3月23日、英Nothing Technologyは、新型完全ワイヤレスイヤホン 「Nothing Ear (2)」 を発表した。
価格は22,800円(税込)。3月23日(木)より、Nothing公式サイトおよびKITH Tokyoにて先行販売を開始する。また、3月30日(木)からグローバルパートナーを通じて全国販売を開始する。発売に先駆けて、3月28日(火)より予約受付を開始する。
発表に先駆けて、Nothing Technologyより事前に 「Nothing Ear (2)」 を提供してもらい1週間ほど試用することができたため、本稿では 「Nothing Ear (2)」 のレビューをお届けしたい。本製品が気になっている方には、ぜひ購入の参考等にしていただければ幸いだ。
デザインについて
「Nothing Ear (2)」 は、英Nothing Technologyが開発する完全ワイヤレスイヤホン第3弾。先代の 「Nothing Ear (1)」 にさまざまなアップグレードを加えたことで、よりプレミアムな製品に仕上げたモデルになっている。Nothingは同イヤホンに対して、“史上最高傑作” と謳っており、そのクオリティにかなりの自信を持っているようだ。
Ear (2)の注目ポイントのひとつは、なんと言ってもオシャレなデザイン。Nothingブランドではお馴染みのスケルトンデザインが、イヤホン本体と充電ケースの両方に採用されている。
まずは充電ケースのデザインからチェックしていこう。正方形のデザインが採用されていて、片手で握れるくらいのサイズ感。角は丸みを帯びていて、持ったときに手に馴染みやすい。
Nothingによると、ケースのデザインは従来のEar (1)のものを踏襲しつつ、より洗練されたデザインを目指して作られたという。これまで4つのパーツで構成されていたケースを3つのパーツで構成し、よりソリッドなデザインになったとのことだ。
また、「ケースは小さい方が良い」 というユーザーからの フィードバックを受け、ケースは質量的に30%小型化しているとのことだ。
側面にはケース本体を充電するためのUSB Type-Cポートが搭載されていて、隣にはペアリングボタンが配置されている。
ケースはコンパクトミラーを開くように蓋が開けられる仕組みになっていて、蓋を開けるとイヤホン本体にアクセスできる。
イヤホン収納部の底には、左側には白色、右側には赤色の丸い印が付けられている。この印はイヤホン左右の印と対応しているため、どっちの穴にどっちのイヤホンを収納すればいいのか一目瞭然だ。
Ear (2)のイヤホン形状にはカナル型が採用されていて、イヤーピースでガッチリ物理的に遮音&アクティブノイズキャンセリングで更なる静けさを生み出す仕組みだ。アクティブノイズキャンセリングの効果についてはまた後ほど詳しく紹介する。
実際に装着してみた。カナル型ということでイヤーピースがしっかりと耳の中に密着しており、多少ヘドバンしてみてもイヤホンが落ちそうになることはなかった。
Ear (2)はイヤホン本体がIP54相当、充電ケースがIP55相当の防水性を持っていることもあり、ジョギングなどの運動時の使用にも向いている。滝のような雨でなければ、ぐずついた天気のなか使用することも可能だろう。
イヤホンのステム部分は、中の基盤などがわずかに見えるスケルトンデザインが採用されている。このオシャレ感とガジェット感がちょうど良い具合に混じりあったユニークなデザインが筆者としてはとてもお気に入りだ。
ステム部分にはプレスコントロールが採用されており、指でステムを挟むようにプチッと押すことで、曲送りやノイズキャンセリングモードの切り替え、音量調節などができる。
ノイズキャンセリングモードは、プレスコントロールの長押しで切り替えが可能だ。
個人的に注目していただきたいのが、ノイズキャンセリングモードにすると 「スポンッ」 と蓋が閉められるような効果音がして、逆にトランスペアレンシー (外部音取り込み) モードにすると 「はぁー><」 と女性がリラックスして息を吐いたような効果音がするところ。
どのモードに変更したかが直感的で分かりやすく、しかも 「〇〇モード」 のようにモード名で伝えたり、ただ機械的な電子音だけで表現していないところに細かいこだわりが感じられる。
ちなみに、どちらのモードも完全にオフにしてしまうと、「ブツッ」 と電源が途中で切れたような音がする。
