OpenAI、ジョナサン・アイブ氏のデザイン企業「io」65億ドルで買収。2027年にAIウェアラブルデバイス投入へ

OpenAIは2025年5月、元Appleのチーフデザインオフィサー、ジョナサン・アイブ氏が率いるデザイン企業「io」を65億ドル(約1兆円)で買収すると発表した。

取引は全額株式交換によって実施され、ioのチームおよそ55名(ハードウェア、ソフトウェア、製造分野のエキスパート)は、今後OpenAIの研究・製品チームと統合される。

この買収によって、OpenAIはAI領域における新たなハードウェアカテゴリの創出を本格化させる見込みだ。ジョナサン・アイブ氏および彼の率いるデザインスタジオ「LoveFrom」は今後も独立性を保ちながら、OpenAIおよびio両方においてデザインおよびクリエイティブの指揮を執る。

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サム・アルトマンとアイブ氏による2年越しのプロジェクト

「io」は2024年にジョナサン・アイブ氏と、かつてAppleで同僚だったエヴァンス・ハンキー氏、スコット・キャノン氏、タン・タン氏によって設立された。チームには長年連携してきたハードウェア・ソフトウェア開発者、物理学者、製造技術者が名を連ねている。

ioのミッションは「インスピレーションを与え、人を力づけ、可能性を拡げるプロダクト」の創造であり、そのビジョンはOpenAIのAI技術と密接に結びつく。今回の買収により、ioはOpenAIのサンフランシスコ本部と連携を深め、より密接なプロダクト開発に着手する。

OpenAIのCEOサム・アルトマンは、このプロジェクトが2年前から極秘裏に進行していたことを明かしている。当初は「楽観的で希望に満ちたアイデアとプロトタイプの探求」だったが、次第に現実的な製品開発へと発展し、試作段階にまで至っている。すでにサム・アルトマン自身が日常的に試作品を使用しており、「世界がこれまでに見た中で最もクールなテクノロジー」と評している。

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2027年、AIウェアラブルデバイスとして登場か

Apple関連で信頼性の高い情報を提供してきたアナリスト、ミンチー・クオ氏は、このioによるAIデバイスの量産が2027年に始まると予測している。生産は地政学的リスクを避けるために中国以外で行われ、現時点ではベトナムが有力視されている。

現在の試作機は、Humaneの「AI Pin」よりわずかに大きく、形状はiPod Shuffleのようにコンパクトでエレガント。ディスプレイは搭載されず、代わりにカメラとマイクを用いて環境を認識。計算処理や表示はスマートフォンやPCなど、外部デバイスに依存する設計だという。装着スタイルは首からぶら下げるネックレスタイプで、ユーザーのライフスタイルに溶け込むことを狙っている。

Ben Geskin氏 (@BenGeskin) が本製品を再現したレンダリング画像を公開しているため、参考として掲載しておく。

(画像:@BenGeskin)

今回の動きは、Appleなどのテック企業にとって何らかの脅威となる可能性がある。OpenAIは、AppleがSiriの強化にChatGPTを活用するなど、両社は一定の関係性を持っているが、AIファーストのウェアラブルカテゴリを新設することで、スマートフォン依存からの脱却を目指す業界内の再編の引き金となる可能性もある。

すでに、HumaneやRabbitといったスタートアップがAIデバイスを投入しているなか、生成AIの先駆者のひとつであるOpenAIと、稀代の創造力をもつジョナサン・アイブ氏という強力な布陣が今後どのようなインパクトをテック市場にもたらすのか、注目が集まる。

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(画像:OpenAI)

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