WH-1000XM5 レビュー | 新世代の静けさを実現したソニーのノイズキャンセリングヘッドホン最新モデル。その実力・性能を検証

今年5月、筆者が愛用するソニーのワイヤレスヘッドホン 「WH-1000X」 シリーズに待望の新型モデルが登場した。

シリーズ第5世代モデルとなる 「WH-1000XM5」 は、先代モデルからデザインを大幅に刷新。そして、先代モデルなどで搭載していた高音質ノイズキャンセリングプロセッサー 「QN1」 に、完全ワイヤレスイヤホン 「WF-1000XM4」 に搭載していた統合プロセッサー 「V1」 を追加搭載するなどで、より高い音質とノイズキャンセリング機能を身につけたという。

普段から使用しているデバイスが進化したこともあって、ウキウキ気分で発売日に 「WH-1000XM5」 を購入。約1週間弱じっくりと使ってみたため、本製品の特徴や使用感などレビューしていきたいと思う。

なお、記事内では先代モデルの 「WH-1000XM4」 との比較や、同価格帯の他社ヘッドホンとも性能を比べてみたため、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホンの購入を検討している方の参考になればと思う。

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デザイン:先代モデルから刷新、高まる装着感

まずは、「WH-1000XM5」 の外観からチェックしていこう。

「WH-1000XM5」 は、前モデル 「WH-1000XM4」 からデザインが大きく刷新された。ハウジングおよびヘッドバンド部分など大部分がシンプルな構造に変わっており、ガジェット感のある見た目からスマートな見た目に変貌している。

左:WH-1000XM4/右:WH-1000XM5

一見するとサイズが大きくなったように感じられるかもしれないが、隣に並べてみるとほとんど変わらないことが分かる。重量は約250gで、先代モデルの約254gからはほんのわずかに軽くなったものの、ほぼ誤差の範囲内と言ったところ。

先代モデルからサイズ・重量がほとんど変わらないことから、持ち運びも十分に可能。ただし、折りたたみに対応しなくなったため、持ち運び用のキャリングケースが従来よりも大きくなるなどの改悪部分もある。

WH-1000XM5のカラーは、ブラックとプラチナシルバーの2色。今回筆者が購入したのはプラチナシルバーで、先代モデルからカラーの名称自体は変わらないものの、色味はより白っぽくなった。

ぷっくり丸いイヤーカップが可愛らしい

ここからは、「WH-1000XM5」 のデザインを各パーツごとにもっと詳しく見ていこう。

「WH-1000XM5」 のデザインで最も特徴的なのは、ぷっくりと丸みを帯びたイヤーカップだろう。先代に比べてぽってりな見た目になったことで、より親しみがもてるデザインへと変化している。部品をシンプル化したことで繋ぎ目も減っており、ガジェット感も減っている。個人的には新デザインのほうが好みだ。

イヤーカップとヘッドバンドは、これまで ”肩” で繋がったデザインを採用していたが、新デザインではヘッドバンドとイヤーカップがそれぞれ独立し1本の棒でくっつく形状に変更されている。

従来のデザインでは、両手で持ったときにイヤーカップがパカパカと動いて落ち着かないのが個人的に気になっていたが、新しいデザインではこれがなくなっている。

イヤーカップとヘッドバンドはそれぞれ独立し1本の棒でくっつく形状に

さらに、イヤーカップとヘッドバンドの接合部も角度が変わり部品の角が指に当たるのが地味にストレスだったものの、WH-1000XM5ではそれが解消されている。

上記は個人的には嬉しい変化ではあるが、一方で大部分がプラスチックで作られているため、見た目の割に意外とチープな作りであることが地味に気になるところ。同価格帯の製品ではAirPods Maxが金属を使用した見た目で高級感があることから、WH-1000XM5の質感にはやや物足りなさも感じてしまった。特にイヤーカップとヘッドバンドの接合部が最も安っぽさが感じられる。

