
9月18日、Nothingはワイヤレスイヤホンの最新ハイエンドモデル「Ear (3)」を正式発表した。
Ear (3)の価格は25,800円(税込)。発売日は9月25日で、本日よりNothing公式サイトおよびAmazon.co.jpで予約受付を開始する。
本製品の発表に先立ち、報道関係者向けにメディアブリーフィングが開催され、本製品の特徴や魅力が紹介された。また、ひと足さきに実機を貸与してもらい数日間試すことができたため、本稿ではEar (3)の試用レビューをお届けしたい。
なお、Ear (3)の登場に伴い先代モデルとなる「Ear」については今後も併売される予定となっている。
デザインと装着感:透明感と金属質感の融合。快適さも進化
Ear (3)は、ブランドのアイデンティティであるシースルーデザインを継承しつつ、航空機グレードのアルミ素材を取り入れることで、デザインと耐久性を刷新。さらに音質やノイズキャンセリング、通話品質、AI連携なども幅広く進化を遂げているのが特徴だ。
詳細な紹介に入る前に、発売前に話題になっていたネーミングについて。NothingのEarシリーズは「Ear (1)」「Ear (2)」が発売したのち、第3世代モデルはナンバリングがつかない「Ear」となり、再び今回の最新モデルでナンバリングが復活したことで、第4世代モデルの名称が「Ear (3)」となった。
Nothing Japanの黒住吉郎氏によると、Earシリーズは厳密にはナンバリングは関係なく、発売した順番に第1世代、第2世代……となるため、今回の「Ear (3)」が第4世代モデルであり、第3世代である「Ear」の後継モデルにあたるという認識になるようだ。
デザインは、イヤホン本体とケースの両方がシースルーな外観を継承しつつも、新たに金属部品を採用したことで、新しいデザイン言語にチャレンジした。カラーはホワイトとブラックの2色展開。今回のレビューにあたってはホワイトモデルをお借りした。
イヤホンを収納・充電するためのケースはリサイクルアルミニウムとプラスチックを融合させたユニボディ構造になっていて、27工程以上の高精度な製造プロセスで樹脂と接着剤なしで一体化することで、誤差わずか±0.03mmという高精度を実現した。
アルミニウム製の土台は触ると滑らかで、以前よりも高級感が感じられるように。内部にはアンテナ、スーパーマイク、ストラップホールが埋め込まれている。
イヤホン本体は、0.35mm厚のメタル製アンテナをステム部分に搭載。スタイリッシュな見た目になっただけでなく、電波感度も向上しており、従来比で電波出力が15%、感度が20%向上している。
装着面では、人間工学に基づき数万件の耳型データを解析したことで、より耳の中に自然に収まるようになっているという。通気システムにより耳圧を軽減し、シリコンイヤーチップでフィット感を高めている。
実際に装着してみると、長時間使用しても耳が痛くなりにくく、軽くて安定感があるため、歩いたり運動したりしてもズレる心配がほとんどない。また、耳の奥にしっかり収まるため、音の定位感も非常にクリアに感じられる。
なお、イヤホン本体とケースはどちらもIP54の防塵・防滴性能を備える。急な雨や運動時の汗も気にせずに使えるはずだ。
音質: 新設計ドライバーで高音も低音もクリアに
Ear (3) には、新設計の12mmカスタムドライバーが搭載されている。振動板の表面にはパターンを入れたことで、音の歪みが0.6%→0.2%まで低減。
さらにドーム部分には軽量で剛性の高いPMIを採用し、その周辺にはTPU素材を用いたことで、さらに歪みを抑えつつ、高音域の解像度は最大4dB明瞭になり、低音も最大+6dB強くなったことで、よりシャープな高音とディープな低音を実現した。
実際に装着して楽曲を聞いてみたところ、ハイハットなどの高音が非常に明瞭に聞こえ、かつ低音は力強さがありつつも、広がりすぎず締まった音になっていたため、全体的にバランスも良く、とても聴きやすいサウンドに仕上がっていた印象だ。
再生周波数帯域は20Hz〜40,000Hzで、LDAC対応によるハイレゾ認定も取得している。低レイテンシーにも対応するため、ゲームなどのプレイ時の遅延もほとんど気にならないはずだ。
ノイズキャンセリングについては、約600msごとに環境を検知し補正するリアルタイムアダプティブ方式を採用し、最大45dBの性能を実現。これは業界でも最高レベルに近いノイズキャンセリング性能だ。
メディアブリーフィングからの帰りに試してみたところ、通勤電車の走行音やオフィスのざわめきが大幅に抑えられていた。
また、外音取り込みモードも利用可能だ。外音取り込みモードに切り替えると、自然な音で周囲の声やアナウンスが聞こえる。切り替えもストレスなく行えるので、コンビニでちょっとした買い物をする際にイヤホンを外さなくとも自然に会話することができるだろう。
通話:骨伝導×AIで、より聞き取りやすい声に
通話機能に関しては、2つの大きな進化があった。
まずはイヤホン本体のマイクについて。今回のEar (3) では3つの指向性マイクに加えて、顎の骨の振動を感知するボイスピックアップユニットを搭載したことで、同ユニットが振動を電気信号に変換してマイクの音と組み合わせることで、風切り音や環境ノイズを低減し、クリアな音声を相手に届けることができる。
これは顎の動きをいくつか検知することでどんな音が出ているかを想定し、マイクで拾っている音声と合わせることで実現しているという。ユーザーが使う言語や個人差による差はほとんどないとしている。
