
2025年4月30日、米カリフォルニア州北部地区連邦地裁は、Appleがアプリ開発者に対して外部決済手段への誘導を認めるよう命じた2021年の差止命令に完全には従っていなかったと判断し、同社に対して新たな是正措置を命じた。
この判決により、Appleはアプリ外で行われた課金に手数料を課すことが禁じられ、外部リンクのスタイルや文言に関する制約も認められないことが明確にされた。
Apple、アプリ外課金への手数料徴収が不可に

この裁判の発端は、Epic Gamesが人気ゲーム『フォートナイト』を通じて独自の決済手段を導入しようとした2020年にさかのぼる。当時、AppleはApp Storeにおけるアプリ内課金に対し最大30%の手数料を設定していたが、これに異を唱えたEpicは訴訟を提起。Apple側は規約違反としてアプリをストアから削除し、法廷闘争が続くこととなった。
2021年の差止命令では、Appleが外部リンクの設置を一律に禁止することは認められないとの判断が下された。Appleはこれに対して上訴を試みたものの、2024年1月に米最高裁が上訴を棄却。これにより、Appleには外部決済への誘導を一定条件下で許容する義務が確定していた。
Appleはその後、外部リンクの設置を可能とする新方針を示しつつ、リンクの表示方法や使用可能な文言にガイドラインを設け、さらにアプリ外での課金についても最大27%の手数料を設定。この対応について、Appleはユーザー保護や不正防止、プラットフォーム維持の観点から必要な措置であると主張してきた。
しかし、Epic GamesやSpotify、Microsoft、Meta、Match Groupなど一部の企業はこれを不服とし、「事実上の制限」であると指摘。連邦地裁のイボンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ判事は今回、Appleの対応について「命令の趣旨を形骸化させるもの」と評価し、改善措置を直ちに実施するよう命じた。また、一部のApple幹部による証言に虚偽の疑いがあるとして、刑事侮辱罪の可能性を含めて検察への付託 (判断を委ねること) を示唆した。
判決を受けて、Appleは命令に従う意向を示しているが、同時に今回の判決に対して控訴する意向も示している。

そして、対するEpic Gamesのティム・スウィーニーCEOは、『フォートナイト』を米国のApp Storeで再配信する意向を表明。Appleがルール変更をグローバルに適用するならば、訴訟を終結させる用意があるとも語った。また、Epicは開発者向けに独自の販売プラットフォーム「Workshops」を発表し、収益100万ドル以下には手数料を課さない新制度を導入している。100万ドルを超えた分には12%の手数料を徴収する。
この一連の判決は、AppleのApp Storeポリシーに対して歴史的な見直しを迫るものであり、米国におけるアプリ市場の競争環境に大きな影響を与えることが予想される。ヨーロッパで施行された「デジタル市場法」に見られるように、グローバルな潮流として、アプリ配信における選択肢の拡大や柔軟な課金手法の導入が進んでいる。開発者とプラットフォーマーの関係は、新たな “バランス” が生まれそうだ。
We will return Fortnite to the US iOS App Store next week.
— Tim Sweeney (@TimSweeneyEpic) April 30, 2025
Epic puts forth a peace proposal: If Apple extends the court's friction-free, Apple-tax-free framework worldwide, we'll return Fortnite to the App Store worldwide and drop current and future litigation on the topic. https://t.co/bIRTePm0Tv
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(画像:Epic Games)