3月9日から3月10日まで2日間、中国・上海のブロックチェーンプラットフォームを提供する非営利団体 「NEO」 は国際ゲームカンファレンス 「NEO GAME CONFERENCE 2019」 を都内で開催した。
同カンファレンスでは、NEOのブロックチェーンプラットフォームの詳細や、ブロックチェーン技術を活用した国内新作タイトル 「Job Tribes」 など様々な発表が行われた。また、そのほかにもゲーム・コンテンツ業界を牽引する著名人らによるパネルディスカッション等が実施された。同記事ではカンファレンスの後半 「DAY 2」 の様子をお届けするとともに、日本市場に本格進出するNEOが考える今後のブロックチェーン市場の展望についてレポートしたい。
ブロックチェーンゲームとは?
唐突だが、あなたはブロックチェーンゲームというものをご存知だろうか。ブロックチェーンはビットコインなど仮想通貨のために生まれた仕組みだが、それをゲームに応用したものがブロックチェーンゲームだ。
ブロックチェーンゲームには、「外部からの改ざんができないこと(チート不可)」 や 「ゲームコンテンツを仮想通貨によって売買できる」 など従来のゲームにはない特徴が存在する。
このうち、特に “後者” が最大の特徴となる。これまでの従来型オンラインゲームの場合はデジタルコンテンツ (ゲーム内のキャラクターやアバター、それらの服装や装備品など) はすべてゲームメーカー側がデータ管理していたが、ブロックチェーンゲームの場合はそれぞれのユーザーにコンテンツの所有権がある。
所有するデータは個人の “資産” として管理できる。マーケットを通じて他ユーザーから購入したり、要らなくなったコンテンツを売却することも可能だ。遊び終わったゲームのアイテムを売却し、次のゲームのアイテムの購入費に充てるなど “資産運用” の仕方は様々だ。
また、これまではゲームメーカーのサーバーが中央集権的にゲームの管理を行ってきたが、ブロックチェーンゲームの場合は管理者が存在しないシステム下で運営されるため、ゲームデータの改ざんができないだけでなく、ゲーム運営者が不在となったとしても理論上はゲームコンテンツの資産はユーザーの手元に残ることになる。従来型のゲームの場合は一度課金で購入したゲームはサービス終了とともに使えなくなるのが基本だが、ブロックチェーンゲームの場合だと市場で換金することが可能になる。
仮想通貨と聞くと、昨今のビットコイン暴落や仮想通貨取引所コインチェックからNEM(仮想通貨)が不正流出するなどがあったこともあり、不安感や懐疑心を持つ人もいると思う。
しかし、一部の国内ゲームメーカー大手もブロックチェーン技術を応用したゲーム展開については非常に強い関心を示している。スクウェア・エニックス・ホールディングス代表取締役社長の松田洋祐氏が2019年の年頭所感において、「今後のデジタルコンテンツ分野におけるブロックチェーン技術の応用に非常に関心をもっています」 としていたように、この新しいゲームに注目している企業は少なくないようだ。日本のゲーマーにとっても、将来的にブロックチェーン技術は 「無縁のもの」 とはいかなくなるかもしれない。
ブロックチェーンゲームは ”ゲームの未来” を担えるか
カンファレンスでは「つくり場」が限定復活しゲームアイデアソンイベントを実施
実は日本ではすでにいくつかのブロックチェーンゲームがローンチされており、その中でも世界ナンバーワンのユーザー数を獲得しているゲームがある。それはdouble jump.tokyoの本格的ブロックチェーンRPG 「My Crypto Heros」 。
同作は昨年11月にリリースし、イーサリアムベースのDappsとして取引高やDAU (デイリー・アクティブ・ユーザー) で世界一位の座を獲得している。現役の慶應大学生でありながら、double jump.tokyoの社長補佐も務める石川駿氏が 「NEO GAME CONFERENCE 2019」 のパネルディスカッションに参加し、現在の 「My Crypto Heros」 の現状について説明した。