ヘッドバンドは、先代モデルでは頭頂部だけがレザーに覆われていて、イヤーパッドの位置を調節するスライダー部分はプラスチック素材が使用されていたが、WH-1000XM5は頭頂部からスライダーまでがすべてレザーに覆われていて、触り心地は良い (伸ばしたスライダー部分はプラスチック素材) 。

スライダーは無段階式に変更

スライダーを最大まで伸ばしきった様子

スライダーは従来のようにカチカチと手応えを感じるものではなく、スーッと伸び縮する無段階式。これまであまり気にしてはいなかったが、調節時の雑音が減ったことは良いことかもしれない。

もっちもちのソフトフィットレザー

イヤーパッドには新たにソフトフィットレザーが採用されていて、もっちりと柔らかい。従来までの低反撥ウレタン素材と比べると、肌への吸い付き度がアップした印象だ。

実際にWH-1000XM5を装着してみた。2〜3時間装着し続けていても痛くならない上に、頭を動かしてもヘッドホンがずれてしまうことはほとんどなかったことから、頭頂部や横からの圧力はキツすぎず緩すぎずちょうど良い感じといったところだろうか。

イヤーカップの中が深くなったことで、多少余裕をもって耳をすっぽり覆えるようになった点も長時間の使用にはグッドポイント。先代モデルでも耳が痛くなることはあまりなかったが、装着時にイヤーパッドと耳が擦れる感覚がなくなったことで、より快適に装着できるようになった。

イヤーカップ内部は従来よりも広くなった

また、一部のユーザーが気になるポイントであろう、ピアスとの相性について。

筆者は普段からピアスを着けているのだが、シンプルかつ小さめのキャッチ式のものを使用しているため、耳が圧迫されて痛みを感じることはなかった。

ただ、WH-1000XM5のイヤーカップは大きなピアスを覆えるほどの深さ・大きさはないことから、大きな装飾がついたものや垂れ下がるものを装着している方はきっと耳を圧迫してしまうだろう。

イヤーパッド内の蒸れについては、涼しい室内で検証したからかあまり気にならなかったように思うが、これからの夏場に外で長時間付けているともしかしたら気になるかもしれない。

ただ、オーバーヘッド型のヘッドホンは元来蒸れやすい性質のため、どうしても気になるならイヤホンを使うしかなさそうだ。

本体が折りたたみできなくなったことでケースが従来よりも大型化

WH-1000XM5のデザイン変化に伴い発生した大きなデメリット。それは折りたたみができなくなったこと。

しかも、折りたたみができなくなってしまったことで、持ち運び用のキャリングケースが大型化されてしまっている。

左:WH-1000XM5/右:WH-1000XM4

先代のキャリングケースと並べてみると、その差は一目瞭然。コンパクトに持ち歩ける点を評価していた人にとっては、残念な変更箇所と言わざるを得ないだろう。

筆者もなるべく小さなカバンを持ちあるくようにしているため、この変化は地味にダメージを受けるポイントとなる。大きなカバンに変えるか、あるいは外出時はWH-1000XM4を使用するか…….。まだ決めかねているが、当面はとりあえず大きなカバンを持ち運ぶことにする。

左側のイヤーカップにはボタンが2つとヘッドホンジャックが搭載されている。ボタンは左側にあるのが電源/Bluetoothボタンで、右側のボタンがNC/AMBボタンだ。

また、左側のイヤーカップの平らな部分にはタッチセンサーコントロールが搭載されていて、1本指でタップ・ダブルタップしたり、前後左右に指を滑らせることで様々なコントロールができる。

ボタンやタッチセンサーの操作方法は以下。

  • NC/AMBボタン
    → 1回押し:ノイズキャンセリング・外部音取り込みの切替え
    → 2回押し:Quick Access
    → 3回押し:Quick Access
  • タッチセンサーコントロールパネル
    → ダブルタップ:再生/一時停止や受話/終話
    → 前に滑らせて離す:次の曲の頭出し
    → 後ろに滑らせて離す:前(または再生中)の曲の頭出し
    → 上に滑らせて離す:音量を上げる
    → 下に滑らせて離す:音量を下げる
    → タップ&押し続ける:
    ①音声アシスト機能を起動
    ②音声アシスト機能をキャンセル
    ③ 着信拒否

