
Appleは5月13日、年内に提供予定の新たなアクセシビリティ機能群を発表した。今回のアップデートには、App Storeでの「アクセシビリティ情報表示」や、Mac向けの新しい「拡大鏡」アプリをはじめ、点字入力サポート、Apple Vision Proとの連携機能など、多岐にわたる新機能が含まれる。
加えて、「Accessibility Reader(アクセシビリティ・リーダー)」「Live Listen(ライブリッスン)」「Background Sounds(バックグラウンド・サウンド)」「Personal Voice(パーソナルボイス)」「Vehicle Motion Cues(乗り物酔い軽減機能)」などの既存機能も強化される。
App Storeに「アクセシビリティ情報表示」セクションを追加

App Storeには、新たに「アクセシビリティ情報表示(Accessibility Nutrition Labels)」セクションが導入される。
アプリやゲームが対応するアクセシビリティ機能(例:VoiceOver、テキストサイズ変更、スイッチコントロールなど)が明示され、ユーザーはダウンロード前に自分にとって適切なアプリかどうかを判断しやすくなる。
また、開発者にとっても自身のアプリが対応する機能を効果的に伝える手段となるほか、アクセシビリティへの配慮が評価される契機にもなる。
Mac向けの新しい「拡大鏡」アプリを導入

対象となる機能には、VoiceOver、音声コントロール、大きな文字、十分なコントラスト、視差効果を減らす、キャプションなどが含まれる。アクセシビリティ栄養表示は全世界のApp Storeで利用可能となり、開発者は製品ページにアクセシビリティ情報を表示するための基準に関する詳細なガイダンスを入手できる。
iPhoneやiPadではすでに多くの視覚障がいユーザーに活用されている「拡大鏡」が、今年ついにMacにも登場する。新しいMac用拡大鏡アプリは、iPhoneの連係カメラやUSBカメラと連携し、周囲の物体やホワイトボード、書類などを画面上に拡大表示できる。
マルチウィンドウに対応し、たとえばウェブカメラでプレゼンを視聴しながら、別ウィンドウで書籍の拡大表示を行うといったマルチタスクにも対応。明るさやコントラスト、カラーフィルタ、遠近感などの調整も可能で、テキストや画像の視認性を向上させる。
さらに、表示ビューはキャプチャして保存・整理でき、必要なときに再利用可能。Mac用拡大鏡は、後述の「Accessibility Reader」とも統合されており、現実世界のテキストを読み取りやすい形式に変換する機能も搭載している。
点字入力を支援する「点字アクセス」

「点字アクセス」 は、iPhone、iPad、Mac、Apple Vision Proを点字ノートテーカーとして使用できる新機能。点字入力や外部の点字デバイスを用いて、メモや計算、アプリ起動などが行える。
数学や科学分野で使われる「ネメス点字」に対応し、より複雑な表現にも対応。Braille Ready Format(BRF)ファイルの読み込みにも対応し、点字ノートテーカーで作成された書籍や文書へのアクセスも可能だ。
さらに、「ライブキャプション」との統合により、会話内容をリアルタイムで点字ディスプレイに表示することもできる。
テキストを読みやすくする「Accessibility Reader」

「Accessibility Reader」は、失読症やロービジョンのユーザーに向けた新しい読書モード。iPhone、iPad、Mac、Apple Vision Proで利用可能で、フォントや色、行間などを自由にカスタマイズできる。さらに「Spoken Content」による読み上げ機能にも対応する。
この機能は任意のアプリから起動できるほか、iOSやmacOSの「拡大鏡」アプリにも組み込まれており、現実世界の書類やメニューなどを読みやすい形式で表示・操作できる。
Live CaptionsがApple Watchに対応

聴覚障がいを持つユーザー向けに、「Live Listen」がApple Watchにも対応。iPhoneが集音した音声をAirPodsや補聴器、Beatsヘッドフォンにストリーミングする「Live Listen」機能を使いながら、Apple Watchでその内容の字幕(Live Captions)をリアルタイムに表示できるようになる。
Apple Watchは、Live Listenの開始・停止や再生位置のコントロールにも対応し、離れた場所からセッションを操作することが可能。たとえば会議や授業中でも席を立つことなく、聴覚支援機能をフル活用できる。
AirPods Pro(第2世代)などと組み合わせることで、医療グレードの聴覚サポートにも対応する。
Apple Vision Proによる強化されたビュー

