楽天と日本HPが協業。「Rakuten AI for Desktop」をHP製PCに搭載で “常時AI利用時代” 切り開く

楽天グループと日本HPは11月11日、共同記者発表会を開催し、楽天の大規模言語モデル (LLM) を搭載したエージェント型AIツールのデスクトップ版「Rakuten AI for Desktop」をHP製PCに導入する包括提携を発表した。

同提携によって、日本国内で2026年春から夏にかけて販売される個人・法人向けHP製PC(ゲーミングPCを除く)に「Rakuten AI for Desktop」が順次プリバンドル(ユーザーがすぐインストールできる状態で出荷)される予定だ。料金体系については現在議論中であるとのこと。

今回の提携は、楽天と日本HPが共通のビジョンとして持つ、クラウドとオンデバイスを融合した “ハイブリッドAI” 構想の一環として実施され、オンライン環境およびオフライン環境の両方で「Rakuten AI for Desktop」が利用できるのは今回が初めてとなる。

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クラウドとローカルを自在に切り替える「Rakuten AI for Desktop」

Rakuten AI for Desktopは、楽天が開発した日本語に最適化された大規模言語モデルをベースに、デバイス上で動作するよう調整されたAIプラットフォーム。70億パラメーター規模のモデルをNPU搭載PC上で動作させることで、ネットワークに依存せず自然言語処理が可能になる。

要約、ライティング、翻訳といった汎用タスクに加え、楽天トラベルや楽天市場と連携したショッピング・旅行・家計管理などの取引系AIエージェント機能も備える。

また、ユーザーはタスクや環境に応じて「クラウドモード」と「デバイスモード」を切り替えながら利用できる。

クラウドモードでは楽天の膨大なデータとクラウドAIの演算力を活かし、より広範な情報から最適解を導き出す。デバイスモードは、飛行機内や洋上などのインターネットが不安定な場所でも利用できたり、機密性の高い文書の要約や提案書作成をローカル環境で安全に処理できるモードとなっている。

発表会では、この2つのモードのデモンストレーションが実施。クラウドモードでは、「横浜・パシフィコから徒歩10分以内で1泊2万円、朝食付き」といった条件からホテルを自動提案するなど、楽天トラベルとの連携によるエージェント的提案機能が披露された。

デバイスモードでは、飛行機内での社内メール要約や、要約結果をもとにした次週の会議用サマリー作成など、オフラインかつ高機密な場面での活用例が紹介された。

なお、デバイスモードでオンデバイスAIの機能を最大限活用するには、現状では40TOPS(毎秒40兆回の演算)以上のNPUを搭載した次世代AI PCが必要だ。

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楽天と日本HPが描くハイブリッドAI構想。セキュアで低コストなAIで生産性を向上

楽天と日本HPは、AIの将来像として「ハイブリッドAI」モデルを掲げる。これはクラウドAIの拡張性と、オンデバイスAIのプライバシー保護・即時応答性を融合させた形態だ。

オンデバイスAIではクラウドサーバーを介さず処理が完結するため、トークン課金が発生せずコストを抑えられる点も特徴。さらに、機密情報を外部に送信しないため、セキュリティリスクを大幅に低減できるというメリットがある。

モード主な用途メリット
クラウドAI大量データの解析、検索、生成常に最新の知識を反映し、スケーラビリティが高い
オンデバイスAIローカル文書の要約、オフライン作業高機密性、低コスト、ネット不要、即応性の高さ

今回の提携は、両社の強みを掛け合わせることで実現した。楽天は日本語LLM開発や楽天経済圏のデータ活用に強みを持ち、ユーザーの創造性をAIで拡張することを掲げる。

一方の日本HPはIntel、AMD、Qualcomm、Microsoftといった主要ベンダーとの長年の協業関係を通じて、Windows上でのAI処理最適化やNPU活用技術を蓄積してきた。

楽天グループのティン・ツァイ氏は「HPというグローバルリーダーとの協業を通じて、人とAIが協調する直感的な体験を広げたい」と述べ、日本HPの岡戸伸樹社長は「クラウドとエッジの力を組み合わせ、安全かつ費用対効果の高いAI体験を提供する」と語る。

Rakuten AI for Desktopは、まずPC向けに提供されるが、将来的にはモバイルやIoTデバイスにも展開する計画だ。HPは自社のセキュリティ機能や音声・映像機器ブランド「Poly」との連携も視野に、より自然でシームレスなAI利用体験を追求していく。

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