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『Microsoft Flight Simulator 2024』全貌が遂に明らかに。米グランドキャニオンで開催されたメディアプレビューレポ&簡易的な試遊レポもお届け

いよいよ発売が迫ってきた『Microsoft Flight Simulator 2024』。空の旅がますますリアルになるとされる本作は、昨年の発表時、そして今年6月の 「FlightSimExpo 2024」 を除いてほとんど情報が明らかになっておらず、具体的にどのように進化を遂げるのか気になっている方も多いのではないだろうか。

そんな『MSFS 2024』だが、今月12日にいよいよ動きがあった。米アリゾナ州にあるグランドキャニオンにおいて、本作のメディア向けグローバルプレビューイベントが開催された。

同イベントには世界中からメディアが招待され、日本からも弊媒体を含めた一部メディアが参加した。イベント内では『Microsoft Flight Simulator 2024』の全貌が明らかにされると同時に、約1時間程度の試遊をすることもできた。

本稿はそのレポート記事となる。イベント内で明らかにされたことを詳しくご紹介できればと思う。

※本記事に掲載されている『Microsoft Flight Simulator 2024』の体験および感想は、Xboxからの招待によるイベント参加を通じて執筆しています。

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遂にベールが解かれた『MSFS 2024』詳細。グラフィック、エアロダイナミクスの刷新、四季の概念や注目のキャリアモードなども明らかに

イベントは、グランドキャニオン国立公園手前のタサヤンという小さな町にあるホテル内で行われた。別稿で詳しくお伝えするが、早朝からハンヴィーに乗せられグランドキャニオンを巡るアクティビティに参加したのちのプレゼンテーションとなったため、取材陣もやや身体が温まってきた感じの状態 (早朝のグランドキャニオンは寒かったため筆者の場合、身体はそれなりに冷えていたが……!!) でのスタートとなった。

プレゼンテーションでは、『Microsoft Flight Simulator 2024』の開発スタジオであるAsobo Studioの責任者Jorg Neumann氏らが登壇し、本作の特徴や前作から進化したポイントについて紹介が行われた。

まずは、「Microsoft Flight Simulator」 シリーズの歩みについて紹介があった。同フランチャイズは、もともと1979年に米ソフトウェア会社SubLOGICが 「Apple II」 向けにリリースした『Flight Simulator 1.0』がはじまりで、その後1982年にMicrosoftに買収されてから、タイトル名に 「Microsoft」 を冠した『Microsoft Flight Simulator』が展開されるようになった。そこからカウントすると、なんと42年に及ぶ長い歴史をもつ超老舗タイトルということになる。

この42年の間で11作品が展開され、延べ45万人以上のプレイヤーがパイロットとして本作をプレイしてきたほか、「Best Simulator of the Year」 も6回受賞している。

特に、前作の『Microsoft Flight Simulator 2020』は実写さながらのグラフィックスに、実物を動かしているようなフライト体験を実現しており、多くのユーザーを驚かせた。発売から2024年9月までに、50のアップデートを配信し、登場したLocal Legends/Famous Flyersは33機にものぼる。

そしてユニークユーザーは1500万人を達成。これは過去のフライトシミュレーションタイトルのなかで最も大きな数字となる。

また、累計のフライトセッション数は10億となり、過去12ヶ月だけでも3億のセッションがプレイされたという。そのなかで、ユーザーからは多くのフィードバックを得ることができたという。

たとえば、パフォーマンスや不具合の改善や、フライトモデルや航空機のシステムモデリングについて改善が必要……など。

また、航空機のバリエーションを増やす (特にヘリコプター) ことや、キャリアモードについて何らかの進行システムを導入したり、高度が低いときの地表のグラフィックスはよりリアルであることを望む声も寄せられたという。これらの声を受けて作ったのが、今回の『Microsoft Flight Simulator 2024』になる。

まずは軽量化。従来までは機体や空港、POIs (ポイント・オブ・インタレスト) 、メッシュ、テクスチャなどはユーザーのハードウェア上にインストールされ、アップデートが入るたびに保存するデータ量が増える仕組みだった。

しかし、『MSFS 2024』ではデータは基本的にクラウド上に移行され、ユーザーがフライトごとに必要とするデータを必要なタイミングでオンデマンドでダウンロードする仕組みを採用したことで、大幅な軽量化を実現。

