
フォーカルポイントは9月25日、Gyges Labsが開発した指輪型AIデバイス「Vocci(ヴォッチ)」の国内発表会を開催した。
2026年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2026」に合わせて発表された製品で、日本ではフォーカルポイントが販売を担い、クラウドファンディングサービス「GREEN FUNDING」を通じて展開する。


GREEN FUNDINGでのプロジェクト開始は2026年9月下旬を予定。希望小売価格は49,990円だが、先行販売では最大43%オフとなる29,990円から用意する(価格はいずれも税込)。購入時には事前に指のサイズを確認できるサイジングキットが用意され、有料プロプランの1カ月分も付属する。
会話を記録してAIが整理。指輪を“自分の記憶”として使う「Vocci」

「Vocci」は、指輪にマイクやストレージを搭載し、身につけた状態で日常の会話や出来事を記録できるAIデバイスだ。
録音した音声は文字起こしされるだけでなく、会話の概要や重要事項、決定事項、ToDoなどに整理される。あとから特定の内容を検索したり、過去に記録した会話と照らし合わせながら分析したりすることもできる。
開発元のGyges Labsが重視しているのが、日常の会話や体験を「コンテキスト(文脈)」として蓄積すること。
たとえば、ある会議の内容を記録するだけでなく、その前後に行われた会話や過去の記録まで参照することで、蓄積された情報を自分の記憶のように活用することを狙っている。なお、製品名の「Vocci」は「Voice(ボイス)」に由来し、日本語の「ぼっち」とは関係ない。
操作もシンプルで、本体の物理ボタンをダブルクリックすると録音の開始・停止、1回クリックで録音中のハイライト登録、長押しで「Vocci AI」を呼び出す。周囲の会話を常時自動録音する仕組みではなく、ユーザー自身が操作して録音を始める方式だ。

発表会では、指輪型であることによって録音する意思を相手に伝えやすい点も説明された。スマートフォンやスマートウォッチの場合と比べ、指に装着した「Vocci」を見せながら操作できるため、「これから録音する」ということを会話相手と共有しやすいという。
本体には航空宇宙グレードのチタンを採用し、毎日身につけることを想定して低アレルギー性にも配慮した。防塵・防水性能はIP67に対応する。5m離れた場所の音声も拾える高感度マイクを搭載し、指輪として使うだけでなく、首から下げてペンダントのように装着することもできる。

バッテリー駆動時間はリング単体で最大8時間。専用の充電ケースと組み合わせると最大32時間使用でき、急速充電にも対応する。本体にはストレージも内蔵しているため、スマートフォンを手元に置いていない状態でも録音できる。録音データは後からスマートフォンなどと同期する。
過去の会話も横断して検索・分析。ChatGPTやClaudeからの参照にも対応

「Vocci」で録音した音声はクラウドにアップロードされ、文字起こしとAIによる整理が行われる。生成される情報は、文字起こしのほか、概要、トピック、チャプター、キーポイント、ToDo、未解決事項、決定事項など。ひとつの録音だけを要約するのではなく、過去に記録した複数の会話を横断して検索・分析できる。
たとえば、直近1カ月に記録した会話をもとに、今回の会話と過去のやり取りとの関係を整理するといった使い方ができる。録音中にボタンを1回クリックしてハイライトを付けておけば、その部分を重要なポイントとして扱わせることも可能だ。
日本語、英語、中国語など複数の言語が混ざった会話にも対応する。AIによる整理では、会話の中心となる言語を使ってまとめられる。

発表会では、約30分の発表音声を使ったデモも披露された。約3.1MBの音声データをクラウドへアップロードすると、数分で文字起こしから要約、分析までが完了する様子が紹介された。
生成したデータはMarkdown形式(.md)やテキストファイルとして書き出せる。さらに「Model Context Protocol(MCP)」を利用し、ChatGPTやClaudeなどの外部AIサービスから、Vocciに蓄積したコンテキストを参照することもできる。
プライバシーにも配慮し、データは暗号化して保存する。GDPRに準拠し、SOC 2認証も申請中としている。

料金プランは、無料の「スターター」、月額3000円の「プラス」、月額6000円の「プロ」を用意する。年払いの場合、「プラス」プランは2万2000円(月額換算1833円)、「プロ」プランは4万5000円(月額換算3750円)となる(価格はいずれも税込)。
「スターター」プランでは月5時間(300分)までの文字起こしと2GBのクラウドストレージを利用できる。「プラス」プランは月20時間(1200分)までの文字起こしと10GBのクラウドストレージが利用でき、「プロ」プランは文字起こしが無制限で、20GBのクラウドストレージを利用可能だ。
開発元はスマートグラスやディスプレイ技術を手がけてきたGyges Labs

Vocciを開発したGyges Labsは、AIによって人間の能力や脳を拡張することを目指す企業だ。社名は、プラトンの『国家』に登場する「ギュゲスの指輪」に由来する。所有者に大きな力を与える指輪の物語から名前を取り、「Make everyone a superhero(すべての人をスーパーヒーローにする)」というミッションを掲げている。
開発チームには、スタンフォード大学やUCLA、Google、Appleなどの出身者が参加する。

CEOのJD氏はスタンフォード大学で博士号を取得した光学・ディスプレイの専門家で、キヤノンの研究員として東京大学で研究した経験を持つ。CPTOのFelix氏はスタンフォード大学出身で、AppleではApple Vision Proの開発に携わったという。
チーフサイエンティストはUCLAで博士号を取得し、Googleではシニアリサーチャーとして知能研究に従事。COOのドミンゴ氏は20年以上にわたるオペレーション経験を持ち、これまでに1000万台以上のデバイスを世界に届けたとしている。
同社はこれまで、スマートグラスやディスプレイ技術を他社に提供してきた経歴もある。「Vocci」は、そうしたハードウェア開発の経験をAIデバイスに展開した製品のひとつと位置づけられており、今後は指輪型だけに限定せず、グラス型など別の形状のAIデバイスの開発も視野に入れているという。