接続方法・バッテリー持ちなどの仕様
Ear (2)は、Bluetooth経由でスマートフォンなどのデバイスと接続する。Android端末のGoogle Fast Pair、Windows端末のMicrosoft Swift Pairに対応しているため、対応端末はスムーズに接続可能だ。
また、最大2つのデバイスとペアリングできる 「デュアル接続」 機能も利用可能。たとえばスマートフォンとノートPCの両方に接続しておけば、スマートフォンに電話がかかってきたときにステムのプレスコントロールを1回押しするだけで通話を開始し、再度プレスコントロールを1回押しすれば、通話を終了してノートPCの音楽を自動で再生開始するなど、賢いデバイス切り替えが利用できる。
「Nothing X」 アプリを使うとデバイスとの接続手順がわかりやすい上に、後々カスタマイズなどで必要になるため、初めてEar (2)とデバイスをペアリングする際にはまずはアプリのダウンロードを。
Ear (2)には、他のNothingイヤホンと同様に 「低レイテンシーモード」 というモードが用意されており、オンにすることで音声の遅延を最低限に抑えることができる。音ゲーなどシビアな判定を求められるゲームや、YouTube視聴時などの音ズレが気になるときに便利な機能だ。
ちなみに、Nothing Phone (1)でゲームをすると、自動で低レイテンシーモードが起動するようになっている。
Ear (2)のバッテリー持ちは、イヤホンとバッテリーケース併用で最大36時間。先代モデルが33時間だったことから、約3時間伸びたことになる。イヤホン単体ではANCなしで6時間、ANCありで4時間強となっている。先代モデルではANCなしで5時間の再生が可能だったことを踏まえると、バッテリー持ちは良くなったと言って良いだろう。
なお、10分の充電で最大8時間再生できる高速充電に対応するほか、最大2.5Wのワイヤレス充電にも対応している。Nothing Phone(1)のようにリバース充電に対応する製品に置くことで、給電することもできる。
音質について
Ear (2)はハイレゾ品質の再生に対応する。Bluetoothのバージョンは5.3、LHDC 5.0コーデックをサポートし、最大24ビット/192kHzの周波数、最大1Mbpsの速度で送信できる。
内蔵ドライバーは、カスタムダイアフラムを採用した11.6mmのダイナミックドライバー。ドライバー径は先代モデルから変わっていないものの、ポリウレタンとグラフェン素材を組み合わせたことで、より深みのある低音とクリアな高音を実現できたとNothingは説明している。
実際に音楽を聴いてみたところ、まずは音のクリアさにとても驚いた。一音一音をハッキリと聞き取ることができる、鮮明なサウンドを楽しむことができる。
また、カナル型のノイズキャンセリング対応イヤホンは、耳の中で音の圧迫感を感じることがあるのだが、Ear (2)は密閉されているにもかかわらず、音が耳の外に抜けていくような感覚があり、どんな楽曲でも違和感を感じることなく聴くことができた。
音質について筆者なりに表現すると、とにかく豊かで素晴らしい低音の土台の上に中〜高音がバランスよく乗っている感じ。
低音は 「強い」 というよりは、漬物石のように 「どっしり」 しているという表現の方がピッタリとしていて、中音〜高音も含めて音全体に落ち着き・まとまりを与えてくれている。
ボーカルは他の音に負けてしまうことがないよう、自然な範囲で強調されているように感じた。歌が入った楽曲はボーカルの声が映えることで、パリっとした印象に。筆者が聴いた楽曲の中では、マルーン5など、高めの男性ボーカルの楽曲との相性が良さそうだった。
ライバル社で言えばAppleが真っ先に上がりそうだが (実際、Nothingへの乗り換えはiOSユーザーが多いようだ) 、AirPods Pro (第2世代) と比べるとやや特徴的な音になっているのがEar (2)だ。シンプルで忠実な音を再生するのに長けているのがAirPods Pro (第2世代) の特徴だが、一方でその味付けに物足りなさを感じることもある。
Ear (2)は、AirPods Proに比べるとすこし重めのどっしりとした音になっているため、多少力強さを感じたいならEar (2)を選んでみても良いのでないかと思えた。
