「Apple 梅田」でビジネス向けセッション開催。伝統産業とテクノロジーをつなぐ玉木新雌氏のビジネス哲学とは

7月26日(土)、Appleは大阪・梅田に国内11店舗目となる直営店「Apple 梅田」をオープンした。

今回のオープンに先立ち、7月24日(木)にはメディアやインフルエンサー向けに内覧会が開催されたが、その内覧会後に、ビジネス関係者向けの特別なToday at Apple「スポットライト:玉木新雌に学ぶ、伝統産業に変革をもたらすテクノロジー」が開催された。

本セッションでは、伝統産業である「播州織」を新しいビジネスとして生まれ変わらせて起業した玉木新雌氏が登壇。生産プロセスや顧客体験、業務効率化に、Apple製品のテクノロジーをどのように活用しているのかについて語った。

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Apple 梅田についてストアリーダーが紹介

セッションの冒頭では、Apple 梅田のストアリーダーであるスコット・ノルマンディー氏が登壇し、新しくオープンを迎えるApple 梅田について紹介。

ユニバーサルデザインを取り入れたストアデザインによって、どんな来訪者も快適に過ごすことができるストアであること、日本初となるApple Vision Pro専用エリア「エクスペリエンスルーム」が設置されることなどをアピールした。

また、Apple 梅田は、ビジネスチームによる中小企業・起業家支援も行うとしており、製品の導入相談やグループ予約によるチームトレーニング、デバイスのセットアップ、Apple Business Connectの登録、タッチ決済のサポートといったサービスを提供することも併せて紹介した。

新たにオープンした「Apple 梅田」
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玉木氏のビジネスにおけるApple製品の活用例

ストアの紹介のあとには、いよいよ玉木新雌氏が登壇した。

玉木氏は、アパレルブランド「tamaki niime」の代表。播州織との出会いをきっかけに兵庫県西脇市へ移住し、職人との連携のもと、色彩豊かなショールやウェア、靴下、靴などの一点ものを自社で製造・販売している。店舗は、西脇と鎌倉に展開しているほか、雑貨店・アパレル・道の駅等やオンラインショップで国内外に販売を行っている。

「きもちいいはうつくしい」をコンセプトに、着心地の良い素材を使った商品を多数販売
柔らかくて履き心地が良いという「tamaki niime」の靴下

素材にもこだわり、オーガニックコットンの栽培や紡績、動物の毛の活用など、自然や動物、人との共生を大切にしたものづくりを実践。「ワクワクする気持ち」を原動力に、ファッションの枠を超えて、新たな価値や可能性を提案し続けている。

玉木氏によると、「tamaki niime」は約100名のチームが同一建物内で製造・販売・販促・オンライン業務を分担しており、商品の撮影や画像編集、商品登録、オンライン販売、決済などのチーム連携を一元化し、全社でMacやiPad、iPhoneといったApple製品を活用。Apple製品の高い連携性がチーム内での情報共有や業務効率化に役立っていると語った。

たとえば、商品の写真撮影を行うスタジオのすぐ隣には、iMacがズラリと並んでいるという。iMacの画面は色彩表現の正確さから撮影後のチェックに最適で、iPhoneで動画・写真撮影をした後に色味をすぐにチェックして、SNSで発信するということも実施している。

実は、玉木氏は過去にMac以外のPCに乗り換えたものの、「やっぱりダメだ」とすぐに出戻った経験もあるという。「やらなきゃいけないことがあるのに、他のPCだと作業が遅くて仕方がないんです。今はもう浮気しないです!」と、笑いを交えて振り返った。

さらに、Macの魅力として「デザインにこだわっていること」についても言及。玉木氏のものづくりの現場では、独特な色味を作り上げるために「他の色」が邪魔になることがあり、できるだけ白いキャンバスのような真っ白な作業環境を目指している。Macのケーブルは白だったことで、自分たちのインスピレーションの邪魔をしない、最適なデザインだと魅力を感じたという。

対面での非接触決済にiPhoneだけで対応できる「iPhoneのタッチ決済」

販売店舗ではレジ機能をiPadで運用しているほか、「iPhoneのタッチ決済」も活用。特にこの「iPhoneのタッチ決済」に関しては、印象的なエピソードがあったようだ。

「tamaki niime」のイベント出店を行ったとき、当日朝にイベント会場に到着するように荷物を配送したのに、トラブルが発生して届かないということになったとのこと。そして、その荷物の中に決済端末が入っていたという。

「これだと商品が売れない、さあどうしようとなったときに、何かiPhoneを活用した機能があったなと思い出して調べたんですよ。そしたらiPhoneでアプリをダウンロードするだけですぐに使い始めることができて、無事にお客さんに商品を販売できたんです」と玉木氏。

今年8月には古民家を改装した店舗をオープン予定であるとのことだが、「iPhoneのタッチ決済」なら通常のレジのように配線が要らないことから、建物の雰囲気を壊さずにレジ機能を導入できるとし、利用を検討しているとのことだった。

また、Appleのビジネスチームとの連携も、玉木氏にとって課題解決の大きな助けとなっている。多忙な日々の中で最新機能を調べる時間がない場合でも、「こういうことで困っているんだけど、どうにかならない?」と相談すれば、「この機能を使えば解決できますよ」と、最適なソリューションがすぐに返ってくるという。

たとえば、Apple Business Connectを活用することで、Appleマップに「niime村」の店舗情報が正確に表示されるようになり、イベント情報も発信可能に。その結果、顧客のアクセス性が向上したと説明している。

伝統とテクノロジーをつなぐ、玉木氏のビジネス哲学

セッションの最後に、玉木氏は自身のビジネスに対する考え方についても語っている。

大切にしているのは、「ワクワクする気持ちを原動力に、日々の選択を前向きに捉えること」。たとえ困難な状況に直面したとしても、それをサーフィンの「波」のように楽しみながら乗り越える柔軟な姿勢が、ブランドの継続と進化を支えているという。

また、「みんながやらない方へ進む」ことも、玉木氏の哲学のひとつ。あえて多数派とは逆の道を選ぶことで、独自性を築き、中小企業としての差別化や生き残りを図ってきた。

何より重視しているのは、チームと現場、そして販売の連携だ。製造から販売、発信までを同じ空間で一貫して行うことで、作り手の思いやものづくりの背景がそのまま顧客へとダイレクトに届く。テクノロジーはその伝達を支えるツールであり、人と人のつながりを深めるための橋渡しとして機能する。

Apple 梅田にはApple Vision Proの専用スペースも用意

なかでも印象的だったのは、玉木氏がテクノロジーに対して非常に開かれた姿勢を持っていたことだ。Apple Vision Proのデモ体験では、その映像表現のリアルさに「ショックを受けた」と語る。

もしApple Vision Proを活用するなら、西脇の工房をバーチャルで案内する――そんな未来の顧客体験にも、すでにいくつかのアイデアを描いているという。

伝統とテクノロジー。一見すると対照的に思えるこの二つを融合させることで、「播州織」に新たな価値をもたらそうとする玉木氏の姿勢には、これからのものづくりにおける大切なヒントが詰まっているのかもしれない。

Apple取材
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