
VAIOは8月10日、PCに内蔵されたWebカメラを使って、ユーザーの血管情報と心拍情報(※1)を非接触で測定できるアプリケーション「VAIO ウェルネスケア」を発表した。顔をカメラに映すだけで最短3秒(※2)で測定でき、結果はPC本体に保存。過去の測定履歴や1週間の変化も確認できる。
8月10日から、Core Ultra シリーズ3を搭載する個人向けノートPC「VAIO SX14-R(VJS4R2シリーズ)」(※3)向けに先行プレビュー版の提供を開始した。正式版は2026年秋以降に発売する新製品から順次搭載する予定で、個人向けだけでなく法人向けPCも対象となる。
(※1 血管情報・心拍情報は、カメラから取得したデータに基づき、統計学的処理により構築したモデルから推定した値であり、医学的に確立されたものではありません。)
(※2 使用環境によって測定結果が出るまでに最大15秒かかることがあります。また周囲の環境などにより正しく測定できない場合があります。)
(※3 VAIO SX14-R(2026年5月発売モデル))
毎日使うPCを健康への「気づき」の入口に
「VAIO ウェルネスケア」は、健康状態を毎日測るための専用機器を新たに身につけるのではなく、仕事や学習、情報収集などで日常的に使うPCを測定の入口にするアプリだ。
VAIOが着目したのは、健康管理を続ける難しさだった。ウェアラブル端末や健康管理アプリはさまざまな製品が登場しているものの、端末の充電や装着、手動での記録などが必要になる。PCなら毎日ログインして使うため、そのタイミングに合わせて測定することで、ユーザーが意識して習慣を作らなくても記録を続けやすいと考えた。
背景には、個人の健康寿命への関心の高まりに加え、企業の健康経営への需要もある。テレワークやリモートワークの普及によって一人で働く時間が増え、本人の変化に周囲が気づきにくい状況も生まれている。そこで、日常的に使うPCから状態の変化に気づくきっかけを提供する。
「VAIO ウェルネスケア」は、ノジマから出されたアイデアをもとに開発が始まったという。VAIOは2025年1月からノジマグループの一員となっており、今回のアプリは同社にとって新しい体験を打ち出す取り組みの一つでもある。
VAIOはソニーから独立して12年を迎え、この間に法人向けPC事業を大きく伸ばしてきた。品質や信頼性、細かな使い勝手を重視した結果、法人市場での評価を高め、法人向けPCの構成比は2015年度の35%から2025年度には85%まで上昇。販売台数も約7倍に増えたという。
一方で、法人向けPCとしての信頼性を追求する中で、かつてVAIOにあった「驚きのある体験」や大胆な挑戦が控えめになってきたという課題も認識していた。
VAIO開発本部プロダクトセンターの黒崎大輔センター長は、ノジマグループが掲げる「スピード・ユニーク・クオリティ」や、失敗を恐れず挑戦する文化を取り入れながら、これまで築いてきた信頼を維持しつつ、新しい体験にも挑戦していく考えを示している。「VAIO ウェルネスケア」は、その第一歩という位置づけだ。
VAIOは、2026年4月の記者発表会で、親会社であるノジマの野島廣司社長が「8月10日はVAIOの日。この日に世の中にない初めてのPCを出す」と発言していたことも明らかにしている。VAIOは今回の技術について、PCで血管情報と心拍情報を非接触でAIセンシングする「世界初」の技術(※4)と説明している。
今回測定するのは、血管の負荷を数値化した「血管情報」と、心臓からの血流の速さを数値化した「心拍情報」だ。測定結果を病気の診断などに使うためのものではなく、日々の変化を振り返るための情報として扱う。
(※4 血管情報・心拍情報の両方を、内蔵カメラで測定できる機能を標準搭載するPCとして。2026年7月10日時点ステラアソシエ株式会社調べ)
Webカメラの画質補正を測定時だけ無効化
測定の手順はシンプルだ。アプリを起動し、画面のガイドに合わせて顔をカメラに向けると測定が始まる。所要時間は最短3秒で、使用環境によっては結果が出るまで最大15秒ほどかかる場合がある。
顔をカメラで撮影すると、顔の表面に現れるごく小さな色の変化を捉える。顔の特徴点を認識しながら画像を連続的に解析し、その変化から血管情報と心拍情報を推定する仕組みだ。測定エンジンの推定アルゴリズムの構築にもAIを利用しているという。
処理を高速化するため、PCのNPUとCPUを使い分ける。顔認識や顔追従といったAI処理をNPUが担当し、カメラ制御、画像処理、データ処理、アプリのUIなどをCPUが担当する。両方を並列に処理することで、測定にかかる時間を短縮している。
