
エレコムが、人気トラックボールマウス「HUGE」の新型モデルとして「HUGE PLUS」を発表した。
前モデルから約8年ぶりの登場ということで、愛好家の間では早くも注目が集まっている。SNS上では、8年前のモデルをいまも修理やメンテナンスしながら使い続けているユーザーの声も多く、「一度使うとこれしか使えない」という熱烈な評価も散見される。それだけ愛好家が多い製品ということだ。
そんなトラックボールマウスだが、筆者が初めてその存在を意識したのは前職でのことだった。前の席の先輩が、会社支給の普通のマウスではなく、大きなボールをくるくると回しながら顧客データを素早く閲覧していて、興味を抑えきれずに思わず使い心地を尋ねた記憶がある。
しかし、実際に先輩の席で操作してみると、トラックパッドやマウスとはまったく違う操作感に戸惑い、結局そのときは使いこなせずに終わってしまった。あれから約10年。気づけば筆者自身も長時間のデスクワークに悩まされるようになっていた。手首の疲れや軽いしびれが作業効率に影響するようになり、1日8〜12時間の作業を終えるころには、手首に鈍い違和感を覚えることもある。
筆者は普段はMacを中心に作業しており、純正のトラックパッドやMagic Mouseを多用している。さらに左手デバイスや他社製マウスも組み合わせて効率化を図ってきたが、根本的な負担軽減には至らなかった。
あれから約10年が経ち、筆者も再び長時間のデスクワークに悩まされるようになった。手首の疲れや軽いしびれは、作業効率にも影響する。そんな折、エレコムの新型トラックボールマウス「HUGE PLUS」の登場を知り、「あのとき諦めたトラックボールをもう一度試してみたい」と思ったのだ。
今回「HUGE PLUS」を発売前に試す機会に恵まれ、長時間作業における快適度や操作感を検証することができた。本稿では、筆者の体験を通じて「HUGE PLUS」の使用感と実際のメリットを詳しく紹介していく。
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シリーズの特徴はそのままに、よりボール操作が滑らかになった「HUGE PLUS」

「HUGE PLUS」は、直径52mmの大型ボールを採用した人差し指操作型のフラッグシップモデル「HUGE」シリーズの後継機だ。
人差し指操作型のトラックボールマウスは、手首をひねらずカーソルを操作できるのが大きなメリット。従来のマウスのように腕を大きく動かさず、指や手のひらだけでカーソルを操作できるため、狭いデスクでも作業がしやすく、手首や肩への負担も大幅に軽減できる。
前モデルの「HUGE」はその精密な操作性と耐久性で支持を集め、プロのクリエイターや長時間作業を行うオフィスワーカーに愛用されてきた。

「HUGE PLUS」では、シリーズの特徴である、手首から手のひら全体を載せて操作できる低反発パームレストと、大胆かつ繊細な操作を可能にする大玉(ボール径52mm)はそのまま継承されている。
一方で、8年ぶりの新型モデルということもあり、デザイン・操作性・接続性いずれも改良が加えられた。
今回のリニューアルで最大のポイントとなるのは、ボール操作の滑らかさだ。支持ユニットにはミネベアミツミ製の高性能ベアリングを標準採用しており、ボールが非常になめらかに回転する。これにより腕や手首への負担を減らすだけでなく、大画面でも高速かつ正確な操作が可能になっている。
DPI感度は500・1000・1500の3段階で、接続先切り替えスイッチ後ろのボタンで簡単に変更できる。画面解像度や作業内容に応じて素早く切り替えられるのは便利だ。

実際の操作感としては、わずかな指の動きでもカーソルが精密に追従し、クリエイティブな作業や微細なUI操作でもストレスが少ない。さらに、支持ユニットは上位モデル「IST」シリーズで開発された換装機構を採用しており、好みに応じて別売の人工ルビー支持ユニットに交換することも可能だ。
接続面でも大きく進化している。USBレシーバーを使った2.4GHzワイヤレス接続に加え、Bluetooth、有線USBの3方式に対応し、合計3台のデバイスを接続可能。スライドスイッチで簡単に切り替えられるため、複数デバイスを行き来する環境でも快適だ。

有線接続時はポーリングレート1,000Hzに対応しており、ゲーミングマウスクラスのセンサーと組み合わせることで、より滑らかな操作を実現している。
電源は内蔵リチウムイオンバッテリーで、USB Type-C端子から充電可能。電池交換の手間が不要で、ローエナジーモードなら満充電から最長5ヶ月、ハイスピードモードでも最長3ヶ月使用できる。USB接続時は常にハイスピードモードでの動作となる。

本体サイズは幅約114.7mm × 奥行約181.9mm × 高さ約57.2mm、重量は約279g(レシーバー含まず)と、マウスとしては比較的ヘビー級。しかし、手のひらをしっかり支える設計のため、重量感が安定感に直結している。
搭載ボタンはチルト込みで10個。専用アプリで全てカスタマイズでき、主要7ボタンには静音スイッチを採用しているため、オンライン会議中でもカチカチ音を気にせずに操作できる。

