ASUS JAPANは、「ROG Ally X」 を7月24日(水)に発売する。本製品は7インチの画面を搭載した新型ハンドヘルドデバイス。携帯ゲーム機のようにPCゲームをプレイできるほか、外部ディスプレイへの映像出力にも対応するためゲーム機のように使用することも可能。また、Windows 11を搭載しているためPCとしても利用できるマルチロールPCだ。
発売に先駆け、ASUS JAPANから 「ROG Ally X」 の実機をお借りし、実際に数週間使ってみることができた。本稿では、「ROG Ally X」 は先代の 「ROG Ally」 からどのようにパワーアップしたのか、詳しくレビューしていきたい。
「ROG Ally X」 のデザインをチェック
「ROG Ally X」 は、昨年発売したASUSのポータブルゲーム機 「ROG Ally」 の新型モデル。搭載プロセッサーは、先代の 「ROG Ally」 と同じであるものの、ストレージ容量とメモリ容量が増加し、バッテリー容量も2倍になったことから、実質的な改良モデルにあたる。
「ROG Ally X」 は内部的な改良に加えて、デザインにも改良が加えられている。まずデザインについて詳しく見ていこう。
筐体は、ポータブルゲーミングPCとしては一般的な、中央のディスプレイを左右のコントローラーで挟む、従来の 「ROG Ally」 のデザインを基本踏襲している。
大きな変化となったのが本体カラー。「ROG Ally」 はホワイトだったのに対し、「ROG Ally X」 はブラックに。色でモデルを見分けられるようになったのはもちろんだが、ブラックの方がRGBライティングがより映えやすいことから、ゲーマーにはより好まれそうだ。
本体サイズは幅280.6mm × 奥行き111.3mm × 高さ24.7〜36.9mm、重量は約678g。「ROG Ally (約608g)」 からバッテリー容量が2倍に増えたこともあって、約70g重くなったことに。同じポータブルゲーム機としては、「Steam Deck (約669g)」 と同じくらいの重さということになる。
ただし、約70gの増量でバッテリー持ちが2倍になると考えると、我慢できない重さではないとは思うので、あまり気にしなくても良い部分かなと筆者は捉えている。
画面は7インチのTFT液晶タッチスクリーンが搭載。解像度は1920×1080ドットのフルHD仕様で、リフレッシュレートは最大120Hz。応答速度は7msで、最大輝度は500ニト。ガラスパネルにはGorilla Glass Victusを採用した。
「ROG Ally」 は、多くの人の手のひらにフィットするよう、エルゴのミックデザインを採用していたが、「ROG Ally X」 でさらに持ちやすく、操作しやすいように改良が加わった。
具体的には、持ち手部分がより深いカーブを描き、本体の高さがわずかに高くなったことで、本体が握りやすく。また、左右のトリガーとバンパーの間のスペースが広くなり、かつトリガーが低く、バンパーが高くなるよう角度がつけられたことで、より素早く操作できるようになった。
実際に本体を握って操作してみると、「ROG Ally X」 の方が効率よく指を動かせる印象を受けた。特にトリガー部分の操作感が良くなっているように感じたので、気になった人は実際に店頭などで触ってチェックしてみていただきたい。
ジョイスティックとD-Pad (十字キー) も、多くのユーザーからのフィードバックを受けて改良。新しいジョイスティックは500万回の耐久試験をクリアしているので、長く安心して使える。
D-Padは、縦横の十字の段差がよりハッキリし、斜め方向のキーにも引っかかるような段差が設けられたことで、触ったときにぽこっとした感触が指先に感じられるようになり、格闘ゲームやレトロゲームなどD-Padを多用するゲームにおいて8方向入力がしやすくなった。
また、左右のジョイスティックからD-PadもしくはA/B/X/Yボタンにアクセスする角度も改善。具体的な角度は左側は45.6°、右側は39.5°で、親指の角度を変えるだけでアクセスできるため、指を行き来しての操作がよりスムーズに。素早い反応が求められるゲームも操作しやすくなった。
背面左右にあるマクロボタンは、「ROG Ally」 よりもコンパクトになった。これまでは深めに持つとマクロボタンに手が掛かり、稀に偶発的に押してしまうことがあったが、同ボタンが小さくなったことで誤操作を防ぐことができるように。マクロボタンを多用する人にも、そうでない人にも嬉しい変更点だ。
各種インターフェイスは、ゲームプレイの妨げにならないよう本体上部に集まっている。左から順に、電源ボタン、マイクロホン/ヘッドホンコンボジャック、microSDカードリーダー、音量調節ボタン、USB Type-C×2。
電源ボタンには指紋認証センサーが組み込まれていて、指紋認証でスムーズにロックを解除可能。筆者の指はスマートフォンなどの指紋認証に失敗しやすい傾向にあるが、「ROG Ally X」 ではスムーズに認証できていた。
「ROG Ally」 では1ポートだったUSB Type-Cポートは、2ポートに拡張。正面から見て左側がUSB 3.2 Gen 2、右側がUSB4/Thunderbolt 4に対応していて、どちらもUSB PDによる高速充電が利用できるほか、映像出力にも対応する。
一般的なPCと同じくUSBハブも利用できるため、HDMIポートを備えたUSBハブを使えば、HDMI経由で外部ディスプレイに映像を出力することも可能だ。
ちなみに 「ROG Ally」 に搭載されていた、外付けGPU 「ROG XG Mobile」 と接続するための独自コネクタは 「ROG Ally X」 で廃止され、利用できなくなっているので注意していただきたい。
PCゲームを動作させてみた。バッテリー駆動も長くなりもっとゲームがプレイできるように
