NECPC群馬事業場に見るPC修理の最前線。到着から24時間で直す「1日修理」の現場を視察

2025年12月5日、筆者はNECパーソナルコンピュータ(NECPC)の群馬事業場で行われたプレスツアーに参加してきた。

群馬県太田市にあるこの拠点は、NECブランドおよびレノボブランドのPCを支える国内最大級の保守・サービス拠点だ。かつてはPCの生産工場として稼働していたが、現在は修理、LCM(ライフサイクルマネジメント)、部品管理、コールセンター機能までを担う「サービスマザーサイト」として位置付けられている。

今回のツアーでは、法人向けPCにおける設計・開発・生産から販売、サポートに至るまでの取り組みを背景に、NECPCのサービス体制や運用の実態、そして企業にPCが導入され運用・保守されていく過程を支える現場が紹介された。

現地でまず強く印象に残ったのは、ここが単なる修理拠点ではないという点。群馬事業場では、到着から24時間以内に修理を完了させる「工場内1日修理」を高い水準で維持しながら、AIを活用した故障診断や、企業ごとの要件に合わせたPCキッティング、さらにはデータ消去や物理破壊までを一気通貫で行っている。

今回の見学では、工場棟を巡りながら、こうしたオペレーションの現場を実際に見ることができた。本稿では、NECPC 群馬事業場がどのように法人向けPCの運用を支えているのか、ツアーで見学した内容をもとにレポートしていく。

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NECPC「群馬事業場」の役割とは

NECパーソナルコンピュータ 執行役員 サービス事業本部長 小林大地氏

NECパーソナルコンピュータの群馬事業場は、NECブランドおよびレノボブランドのPCを支える国内最大の保守・サービス拠点だ。所在地は群馬県太田市。

現在は「サービスマザーサイト」と呼ばれ、法人向けPCについては、両ブランドで導入から修理、運用、廃棄までライフサイクル全体を担う中核拠点として機能している。また、個人向けPCについても、NEC・レノボ両ブランドの修理業務を担っている。

もともとこの場所は、1984年に「群馬日本電気」として設立され、名機として知られるPC-9800シリーズなどを生産してきた工場だった。2002年に生産機能を終えたあと、保守・サービス拠点へと大きく舵を切り、長きにわたって蓄積してきた製造と修理のノウハウを、現在のサービスへと進化させてきた。

NECパーソナルコンピュータ サービスセールス事業本部 ポートフォリオイネーブルメント 佐々木隆氏

群馬事業場を象徴する取り組みが、PCが到着してから24時間以内に修理を完了し出荷する「工場内1日修理」だ。工程全体が高度に標準化されており、2016年度以降は1日修理率95%以上という高い水準を維持している。多くのケースで、引き取りから返却まで実働3日程度で完結するという。

このスピードを支えているのが、現場に深く組み込まれたAIと、徹底した内製化だ。過去の修理データを学習したAI故障診断により、熟練者でなくても短時間で故障箇所を特定できる体制を整えているほか、高度な技術が求められるマザーボード修理の約8割を自社内で対応している。海外へ送らずに済む分、修理期間の短縮と品質の安定につながっている。

NECパーソナルコンピュータ サービス事業本部 フィールドサービス グループマネージャー 栗原一男氏

さらに群馬事業場は、修理だけの拠点ではなく、企業がPCを導入する際のキッティングや資産管理、運用中の保守、そして役目を終えた後のデータ消去や廃棄までを一括で担うLCM(ライフサイクルマネジメント)サービスの中心拠点でもある。

ここで得られた修理データや不具合情報は、山形県米沢市にある設計・生産部門へとフィードバックされ、次期モデルの品質向上や壊れにくい設計に反映されていく。製造と販売、そして現場の保守が分断されがちなPCビジネスにおいて、群馬事業場は「製販一体」を現場レベルで成立させる司令塔と言える存在だ。

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現場で見た「PCを止めない」ための仕組み

今回のプレスツアーでは工場棟が公開され、NECPC 群馬事業場がどのようにして法人向けPCの安定運用を支えているのかを、実際の現場を見ながら確認できた。

PC修理エリア

まずは、群馬事業場の中核とも言えるPC修理エリアについて。ここでは「到着から24時間以内に修理して出荷する」という工場内1日修理を前提に、作業工程が緻密に設計されている。

届いた修理品は、まずはAI故障診断が行われる。過去に蓄積された膨大な修理データをもとに、不具合内容を入力すると、わずか10秒ほどで故障箇所の候補が提示される。属人的になりがちな初期診断を標準化し、修理のスピードと精度を両立させる狙いがある。