なお、Ear (2)には個々のユーザーの音の好みを実現するため、パーソナルサウンドプロファイルの作成が可能だ。専用アプリ 「Nothing X」 からヒアリングテストを実行することで、自分のサウンドプロファイルを作成し、ユーザーの聴力にあわせたリアルタイムのイコライザー調整ができる。自分に合った音で楽曲を楽しみたいなら、ぜひアプリから設定をしておこう。
ノイズキャンセリング性能
Ear (2)には、アクティブノイズキャンセリング (ANC) 機能と、トランスペアレンシー (外部音取込み) 機能が搭載されている。
アクティブノイズキャンセリング (ANC) は、ユーザーの外耳道の形状にあわせたパーソナライズド・アクティブ・ノイズ・キャンセレーションと、ノイズ低減レベルを周囲の雑音量などに合わせて自動調節されるアダプティブ・モードで、最大40dBのノイズ低減を実現。常に静かな環境で音楽を聴くことができるとNothingは説明している。
Ear (2)のアクティブノイズキャンセリングではどれほどの音を消し去ることができるのか。実際に色々な場所で使ってみた。
まずは自宅にて。エアコンの風の音や水槽のポンプ音がする部屋の中で、MacBook Proのキーボードで文字を入力しながら使ってみたところ、これらの音はかなり小さく聞こえる程度まで消し去ることができていた。作業中の不快感はほぼゼロ。
次に近所の道路工事現場で検証。轟音を上げて工事が行われているすぐ近くで検証したのだが、「遠くで工事している」 程度に。もちろん無音とまではいかなかったが、音楽を流してしまえばほぼ気にならないくらいまでは工事音を軽減できていた。
たくさんの人の声が聞こえる雑踏の中ではどうだろうか。とある空港の到着ロビーで検証。飛行機が到着した直後で、誰かを呼ぶ声や荷物のカートの音、アナウンスの音声などたくさんの音が混じり合う中で検証したところ、アナウンスや人の声はまだ聞き取れたが、足音やカートの音はほぼ聞こえないくらいまで消すことができていた。
それでは、ノイズキャンセリング性能ではかなり高い評価を得ている 「AirPods Pro (第2世代)」 と比較するとどうか。人の声などはEar (2)もAirPods Pro (第2世代) に負けないくらい軽減できていたが、低い音に関してはやはりAirPods Pro (第2世代) の方がしっかりと音を消せていたことから、残念ながらノイズキャンセリング性能はAirPods Pro (第2世代) の方が上、という結論になった。
また、イヤホンをしたままでも外の音をハッキリと聴くことができるトランスペアレンシー機能は、ちょっと音がこもりがちではあるものの、電車のアナウンスは鮮明に聞き取れていたし、人との会話も問題なく可能だった。実用性は十分と言えるだろう。
まとめ
Ear (2)は、Nothingにとってブレイクスルー的な存在だった、先代のEar (1)の遺伝子をしっかりと継ぎつつも、細かい改良が施されて使いやすくなり、音も格段に良くなった。Nothingの言う “史上最高傑作” という言葉には納得しかないというのが筆者の素直な意見だ。
Nothingいわく、Ear (1)はiOSユーザーにとても興味を持ってもらった製品であり、Ear (2)もiOSユーザーをターゲット層のひとつとして捉えた製品であるという。そうなると、どうしても比較対象として上がってくるのが、おなじノイズキャンセリング機能を搭載したAirPods Proだ。
iPhoneなどApple製品との連携力や、ノイズキャンセリング性能に関してはAirPods Proが勝るが、その一方でユニークなデザインや個性的な音のチューニングが楽しめて、かつ安く購入できる点ではEar (2)に軍配があがる。
同じiOSユーザーをターゲットにしているイヤホンであっても、AirPods ProとEar (2)はハッキリと差別化されていることから、(大量のApple製品に囲まれているなどAirPodsにこだわる理由がある場合を除いて) 好みや予算によってはEar(2)を選ぶのも選択肢としては十分にアリではないだろうか。
少なくとも、筆者はAirPods Pro (第2世代) を持ってはいるが、今回のレビューを通して、Ear (2)も使い続けたいと思えるほど高いクオリティを持ったイヤホンだったと感じている。今回のレビューで少しでも興味を持ってもらえたなら、Nothing曰く “史上最高傑作” であるEar (2)を購入の選択肢のひとつに加えてみてほしい。