
1月22日、NVIDIAはメディア向け説明会およびデモ体験会を開催した。
今年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2026」において発表した最新AIテクノロジーを中心に、ゲーミング、クリエイティブ、ローカルAIといった分野でRTX GPUがどのような役割を担っていくのかを、発表と実機デモの両面から紹介する場となった。
会場では、DLSS 4.5を用いたゲーミングデモに加え、RTX AI PC環境上で動作する生成AIモデルやクリエイター向けツール、開発者向けのAI基盤などが披露。実際の利用シーンを通じて、これらの技術によってPC体験がどのように変わりつつあるのかが具体的に示された。
本記事では、説明会で語られた発表内容と、デモを通じて確認できたポイントを整理しながら、NVIDIAが描く次世代PC体験の方向性をレポートする。
(提供:NVIDIA)
PC全体の出荷台数が減少する中、ゲーミングPCは50%以上成長
説明会の冒頭では、PCゲーミング市場の動向についての説明があった。過去5年間でPC全体の出荷台数は約14%減少している一方、ゲーミングPCは50%以上の成長を記録しているという。また、Steamのアクティブユーザー数も同期間で約2倍に増加しており、PCゲーミングが引き続き拡大している状況が続いている。
この成長の背景には、GPU性能の進化に加え、AIを活用した描画技術の進歩がある。NVIDIAによると、最新のBlackwellアーキテクチャは前世代と比べて普及スピードが速く、ハイエンドに限らない広い層へ浸透し始めているという。
同社はPCゲーミングを、完成された市場ではなく、体験が更新され続ける分野として捉えている。その中心にある技術として紹介されたのが、レイトレーシングやDLSSに代表されるAIベースのレンダリング技術だ。
DLSS 4.5でゴーストやジャギーが減少、負荷に応じて生成フレーム数を調整する機能も登場
DLSS(Deep Learning Super Sampling)は、NVIDIAのゲーミング向けAI技術を象徴する存在として、世代ごとに対応タイトルを広げてきた。DLSS 4は、発表から約1年で250以上のゲームおよびアプリケーションに対応したことが明らかになっている。
2025年には『モンスターハンターワイルズ』『Battlefield 6』などの人気タイトルがDLSS 4に対応したほか、今後発売する『バイオハザード レクイエム』『PRAGMATA』なども対応を予定している。高い描画負荷を前提とするタイトルが増える中で、DLSSはゲーム設計の段階から組み込まれる技術になりつつある。
このDLSS 4のアップデートとして発表されたのが「DLSS 4.5」だ。DLSS 4.5では、画質とパフォーマンスの両立をさらに押し進める技術が導入される。
注目は第2世代Transformer超解像度だ。初代モデルと比べて約5倍の計算能力を活用し、より大規模なデータセットでトレーニングされている。ライティング表現やエッジの描写が安定し、ゴーストやジャギーといった従来の課題が抑えられているという。
フレーム生成も進化している。DLSS 4.5では、1つのレンダリングフレームに対して最大5フレームを追加生成する6倍マルチフレーム生成に対応。さらに、シーンの負荷に応じて生成フレーム数を調整するダイナミックマルチフレーム生成も導入され、状況に応じた最適化が可能になった。
新しい超解像度モデルは、NVIDIAアプリを通じて、すでにすべてのGeForce RTXユーザーが利用できる。6倍マルチフレーム生成およびダイナミックマルチフレーム生成は、2026年春以降、RTX 50シリーズ向けに提供される予定だ。
会場では、DLSS 4とDLSS 4.5を比較できるゲーミングデモが行われた。
細かなパーティクル表現の安定性が向上しており、火の粉のような小さな要素でもちらつきが抑えられ、明るい背景でもノイズが目立ちにくい。テーブル表面などに見られがちだった不自然な模様も軽減され、全体として落ち着いた映像になっていた。
フレーム生成のデモでは、4Kパストレーシング環境でRTX 5090が約360fps、RTX 5080でも約240fpsを記録している。高リフレッシュレートモニターを前提とした環境においても、描画負荷の高いシーンを滑らかに描写できることが示された。
量子化技術で大規模生成モデルがローカルで現実的に動作
DLSSに続いて紹介されたのが、PC上でAIを直接動作させるローカルAIの取り組みだ。クラウドAIが一般化する一方で、プライバシーや通信コスト、応答速度といった観点から、ローカル環境でのAI活用に注目が集まっている。
説明会では、クラウド向け大規模言語モデルと、PC向けの小型言語モデルとの性能差が、従来よりも大きく縮まっている点が示された。モデルの最適化とGPU性能の向上により、個人のPCでも実用的なAI処理が可能になりつつある。
NVFP4およびNVFP8といった量子化技術は、ローカルAIを支える重要な要素として紹介された。これらを利用することで、パフォーマンスを高めつつ、VRAM使用量を大幅に抑えられるとされている。