具体的には、クライアントソフトは159GB → 23GBへと軽量化し、ダウンロードにかかる時間も 「2時間」 からわずか 「5分」 へと短縮されている。

クラウド上には2ペタバイトを超えるデータが存在するという。これには、Bingから取得したデータや、セルに基づいたベクターデータ等が含まれ、これらがキャッシュを通じてシミュレーターにダウンロードされる仕組み。

ちなみに、『MSFS 2024』の要求スペックはほぼ前作の『MSFS 2020』から変わっていないため、前作をプレイできていた方であれば安心して最新作をプレイすることができるはずだ。また、アドオンについても『MSFS 2020』のものは『MSFS 2024』で基本動作する設計になっているとのことだった。

本作は空力シミュレーションにもより一層こだわった。10cm〜1mの範囲で飛行機の表面のような小さなディティールから、数kmに及ぶ大気全体などをカバーするようになり、特にエアロダイナミクスについては航空機を取り巻くすべての部分で改良が行われ、従来までは1つの翼や胴体しか扱えなかったのが、本作ではダブルデッカータイプの機体の2つの翼や、2つの垂直尾翼がある機体などもモデル化できるように。

さらに、エンジンやプロペラ周りの空気の流れをシミュレートする新しいシステムにより、ヘリコプターや飛行機が生み出す乱気流などをより正確に再現することが可能に。ヘリコプターの場合はドーナツ型の気流が生まれる。こうした乱気流は、航空機が生み出してから約4分その場に影響を残し続けることになるという。

当然ながらマルチプレイにおいてもその影響は残る。同じように、水上飛行機の着水時や、機体にバナーを繋いだとき、ヘリコプターが貨物を持ち上げるときなどの挙動もかなり現実に近い体験ができるようになっている。

たとえば、イベント会場のすぐ近くにあるグランドキャニオンでは、崖を超えると空気の流れが変わり航空機はその影響を受けるなど。飛行中には、ありとあらゆる要素を考慮する必要がある。 

また、新たに 「ソフトボディシミュレーション」 の導入により、柔らかい素材もよりリアリスティックに再現されるように。気球だったら、バルーンのなかに冷たい空気が注入され、その後バーナーによって空気が加熱されるとバルーンの布部分もしっかりと膨らみ、同時に浮力が生まれる。

そして、気球が浮かびあがることで、気球とバスケットを繋ぐロープは一時的にテンションが減少し、最後にはまた引っ張られる。こうしたプロセスがリアルに再現されるのだ。

気球に関しては、膨張や収縮、対流、圧力に至るまで8,400のシミュレーションが動作し、バナーやパラシュートについてはリアルな “はためき” が生まれるように物理的なシミュレーションを行なっている。

本作では、地面のメッシュをより細かくすることで、飛行機が地面に着陸したときに地面のデコボコの影響をより顕著に感じられるようになった。これまではワイヤーのような線が地面に等間隔に引かれている程度だったのが、メッシュの細かさが約4000倍になったことで、かなり細かな表現が可能になっている。

当然ハードランディングするとギアに摩擦がかかったり、衝撃が生まれることもあるため、特に草地への着陸時にはデコボコが少ない場所を選ぶ必要があり、着陸前に上空を飛行しながら地面の状態をチェックするなどの対策を立てる必要があるだろう。

地面に生える草木は、航空機の生み出す風でリアルになびくようになっているほか、航空機が着陸したあとには車輪の跡などが残るといった要素も追加される。

さらに、樹木や岩、泥などのオブジェクトが前作から大幅に増えているなど、シミュレート以外にビジュアル面でも大きな進化を遂げている。

前述のように『Microsoft Flight Simulator 2024』は、グラフィックスの進化が見逃せない。

まず、前作の『MSFS 2020』で何度も行われたワールドマップの高精細化については今作も行われる。Bing MapsとMaxar Technologiesから提供される最新の衛生画像データを使用して、ゲーム内の地形や風景をリアルに再現。

これにデジタル標高モデル (DEM) を加えて、ゲーム内の地形 (凸凹や起伏) をより正確に再現する。例えばアフリカのキリマンジャロや、カザフスタンなど簡単に飛ぶことができない場所でも本作なら自由に飛び回ることができる。

『MSFS 2024』には新たな概念として 「バイオーム」 が導入される。世界全体で20以上のバイオームが用意され、そのバイオームに応じて植生などの環境が変わるという。

