
エレコムは、同社として初めて「半固体電池」を採用した次世代モバイルバッテリーを3月より順次発売すると発表した。
従来の液体リチウムイオン電池と比べて発火リスクを低減し、約4倍となる長寿命化を実現した点が最大の特徴。近年、モバイルバッテリーの発火事故が社会問題となる中、安全性を最優先に開発した製品として位置づける。
ラインアップは10,000mAhモデルと5,000mAhモデルの2種類。ノートPC充電にも対応する高出力仕様に加えて、どこにでも手軽に持ち運べる軽量モデルも用意する。
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半固体電池で発火リスクを低減
今回採用された半固体電池は、電池内部の電解質を、従来の液体から「ゲル状」にしたものだ。
従来の液体リチウムイオン電池は、内部でショートが発生した際、可燃性の電解液がガス化・噴出し、それが引火して発火に至るリスクを抱えていた。これに対し半固体電池は、電解質をゲル化することで可燃性成分の揮発を抑え、ガスの発生や放出を低減することが可能に。
また、内部で発生した熱を局所に集中させず分散させる特性を持ち、温度が制御不能に上昇する「熱暴走」に陥りにくい構造となっている。さらに、筐体が破損した場合でも液漏れしにくく、物理的な衝撃や圧力に対しても高い安全性を確保している。
同社が実施した「釘刺し試験」では、従来の液体リチウムイオン電池が発火する条件下でも、本製品に搭載された半固体電池は発火しなかったという。ズボンの後ろポケットに入れたまま座るといった、日常的に想定される圧力や衝撃に対しても、高い安全性が確認されている。
使用可能温度範囲も、一般的な0~40℃から-15~45℃へと拡大した。猛暑や寒冷地などの過酷な環境下でも安定して動作するため、アウトドア用途にも適している。
安全設計としては、電池構造そのものに加え、1秒間に300回温度を監視する「Thermal Protection」機能や、多重保護回路も組み込まれている。
4倍の長寿命と「電池の健康診断」機能
バッテリーの「寿命」という面では、サイクル寿命が従来のリチウムイオン電池の約500回から約2,000回へと向上している。また、新たに搭載された「Health Monitor(ヘルスモニター)」機能によってバッテリーの劣化具合を目視することが可能だ。充放電サイクル回数を自動で記録し、バッテリーの劣化状態をLEDの色で通知する仕組みとなっている。
- 消灯(〜約250回):安定した状態
- 青色(約251〜500回):性能低下が始まる段階
- オレンジ色(約501回〜):買い替え推奨
オレンジ色は買い替え推奨の目安を示す。半固体電池自体は約2,000回の寿命を持つが、Health Monitorが500回で警告を出すのは、使用回数だけでなく経年劣化も考慮した安全設計によるものだ。開発側によれば、ハードに使用した場合、約2年で500回程度に達するケースが多く、この時点が最も安全に使い続けられる目安と判断されたという。
今回発表された製品は、「10,000mAhモデル」「5,000mAhモデル」の2構成となる。10,000mAhモデル(DE-C86-10000シリーズ)は最大35W出力に対応し、ノートPCの充電も可能。USB Type-C×2、USB-A×1を搭載する。店頭実勢価格は8,480円(税込)で、ブラック、ブルー、ピンク、ホワイトの4色展開。発売は2026年3月上旬を予定している。
5,000mAhモデルは最大22.5W出力対応の軽量モデルで、店頭実勢価格は6,280円(税込)。カラーはブラックとホワイトの2色。本モデルは2026年春頃の発売を予定しており、発売日が決定次第改めて案内される予定だ。
エレコムダイレクトショップでは、10,000mAhモデルを対象に2月25日から3月1日まで1,000円引きの先行予約販売を行う。購入ページは
また、実店舗の「エレコムデザインショップ」では、古いモバイルバッテリーを持ち込むことで2,000円引きクーポンがもらえる「古いモバ充卒業キャンペーン」を実施する。回収対象はエレコム製品に限らず、JBRC加盟企業の製品も含まれる。ただし、著しく膨張したバッテリーは割引対象外となるとのことだ。
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エレコムが「半固体電池」採用で遅れた理由
エレコムによると、半固体電池を搭載したモバイルバッテリーの開発は2024年秋ごろにスタートした。当初は早期の製品化を目指していたが、量産直前の最終試験で想定外の結果が出たという。
採用予定だった電池を厳格な条件で再評価したところ、従来の液体リチウムイオン電池と比べて安全性に明確な差が確認できなかった。同社が独自に設定したより過酷な試験では発火も確認され、「これでは十分な安全性を担保できない」と判断。電池の選定から設計、評価までを全面的に見直す決断を下し、結果として発売時期が後ろ倒しになった。
さらに、電池工場の選定も難航した。他社で採用実績のある工場であっても、エレコム独自の品質管理・監査基準を満たさないケースが多く、複数の候補先を精査する必要があったという。
市場には「半固体」「準固体」をうたう製品もすでに存在するが、エレコムが独自に分解・検証を行ったところ、自社の厳しい基準を満たしたものは約2割にとどまったとしている。
なお、半固体電池には業界全体で統一された明確な定義はない。エレコムでは「電解質がゲル状で、従来電池より高い安全性が実証されたもの」を半固体電池と位置付けている。液体成分を完全に排した全固体電池とは異なり、安全性と軽量・コンパクトさの両立を図れる現実的な選択肢として半固体電池を採用したという。
今後は、今回発表した製品に続くかたちで、2026年春頃にケーブル一体型モデル(5,000mAh/10,000mAh)、同年6月頃には20,000mAhの大容量モデルを投入する計画だ。
エレコムは、将来的には全てのモバイルバッテリーの電池を安全性の高いものに置き換えるとしているが、スマートフォンに直接差し込むタイプ等で使われる「円筒型」の電池は、現時点では半固体化が難しいという。
そのため、代替策として半固体でなくても安全な電池への切り替えを実施し、製品カテゴリー全体での発火リスクゼロを目指すとのことだ。