診断工程では、より踏み込んだ検証も行われている。0〜40℃の環境を再現できる恒温槽で温度依存の不具合を再現したり、ブラックライトを使って液体侵入の痕跡を確認したりと、原因を確実に特定するための設備が揃っている。

中でも特徴的だったのが、マザーボード修理の内製化だ。BGA部品の交換やX線によるハンダ状態の確認といった高度な作業を、群馬事業場では日常的な工程として組み込んでいる。

この取り組みは、2007年に始まった。それ以前は、マザーボード修理を台湾や中国のODMベンダーに委託しており、修理のたびに基板を海外へ輸送する必要があった。しかし、それだと時間やコストの面で課題があったことから、前述のとおり群馬事業場での内製化に踏み切り、現在では修理案件の約8割を自社内で対応している。

内製化を支えているのが、専用装置と高度な技術だ。BGA部品の交換には自動化装置を導入し、従来と比べて作業効率を大きく改善している。加えて、X線によるハンダ状態の確認や、オシロスコープを用いた不良部品の特定など、精密な検査工程も整備されており、熟練エンジニアによる確実な修理が行われている。

こうした体制により、基板修理にかかる期間は大幅に短縮され、初期不良の発生率も3分の1にまで低下したという。海外輸送によるタイムロスを無くしたことで、修理スピードと品質の両立が可能になり、工場内1日修理という高い水準を支えている。

さらに、修理現場で得られた不具合データは設計・開発部門へと共有され、次期モデルの品質向上や不具合の未然防止に活かされている。群馬事業場における基板修理の内製化は、安定した修理体制と製品品質を支える基盤となっている。

また、修理品や部品の搬送には自律搬送ロボット(AMR)が活用されており、エリア間の移動を自動化することで、作業者が診断や修理そのものに集中できる環境が整えられていた。

LCMサービス・キッティングエリア

法人向けPCを「すぐ使える状態」で届けるためのLCM(ライフサイクルマネジメント)サービスの現場も見てくることができた。

キッティングエリアでは、PCの開梱からOSインストール、顧客ごとの個別設定、管理用ラベルの貼付までが一貫して行われている。特徴的なのは、作業ミスを前提にしない設計だ。誰が作業しても同じ品質になるよう、専用の治具でラベル位置を固定したり、カメラで作業内容を判定したりと、随所に工夫が見られる。

梱包後には、総重量を計測する検品工程も用意されており、付属品の入れ忘れといった人的ミスを物理的に防いでいる。大量導入を前提とする法人向けPCでは、こうした地味だが確実な工程が、運用現場でのトラブル削減につながる。

LCMサービスは導入時だけで終わらない。役目を終えたPCについては、ソフトウェアによるデータ消去に加え、ストレージを物理的に破壊する工程も用意されている。セキュリティ要件の厳しい企業にとって、ここまで含めて任せられる点は大きい。

保守部品倉庫

NECPC 群馬事業場には、約7,500平方メートルという広大な保守部品倉庫がある。サッカーコート1面分に相当するこの倉庫には、1万種類以上、100万個以上の部品が保管されている。

この倉庫では、修理部門からのリクエストに対し、13分以内に部品を届けることを前提に、在庫管理とピッキングの仕組みが構築されている。1日修理を成立させるためには、診断や修理技術だけでなく、こうした物流のスピードが欠かせないことがよく分かる。

保守部品はすべて群馬センター倉庫から発送

修理を超えた「司令塔」としての群馬事業場

今回のプレスツアーを通じて見えてきたのは、この群馬事業場は単なる修理工場ではなく、法人向けPC運用を支える司令塔として設計されているという点だ。

コールセンターに集まる問い合わせデータはAIによって分析され、不具合の予兆検知や品質改善に活かされる。その情報は、山形県米沢市の設計・生産部門へとフィードバックされ、次の製品へ還元されていく。修理やサポートの現場で得られた知見が製品開発と直結している点は、製販一体体制ならではだ。

こうした取り組みの背景には、NECPCが「PCを売る会社」から、「PCを使い続けるためのインフラを提供する会社」へと軸足を移していることがある。法人向けPCの価値は、スペックや価格だけで決まるものではない。トラブル時にどれだけ早く復旧できるか、導入や入れ替えの手間をどこまで減らせるか、そして廃棄やデータ消去まで含めて安心して任せられるかといった、運用面の完成度が問われる。

群馬事業場は、そうした要求に正面から応えるための拠点だ。設計・生産と、修理・サポートが分断されがちなPCビジネスにおいて、現場のリアルなデータを次の製品へと循環させる仕組みは、NECPCの大きな強みと言えるだろう。

PCが業務に欠かせない存在である以上、「壊れたら直す」だけでは不十分だ。「止めないために先回りする」。群馬事業場は、その発想転換を現場レベルで体現する拠点だった。

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NECPC取材
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