
OpenAIと元Appleのデザイナー、ジョナサン・アイブ氏が手がけるAIハードウェアプロジェクトから、「io」 という名前が突然消えた。理由は、思わぬ商標トラブルだ。
OpenAIはここ数日で、公式サイトやSNSから「io」に関する言及をすべて削除。ジョナサン・アイブ氏とサム・アルトマン氏が共同で発表したブログ記事や、紹介動画も閲覧できなくなっている。
削除の背景には、「IYO Inc.」 という別のスタートアップからの商標クレームがある。IYOはGoogleのムーンショット部門から生まれた補聴器系スタートアップで、AIデバイスの開発にも取り組んでいる。
OpenAIによると、今回の削除は裁判所の命令によるもので、現在は 「io」 の名称を使えない状況にあるという。広報担当のカイラ・ウッド氏は 「このページは、IYOによる商標苦情に基づく裁判所命令により一時的に非公開となっている。異議はあるが、対応を検討中」 とコメント。アイブ側も 「まったく根拠のない訴訟だ」 と反発している。
プロジェクトは現在も継続中。OpenAIとアイブ氏の連携に変化なし

ただし、「io」 という名前が使えなくなったからといって、プロジェクト自体が終わったわけではない。
The VergeやBloombergなど複数のメディアによれば、OpenAIとアイブ氏による約6.5億ドル規模のAIハードウェア開発はいまも進行中で、提携関係も変わっていないとのこと。
もともと 「io」 のチームは、サンフランシスコにあるOpenAIの研究・エンジニアリング部門と連携し、AIとデザインを融合した製品の開発を進める予定だった。iPhoneやMacBookなどを手がけたジョナサン・アイブ氏の美学が、OpenAIのAI技術とどう交わるのかは業界でも注目の的だった。
今後は、商標訴訟の行方によってプロジェクト名やブランドの見直しもあり得る。ただ、関係者の話を総合すると、名称を一時的に取り下げるだけで、開発自体は止まっていない。次世代のAIデバイスが世に出る日を、しばし静かに待つことになりそうだ。
(画像:OpenAI)