
OpenAIがAmazon Web Services(AWS)と7年間にわたる総額380億ドル(約3.8兆円)規模のクラウド契約を締結した。ChatGPT開発元である同社が、Microsoft以外のクラウド事業者と本格的な提携を結ぶのはこれが初めてだ。
この契約により、OpenAIはAWSのデータセンターにある数十万台規模のNVIDIA製GPUを利用し、ChatGPTや次世代AIモデルのトレーニング・推論を行うことが可能になる。
Microsoft依存を脱し、クラウドの分散化へ
この契約は、OpenAIが先週行った組織再編とも深く関係している。非営利法人からより柔軟な営利構造へ移行し、Microsoftの独占的クラウド供給契約も終了。同社はAWSやGoogle Cloud、Oracleなど複数のクラウド事業者と並行して契約できるようになった。
実際、OpenAIはすでにOracleと3,000億ドル規模の契約を結び、Google Cloudとも提携を進めている。今回のAWSとの契約はその中でも最大級のものであり、同社の膨大なAIワークロードを支える基盤の多様化が加速している。
OpenAIのサム・アルトマンCEOは声明で、「最先端のAIをスケールさせるには膨大で信頼性のある計算リソースが必要だ。AWSとの提携で次の時代のAIを支える基盤を強化できる」とコメントしている。
AWS CEOのマット・ガーマン氏も「OpenAIが限界を押し広げるなかで、AWSのインフラはその野心を支える“背骨”となる」と応じている。
AWSによると、OpenAIはすでにAWS上で一部のAIワークロードを稼働させており、契約で定められた容量は2026年末までに全て利用可能になる予定。NVIDIAの最新GPU「GB200」および「GB300」を中心とした大規模クラスタが導入され、ChatGPTの応答処理や次期モデルのトレーニングを支える。
この発表を受けてAmazon株は5%上昇し、時価総額は過去最高を更新。一方でMicrosoft株は一時的に下落するなど、市場はこの契約を明確な勢力図の変化と捉えている。
巨額の投資計画と市場の警戒

AI分野では、モデルの性能競争だけでなく、「誰がどれだけの計算資源を持つか」というインフラ競争が激化している。OpenAIは長期的に1.4兆ドルを投じて30ギガワットの計算リソースを整備する計画を掲げており、これは米国の約2,500万世帯をまかなえる電力量に相当する。
AWSはすでにAnthropic向けに100万基の独自AIチップ「Trainium2」を供給しており、今後はOpenAIとAnthropicという両雄を抱える構図となる。クラウドの巨人たちにとって、AIインフラは新たな主戦場だ。
今回の契約でAWSは、Microsoft AzureやGoogle Cloudに対抗する足がかりを得た。一方のOpenAIにとっては、Microsoft依存からの脱却を進めつつ、IPO(新規株式公開)に向けた独立性と安定性の確保という現実的な狙いもある。
AIブームの熱狂は続くが、同時に「1兆ドル超の設備投資が本当に回収できるのか」という懸念もくすぶる。クラウド業界とAI企業の共進化が進むなかで、このOpenAI×AWS連合がどこまで市場を牽引できるか注目される。
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