
Appleは現地時間11月13日、App Storeにおけるミニアプリのエコシステムを拡大するため、新たな支援制度「Mini Apps Partner Program」を発表した。
ミニアプリは、HTML5やJavaScriptなどのWeb技術で構築された軽量なアプリ体験で、ネイティブアプリの内部に組み込む形で配信され、追加でインストールすることなく個別のアプリを利用できるというもの。ゲーム内のサブコンテンツや、外部企業が提供するサービスモジュールといった用途が想定されており、国内外でも徐々に存在感を高めている。
今回のプログラムでは、ミニアプリをホストするデベロッパに対して、特定の条件を満たしたアプリ内課金売上の手数料率が一律15%に引き下げられる。従来の一般的な30%(またはSmall Business Programの15%)とは別枠の優遇策で、Appleとしてはミニアプリをより積極的にApp Store内で展開させたい意図が透けて見える。
プログラムに参加するには、ミニアプリがApp Reviewガイドライン4.7に準拠していることに加え、いくつかのApp Storeテクノロジーの実装が求められる。特に「Advanced Commerce API」と「Declared Age Range API」のサポートは必須となる。前者はミニアプリ内の課金や商品管理を行うための新しい仕組みで、従来のApp Store Connectでは扱えない。後者はユーザーの年齢に合わせ、適切なコンテンツを提供するためのAPIだ。
手数料優遇が適用されるのは上限を満たした外部提供のミニアプリに限られ、ホストアプリと同一企業グループが制作したコンテンツは対象外となる。ミニアプリ内で販売されるデジタル商品やサブスクリプションも対象だが、購入したアイテムは他のミニアプリと共有できないなど、いくつかの制約が設けられている。
参加には申請フォームからのリクエストが必要で、承認されるとメールでセットアップ手順が共有される。追加のミニアプリを提供する場合は、提出済みのマニフェストを更新するだけでよく、運用面でのハードルは低めに設計されている印象だ。
ミニアプリは中国の「ミニプログラム」や一部SNSの軽量アプリと近い概念だが、Appleはあくまでネイティブアプリとの連携を前提に、安全性を重視した運用モデルを採用する。Webアプリや外部ストアに対して複雑な規制を敷いてきた同社が、ミニアプリ領域に正式プログラムを設けたことは、今後のアプリ配信戦略にも影響を与えそうだ。
また、アプリ配信の競争環境を左右する「スマホ新法(スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律)」が日本でまもなく施行されることもあり、施行を目の前に、Appleとしてもエコシステム拡大に向けた実効策を示す必要があったものとみられる。外部パートナーを巻き込みつつ、柔軟なアプリ提供モデルを広げる狙いが背景にありそうだ。
一般ユーザーにとっては、アプリの中で動作する小規模サービスがより増え、インストール不要で使えるコンテンツが広がる可能性がある。一方、デベロッパにとっては、外部パートナーとの連携やミニアプリの新規開発を促す新しい収益モデルになるかもしれない。Appleがどこまでこの仕組みを後押しするのか、今後の動向に注目したい。
関連リンク
- App StoreのMini Apps Partner Programの導入 – 最新ニュース – Apple Developer
- Mini Apps Partner Program – Apple Developer (英語)
(画像:Apple)