バッテリー駆動時間はANCオフ時で最大40時間、ANCオン時で最大30時間となっている。充電用の外部コネクタはUSB Type-Cでこれまでどおりで、3分の充電で最大3時間の駆動ができる急速充電も利用できる。

3.5mmオーディオケーブルとUSB-A to USB-Cケーブルが付属

付属品としては、3.5mmオーディオケーブルと充電用のUSB-A to USB-Cケーブルがそれぞれ1本ずつ同梱されてくる。充電器は付属しないため、スマートフォンの充電などに使っている充電器を流用するようにしよう。

ちなみに、付属するケーブル類はすべて黒色になった。これまではプラチナシルバーカラーには専用のベージュのものがちゃんと用意されていたのだが、今回は専用のものが用意されず。個人的に、WH-1000XM5はオンライン取材やZOOM会議などで使う機会が多かったことから、この点に関してはちょっぴり残念に感じている。

イヤーカップが上を向いてしまう設計。ちょっぴりカッコ悪い

やや着け心地は悪いが逆方向に回せば違和感少なく首にかけられる?

デザインに関しては、ガジェット感がやや薄まったことで割と多くのユーザーにも合うようになったと筆者は感じている。また、細かな部分に関しては改善・変更されたことで使いやすくなっている箇所もあったことからデザイン自体は評価したいところ。

ただし、前モデルに比べて安っぽく感じられる部分もあることから、デザインに関しては人によって好き・嫌いが分かれることになるかもしれない。

音質:低〜高音の明瞭感が増してひとつひとつの音が鮮明に

ここからは、ヘッドホンにおいて最も重要なポイントのひとつである音質についてレビューしていく。

ソニーによると、「WH-1000XM5」 は前モデル 「WH-1000XM4」 から低〜高音域の再現性をさらに高め、より繊細かつ明瞭な音を実現したというが、果たしてその実力はどうか。

実際に 「WH-1000XM5」 の音を聴いてみたところ、それは確かだと思う。音の傾向はややフラット気味。全体域でバランスがよく取れていて、低・中・高音域いずれも再現度は高かった。しかし、先代モデルWH-1000XM4とはまた違った雰囲気になっていたようにも感じている。

聴きはじめてすぐに気がついたのが、音の輪郭が以前にも増してハッキリしたことで、音をより深く楽しむことができるようになったということ。

その傾向をより顕著に感じるのが、やはり低音域と高音域。低音域については先代モデルに比べてややキュッとタイトに締まった印象を受けるが、より繊細な音が出せるようになったためか、メリハリのある低音を出せている。

高音域については、女性ボーカルの高声の伸びがキレイに聴こえてくるのはもちろんのこと、低価格帯のヘッドホンでは不快に感じることが多い歯擦音のような鋭い高音もキレイに聴こえるため、気持ちよく音楽を堪能できる。

いままで慣れ親しんできた楽曲も 「え、こんな音鳴ってた?」 と思えるほど細かい音が聞こえるようになった。特にサビなどでたくさんの音が混ざり合うときには、ひとつひとつの音がより鮮明に聞こえるようになっている。この点は、WH-1000XM5が特に優れている部分だと感じる。

先代モデルも音質は良かったと感じているが、WH-1000XM5の音を聴いたあとにWH-1000XM4の音を聴くと、ゴチャゴチャと物が散らかった机のようなまとまりのなさを感じてしまう。WH-1000XM5の場合はボーカルはここ、ギターはここ、ドラムはここ、といったように明確に整理整頓されているようなイメージだ。

