
シリコンバレー発のAIワークスペース「Genspark」を展開するGensparkは7月21日、プロダクトの大型アップデートとなる「AIワークスペース6.0」を発表した。
今回のアップデートでは、ユーザーの仕事に関する情報を継続的に記憶するクラウドメモリー「SecondBrain」を新たに導入する。さらに、会話や打ち合わせの内容を記録できるAIボイスレコーダー「SecondBrain Note」、AIエージェントと人が同じ場所でコミュニケーションできる「GenTeam」なども追加する。
Gensparkは、ChatGPTやGemini、Claude、Nano Bananaなど70以上のAIモデルを統合し、用途に応じて適したモデルを自動で選択するオールインワン型のAIワークスペースだ。調査や分析、資料作成に加え、画像、動画、Webサイト制作など、幅広い作業を1つのサービスで扱えることを売りにしている。
今回の6.0では、AIに都度指示を出す使い方から一歩進み、日々の業務で生まれる情報を蓄積し、次の仕事に活用する仕組みを目指す。
AIを使うたびに前提を説明する手間をなくす「SecondBrain」

GensparkがAIワークスペース6.0を開発した背景には、現在のAIサービスが抱える「記憶」の問題がある。
生成AIは文章作成や調査、資料作成など幅広い仕事をこなせる一方、ユーザーが過去に行った仕事や、その人が置かれている状況を長期的に理解することは難しい。そのため、AIを使うたびに前提となる情報を入力したり、過去の資料をコピー&ペーストしたりする作業が必要になる。
Gensparkは、この課題を解決するために「SecondBrain」を導入する。SecondBrainは、ユーザーの仕事に関する情報を継続的に蓄積するクラウドメモリーだ。メールや会議のメモ、カレンダー、Notion、各種ドキュメント、CRMなど、さまざまな情報源を接続できる。
Genspark側では、集めた情報を整理・体系化する仕組みを用意しており、蓄積された情報をAIが参照できるようにする。ユーザーが過去の仕事について毎回説明しなくても、AIが「誰が」「何を目的に」「どのような仕事をしているのか」を理解したうえで、回答や成果物を作れる環境を目指す。
発表では、現在のAIとのやり取りを「3ステップ進むと、それまでのことを忘れてしまうような状態」と説明。ユーザーが同じ質問を繰り返したり、自分の状況や仕事の内容を何度も説明したりする必要があることを課題として挙げた。

SecondBrainでは、日々の業務を通して情報が蓄積されていくため、AIとのやり取りのたびにコンテキストを入力する手間を減らせる。Gensparkはこれを「永続的なパーソナルブレイン」と位置づけ、ユーザーの知識や仕事の情報をAIが継続的に活用できるようにする。
このSecondBrainと連携するのが、AIボイスレコーダーの「SecondBrain Note」だ。SecondBrainはメールやドキュメントなどデジタル上の情報を蓄積できる一方、日常の会話や打ち合わせなど、現実世界で交わされる情報をそのまま取り込むことは難しい。「SecondBrain Note」は、この部分を補うデバイスとして開発された。

「SecondBrain Note」は、会話を録音しながら文字起こしを行い、会議の内容を要約して共有できるAIボイスレコーダーだ。録音時のバッテリー駆動時間は最大35時間で、Gensparkによれば、1日6時間の会議で使用した場合でも約1週間利用できるという。
スマートフォンに取り付けて使えるほか、専用ケースに収納して持ち運ぶこともできる。ウォレットに入れたり、デスク上ではスタンドとして使ったりすることも可能だ。録音した会話や会議の内容はSecondBrainに取り込むことができ、Gensparkのワークスペースで他のメールや会議メモ、カレンダーなどの情報と一緒に扱える。
発表時点ではプロモーション価格179ドルで提供すると説明しており、GensparkのWebサイトで予約受付を開始している。

GensparkはAIワークスペース6.0を、大きく4つの要素で構成している。
1つ目は、ユーザーや仕事の情報を記憶する「SecondBrain」。2つ目は、Genspark Designやカスタムデータベース、CRMなど、AIエージェントが実際の業務を進めるための機能。3つ目は、AIメールクライアントのように、ユーザーが普段使っている仕事の環境にAIを組み込む仕組み。そして4つ目が、人間とAIエージェントが同じワークスペースで協力するGenTeamだ。
Gensparkは、これらを組み合わせることで、AIがユーザーのことを理解し、仕事を実行し、普段使っているツールの中で支援しながら、人間の同僚やAIエージェントと一緒に働ける環境を目指している。
AIエージェントと人が同じワークスペースで働く「GenTeam」

