
米国カリフォルニア州に本社を構えるオーディオブランドSonosは、同社のプレミアムサウンドバー 「Sonos Arc Ultra」 に、AI技術を利用したスピーチエンハンスメント機能を提供開始した。Sonosアプリの無料ソフトウェアアップデートを通じて配信され、誰でも簡単に利用できる。
新たに搭載されたスピーチエンハンスメント機能は、テレビや映画などの視聴体験における「セリフの聞き取りづらさ」に着目し、AIによるリアルタイム音声処理によって、セリフの明瞭さを向上させるというもの。
聴覚に課題を抱えるユーザーと共同で設計されたこの機能は、誰もが快適に音声コンテンツを楽しめることを目指して開発された。操作は非常にシンプルで、Sonosアプリのホーム画面から直感的に調整できるUIとなっており、アクセシビリティにも配慮されている。
セリフの聞き取りやすさに応じて「Low(低)」「Medium(中)」「High(高)」「Max(最大)」の4段階から明瞭度を選択可能。最も控えめな「Low」では自然なバランスを保ちつつセリフを軽く強調し、「Max」では背景音を抑えてセリフを最優先に再生するよう調整されている。作品の演出や音響バランスを損なわずに、ユーザーの聴こえ方に合わせたカスタマイズが可能だ。
「Sonos Arc Ultra」 スピーチエンハンスメント機能の特徴
- AIによるリアルタイムのセリフ抽出
映画やドラマの臨場感を保ちつつ、セリフを明瞭に補正。字幕に頼らず視聴が可能。 - 4段階のスピーチ明瞭度設定
- Low:自然な強調、作品の演出を尊重
- Medium:セリフを明瞭にしつつ、全体の音バランスを維持
- High:セリフをはっきり際立たせる
- Max:セリフ最優先、全体のダイナミクスも調整
- UI/UX設計におけるアクセシビリティ配慮
スピーチエンハンスメント機能の導入背景には、テレビ番組や映画作品におけるセリフの聞き取りにくさを訴える声の増加がある。音響設計やミキシングの問題、多様化するアクセントや生活環境の変化により、音量を上げてもセリフが明瞭にならないと感じるユーザーは少なくない。
とりわけ高齢者や聴覚に課題を抱える人々にとって、字幕に頼ることはコンテンツ没入感の妨げにもなり得る。こうした課題に対して、Sonosは音響技術にAIを掛け合わせることで、視聴体験そのものの質を根本から向上させようとしている。
開発にあたっては約1年をかけた実地テストが行われ、年齢や聴力の異なる37名の参加者がさまざまなコンテンツを通じてフィードバックを提供。これにより、実際の生活シーンに即した調整が行われたという。
さらに、Sonosはアカデミー賞受賞歴を持つ映画音響ミキサー、クリス・ジェンキンス氏とも連携。映画制作の現場で実際に使われているセリフ抽出技術を家庭用に応用し、効果音やBGMなどの臨場感を損なうことなく、セリフのみを鮮明に際立たせる調整を施した。
■ スピーチエンハンスメント機能の想定利用シーン
- 集合住宅や夜間の視聴:小音量でもセリフがクリアに聞こえるため、音漏れの心配なし
- 多世代同居家庭:家族間でテレビ音量への不満を軽減し、誰にとっても快適な視聴体験
- 子どもが寝た後の映画タイム:静かな環境でも臨場感を損なわず楽しめる
- 在宅ワーク中のながら視聴:会議や作業に集中しつつ、自然な音声再生が可能
- 字幕なしでストーリーを楽しむ:言語理解が難しい場面でも自然に内容を把握可能
「Sonos Arc Ultra」とこの新機能の組み合わせは、日本の住宅事情やライフスタイルにもフィットした音響体験を実現する。壁が薄く大きな音を出しにくい集合住宅でも、小音量のままセリフがしっかりと聞こえるため、深夜の映画鑑賞にも最適。
また、多世代が同居する家庭では、テレビの音量を巡るストレスを軽減し、高齢者と若年層が同じ音環境を自然に共有できる点でも大きな価値がある。さらに、在宅ワーク中の「ながら視聴」や、子どもが寝た後の静かなひとときに、明瞭なセリフを通して映像の世界にしっかりと没入できるだろう。
「Sonos Arc Ultra」 については、弊誌でレビューを行っている。そちらも併せてチェックいただきたい。
(画像提供:Sonos Japan)