キヤノン、バスケの試合を自由な視点で観戦できる3D配信を実証。約750台が同時視聴

キヤノンは10月15日、ボリュメトリックビデオ技術を使って生成した3D空間データを、スマートフォンやタブレット、パソコンなどにライブ配信する実証実験を2026年9月下旬に実施したと発表した。

国内で開催された国際スポーツ大会のバスケットボールの試合を対象に、約750台の端末による同時視聴を実現した。撮影から各端末で映像が表示されるまでの時間は約16秒だった。

今回の実証実験では、実際のスポーツ競技をボリュメトリックビデオ技術で撮影し、生成した3D空間データを多数の視聴者にライブ配信した。キヤノンによると、こうした取り組みは世界初となる(2026年10月14日時点、キヤノン調べ)。

従来のスポーツ中継では、放送局などが用意したカメラアングルを通じて試合を観戦するのが一般的だった。今回の仕組みでは、視聴者が手元の端末から自由に視点を操作できるため、コート全体を見渡したり、選手に迫るような視点からプレーを確認したりと、自分の興味に合わせた観戦が可能になる。

ボリュメトリックビデオ技術は、約100台のカメラで同時に撮影した映像をもとに、撮影した空間全体を3Dデータ化する技術。

キヤノンはこれまで、撮影から映像生成までをリアルタイムに処理できる同技術を、スポーツ中継や音楽ライブなどの映像制作に提供してきた。

テレビ中継のハイライト映像など、放送コンテンツでの活用が中心だったが、生成した3D空間データをインターネット経由で個人の端末に配信すれば、視聴者自身が見たい方向や位置から競技を楽しめるようになる。

一方で3D空間データは情報量が膨大であり、多数の視聴者が同時に利用するライブ配信には、データの処理や配信方法に課題があった。特に、視聴者が増えても安定して配信できる仕組みを整えることが、個人向けのサービスとして展開するうえで重要になる。

今回の実証実験では、バスケットボールの競技会場で撮影した映像をキヤノンの川崎事業所へ伝送し、リアルタイムに3D空間データを生成した。その後、データを効率的に圧縮し、クラウド配信基盤を通じて多数の視聴者に配信する仕組みを検証。約750台の端末から同時に視聴できることを確認した。

競技会場から川崎事業所へのデータ伝送には、NTTなどが推進する次世代通信基盤「IOWN APN(All-Photonics Network)」を活用した。

IOWNは「Innovative Optical and Wireless Network」の略称で、光を中心とした革新的な技術を活用し、高速・大容量通信や膨大な計算リソースなどを提供する、端末を含めたネットワーク・情報処理基盤の構想だ。今回の実証では、会場で撮影した映像を生成拠点へ送る通信基盤として利用された。

スポーツ観戦の視聴環境が多様化するなか、視聴者が自身の興味や関心に合わせて映像を操作できる、インタラクティブな観戦体験へのニーズも高まっている。今回の実証では、視聴者ごとに異なる視点から同じ試合を楽しめることに加え、3D空間データをクラウド経由で多数の端末にライブ配信できることを示した。

今後、こうした技術がスポーツ中継に導入されれば、特定の選手の動きを追ったり、通常の中継映像では見づらい角度からプレーを確認したりするなど、視聴者が自分の好みに合わせて観戦するスタイルが広がる可能性がある。キヤノンは今後も、パートナー企業や施設管理事業者との協業を通じてボリュメトリックビデオ技術の高度化を進め、スポーツ観戦における新たな価値の創出に取り組む方針だ。

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(画像提供:キヤノン)

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