中国と米国間で発生している貿易摩擦問題、新興市場の景気減退などを受けて、Appleの主力製品 「iPhone」 の販売が不振気味だ。前回の決算発表からその事実はすでに明らかになっており、具体的な販売数こそ明らかになっていないものの、iPhoneの売上は昨年同期比で15%減少している。
これは多数の問題が影響したことが考えられ、決してiPhoneの人気が衰えていることを示すものではないが、「iPhone」 という製品自体にも限界があり、いずれ売れなくなる日が来るだろう。これは以前から経済誌や経済アナリストらも伝えている通り。
しかし、これはAppleにとっては想定の範囲内かもしれない。すでにAppleのCEOティム・クック氏は2010年の段階でスマートフォン市場の限界を予測していたようだ。The Wall Street Journalが報じた。
今後Appleは各サービスやテクノロジーを重視する体制に
WSJの記事によると、Appleは現在、ハードウェア中心の会社からサービス・革新的なテクノロジーを重視した会社へと変貌を遂げようとしているらしい。同社のサービスや人工知能、ハードウェア、小売など各部門のリーダーを動かし、事業の優先順位を変化させ、iPhone依存の体質から脱却することを計画しているという。
さらには一部従業員の配置転換、社内プロジェクトの再評価を行っている。これらの経営体制の見直しの中で、プロジェクトの中にはいくつか保留になったものもあるという。
例として、Appleは自動運転車プロジェクトから200名のスタッフを削減。それらのスタッフをEddy Cue氏が率いるハリウッドプログラム (今春に発表予定の映像配信サービス) に移行させた。これはあくまで一例に過ぎず、他にも似たようなことが社内で起きている可能性が高い。
具体的にどのような方針でプロジェクト見直しを行っているのかは明らかになっていないが、少なくとも今までのiPhoneなどの製品(ハードウェア)に頼る手法から、各サービス・革新的テクノロジーを重視した経営スタイルにシフトしようという試みが見える。
これまで多数の新製品を投入してきたAppleが、性急に経営スタイルを大きく変えようとしているのは、ハードウェア販売の限界を感じているからだろう。
直近の決算発表で、AppleはiPhoneの販売台数減に初めて直面したことが明らかになったばかりだが、Appleの元従業員の話によると、AppleのCEOティム・クック氏はスマートフォン市場がいずれ成熟し、iPhoneの販売が頭打ちになることを2010年の段階で予測していたという。
2010年といえば 「iPhone 4」 が発売した年。そんな早い時期から、すでにCEOはiPhoneの販売が不調に陥った際にも成長を続けていく道を模索していたようだ。つまり、iPhoneの販売不振はクックCEOからすれば 「想定内」 ということになる。
Appleが 「iPhone」 の次に用意しているものは、「サービスの拡大」 や 「革新的な技術」 。特にサービスについては、すでに多方面から詳細な情報が漏れ伝わってきており、雑誌やニュースの定期購読サービスやハリウッドのコンテンツを配信する定額制配信サービスを計画中であるとのこと。
これらは2019年3月下旬に発表され、雑誌・ニュースの配信サービスは早ければ2019年3月~5月の間、映像配信サービスに関しては2019年内に提供が開始されるとの予想だ。さらに、クラウドサービス 「iCloud」 と雑誌・ニュースの定額サービスをバンドルしたプランの提供も計画しているとWSJは伝えている。
Appleは 「Apple Music」 を含めた全定額購読者数を現在の3億6000万人から2020年には5億人に増やすことを目標としているという。当然、同社は今後もiPhoneなどのハードウェア開発にも注力するものと予想されるが、Appleのビジネスはハードウェアだけに留まらず複数のサービスや革新技術にも広げ、さらなる成長を遂げようとしている。