カナダやオーストラリアの大自然やアマゾン川、さらには日本や今回イベントが開催されたグランドキャニオンに至るまで、実際の風景に近い形で再現されるようになる。

また、今作では四季の概念が導入され、春・夏・秋・冬でそれぞれの地域は姿を変えることになる。秋になれば紅葉がはじまるほか、冬には雪が降る。特に冬時期については雪で航空機の挙動が変わることになるとのこと。摩擦が変わるためいつもより制動距離が長くなることに加えて、横滑りなども発生するとのことだ。

都市についてもアップデートされる。前作の時点でアップデートによって高精細化された都市数はすでに2倍程度になっていたが、『MSFS 2024』ではすでに一部都市は高精細化が行われているほか、前作同様に今後のアップデートで高精細化を進めていくとしている。

また、空港においても高精細化が行われる。各テクスチャの見直しや空港の内装の再現などさらなるクオリティアップを図った。さらに地上のテクスチャについても改良を行なっており、例えば滑走路のタッチダウンゾーンには航空機のゴムタイヤ痕を加えたり、駐機場には小さなクラックが入った部分があるなどリアリティを向上させている。

今作では、リアルなグラフィックにするためレンダリングも改善している。空に関しては、空や雲の色をよりナチュラルなものに近づけた。最も効果が感じられるシーンとしては日の出、あるいは日没の場面。太陽が低い位置にいるため赤やオレンジといった長い波長の光が強調され、キレイに描かれるようになった。また、嵐が来た時には太陽がまったく見えない日があるなど、その時の気象条件によって同じ光景は全くないという。

さらに人工的な照明については、フォトメトリック照明を用いて光源の強度・色温度がよりリアルに見えるように更新される。夜の空港には照明を設置。上記写真を見たら、かなりリアルになったことがお分かりいただけると思う。

空港では、実際にパイロット、CA、乗客などが忙しなく動いている様子も確認できる。各キャラクターについては開発陣も重点を置いたとし、色々な人種のデータを撮ってきてゲームに加えたという。

例えば、ケニアのナイロビの人には実際にその人たちが現地で来ている服を着せたり、その人たちが現地語で喋っている声を入れたりとかなり拘って作っている。なお、自身のアバターはキャラクタークリエイトが可能で、欧米、アジア、アフリカなど様々なバックボーンをもつキャラクターを作ることができる。

他にもオイルリグ (海上の油田掘削施設) やヘリポート、グライダー用のエアポートも実装される。オイルリグは世界952箇所、ヘリポートは1万箇所、グライダーは1万2千箇所あり、一部がハンドクラフトで製作されたものが用意されるという。

続いて、カンガルーやキリンといった野生動物は今作にも登場。種類が増えるだけでなく、動物に関する巨大なデータベースを作っており、どの地域にどれくらい分布しているのか、どのように動いているのかも再現しているため、より正確に再現できるようになったという。

また、登場する車両についても種類は増えるとのこと。特に大きく変わったのは、それぞれの国・地域に合った車両がなるべく出るようになっている点。例えばアフリカならアフリカで走っているような車両が登場するし、アジアであればアジアでよく乗られている車両が登場するとのことだ。

今作は船舶も多く登場する。パートナーを通じて20秒おきに現実のデータを持ってくるようになっているため、実際の航行データを用いたシミュレーションが行われるという。

コックピットのガラスに入ったスクラッチも再現

航空機についてもアップデートが行われる。まずはコックピットなどのガラスには、スクラッチ (傷) がつくようになる。

さらに、レイトレーシング技術を使って光の表現もより高度化しており、影をより細かく描写できるようにした。下記の写真だと少々分かりづらいかもしれないが、前作では全体的にぼんやりと影が入っている程度だったのに対し、今作では計器類の位置関係によって個別に影が入るようになった。

なお、従来までフライトプランニングは、シミュレーター外のツールを別途使う必要があったが、本作ではシミュレーター内で可能になり、操作が簡素化された。簡単なフライトはもちろん、複雑なルートの指定も、現実の航空会社のディスパッチャー (航空便計画担当者) とおなじ手法でプランニングが可能だ。

そのほかにも、フライト計画や天気・チャートの確認、チェックリスト管理などのために現代のコックピットで一般的に使用される 「EFB (Electronic Flight Bag)」 や、アビオニクス (パイロットが航空機を操作し、システムを管理するために使用する計器やディスプレイのこと) のシミュレーションにも力を入れているとのことだ。

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キャリアモードは 「第2の人生」 と言えるほどの大ボリューム。リアルタイムで変化するミッションをこなしてスキルを向上

