
Appleが、法務および環境・社会イニシアティブ関連部門の幹部交代を発表した。Metaの最高法務責任者を務めてきたジェニファー・ニューステッド氏が2026年3月1日付でゼネラルカウンセルに就任し、1月から上級副社長としてティム・クックCEOの直属でエグゼクティブチームに加わる。
同ポジションを2017年から担ってきたケイト・アダムス氏は、2026年末に退任予定だ。ニューステッド氏への引き継ぎ期間中、アダムス氏は政府渉外部門の監督も担当し、退任後はニューステッド氏が法務と政府渉外を統合した新組織を率いる。新たな役職名は「シニアバイスプレジデント、ゼネラルカウンセル兼ガバメントアフェアーズ」となる。
また、環境・社会イニシアティブ部門のリサ・ジャクソン副社長も2026年1月に退任し、該当チームはCOOのサビ・カーン氏の管轄に移る。
クックCEOは声明で、アダムス氏について「お客様のプライバシーを守り、Appleの革新を支えるために尽力してくれた」と感謝を述べ、ジャクソン副社長についても「2015年比で温室効果ガス排出量を60%以上削減する上で重要な役割を果たした」と功績を称えた。一方、新たに加わるニューステッド氏については「国際問題に精通し、法務と渉外を横断してリードできる」と期待を寄せる。
ニューステッド氏は、Metaの法務トップを務める前、米国務省の法務顧問として外交分野の法的判断を担当し、ホワイトハウス予算管理局のゼネラルカウンセルや司法省の要職も歴任した経歴を持つ。民間では大手法律事務所Davis Polk & Wardwellでパートナーを務め、企業法務に幅広く関わってきた。
今回の発表は、Appleの法務・渉外・環境政策に関わる中枢部門が新体制へ移行することを示すものだ。クックCEOは「ニューステッド氏が率いるチームが、世界中でAppleの重要な取り組みを前進させる」とコメントしている。
Appleの主要部門のリーダーが続々と離脱へ
Appleで、経営中枢を担ってきた幹部の退任が相次いでいる。今年7月にはCOOのジェフ・ウィリアムズ氏が退任を表明し、12月に入ってからは機械学習・AI戦略を率いてきたジョン・ジャナンドレア氏が2026年春に去ることが明らかになった。
デザイン部門では、長くUIを統括してきたアラン・ダイ氏がMetaへ移籍することも明らかになっており、Appleの中核プロダクトと次世代分野を担ってきた人物が複数同時に離れるのは異例と言える。
この背景には複数の要因が重なっていると思われるが、生成AIや空間コンピューティングをめぐる競争が激化するなか、トップ人材の流動性は確実に高まっていると言えるだろう。加えて、法務と政府渉外の統合に代表されるように、Apple内部で組織再編が進んでいる気配もある。役割が変わる時期には退任が生じやすく、それが表面化した結果とも読み取れる。
Appleは大規模な幹部交代を過去にも経験しており、そのたびに内製の育成と外部登用を組み合わせて新体制を整えてきたため、現時点で「異常事態」と断じるのは早いと思われる。とはいえ、生成AIやAR/VRといった中長期の勝負どころを控えるいま、同社がどのように次のリーダーシップを固めていくのかは、例年以上に注目される局面だと言えるだろう。
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