また、ハウジングの形状が変更されたことも影響しているのか、WH-1000XM5はより音に拡がりが感じられるようになり、音に包まれているような感覚を味わえた。ただ、この音の広がりについては大幅に変化したわけではないので、期待のし過ぎは禁物だ。

iPad miniで音楽再生。AndroidデバイスとはFast Pairで簡単ペアリングが可能

新旧モデルをじっくりと比較してみたところ、WH-1000XM5の音質はWH-1000XM4から進化していることが分かった。音の輪郭がハッキリとしたことで、低〜高音の明瞭感が増し、音楽を心地よく聴くことができる。

ただし一方で、以前のようなエネルギッシュな音ではなくやや優等生チックな音に変わったこともあり、なかにはWH-1000XM4の方が好きだったと感じる人もいるかもしれない。このあたりは好みの問題もあるとは思うので、気になった人は家電量販店などで音を聴き比べてみていただきたいところ。

(画像:ソニー)

ちなみに、WH-1000XM5は前モデルと同様にBluetoothコーデック 「LDAC」 に対応している。LDACは、SBCコーデックに比べて3倍近い情報量を伝送でき、対応デバイスと接続すればハイレゾ音源をワイヤレスで楽しめる。

利用できるのは対応するAndroidデバイスのみで、iPhoneやiPadなどのApple製品は引き続きAACコーデックでの接続となる点には注意いただきたい。

また、「WH-1000XM5」 は圧縮音源をAI技術でアップスケールする 「DSEE Extreme」 、高い没入感を味わえる立体音響機能 「360 Reality Audio」 に対応する。利用できるサービスは限られるものの、ひとつ上の音楽体験ができるためぜひ利用してみていただきたい。

アクティブノイズキャンセリング機能 (ANC):先代モデルより向上、ただし消すのが苦手な音も存在

WH-1000XM5」 には、とても優秀なアクティブノイズキャンセリング (ANC) 機能が搭載されている。先代でも評価は高かったものの、「WH-1000XM5」 のそれは先代のさらに上をいく。

アクティブノイズキャンセリング (ANC)とは、マイクで周囲の音を拾い、その音を打ち消す逆位相を発生させることでノイズを低減させる機能のこと。

「WH-1000XM5」 には先代の倍となる合計8基のマイクを搭載し、高音質ノイズキャンセリングプロセッサー 「QN1」 に加えて、さらに完全ワイヤレスイヤホン 「WF-1000XM4」 に搭載していた統合プロセッサー 「V1」 を搭載したことで、ノイズキャンセルの精度を向上させている。

「WH-1000XM5」 は先代に比べて中高音域のノイズ除去率を向上させており、日常生活で起こりえるノイズをより減らすことができるようになったという。

その効果を発揮するのは、喫茶店やレストランなど周囲の雑踏が多い場所において。先日、筆者はとある取材先の帰りに喫茶店に寄って作業したとき、試しに 「WH-1000XM5」 を装着してみたところ、完全に消し去ることはできなくとも人々の会話や食器がぶつかる音を気にならないレベルまで低減することができていた。

また、電車やバスの車内で利用してみたところ走行音や人の話し声をある程度除去することができていた。これに音楽を再生すればほぼ周囲の音は聞こえなくなる。

先代モデルで周囲の話し声が多少聴こえていたことを考えれば、今回の新型モデルのノイズキャンセリング性能はやはり高くなったと考えていいのではないだろうか。

ただし、一方で気になったのは、自宅での作業のときエアコンの送風音をうまく除去できていなかったという点。

先代モデルはエアコンの送風音はほぼ100%に近いレベルで除去できていたのに、「WH-1000XM5」 ではエアコンの 「ゴーッ」 という音がわずかに聴こえてくる。

もちろん音楽をひとたび再生しはじめればエアコンの音なんて気にならなくなるのだが、「WH-1000XM5」 のノイズキャンセリング機能は単に向上したのではなく、得意なジャンルと不得意なジャンルが変わったと捉えても良いのかもしれない。

