調節ボタンで、左側のボタンがマイクミュートボタン (Alexaが反応しなくなる) 、右側のボタンがAlexaを呼び出すなどの動作に使用するアクションボタンだ。Alexaによる音声操作やリモコンでの操作がメインになるため、基本的に本体を直接操作することはあまりないものの、ミュートボタンは人によっては使う頻度の多いボタンなので、このようなボタンが搭載されていることはぜひ覚えておこう。
上記が電源アダプタ。サイズは少し大きめで、電源マルチタップに接続すると隣のポートに干渉することがあるので注意。アダプターが干渉しにくい電源マルチタップを使うというのも手だ。
付属する標準リモコンと、別売りのリモコンProについて
Fire TV Cubeには、標準のAlexa対応音声認識リモコンが1本付属する。
リモコンのボタンはテレビやBlu-rayレコーダーなどの一般的な機器でよく見るものばかりで、操作に困ることはほとんどないはず。
リモコン下部には、ワンプッシュで 「Prime Video」 「Netflix」 「Amazon Music」 「ABEMA」 を起動するショートカットボタンが配置されていて、これらのコンテンツをよく視聴する人には便利だ。
Fire TV用のリモコンとしては、標準のリモコンの他に、「Alexa対応音声認識リモコン Pro (以下、リモコンPro) 」 という上位のリモコンも存在する。
上位モデルということで、押し心地は標準のリモコンよりも少し良くなっているほか、バックライトがついており、暗い部屋で操作しようとすると自動でライトが点灯してボタンが見やすくなる。
リモコンProには、標準のリモコンにはない便利機能も用意されている。
たとえば右上のヘッドホンのようなボタンではBluetooth設定画面をワンプッシュで呼び出すことができ、下部の方にある 「1」 「2」 というボタンはカスタムボタンになっていて、自分の好きな操作を割り当てることができる。
筆者が個人的に便利だなと感じたのが、「アレクサ、リモコンを探して」 をお願いすると、リモコンから音を鳴らして探すことができること。ソファーの隙間に落ちてしまったリモコンもすぐに見つけることができそうだ。
実際に使ってみて感じたこと
ここからは、筆者が数ヶ月にわたってFire TV Cubeを使ってみて、気づいたこと、感じたことを紹介していきたい。
筆者の自宅では、Fire TV Cubeをテレビに接続して使っている。テレビのeARC対応HDMIポートにサウンドバー 「Sonos Beam (Gen 2)」 が接続されており、テレビのHDMIポートに接続したデバイスの音声がSonos Beam (Gen 2) から出力されるように設定しているため、Fire TV Cubeとテレビを1本のHDMIケーブルで接続することで、映像はテレビから、音声はSonos Beam (Gen 2) から出るようになっている。
Fire TV Cubeの気に入っている点のひとつが、テレビをつけるだけですぐに起動すること。メディアストリーミングデバイスといえば、電源を入れて起動するまで少し時間がかかることが多いが、Fire TV Cubeの場合はずっと電源がついたままだったのでは?と思うほど起動が早い。
Fire TV Cubeはオクタコアプロセッサを搭載した関係で、アプリの起動など通常の操作もキビキビとしていてストレスがほとんどない。全体的に動作がもっさりしていると観たいコンテンツを探すにも時間がかかりがちだが、処理速度の速い新プロセッサを搭載するFire TV Cubeであれば、コンテンツを探しはじめてから実際に視聴を開始するまでの流れがかなりスムーズだ。
また、Fire TV Cubeはテレビの電源がオフの状態でもAlexaを呼び出せるのがとても便利。筆者の自宅にはAlexaに対応したスマートホームデバイスが多数配置されているのだが、これらを音声のみで操作できる。同じセットトップボックスで言えば筆者はApple TV 4Kも所有しているものの、Apple TVのほうはテレビの電源がついていないとSiriを起動することができないため、この点はFire TV Cubeのほうが優秀と言えるだろう。
そして、これはFire TVシリーズ全体に言えることだが視聴できるコンテンツはかなり多い。「Prime Video」 「Netflix」 「Amazon Music」 「ABEMA」 だけでなく、「Apple TV+」 や 「Disney+」 など、ほとんどの大手配信サービスは網羅されているため、どのサービスを契約していてもFire TV Cubeから視聴できて便利だ。
まとめ
Fire TV Cube (第3世代) は、4K Ultra HDに対応していてホームシアター構築要素のひとつとして役に立ってくれるほか、テレビの電源がついていなくてもAlexaに何かをお願いできたり、ウェブカメラを利用してのビデオ通話なども楽しめる。
ただのメディアストリーミングデバイスとしてだけでなく、そのほかの利用方法も備わっているため、テレビ周りをより一層便利にしてくれる製品と言える。
一方で、本製品のネックとなるのは価格が19,980円(税込)と高めであるという点だろう。おなじく4K Ultra HDに対応したFire TV Stick 4K Maxが6,980円(税込)と半額以下で購入できることから、ただ高画質コンテンツをテレビで視聴したいだけならFire TV Stick 4K Maxの方がおトク。
Fire TV Cubeがオススメなのは、筆者のようにAlexa対応スマートデバイスに囲まれていて日頃からAlexaを活用しまくっている人や、ビデオ通話を利用したい人ということになるだろう。自身の予算や活用用途に応じて、適切な製品を購入していただきたい。