AIワークスペース6.0では、SecondBrain以外にも複数の新機能を投入する。Gensparkはこれまで、AIを使ったコンテンツ生成や業務効率化を進めてきた。
昨年には、さまざまな仕事を自動化する「スーパーエージェント」を導入。その後、ユーザーからドキュメントやスライド、シートなどをより簡単に作りたいという声が寄せられたことから、AIによるオフィス機能を拡充してきた。
現在のGensparkでは、1つのプロンプトからドキュメントを作成し、内容をプレビューしたり、自分で編集したり、AIと共同で作業したりできる。AIスライドやAIシート、AIアプリなども提供しており、70以上のAIモデルを使って文章、画像、動画などのコンテンツを生成できる。
6.0では、この環境をさらに広げる。新たに発表された「GenTeam」は、人間の同僚とAIエージェントが同じコミュニケーションスペースで協力できる機能だ。人間同士がチャットで仕事を進めるのと同じように、AIエージェントもチームの一員として会話に参加し、必要な作業を担当することを想定している。
Gensparkはこの機能を、AIと人が協業するための「コラボレーションレイヤー」と説明している。SecondBrainがユーザーや仕事の情報を記憶する基盤となり、その上でAIエージェントと人間が共同で仕事を進める形だ。

発表会では、GenTeamを使った具体的なデモとして、ある人物がAIエージェントだけで構成されたチームと仕事を進める様子を披露した。
コーディネーター役のAIに仕事を依頼すると、別のAIエージェントが150人以上のデザイナー候補を探し、連絡先を選定。さらにメールの作成や送信まで進め、返信が届くと有力なデザイナーとのミーティングを設定する。その後は別のAIエージェントにピッチデックの作成を依頼するという流れだ。
Gensparkは、こうした複数のAIエージェントがそれぞれの役割を持ち、ユーザーと同じチームの中で仕事を進める環境をGenTeamで実現しようとしている。
このほか、デザイナーやプロダクト担当者向けの「Genspark Design」も用意。プロトタイプや製品デザインを1つのプロンプトから作成できる機能として紹介された。
また、プロンプトからカスタムデータベースやCRMシステムを構築できる機能も用意する。発表では、こうしたAIエージェントを活用した業務システムの構築を、AIエージェントの能力を広げる機能の1つとして紹介した。
さらに、AIメールクライアントも投入。AIブレインと連携しながらメールを作成・処理できる環境を提供し、ユーザーが普段使う業務環境の中でAIを活用できるようにする考えだ。




SecondBrainの実用例としては、「SecondBrain Note」で記録した会議の内容を、Slackやメール、カレンダー、Notionなどの情報と組み合わせて利用するデモも紹介された。
ある社員が上司から顧客の注文状況と売上見通しを調べるよう依頼されると、Gensparkはメールや会議メモ、HubSpot、過去の提案資料など、SecondBrainに蓄積された複数の情報源を横断して必要なデータを集め、それをグラフにまとめて上司に送るまでの作業を進めた。
GensparkはSecondBrainを、AIがユーザーの仕事を理解するための「ワーキングメモリー」と位置づけている。これまでAIに都度説明していた仕事の背景や過去の経緯を蓄積し、スーパーエージェントがユーザー自身に近い形で仕事を進められるようにする考えだ。

法人向けの取り組みも強化する。Gensparkは2025年11月に法人向けプランを開始して以来、8カ月で7000社を超える法人顧客を獲得したと説明した。広告、通信、製薬、小売、HRソリューション、コンサルティングなど幅広い業界で利用が進んでいるという。
日本市場では、今後の法人向けサービスに向けてデータレジデンシーの導入も進めている。対象となるエンタープライズプランの顧客向けに、日本国内でのデータ保管を近く提供する予定としている。販売代理店やシステムインテグレーターとのパートナーシップも強化し、東京の拠点ではコンサルティング、技術支援、カスタマーサクセス、サポートなどの体制を拡充する。
Gensparkは2026年1月に日本での事業を正式に開始しており、現在は東京オフィスを拠点に製品、マーケティング、コミュニケーション、営業、フォワードデプロイメントエンジニアリング、カスタマーサクセス、カスタマーエクスペリエンスなどのチームを整備している。
同社は今後3年間で日本市場に1億ドルを投資する計画も明らかにした。人材採用によるチーム拡大やキャンペーン、企業向けAI導入への投資などに充てる。
GensparkはAIワークスペース6.0について、AIを「必要なときに呼び出して使うツール」から、日々の仕事を理解しながら継続的に支援する存在へと変えていくためのアップデートと位置づける。SecondBrainによって仕事の情報を蓄積し、「SecondBrain Note」で日常の会話まで取り込み、GenTeamでAIエージェントと人が協力する。Gensparkは6.0で、AIを仕事の一部として使うのではなく、仕事そのものをAIと一緒に進めるワークスペースを目指す考えだ。






