「iOS 9」から導入されるようになった「コンテンツブロッカー」機能は、モバイルページに表示される広告の表示を意図的に回避し、ブラウジング時のユーザーエクスペリエンスを向上させようというものだ。
一見すると、スマホには不要な広告が表示されないので、ユーザーは普段のブラウジングを快適にできるようになると思うかもしれない。だが、同機能を利用する人が多くなればなるほど、広告を提供するメディアの収入が減るので、結果的には優良なコンテンツが減ってしまう可能性があることを当サイトでも以前お伝えしたことがある。
「iOS 9」がリリースされてから半年以上経過したわけだが、実際にこの機能を利用している人は多いのだろうか。
自身のスマホに「広告ブロック」機能を搭載しているユーザーは22%ほど
アイルランドに拠点を構えるPageFair社の調査によると、世界19億人のスマホユーザーのうち、約22%の4億1900万人のユーザーが「広告ブロック」機能を利用しており、日常的に広告をブロックしていることが明らかになった。
22%という数字は少しイメージしづらいので、もう少し分かりやすく言うと、世界のスマホユーザーの約5人に1人が「広告ブロック」機能を利用しているということになる。
この数字が多いのか、それとも少ないのかについては何とも言えないところがあるが、単純にWEBメディアが広告を提供できるユーザーの数が5分の1減るということ。これは同時に、WEBメディアが得ることができたはずの収入の5分の1程度が失われている可能性がある。
同社の調査によると、この広告ブロック機能を利用しているユーザーは中国やインドに多いようで、購入した段階で広告ブロック機能がデフォルトで搭載されているスマホを使用していることが理由であるとのこと。そのようなスマホを利用しているユーザーはかなり多いようで、世界総計で4億人近いユーザーが使用しているとの調査結果が出ているようだ。
その他の地域、特に欧州や北米に関してはここまで顕著ではないようで、広告ブロック機能が搭載されたモバイルブラウザを使用しているユーザー数は1,400万人ほどだという。
「広告ブロック」機能の利用度合いに関しては、地域間でかなりの差が出ている状態で、一概に全てのメディアが収入を大きく減らしているわけではなさそうだ。
だが、それでもAppleは「iOS」端末を中心に広告ブロック機能「コンテンツブロッカー」を搭載したり、SamsungなどはAndroid端末にデフォルトで「広告ブロック」機能を搭載し始めたりと、やはり「広告ブロック」機能の搭載の流れは世界全体として主流となりつつある。
メディア側としては「広告ブロック」機能自体を批判したり、「広告ブロッカー」を利用している人にはWEBページを見せないような仕組みを導入したりと対策しているところもある。ただ、Win-Winの関係が構築できないからといって、一部のユーザーを締め出してしまうのもユーザーフレンドリーだとは言えない。
最近では上記の仕組みを取り入れているサイトを解析して、その仕組みを無効化してやろうというユーザーもいるほどで、壮絶なイタチごっこが始まっているようだ。
この「広告ブロッカー」機能が今後、ユーザーやメディアにとってどう影響してくるかは分からないが、ユーザーのエクスペリエンスだけを優先していると次第にWEBメディアのコンテンツは陳腐なものになっていく可能性もある。おそらくユーザーもそれを望んではいないと思うので、ユーザーとメディアの間には最適なバランスが求められる。
[ via CNET ]