『MSFS 2024』で新たに登場するパイロットのキャリアシステムについて詳細な解説があった。まずキャリアをスタートするには認証を取得する必要があり、ユーザーはトレーニングを通じて基礎知識や技術を学び、その後に認証試験を受けることになる。

見事に合格したら、次はより専門的なトレーニングを受けて認証を取得することで様々なミッションを受けられるようになり、ミッションを通じてパイロットとしてのスキルを向上させていく。

トレーニングは合計で64種類用意されており、ミッションは約300万用意されている。商業的なフライトや救急ミッションなど多種多様なものが含まれる。これらのミッションはリアルタイムで変化するほか、季節や状況によっても変化する。たとえば、スキー場でのミッションは冬期にしか発生しないなど。

ミッションを完了すると自分のオフィスに戻ってきて、クライアントから報酬を受け取ることができる。クライアントからの評判が良かった場合には、シークレットミッションがアンロックされることもあるとのこと。

報酬が貯まってくると、いよいよ自分の航空機を買うことができる。ただし、航空機はミッションを重ねていくうちに老朽化が進む上に、フライトごとにお金がかかる。故障を防ぐためのメンテナンスも必要になる。

自分の会社を設立して従業員を雇うと、給料も発生する。キャリアシステムを続けて自身のスキルを向上させるためには、これらも考慮しながらうまくやりくりしていく必要がある。ここまで本格的だと、まるで自分のもう一つの人生とも言えそうだ。

「チャレンジリーグ」 は、1週間ごとに更新されるチャレンジに参加し、スコアをオンラインで競い合うというもの。ランキングシステムもあり、他のユーザーのスコアは随時確認できるため、上手い人に挑戦することもできる。10週間で1シーズンが終了し、その時点でのランキングをもってブロンズやシルバーなどの最終評価が下される仕組みだ。

本作には、景勝地やシンボル的な建造物を探すモードも用意される。このモードでは、指定された場所に赴き、指示通りのシチュエーションで写真を撮ることが求められる。たとえばゴールデンゲートブリッジの撮影ミッションでは、ただ橋を撮影するだけでなく、夜に月をフレームに入れて写真を撮影することが求められるなど。

ミッションと聞くともしかしたら面倒に感じる人もいるかもしれないが、このモードを利用することで手軽にフォトスポットに行くことができるほか、簡単にキレイな写真を撮ることができる。また、ミッションと関係ない写真を自由に撮ることもできるので、フリーフライトで多忙なパイロットキャリアを描きたい人もぜひ息抜きがてら挑戦してみていただきたい。

『Microsoft Flight Simulator 2024』には、「スタンダードエディション」 「デラックス」 「プレミアムデラックス」 「アビエイター」 の4つのエディションが用意されており、それぞれ収録する航空機・空港の数が異なる。各エディションごとの収録数は以下。

スタンダードデラックスプレミアムデラックスアビエイター
ハンドクラフト空港150155160160
収録航空機708095125
① 新規機体30354545
②『MSFS2020』からのアップグレード機体40455050

開発終盤の『MSFS 2024』をちょっとだけ試遊

本稿では、主に『Microsoft Flight Simulator 2024』に関する詳報をお伝えしたが、プレゼンテーションのあとには開発中のビルドを実際に試遊することもできた。

試遊では、フリーフライトやキャリアモードなどを通じて、様々なアクティビティを試すことができた。プレイできた時間が1時間弱だったこともありじっくりと比較できたわけではないものの、前作に比べて影や光のディティールが向上しているおかげで、世界は前作に比べてキレイになっていたような印象を受けた。

また、ロード時間の短縮はかなりの恩恵をもたらしそうだ。セッションの開始には依然として数分かかるため、キャリアモードで異なるアクティビティを矢継ぎ早にこなせるほどの俊敏さはないものの、待機時間はギリギリ現実的な範囲に収まっている。キャリアモードを売りの一つとする本作にとって、このロード時間の改善は不可欠だったのだろうと個人的に感じた。

一番満足度の高かったのは、やはり一段上のグラフィックになったこと。おそらく前作をプレイした方であればその変化に気づけるはずだ。まだどこかの都市間を通しでフライトしたり、各地の景勝地を見て回ったりしたわけではないため本リリースが今からとても楽しみだ。

関連リンク
Microsoft Flight Simulator 2024 | Xbox

(取材協力画像提供:Microsoft)