「ROG Ally X」 に内蔵されるCPUは、4nmプロセスに基づいて構築された 「AMD Ryzen Z1 Extreme プロセッサー」 。「ROG Ally」 の上位モデル (RC71L-Z1E512) に搭載されていたものと同じだ。
そしてGPUは、CPU統合型の 「AMD Radeon グラフィックス」 が搭載。独立GPUを搭載した本格的なゲーミングPCには及ばないが、AAAタイトルもフルHD (1920×1080) 程度の画質なら比較的快適にプレイ可能だ。
以下、CINEBENCH 2024のベンチマークスコア。
実際に『パルワールド』『Sea of Thieves』『Forza Horizon 5』などのタイトルをプレイしてみた。フルHD画質でプレイしてみたところ、およそ60fps前後は保つことができた。「ROG Ally X」 のディスプレイ自体がフルHD仕様であることから、本体でゲームをプレイする場合はこれくらいの画質でも十分だろう。
ただし、これ以上画質を上げてしまうと多少は動作のカクつきが見られたため、外部ディスプレイに映像を出力してゲームを楽しむ場合にもできればフルHD程度の画質に抑えてプレイするのが現実的だろう。4K画質などもっと良い画質でゲームをプレイしたい場合には、やはり独立型のGPUを搭載した本格的なゲーミングPCが必要だが、手のひらに収まるハンドヘルドでAAAタイトルがプレイできるのはかなり魅力。
メモリとストレージの容量は 「ROG Ally」 から増加している。メモリ容量は16GB→24GBになり、メモリ規格もLPDDR5X-7500になり、より高速な読み込みに対応した。メモリ容量を多く要求するPCタイトルでは、より快適に動作することが可能だろう。
ストレージ(SSD)についても512GB→1TBに増量された。さらに、microSDXCによる拡張にも対応するため、より多くのゲームタイトルを同時に保持できるようになった。
また、外からは見えないものの 「ROG Ally X」 は冷却性能にも改良が加えられている。内部のファンが23%小さくなり、ファンブレードが50%薄くなったことで、冷却の際のエアフローが改善。本体のパネル温度は最大6℃低下するという。
本体から発生した熱は本体上部から排出する仕組みで、本体を手で持ってプレイしていても熱を感じにくい。ASUSはゲーミングノートPCなどでも冷却性能にかなりこだわっていることから、そのノウハウが 「ROG Ally X」 にも生かされていると感じた。
バッテリー駆動時間については、搭載するバッテリー容量が2倍になったことから、本体を充電できない環境でもより長くゲームを楽しめるようになった。
先代の 「ROG Ally」 と直接比較してはいないので確かなことは言えないものの、体感的にバッテリー駆動時間は長くなったように感じている。もちろん、プレイするゲームによってバッテリー駆動時間は変わってくるのであくまで参考程度に捉えていただきたいのだが、「ROG Ally」 では充電なしで2時間もプレイすればあっという間にバッテリーがなくなってしまっていたタイトルで、「ROG Ally X」 は3時間くらいまでは持つようになった。
外部ディスプレイに映像出力して外泊先でも快適プレイ
「ROG Ally X」 は、本体上部のUSB Type-Cポートから外部ディスプレイに映像出力できる。
Type-C入力に対応している外部ディスプレイなら、Type-Cケーブル1本でディスプレイと接続することで簡単に映像出力が可能。もしディスプレイがHDMI入力にしか対応していない場合でも、Type-C → HDMIの変換器を使えばOKだ。
先代の 「ROG Ally」 はType-Cポートが1つしかなく、このType-Cポートで映像出力をする場合には本体への電源供給ができず、実質的にUSBハブソリューションを使ってポートを拡張するしか方法がなかった。
しかし、「ROG Ally X」 ではType-Cポートが2ポートに増えたことで、映像出力と電源供給を別々のポートで担当することで、USBハブなしでも映像出力と電源供給を両立できるようになった。
給電ができないと映像出力をしながらゲームをプレイするのはさすがに難しいことから、この点は嬉しい改良ポイントだったと言えるだろう。
前述のとおり本デバイスはゲームコンソールとしてだけでなく、Windows PCとして使用することができる。外部ディスプレイに映像を出力すれば、出張や旅行など外泊時におけるモバイルPCとして使用することも可能だ。筆者の場合はメインデバイスにMacを使用しているため、「ROG Ally X」 を持ち歩けば、いざWindows PCが必要になったときのサブ用PCとして役立つはずだ。
「ROG Ally X」 レビューまとめ|デザインをはじめとする改良で使いやすさが格段に向上
「ROG Ally X」 を実際に使ってみて、バッテリーやメモリ・ストレージ容量の増量、USB Type-Cポートの増加など改良された部分はかなり多かったが、筆者が一番嬉しかったのは本体デザインの改良により、さらに持ちやすくゲームをプレイしやすくなったこと。
ポータブルゲーム機の一番のメリットは、本体だけで気軽にPCゲームがプレイできること。それなのに 「操作しにくい」 「コントローラーじゃないから対戦で勝てない」 と言われてしまうのは本末転倒だ。
「ROG Ally X」 はトリガーやバンパー、ジョイスティック、D-Padの操作感に加えて、スティックとボタンの配置も見直されたことで、格段に操作しやすくなっている。先代の 「ROG Ally」 は今後も併売されるとのことだが、操作性を大事にするなら、やはり 「ROG Ally X」 を選ぶのがベストだ。
「ROG Ally X」 は、ASUS公式オンラインストアで139,800円(税込)で購入可能。発売は7月24日を予定している。
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