新たな検索エンジン戦争が勃発か。フリー百科事典の「Wikipedia」を運営するウィキメディア財団は、Googleに対抗した広告なしの検索エンジンの開発を開始するようだ。
何のしがらみのない検索エンジンの開発へ
ウィキメディア財団が開発する検索エンジンは現時点で「Knowledge Engine by Wikipedia」と名前が付けられており、いかにもウィキメディアらしい命名だ。
「Knowledge Engine by Wikipedia」は、広告や検索結果などでの商用利用の要素は一切なく、経済界とは完全に隔離したものとなり、ユーザーに対して情報の出処などを分かりやすく明示する「透明性」の高い検索エンジンになるとのこと。
ウィキメディアとしては、インターネット上に溢れている情報の中から、本当に信じられる公開情報をユーザーに提供するための検索エンジンを作ることを目的としているようだ。
この検索エンジンの開発予算は約240万ドル(約2億7000万円)で、これはハードウェアやスタッフの人件費、移動費や医療関連の費用に充てられる事が明らかにされている。
大手検索エンジンに食い込めるか
現在、検索エンジン最大手はGoogleで、そのシェア率は67%。次いで多いのはMicrosoftのBingで20%、Yahoo!が10%程度となっており、実質Googleの一強になっている。
ウィキメディア財団はこれらの大手検索エンジンによって、ユーザーがインターネット上の情報を入手する経路を独自の特許技術を使って固定化してしまっていると主張しており、同検索エンジンの必要性を説明している。
Wikipediaは以前にも「Wikia Search」という検索エンジンを作ったことがあるが、Wikipediaの設立者のジミー・ウェールズ氏の求めるものにならなかったため、2009年3月31日で開発打ち切りを発表している。
今回ウィキメディア財団が開発する「Knowledge Engine by Wikipedia」は、ユーザーに対して透明性のある検索結果をもたらす可能性はある。ただ、以前も開発に失敗している経緯や、Googleなどの大手検索エンジンが同様の仕組みを採用した場合に、その存在意義を失ってしまうことが懸念として挙げられている。
現在、スマホやPCの多くはGoogleやBingをデフォルトの検索エンジンとして利用しており、今後もその状況が大きくは変わらないだろうが、「Knowledge Engine by Wikipedia」がユーザーにとって透明性の高い検索エンジンとして認知されれば、一定のユーザーが利用する可能性はある。
僕個人は特にGoogleの検索エンジンに不満があるわけではないが、もし何のしがらみのない検索エンジンが開発されたなら、それはそれで使いやすそうだと思っている。
また、この検索エンジンが成功したら、他の大手検索エンジンにも同様の変化がもたらされる可能性があるという意味では非常に意味のある開発だとも思っている。開発にはまだまだ時間がかかるとは思うが、ユーザーにとって良い結果になることを祈っている。
[ via ABC News / Wikimedia Foundation ]