ソフトバンクが空飛ぶ通信基地局、HAPSモバイルを通して展開 Alphabetとも提携

4月25日、ソフトバンクが成層圏通信プラットフォーム事業 「HAPS (High-Altiude Psudo-Satellite) 」 を発表した。上空20キロメートルの成層圏に、”空の通信基地局”となる無人航空機 「Hawk」 を飛ばし、地球の高高度静止軌道に常駐させる計画だ。

ソフトバンクは同事業を米AeroVironment, Inc.との合弁会社 「HAPSモバイル株式会社」 を通じて展開していく。また、Alphabet傘下のLOONとも手を組み、気球や無人航空機システムなど高高度飛行体を活用した成層圏からのモバイルネットワーク通信の提供を進める上で協力していく構えだ (上記写真はAeroVironment President & CEOのWahid Nawabi氏とソフトバンク代表取締役 副社長執行役員兼CTOの宮川潤一氏) 。

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ソフトバンクが “空の通信基地局” 展開へ

「Hawk」 は、インターネット回線や電話など様々な通信環境を提供する無人航空機だ。一般的な通信基地局は基本的に地上に設置されているが、「HAPS」 はHawkを成層圏に打ち上げることで、各地に地上基地局を設置するよりも安価にモバイル通信網を築くことが可能。カバーできる範囲は地上基地局より広範囲だ。また、一般的な衛星とは異なり地表に帰還することが可能なため、宇宙ゴミを出さないことや再利用できることなどの利点もある。

地上の基地局は災害等に弱いという側面がある。例えば大地震が直撃すると通信インフラは大きなダメージを負ってしまう一方で、高高度疑似衛星であれば災害の影響を受けることなく、安定的な通信インフラを提供することが可能。大地震が起こると各安否確認サービスが立ち上がるが、HAPSがあれば通信インフラのバックアップとなり、被災者も電話やメッセージの送信ができるかもしれない。

「Hawk」 の横幅は78メートル。10機のプロペラエンジンと太陽光発電パネルと大容量バッテリーを搭載。飛行する成層圏は気流が比較的安定しているため、自立して飛行することが可能だ。巡航速度は110km。

HAPSの機体がカバーできる範囲は直径200キロメートル。もし無人航空機が東京上空にいたと仮定するなら、関東はほぼ全域、西は長野県や静岡県の一部をカバーできるだろう。HAPSを世界各地に複数配置することで、地球規模の通信網を構築することが可能だ。ちなみに、HAPSは次世代モバイル通信規格 「5G」 に対応する予定。使用する周波数は地上基地局のものと同じなため、一般的なスマートフォンでも使用できる見通し。

HAPSの機体は2年間もつような設計になっているが、紫外線が強い場所を飛行するため安全を考慮し、当初はなるべく短い期間の飛行を基本とし、その後は徐々に飛行期間を延ばしていく考え。飛行中は気流によって8の字に旋回したり、任意の座標で円を描くように定点旋回することがあるとのこと。昼は搭載されている太陽光パネルで内蔵バッテリーを充電し、夜はそのバッテリーで飛行。フライトは約6ヶ月間可能だという。

このHAPSは、世界中のモバイル環境を整えることを目標とし、まずは通信基地局のない地域が多い新興国のインフラ整備を優先する。ソフトバンク株式会社の代表取締役副社長執行役員 兼 CTOの宮川潤一氏は、「人類の半数である37億人がまだインターネットを利用できる環境にない。そのような方々にもモバイル通信環境を提供していくことを考えている。」 と話し、「世界のモバイルネットワークに革命をもたらす。」 と今後の見通しについて意気込んだ。

HAPSが提供するエリアは当初は北緯・南緯30度内。今後、機体サイズを大きくするか、より大容量のバッテリーを搭載した新型機体を作ることで将来的にな提供エリアは南北50度まで広げる予定であるという。前述の理由から、今はアフリカや南米の途上国に通信を提供することを優先し、将来的には日本や米国など30~50度内の地域での提供も行う計画だ。日本でのサービス開始展開に関しては、2025年を目処に開発を進めている。

ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員 兼 CTO 宮川潤一氏

この事業展開に伴い、HAPSモバイルは米Alphabet傘下の 「ルーン(LOON)」 と資本提携し、相互出資を行う。HAPSモバイルは2018年にUAV (無人航空機) 開発のAeroVironment社と提携し、共同で飛行機の開発に携わっているが、LOONとの提携によってLOONのもつ気球型通信基地局の提供を受ける可能性もあるとのことだ。HAPSは高高度静止軌道を飛行する無人機だが、気球型通信基地局の場合はバルーン型。また、機体の相互提供だけでなく情報の共有など提携内容は多岐にわたる予定だ。

もともと、成層圏通信プラットフォーム事業の構想は1990年代から存在した。しかし、太陽光パネルやバッテリー技術が満足な水準ではなく、機体の開発が難航。ただようやく最近になって各技術が向上してきたこともあり、実用化できる段階に到達した。HAPSモバイルは、今後機体開発だけでなく各国の認可の取得や飛行試験を重ねることで実用化に向けて動く。

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