さらに、実際の使用シーンをもとにしたシナリオを2000万時間以上学習したAIによる環境ノイズキャンセリングが、不要な音をさらに除去し、よりクリアな音を相手に伝えてくれる。
実際にノイズの多い駅構内で友人とFaceTimeオーディオで通話してみたところ、流石にあちらから気づいてもらうことはできなかったものの、イヤホンを変えた旨を伝えたところ普段との違いに気づいてもらうことができた。その日は電車の遅延などのアナウンスが駅内で頻繁に流れていたのだが、友人が言うにはほぼ気にならないレベルで聞き取りやすかったとのことだ。
スーパーマイク:持ち歩ける“会話デバイス”として進化
通話に関するもう一つの進化が、ケースに搭載した「スーパーマイク」だ。ビームフォーミング技術を搭載した2基の超小型高性能MEMSマイクにより、最大95dBの雑音を除去しながらクリアな音声を記録する。
同機能は基本的にはイヤホン本体を耳に装着している状態で使うもので、ケース本体のTALKボタンを押すことでケース側のマイクがオンになる。ケース側のマイクが使われていることは、ケース側面のLEDインジケーターが光ってくれるのでわかりやすい。
短い通話やボイスメモ程度であればボタンをプッシュし続けながら会話すればOKで、もし長くなるようであれば2回押しすれば指を離してもケース側のマイクを使い続けられる。
スーパーマイクでの通話も友人に協力して試してみた。ブリーフィングの段階で指向性についてはかなり強いと聞いていたが、実際に口元から15センチくらい離した状態で話しても、音声は綺麗に聞き取ることができるくらいになっていた。
スーパーマイクの性能は良いが、指向性の関係でピンマイクのように首元に固定すると近すぎてしまい、首からネックレスのように下げると逆に遠すぎてしまう。ブリーフィングでも「手で持って自然に肘を曲げ、口元付近に合わせたときがベスト」とアドバイスをもらっていたが、まさにその通りに使うと最も良い音で通話できていた印象だ。
スーパーマイクで収録した音は、Bluetooth経由でケースからイヤホン本体を経由して、スマートフォンに送られる仕組み。音声の入力ソースはケース側とイヤホン側とで2つになっており、スマートフォンに送られる段階で1つにまとめられるようだ。
NothingのスマートフォンであればEssential Spaceと自動で連携し、録音した通話を保存してすぐに文字起こしするということもできる。Nothing以外のスマートフォンであってもスーパーマイクはきちんとマイクとして認識され、同じように録音できるとのこと。
スーパーマイクは、通常の電話アプリでの通話はもちろん、ZoomやTeamsなどの会議アプリ、WhatsAppやWeChatなどのメッセージアプリで利用できる。
録音の場合は、ネイティブのボイスメモアプリに加えて、Blackmagicなどのサードパーティ製ビデオアプリをサポート。ただしWhatsAppやWeChat、Snapchatのアプリ内音声メッセージやネイティブビデオ録画に関しては現時点ではサポートしない。
Nothing Xアプリ、バッテリーについて
Nothing Xアプリでは、聴力テストに基づくパーソナルサウンドプロファイルや8バンドEQを用意。Nothing Phoneとペアリングすれば、音声でChatGPTを呼び出せる。
バッテリー容量はイヤホン本体が55mA、ケースが500mAh。イヤホン単体で使った場合、ANCオンでは最大5.5時間、ANCオフでは最大10時間利用可能。ケース併用の場合にはANCオンでは最大22時間、ANCオフでは最大38時間利用可能だ。
使っている最中にバッテリーが少なくなってきてしまっても、わずか10分間の充電で最大10時間の使用ができるクイック充電に対応する。
先日、ドイツ出張の際に使ったフライトで最も長かったのが12時間で、これを充電なしで使い続けるのは厳しいと思うが、途中で出てくる機内食の時間などにちょこちょことケースで充電をすれば、意外とANCオンでも使い続けられそう。
まとめ
今回のブリーフィングでは、Nothing Japanの黒住氏から「Nothing Ear (3)は生活の中でどうやってイヤホンとつながっていくかを実現したプロダクト」だと紹介があったが、実際に使ってみると、確かに日々の生活に溶け込むような使いやすさが至るところに感じられる。
イヤホンの本質とも言える音質については文句なしの仕上がりで、ノイズキャンセリング・外音取り込みモードも違和感なく快適に使うことができる。スタティック空間オーディオで立体的な広がりを表現できるため、映画やゲームでも一段上の臨場感を楽しめる。
そしてEar (3)を特にユニークな存在にしているのが、充電ケースに内蔵された「スーパーマイク」だ。ケースそのものが高性能マイクとして働き、環境ノイズを最大95dBまで抑える仕組みは、他のイヤホンでは見られない発想だろう。
イヤホン側の顎の骨の振動を感知するボイスピックアップユニットやAIノイズキャンセリングと組み合わせれば、雑音の多い場所でも相手にクリアな音声を届けることができる。
この特徴は、オンライン会議やリモートワークが当たり前になった今、特に大きな意味を持つ。オフィスのオープンスペースやカフェのように騒がしい環境でも、相手にしっかり声を伝えられるのは心強い。
また、ボイスメモの自動文字起こし機能と合わせれば、取材やアイデアメモを効率的に残すこともできる。日常的に通話や録音を使う人にとって大きなアドバンテージになるため、筆者のような記者はもちろん、学生やクリエイターにも強くオススメしたい製品だと感じた。