この結果、従来は扱いが難しかった大規模な画像生成モデルやビデオ生成モデルも、PC上で現実的な速度で動作させられるようになる。説明会では、FLUX.2のようなモデルを例に、RTX PCによるローカル実行の利点が説明された。
あわせて、VRAM不足時にシステムメモリへデータを退避させるオフロード機能についても触れられた。16GB以上のVRAMを搭載したPCであれば、より大きなモデルを安定して扱えるという。
「LTX-2」をRTX PC向けに最適化、短時間で高解像度ビデオを生成
ローカルAIの進化は、クリエイティブ分野にも影響を与えている。説明会とデモでは、生成AIを活用したビデオ制作の具体的なワークフローが紹介された。
オープンウェイトのビデオ生成モデル「LTX-2」は、RTX PC向けに最適化することで、高解像度ビデオの生成を短時間で行えるようになっている。さらに、超解像技術「RTX Video」をComfyUIに統合することで、生成した映像を短時間で4Kへ変換できる。
量子化技術とRTX Videoを組み合わせた結果、4Kビデオ生成にかかる時間は大きく短縮されている。制作工程における待ち時間を減らせる点は、実務上のメリットとして分かりやすい。
3Dガイドを用いたビデオ生成のデモでは、テキスト入力を起点に、AIが必要な3Dオブジェクトを生成し、Blender上で配置してシーンを構成する流れが示された。その後、開始と終了のキーフレームを生成し、LTX-2がその間を補完する形でビデオを生成する。
構図やレイアウトをBlender上で調整できるため、生成結果をAI任せにせず、意図した画作りを維持できる点が特徴だ。結果として、従来は数日かかっていた作業を短時間で完了できる。
Hyperlinkを使ったAIによるビデオ内のシーン検索
生成AIの活用は、制作だけでなく素材管理や情報整理にも広がっている。
Nexa.ai社のアプリ「Hyperlink」を用いたデモでは、PC内に保存された大量のビデオから、自然言語で目的のシーンを検索する様子が披露された。ファイル名ではなく、映像内の人物やオブジェクト、発言内容などを指定して検索できる点が特徴だ。
例えば「ヒューマノイドロボットと一緒にいるジェンスン(Jensen with humanoid robots)」と検索すると、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが最近の基調講演などでロボットと共に登場するシーンが一瞬で検索されていた。
検索結果には該当箇所のサムネイルとタイムスタンプが表示され、目的のシーンへすぐにアクセスできる。日本語検索にも対応しているが、現時点では英語のほうが精度は高いという。
DGX Spark上のAIエージェントとマイクやカメラを通じて会話
最後に紹介されたのが、デスクトップAIスーパーコンピュータ「DGX Spark」上で動作するマルチモーダルAIエージェントのデモだ。音声による対話に加え、カメラ映像を通じた視覚情報の認識にも対応している。
デモでは、マイクを通じて話者とAIが音声で会話するだけでなく、ホワイトボードに書かれたロードマップをカメラを通じてAIが読み取り、その内容をマークダウン形式に整理してチャット欄に表示する様子も確認できた。
今回紹介されたAIエージェントは、NVIDIAのエンジニアがわずか1日で構築したものであるとのことで、公開されているPlaybookを利用すれば、同様の環境を比較的短時間で構築できるという。
まとめ:RTX PCは次世代ゲーミングとローカルAIを同時に担う基盤に進化
今回の説明会とデモを通して強く感じられたのは、GeForce RTXを搭載したPCの立ち位置が、大きく変わり始めているという点だ。RTX GPUは、単にゲーム性能を高めるためのパーツではなく、ローカル環境でAIを動かしたり開発したりするための中核的な基盤へと役割を広げつつある。
DLSS 4.5やBlackwellアーキテクチャが示したのは、4K・240Hz以上を前提とした次世代のゲーム体験だ。高いフレームレートと高画質を同時に実現することで、これまで負荷が高すぎて難しかった表現も、日常的に使える環境が現実味を帯びてきた。
一方で、量子化技術やメモリ活用の工夫によって、従来はデータセンター級とされてきた大規模AIモデルが、一般的なRTX搭載PCでも実用的に動作することも示された。ローカルAIとクラウドAIの差は、急速に縮まりつつあるといえるだろう。今回のデモ全体を通して、その変化は強く印象に残った。
また、生成AIを制作現場のワークフローに組み込み、作業工程そのものを短縮する取り組みや、DGX Sparkのような開発者向け環境によってAI開発のハードルを下げようとする姿勢からは、AIを一部の専門分野だけのものにしないというNVIDIAの狙いも見えてくる。RTX PCを軸としたソフトウェアとハードウェアのエコシステムが、アップデートによって継続的に進化していく点も強調されていた。
これら一連の発表とデモが示していたのは、GeForce RTX搭載PCが、最新ゲームを楽しむためのマシンであると同時に、プライバシーと高性能を両立したローカルAIの実行環境であり、さらに開発や制作の拠点へと変わりつつあるという現実だ。RTX 50シリーズ世代を見据えたNVIDIAの取り組みは、PCが果たす役割そのものを、次の段階へ押し広げようとしている。