もう一つのポイントがカメラ制御だ。PCのWebカメラには、ビデオ会議などで顔をきれいに見せるための美肌処理など、さまざまな画質補正機能が用意されている。しかし、血管情報や心拍情報を測るには、顔表面に現れる微細な色の変化をそのまま捉える必要がある。画質補正がかえって測定の妨げになるため、「VAIO ウェルネスケア」では測定を始めると画質補正を自動的に無効化する。
さらに、測定時には複数のカメラパラメータを測定に適した状態へ自動調整する。Webカメラのセンサーが小さいことやレンズが暗いことも測定時の課題になったため、カメラデバイスとアプリケーションの両方を調整して測定の成功率を高めたという。
測定データはPC本体に保存される。データは暗号化された状態で保存され、PCのストレージ容量に空きがある限り記録を残せる。アプリでは測定履歴に加えて、過去1週間の変化をグラフで確認できる。
現時点では測定データのインポートやエクスポートには対応していない。PCを買い替えた際にデータを引き継ぎたいというニーズも想定しており、今後の対応を検討している。
毎日の測定を続けやすくするため、ユーザーが指定した時刻やPCへのログイン時にアプリを自動起動する機能も用意する。毎回アプリを探して起動する手間を減らし、PCを使う日常の中に測定を組み込む狙いだ。
「VAIO ウェルネスケア」は、2026年8月10日から「VAIO SX14-R」向けの先行プレビュー版(※5)を提供する。正式版は秋以降、個人・法人向けの新製品に順次搭載する予定で、2026年秋以降の新モデルでは原則として全モデルへの対応を目指す。
(※5 先行プレビュー版は、正式版に先行して提供する体験版であり、機能の追加や改善を予定しています。)
一方、過去のVAIO PCへの対応は予定していない。Webカメラのハードウェアだけでなく、ファームウェアやソフトウェアも含めて測定向けに調整しているためで、現時点ではCore Ultra シリーズ3搭載の「VAIO SX14-R」が先行プレビューの対象となる。
今後は機能をさらに広げる構想もある。測定データをクラウドで管理し、会社単位や部署単位で従業員の傾向を確認できる法人向けの有償サービスを検討しているほか、ユーザーの健康状態とPC本体の稼働状態を組み合わせる「ダブルヘルス」の構想も掲げる。PC本体の状態を把握しながら、ユーザーがよりよい環境で仕事や創作に取り組めるようにする考えだ。
VAIOはこれまで、利用シーンや周囲の状況を理解する「VAIO User Sensing」に取り組んできた。そこに今回、ユーザー自身の状態をセンシングする仕組みを加えることで、将来的にはPCがユーザーの状況をより深く理解し、AIエージェントとして個人に合わせた支援を行うことも視野に入れている。
なお、「VAIO ウェルネスケア」で表示される血管情報と心拍情報は、カメラから取得したデータを統計学的に処理して構築したモデルから推定した値で、医学的に確立されたものではない。生活環境や業務環境の改善を目的としたアプリであり、疾病の診断・治療・予防などの医療目的には使用できない。
PCを使うだけで健康に関する数値を測れるという手軽さは目を引くが、VAIOが狙っているのは測定そのものよりも、毎日の変化を記録して「いつもと違うかもしれない」と気づくきっかけを作ることにある。PCを仕事のための道具として使う時間が長い人ほど、この仕組みが日常に入り込む余地は大きそうだ。
※掲載している画面は開発中のものを含みます。実際の画面はアップデート等により変更される場合があります。
※本アプリケーションは生活環境改善(業務環境改善)を目的としたものであり、医療目的(疾病の診断・治療・予防等)の使用はできません。
また、VAIOは8月10日を「VAIOの日」として2026年から記念日に制定した。「バ(8)・イ(1)・オ(0)」の語呂合わせによるもので、2026年2月に一般社団法人日本記念日協会の認定を受けている。
VAIOの日に合わせて、「VAIOを知る」をテーマにした記念企画もスタートする。8月10日から16日まで、毎日20時10分から810秒間、特設サイト上で花火を打ち上げるオンライン花火大会を実施するほか、抽選で「世界に1台だけのPC」が当たるクイズキャンペーンも開催する。
さらに、VAIOストアではメーカー保証付きのリファービッシュPCを数量限定60台で販売する「Reborn VAIO 特別販売」を実施。VAIOの語呂合わせにちなんで、価格は8万1000円に設定する。
全国7店舗の「VAIO Shop in Shop」では、製品を体験した先着100人に限定デザインの手ぬぐいをプレゼントする。店頭では「VAIO ウェルネスケア」も体験できるという。
(画像提供:VAIO)
