
突然だが、自宅やオフィスで使っているWi-Fiルーターに不満はないだろうか。高速回線を契約しているのに遅い、よく切れる、2階の部屋でつながりにくい……そうした悩みは、ルーターを買い替えることで改善できる可能性がある。
買い替えを検討する際に注目したいのが、Wi-Fiの「規格」だ。現在の最新規格は「Wi-Fi 7」で、前世代の「Wi-Fi 6E」と比べて、通信速度、安定性、同時接続台数のすべてが向上している。
最近ではスマートフォンやPCでもWi-Fi 7に対応した製品が増えているが、いくら機器側が対応していても、電波を発信するルーターが非対応であれば、その性能を活かすことはできない。
今後数年を見据えてWi-Fi環境を整えるなら、「とりあえずつながればいい」という考え方から、「複数のデバイスがストレスなく使える」「将来のアップデートにも対応できる」といった視点でルーターを選ぶことが求められる。
Amazonの新モデル「eero Pro 7」は、まさにそのWi-Fi 7時代に対応した製品だ。設置の簡単さやミニマルな外観はそのままに、通信の速さ、安定性、対応デバイス数をすべて強化。自宅やオフィスの通信環境を一段上に引き上げ、日々のストレスを解消してくれる。
今回は、アマゾンジャパンからeero Pro 7の実機を借り、自宅のWi-Fi環境で試用してみた。筆者宅ではすでに上位モデルの「eero Max 7」でメッシュネットワークを構築済みだが、今回は「eero Pro 7」の単体使用、そしてMax 7との組み合わせによるネットワーク構築の両方を検証している。その使用感について、詳しくレポートしていきたい。
Wi-Fi 7xメッシュWi-Fiによる快適なネットワークを創出しよう
eero Pro 7は、Amazonが販売するメッシュWi-Fiルーター「eero」シリーズの最新モデル。同ブランドの国内ラインナップでは中間モデルとして位置しており、ハイエンド級の性能をすこしお手頃な価格で導入できるというメリットがある。
本製品は最新規格のWi-Fi 7に対応しており、最大3.9Gbpsのワイヤレス通信、最大4.7Gbpsの有線接続を実現するため、最大5Gbpsのインターネットプランに対応できる。また、2.4GHz/5GHz/6GHzのトライバンド構成により、混雑しがちな2.4GHz/5GHzの帯域を避け、快適な通信を維持できるのが特徴だ。
eeroシリーズはデザインも考えられており、部屋のどんな場所に置いていても、インテリアの中に違和感なく溶け込んでくれる。eero Pro 7もサイズは79x147x180mmと小型のPCスピーカー程度ではあるが、丸みを帯びたWi-Fiルーターらしくないデザインのおかげで、小物のような感覚で置くことができる。
また、本体の放熱設計は上位モデル「eero Max 7」と同じくファンレスで、静音性と長期的なメンテナンス性に優れる。設置場所を選ばず、寝室やリビングに置いても音が気になることはない。
eeroシリーズの魅力のひとつは、ネットワーク初心者でも迷わず使い始められるシンプルさにある。アプリをダウンロードし、Amazonアカウントでログインして、ノードを電源につなぐだけ。セッティングは15分もあれば完了でき、メッシュネットワークの構築も10分程度で完成する。
旧モデルとの下位互換性もあり、これまで使っていたeeroノードを追加してネットワークを拡張することもできる。置き換えもスムーズで、既存設定を引き継いで即戦力として使えるのは嬉しいポイントだ。
eero Pro 7は本体のセットアップがしやすいことに加えて、Matter、Thread Border Router、Zigbeeに対応しているため、これらをサポートするスマートホームデバイスを連携することが可能だ。自宅のスマートホーム環境をシンプルにまとめたい人にとっては、この一台で大半をカバーできるはずだ。
「速さ」も大事だが「安定感」も大事
今回、「eero Pro 7」を導入した筆者の自宅は、リビング・ダイニング・キッチンに加えて、2つの居室がある2LDKに近い構造をしている。契約しているインターネットのプランは10ギガ (10Gbps)のものだ。
そして前述のとおり「eero Pro 7」は最大3.9Gbpsのワイヤレス通信、最大4.7Gbpsの有線接続を実現するため、理論的には4Gbps近いスピードが期待できる。ただし、筆者自宅における実測はおおよそ下りが680Mbps、上りは580Mbp程度となっているため、これに近いスピードが出ていれば合格という感じだ。
有線環境で計測してみたところ、下りは580.79Mbps、上りは553.46Mbpsとなっており、筆者の自宅環境において最速の通信速度を実現できていた。その後、時間帯を変えて何度か計測してみたところおおよそ600Mbps前後で通信できる時間帯もあった。
また、iPhone 16 Proを使ってWi-Fi 7環境で通信してみたところ、下りは647Mbps、下りは574Mbpsとより高速な速度で通信することができた。有線環境よりも通信速度が早く出たものの、体感としては有線環境と同等という感じ。YouTube動画を視聴したり、音楽配信サービスを利用しても通信速度を原因に読み込みがモタつくことはなく、快適に通信することが可能だった。