トラックボールマウスは、正確なトラッキングのためにメンテナンスが欠かせないが、それを簡易に済ませられるように、裏面にボール取り外し穴が用意されており、ホコリなどで動きが鈍った場合もユーザー側でメンテナンスできる。
前モデルの登場から8年が経過しているにも関わらず現在も使えているユーザーがいるということを踏まえると、「HUGE PLUS」も長く使用できるのではないだろうか。
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「HUGE PLUS」を実際に試してみた感想

まず操作して感じたのは、「指先だけでカーソルを自在に動かせる」という心地よさだ。直径52mmの大玉のおかげでボールが軽い力でスムーズに回転し、長時間の作業でも手首や肩への負担をほとんど感じない。
普段からMacのトラックパッドやMagic Mouseを使っていた筆者にとって、トラックボールマウスは最初こそ扱いづらいのではと構えていた。しかし、実際に使ってみると、慣れるまでにかかったのはわずか1〜2日ほど。3日目には自然に使いこなせるようになり、むしろ快適さを実感するようになっていた。
DPI切り替え機能や支持ユニットの滑らかさも優秀で、微細なUI操作やデザイン作業、画像編集など、精密なカーソル操作が必要な場面でもポインタがほぼブレない。従来のマウスよりも少ない動作で狙った位置にカーソルを合わせられるため、作業効率も向上した。
さらに、ワイヤレス・Bluetooth・有線の3方式に対応しており、複数のデバイスを行き来する環境でもスムーズに切り替えられる点も魅力的。筆者はMacとWindowsのデスクトップを併用しているが、スイッチひとつで接続先を切り替えられるのは非常に便利だ。
こうした操作感の良さと柔軟な接続性の両立により、「HUGE PLUS」は長時間作業を快適にこなすための理想的なパートナーとなり得る。手首や肩への負担を軽減しつつ、精密な操作が可能な点は、クリエイターやオフィスワーカーにとって大きなメリットだ。
筆者自身、「HUGE PLUS」を使い始めてから、長時間作業の疲労感が明らかに減り、むしろデスクに向かう時間が楽しみになった。カーソルの追従性や安定感が高まり、作業中のミスやストレスも軽減。ボールの滑らかさと柔らかいパームレストが相まって、手とデバイスが一体化したような自然な操作感を味わえる。
10年前、なぜトラックボールに苦手意識を持っていたのか。今となっては不思議なくらいだ。
まとめ。導入前に知っておきたい注意点も整理

「HUGE PLUS」は非常に快適な操作性を備えたトラックボールマウスだが、万人にとって「すぐに理想のデバイスになる」とは限らない。操作感に独特のクセがあり、導入初期には戸惑う場面もあるだろう。ここでは、購入前に知っておきたいポイントを整理しておきたい。
- 慣れるまでに時間がかかる
トラックボールマウスは従来のマウスやトラックパッドとは操作感が大きく異なるため、最初はカーソルが思うように動かず戸惑うこともある。特に「指先だけでカーソルを動かす」という感覚に慣れるまでには数日〜数週間かかる場合がある。短時間だけの作業では違和感を感じやすいため、長時間作業でじっくり試すのがおすすめだ。 - 大きさと重量に注意
幅約114.7mm × 奥行約181.9mm × 高さ約57.2mm、重量約279gと、一般的なマウスよりやや大きく重い。手のひら全体で支えて操作する設計のため安定感はあるが、デスクのスペースが狭い場合や軽いマウスに慣れているユーザーには最初はやや扱いにくく感じることもある。 - デスク環境との相性
「HUGE PLUS」は手首や腕を固定して操作するタイプのため、低すぎるデスクや狭すぎる作業スペースでは快適に操作できないことがある。高さや位置を調整できる椅子・デスク環境を整えておくことが重要だ。 - ボールのメンテナンスが必要
長く快適に使うためには、ボールや支持ユニットの定期的な清掃が必要だ。裏面の取り外し穴から簡単にメンテナンスできるが、ホコリや汚れがたまると操作が滑らかでなくなる場合がある。購入後は軽く手入れの方法を確認しておくと安心だ。 - 操作習熟による作業効率の個人差
高い精度で操作できる一方、慣れないうちは作業効率が一時的に下がる可能性がある。特にマウス主体の作業に慣れたユーザーは、最初の1週間ほどは焦らず練習する必要がある。
とはいえ、これらの慣れや環境づくりを乗り越えた先には、快適なデスク作業環境が待っている。
実際に使ってみて感じたのは、トラックボールマウスがすべての作業に万能というわけではないということだ。PDFのテキストコピーや表計算、Googleフォームへの入力、画像のドラッグ&ドロップなど、細かい操作やテキスト入力を伴う作業では、トラックパッドや一般的なマウスのほうが効率的な場合もある。
そのため、トラックボールマウスを “メイン1本” で使うというよりは、複数の入力デバイスのひとつとして組み合わせて使うのが現実的だろう。もし「これ1台で十分」と感じるほど慣れたなら、いよいよそれだけで完結する作業環境を整えてみるのもいい。
トラックボールマウスは確かに少しクセのあるデバイスだが、その操作感に馴染んだ瞬間、デスクワークの快適さが一段階変わることを実感できるはず。
ちなみに、筆者は苦戦すると思いきや意外とあっさりと慣れることができたので、自身のデスク環境に導入することにした。トラックボールマウスのみで臨むことは流石にしないが、適宜使うことで日常作業の負荷を軽減できるのではないだろうか。