いずれにしても完璧に音を除去できるというわけではないため、ノイズキャンセリング機能で無音環境を手に入れる用途として購入する場合にはすこしだけ注意となる。

マイク性能:通話用マイクが増えてクリアな音声に

WH-1000XM5」 の進化のなかで個人的に嬉しかったのは、内蔵マイクの性能の向上。

WH-1000XM5に内蔵されているマイクの数は合計で8つだが、そのうち4つはビームフォーミング用マイク。つまり通話用のマイクとなるが、このマイクの数が増えたことでユーザーの声をよりクリアに拾えるようになっている。

試しにWH-1000XM5を装着した状態で友人に通話してみたところ、友人は筆者がヘッドホンを使用して通話していたことに気づけないくらいクリアな音声だったとのこと。

今度は友人にWH-1000XM5を装着してもらい通話してみたところ、相手の声がクリアに届いていたことから、通話用のヘッドセットとして十分実用的であることが確認できた。

また、個人的に驚きだったのがキーボードのタイプ音がほとんど相手に届いていなかったこと。もちろん多少音は拾われてしまうものの、相手にカチャカチャとキーボード特有の甲高いタイプ音を聴かせなくて済むため、オンライン会議でも役立つだろう。

筆者はオンライン取材などでヘッドホンを使用することが多いことから、WH-1000XM5のマイク性能・ノイズキャンセリング性能の向上は地味ながら嬉しいものだった。

外音取り込み機能:マイクを通して外界の音をヘッドホン内に届ける

WH-1000XM5」 には周囲の音を取り除くノイズキャンセリング機能が搭載されているが、一方で周囲の音をあえて取り込むアンビエントサウンド (外音取り込み機能) も搭載されている。

同モードは、音楽を聴きながら電車のアナウンスを聞きたいときなどに有効な機能。コンビニやスーパーなどで買い物をするとき、ヘッドホンを外すのが面倒なときなどにも使えるだろう。小さなお子さんがいるご家庭で使用するのにも便利かもしれない。

「WH-1000XM5」 の外音取り込み機能は、マイクの搭載数が増えたこともありとても高いクオリティを実現している。低価格帯のヘッドホンだとマイクで音を拾う際にノイズが発生してしまったりするが、「WH-1000XM5」 の場合はそんなこともなく自然な形で周囲の音を拾うことが可能だ。

また、内蔵マイクが増えたためか、自身の声をもっとクリアに拾えるようになっていて、通話時の違和感が減り、より話しやすくなっていた。ただし、同価格帯の製品でいえばAppleのヘッドホン 「AirPods Max」 の外音取り込み機能の実力には残念ながら敵わず。ここに関しては次世代の製品に期待したいところ。

ヘッドホンをつけたまま声を発すると一時的に外音取り込みモードになる 「スピーク・トゥ・チャット」 や、ヘッドホンを覆うと周囲の音を聞ける 「クイックアテンションモード」 は先代モデルから引き続き利用可能。

また、ユーザーの行動/場所に連動してノイズキャンセリング/外音取り込みモードやイコライザー設定が切り替わる 「アダプディブサウンドコントロール」 などももちろん利用できる。

便利機能①オートNCオプティマイザー

起動時のアナウンスがなくなったことも地味な改良点

WH-1000XM5には、「オートNCオプティマイザー」 という便利機能が搭載されている。

これは、ユーザーがヘッドホンを装着したときの個人差 (髪型、メガネの有無、装着ズレなど) を自動で検出し、ノイズキャンセリング機能を最適化する機能。

先代モデルのWH-1000XM4では、カスタムボタンを長押しすることでノイズキャンセリングを調節する 「NCオプティマイザー」 が利用できたが、本モデルではカスタムボタンを押さずとも自動でノイズキャンセリングを最適化してくれるようになった。

いちいち最適化する必要がなくなったのはとても便利。筆者の場合は基本ひとりで使用するため活躍の機会は限られるかもしれないが、もし家族と共用で使用するのなら使うごとに最適化しなくて済むようになるので、同アップデートはかなり重要なものと言えるのではないだろうか。