eero Pro 7はメッシュWi-Fiルーターということもあり、複数台を使って広い範囲でネットワーク環境を構築することが可能だ。そのカバー範囲は1台で約190㎡、3台セットで最大560㎡。一般家庭はもちろん、広めの戸建てやSOHO環境にも十分対応可能だ。
しかも、1台で約200台、3台セットで約600台ものデバイスが同時接続できるキャパシティを備えており、スマートホーム機器が増え続ける家庭でも安心して使い続けることができる。
通信速度も重要だが、日常使いで最も体感できるのは「安定性の向上」だ。筆者はこの「eero Pro 7」をリビングに設置してみたところ、自宅に設置してあるほとんどのデバイスを繋ぐことができた。ただし、接続しているデバイスが60台近くとそれなりに多いことと、鉄筋コンクリート(RC構造)で、家が細長い形状をしていることから電波がやや弱くなる部分が存在する。
そのため、「eero Max 7」をメインのルーターとしてリビングに設置し、「eero Pro 7」をサブとして寝室に設置し運用した結果、すべてのデバイスの接続が良好となっただけでなく、1ルーターあたりの接続デバイスが減ったことによって混線することもなくなり、とても快適に通信できた。
また、「eero Pro 7」には5GbEポートが搭載されている。上位モデル「eero Max 7」の10GbEほどではないものの、高速な有線LAN環境を構築することが可能だ。
なお、筆者自宅では、10GbE対応のNASソリューション「UGREEN NASync DXP4800 Plus」が活躍している。普段は「eero Max 7」と接続しているのだが、今回試しに「eero Pro 7」と接続してみたところ、10GBのファイルをわずか数秒程度で転送することができた。
NASのような大容量データを扱ったり、より安定した通信環境が必要な場合にはやはり有線接続がオススメ。明確に10GbEが必要なのであれば、上位の「eero Max 7」を選ぶべきだろうが、5GbEでもPS5やXbox Series X|Sなど大抵の家庭用機器と高速に通信できるため、「eero Pro 7」で十分というユーザーは多そうだ。
また、有料サブスクリプションの「eero Plus」に加入することで、高度なオンラインセキュリティ機能やペアレンタルコントロール (コンテンツフィルターや特定のアプリへのアクセスのブロックなど) 、パスワード管理の 「1Password」 、マルウェア保護の 「Malwarebytes」 、DNSFilter社が提供するVPN機能 「Guardian」 、ウェブサイト閲覧時のポップアップなど一部の広告をブロックする機能といったサービスが利用できるようになる。
筆者は端末側のソフトでセキュリティ対策などをしているため、加入はしていないものの、ルーター側でセキュリティ対策をしたい場合などには別途加入いただきたい。「eero Plus」の価格は、月額プラン1,600円、年額プラン16,000円となっている (どちらも税込)。
まとめ:次世代を見据えた “妥協なき家庭Wi-Fi” の選択肢に
eero Pro 7は、家庭内ネットワークのインフラを「未来基準」で再構築するためのソリューションだ。
まず特筆すべきは、メッシュWi-Fiによるカバレッジの柔軟性だ。1台からでも導入可能でありながら、住環境や利用機器の変化に応じて2台、3台と拡張していける拡張性は、スマートホーム時代の土台として極めて合理的。複数デバイスの同時接続にも強く、帯域が混雑する夕方の時間帯でもストレスなく通信できる安定感は、従来型のWi-Fiルーターでは得がたい体験だ。
初期設定や日常的な管理も、専用アプリを通じてスムーズに行える。ファームウェアの自動アップデートやネットワーク診断機能など、ユーザーが意識せずに快適な状態を維持できる仕組みが整っており、これもまたeeroの哲学が息づく部分だ。
さらに、5GbE対応のWAN/LANポートを搭載しており、1〜5Gbps級の回線契約をしているユーザーでもボトルネックにならない構成は、今後数年間を見据えても安心できる設計と言える。
また、デザイン性の面でも評価に値する。生活空間になじむ丸みを帯びたミニマルな筐体は、機械っぽさがほとんどなく、インテリアの一部として溶け込む。Wi-Fiルーターはやや無骨なデザインのものが多いなか、同ルーターはその心配がないのも良いポイントだ。
価格は1台で44,800円、2台セットで75,800円、3台セットで99,800円(すべて税込)。この価格を高いと見るか、通信品質・信頼性・将来性への投資と捉えるかはユーザー次第だが、少なくとも “安かろう悪かろう” のルーターでは得られない体験を実現できるはずだ。
どこにいてもつながり、何台同時に接続しても途切れず、煩雑な設定に煩わされない「eero Pro 7」は、現代の家庭に必要なWi-Fiの姿を極めて高い完成度で提示している。家庭のネットワークにこれ以上の安定と手軽さを求めるなら、「eero」シリーズを選ぶのはアリだろう。