石川氏によると、「My Crypto Heros」 は現在3万人のユニークユーザーを抱えており、DAUは5,000人、イーサリアム(ETH)の累計売上は1万ETH、ランド (ゲーム内の国のようなもの) は9カ国となっている。ただ、石川氏はDAU 5,000人という数字が示すようにまだまだブロックチェーンゲーム市場は小さいと認識しており、これから先は多数のブロックチェーンゲームが登場してくることを予測。ブロックチェーンゲーム市場自体の拡大を期待している。
同作品が日本のゲームユーザーに広く受け入れられるかは、ゲーム自体を楽しいものにするのは当然、さらにブロックチェーンゲーム自体の課題解消に取り組む必要がありそうだ。
具体的には、仮想通貨がどんなものなのか、どうしたら仮想通貨が買えるのかなど、仮想通貨に慣れていないユーザーが知識面の習得が必要となること。また、仮想通貨自体の信頼度の向上も不可欠なほか、仮想通貨の価格変動リスクに対する恐怖・不安感もユーザーは乗り越える必要がある。しかしこれらの難しさを認めつつも、石川駿氏は 「ブロックチェーンゲームを (ゲームの) 未来と考えているからこそ、現在も挑戦している」 と語る。
左:DMM.com OVERRIDEのWYNNE RAY氏、右:double jump.tokyoの石川駿氏
ちなみに、このパネルディスカッションにはDMM.com OVERRIDEのWYNNE RAY氏が参加していたが、同氏は現時点ではブロックチェーンゲームをDMMのサービスとして提供する予定はないものの、「My Crypto Heros」 をプレイするなど勉強し、今後どんなビジネスチャンスがあるのか検討していきたいと話していた。
ブロックチェーンゲームプラットフォーム 「NEO」 が日本に本格参入
今回、NEOが国内で大規模なカンファレンスを実施したのは、日本のゲーム市場に期待を抱いているからだ。グローバルにおけるブロックチェーン業界において高い知名度を持ち、プラットフォーム型トークンとして多くの利用者数を誇る 「NEO」 は、2018年に東京に拠点を広げ、日本での本格プロモーションを開始した。
「NEO」 のプラットフォームは JavaScript、Python、.NET Framework、C、C#、C++など一般的に利用されているプログラミング言語に対応しているため、開発者が参加しやすいという特徴がある。これにより、多くの技術者が「NEO」 をベースにゲームの開発が可能となっている。
NEO General ManagerのZhao Chen氏
NEOは今年3月に開発者向けガイドを配信予定。さらに今年6月までには10作品以上の自社ブランドのゲームタイトルをリリース予定であることも明らかにしている。現時点ではFPSやRPG、ストラテジー、カードゲームなどが開発中で、いずれはすべてのゲームジャンルを網羅する予定であるとのこと。また、自社ブランドだけではなくパートナー獲得についても力を入れており、NEOのプラットフォームを活用する場合にはプロモーションについても支援を予定している。
ゲーム市場が成熟している日本において、NEOのサービスがどれほどシェアを伸ばせるかは未知数ではあるものの、ブロックチェーンゲーム自体も提供が始まったばかりでまだまだ市場規模が小さいこと、シュリンク気味なスマホ&PCゲーム市場の次なる世代のゲームとしての役割を担えそうであることから、NEOはブロックチェーンゲーム市場の拡大に大きな希望を抱いている。
ブロックチェーンゲームにはセキュリティへの不安やユーザーが実際にプレイに至るまでのハードルの高さなどまだまだ多くの課題が残されているが、同仕組みに期待しているユーザーが一定数いるのも事実。今後どれほどのユーザーに同ゲームシステムが受け入れられていくのか、またそもそも現行のゲームシステムを変える存在になれるのか。今後も注視していく必要があるだろう。