便利機能②クイックアテンションモード

タッチセンサーコントロールに3〜4本指で触れると 「クイックアテンションモード」 がオン

右イヤーカップに搭載されているタッチセンサーコントロールに手で触れると、再生中の音楽や通話音声/着信音の音量を下げて、周囲の音をさらに聞き取りやすく 「クイックアテンションモード」 が利用可能だ。

先代モデルにも搭載されていた機能だが、電車の遅延や運休などをお知らせする急なアナウンスが流れたり、誰かに話しかけられたときにも速やかに周囲の音を聞くことができてとても便利だ。

便利機能③スピーク・トゥ・チャット

ヘッドホンを装着しているユーザーが声を発したことを察知し、音楽再生を一時停止して外音取り込みモードに切り替える 「スピーク・トゥ・チャット」 。先代モデルから引きつづき搭載されている。

わざわざアプリを開いたり、右イヤーカップのタッチコントロールに触れることなくすぐに会話を始められるため、ちょっとした会話をする際に便利だ。

設定アプリのトグルをオンにしておかないと利用できない

前述のクイックアテンションモードと似た機能ではあるが、クイックアテンションモードは音声を下げるのに対して、スピーク・トゥ・チャットは再生を一時停止して外音取り込みモードに切り替えるというものになる。

ただし、外音取り込みモードからノイズキャンセリングに戻るまでの時間が少し長すぎるため、個人的にはスピーク・トゥ・チャットはオフ、クイックアテンションモードをオンにして使用している。できればノイズキャンセリングに戻るまでの時間をユーザーの手でカスタマイズできるようになって欲しいところ。

Quick Access機能

Spotifyアプリを普段から活用している人なら、「Quick Access」 機能がとても便利だ。

これは、NC/AMBボタンを押すだけで、Spotifyアプリで最後に聞いていた楽曲を再生したり、プレイリストを切り替えられる機能。わざわざスマートフォンを取り出すことなく、Spotifyで音楽を聞くことができる。

同機能を利用するには、Spotifyアプリをインストールした上で 「Headphones Connect」 アプリで設定する必要がある。

他社製ヘッドホンとの比較

WH-1000XM5」 と他社製のヘッドホンとで購入を悩んでいる人向けに、性能を簡単に比較してみた。

比較は筆者が所有する 「AirPods Max」 「Bose QuietConfort45」 「Bose Noise Cancelling Headphones 700」 と行った。

音質
AirPods Max>WH-1000XM5>Bose QC45>Bose N700

ノイズキャンセリング性能
WH-1000XM5>Bose QC45>AirPods Max>Bose NC700

着け心地
AirPods Max>Bose QC45>WH-1000XM5>Bose NC700

イヤーパッドの蒸れにくさ
AirPods Max>WH-1000XM5>Bose NC700>Bose QC45

高級感
AirPods Max>Bose NC700>Bose QC45>WH-1000XM5

キャリングケースの持ち運びやすさ
Bose QC45>AirPods Max>Bose NC700>WH-1000XM5

価格 (高価な順)
AirPods Max>WH-1000XM5>Bose NC700>Bose QC45

ヘッドホン選びで最も重要な音質。音の好き嫌いは抜きにして、純粋に原音の忠実度だけで言えばAirPods Maxが最も優れていると筆者は感じる。

次点は今回のWH-1000XM5。クリアかつ繊細な音や、高音〜低音までのバランスの良さを考慮すると、Bose QC45やBose N700よりも品質は高いと個人的には思えた。

ノイズキャンセリング機能についてはWH-1000XM5が一番高い性能を持つ。個人的には飛行機での使用を試してみたいところ。長時間のフライトで最も快適なのはどの製品なのかはとても気になるが、前モデルの性能を考慮すればおそらくBose QC45よりもWH-1000XM5のほうが上回るはず……!(たぶん)