視覚障がいを持つユーザー向けに、visionOSはApple Vision Proの高度なカメラシステムを使用して、視覚アクセシビリティ機能を拡張する。
Zoomの強力なアップデートにより、ユーザーはメインカメラを使用して周囲を含むすべてのものを拡大できる。VoiceOverユーザー向けには、visionOSのLive Recognitionがオンデバイスの機械学習を使用して、周囲の状況を説明したり、オブジェクトを見つけたり、ドキュメントを読んだりする。
アクセシビリティ開発者向けには、新しいAPIにより、承認されたアプリがメインカメラにアクセスして、Be My Eyesのようなアプリでライブの対面支援を提供し、ユーザーがハンズフリーで周囲の状況をより深く理解できるようになる。
その他のアップデート

背景音(Background Sounds)がよりパーソナライズ可能に
- 新しいEQ設定や、一定時間後に自動で停止するオプションを追加
- 「ショートカット」アプリとの連携で、自動化が可能に
- 集中力の向上やリラックス効果に加え、一部のユーザーには耳鳴りの緩和にも有効
より簡単・高速・自然になった「パーソナルボイス(Personal Voice)」
- 音声を失うリスクのあるユーザー向けに開発
- わずか10のフレーズを録音するだけで、1分以内に自然な合成音声を作成
- 新たにスペイン語(メキシコ)もサポート
乗り物酔いを軽減する「Vehicle Motion Cues」をMacに拡張
- オンスクリーンのドットで視覚的に体の動きとのギャップを緩和
- iPhone・iPad・Macでカスタマイズ可能に
視線・頭の動きによるデバイス操作を改善
- Eye Tracking:スイッチまたは“滞留”で選択可能に
- キーボード入力:QuickPath入力や滞留タイマーなどの改善
- Head Tracking:頭の動きでiPhone・iPadを操作可能に
脳波インターフェースへの対応
- iOS・iPadOS・visionOSがBrain Computer Interface(BCI)向けのSwitch Controlプロトコルを新たにサポート
- 手や身体を動かすことが困難なユーザーも、BCIデバイスを通じてApple製品を操作可能に
Assistive AccessがApple TVに対応
- 知的・発達障がいのあるユーザー向けにシンプルなメディアプレーヤー付きカスタムApple TVアプリを導入
- 開発者はAssistive Access APIを利用し、アクセシビリティ対応アプリを構築可能に
「Music Haptics」がさらに進化
- 曲全体またはボーカルのみを振動で体感
- タップやテクスチャの種類、振動強度をユーザーが調整可能
Sound Recognitionに「Name Recognition」が追加
- 聴覚に障がいのあるユーザーが、誰かに名前を呼ばれた際に気づけるよう通知
Voice Controlの機能拡張
- Xcodeに「プログラミングモード」追加、音声でのコーディングを支援
- 語彙をデバイス間で同期可能に
- 対応言語を拡大(韓国語、アラビア語、トルコ語、イタリア語、ラテンアメリカのスペイン語、台湾の北京語、シンガポール英語、ロシア語など)
Live Captionsの対応言語を拡大
新たに以下の言語・地域に対応:
- 英語(インド、オーストラリア、イギリス、シンガポール)
- 北京語(中国本土)、広東語(中国本土・香港)
- スペイン語(ラテンアメリカ、スペイン)
- フランス語(フランス、カナダ)
- 日本語、ドイツ語、韓国語
CarPlayにもアクセシビリティ機能が追加
- 文字サイズの拡大に対応
- Sound Recognitionが「赤ちゃんの泣き声」の通知にも対応
「Share Accessibility Settings」機能で他のデバイスに設定を一時共有
- 自分のアクセシビリティ設定を他人のiPhone・iPadと一時的に共有可能
- 例:友人のデバイスを使う場合や、カフェのキオスク端末での利用時に便利
Apple Storeでの啓発イベントや学習機会の提供
- Global Accessibility Awareness Day(グローバル アクセシビリティ啓発デー)**を記念して、一部店舗に特設展示テーブルを設置
- 「Today at Apple」を通じて、年間を通じたアクセシビリティセッションを世界中のApple Storeで提供
Apple Musicのアクセシビリティ対応が拡大
- 聴覚障がいのあるアーティストKiddo Kの紹介や、新たなハプティクス対応プレイリストを公開
- ASL(アメリカ手話)によるミュージックビデオ解説付きプレイリストも展開
新ショートカット「Hold That Thought」やVision Pro向けアシスタント
- 聴覚障がいのあるアーティストKiddo Kの紹介や、新たなハプティクス対応プレイリストを公開
- ASL(アメリカ手話)によるミュージックビデオ解説付きプレイリストも展開
- Hold That Thought:中断された思考をメモで思い出せるように促すショートカット
- Accessibility Assistant:ユーザーの好みに基づいて、最適なアクセシビリティ機能を提案(Apple Vision Proにも対応)
- Hold That Thought:中断された思考をメモで思い出せるように促すショートカット
- Accessibility Assistant:ユーザーの好みに基づいて、最適なアクセシビリティ機能を提案(Apple Vision Proにも対応)
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(画像:Apple)