持ち運びやすさにおいては、折りたたみ収納できるBose QC45がもっとも優れていて、次点が簡易的なカバーのみで比較的コンパクトに持ち運びできるAirPods Max、その次にBose、WH-1000XM5が続く。BoseとWH-1000XM5は、ケースサイズがどちらも同じくらい大きく、飛行機など手荷物が限られる場所への持ち込みには不向きな印象だ。

性能面で優位性をもつWH-1000XM5だが、一方でプラスチック素材で安っぽく見える作りをしている箇所があったり、持ち運びのしづらさなど他社製品にやや見劣りしてしまうポイントもあった。

まとめ:性能面はしっかり改善で十分満足。チープに見える箇所は要改善ポイント

今回は発売したてホヤホヤの 「WH-1000XM5」 をレビューした。

先代モデル 「WH-1000XM4」 を気に入っていた筆者にとっては待望の新型モデル。先代の気になる点を解消し、さらなるレベルに到達してくれると思っていた。

実際にさまざま触って検証してみたが、音質やノイズキャンセリング機能など性能面では大幅に強化されていたことがわかった。特に、肝心な音作りに関しては音の輪郭が以前にも増してハッキリ分かるようになり、音楽をより深く楽しめるようになるなど順当に進化してきたように感じている。

新たなデザインもすんなり受け入れることができたため、今回進化したポイントについては筆者は概ね満足している。

▼ 良い点

  • バランスに優れた高クオリティな音質
  • 高いアクティブノイズキャンセリング機能
  • 高い通話品質

▼ 悪い点

  • 大部分をプラスチックで占める筐体
  • 折り畳みができない
  • キャリングケースが大きい

ただ、個人的には気になるポイントがいくつかあった。まずは折りたたみができなくなったことでキャリングケースが大きくなってしまったこと (体感的には1.2倍〜1.3倍くらいの巨大化) 。

筆者は仕事がら出張が多く、定期的に飛行機や新幹線などで遠出することがあるのだが、その際に重要視しているのが “コンパクト” であること。先代モデルの 「WH-1000XM4」 は折りたためてコンパクトに持ち運ぶことができていたのだが、「WH-1000XM5」 はいままでのバッグに入れて持ち運ぶことができなくなってしまった。

筆者にはどうしてもチープに見えてしまう接合部

あとはすこしチープに見える部分があることも地味ながら気になるポイント。特にイヤーカップとヘッドバンドの繋ぎ目の部分はかなり安っぽく見えてしまっているため、ここは改善の余地ありだと思っている。

AirPods Maxのように金属で作るべきとは一切思わないが、5万円前後のヘッドホンならば使用する素材にはもっとこだわっても良いかと感じた。この辺りは次世代の製品で改善をお願いしたい。

さて、今回の新型モデルは購入に値する製品だろうか。

まず、もし 「WH-1000XM4」 を持っているならば、買い換える必要はないだろう。

当レビューにて紹介したとおり 「WH-1000XM5」 は先代モデルからいくつかの箇所で順調な進化が行われている。しかし、5万円という価格に値するアップデートだったかと言えば、そうではなかったとも思える。買い替えると大きなキャリングケースを持ちあるく必要も出てくるため、「WH-1000XM4」 に不満を持っていなければ、そのままいまのヘッドホンをを使い続けるのが一番だと思っている。

しかし、あなたが高音質なヘッドホンをもっていないなら、「WH-1000XM5」 は購入しても良いのではないかと思う。特に、音質とノイズキャンセリング性能の両方を求めるのなら、「WH-1000XM5」 が一番相性が良いだろう。

AppleやBoseの製品とも比較しながら考えてみると、AirPods Maxには音質で上回ることはできていないが、一方でノイズキャンセリングでは上回る性能がある。静寂な環境でハイ・クオリティな音楽体験を得たいのであれば、「WH-1000XM5」 がひとつ頭抜けている。

いくつか気になる部分もあったものの、全体的な出来栄えは上・中・下のうち「上」。多くのユーザーに愛される 「WH-1000X」 シリーズの最新モデルは、依然として業界トップレベルを維持している。

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