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『Microsoft Flight Simulator』先行レビュー。14年ぶりの新作フライトシミュはまさに実写の領域

今月18日、ついに新作フライトシミュレータ『Microsoft Flight Simulator』が発売する。その本格的かつリアルなシミュレーションから根強いファンがいることで有名な本作、おそらく楽しみにしている方も多いのではないだろうか。

今回の発売に先駆けて筆者はメディア向けのアーリーアクセスに参加し、一足先に本作に触れることができた。プレイしてみると、実写さながらのグラフィックはまさに圧巻で、航空ファンにはたまらない仕上がりになっていた。

そこで本先行レビューでは、シリーズのファンの方はもちろん、はじめて『Microsoft Flight Simulator』に触れる方、買おうか迷っている方も含めて、多くの方に本作がどんなゲームなのか、どんな楽しみ方があるのかをくわしくお伝えできればと思う。

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『Microsoft Flight Simulator』は38年の老舗タイトル

まずは『Microsoft Flight Simulator』シリーズをご存知ない方のために、同シリーズの歴史についてすこしばかり解説をしておきたい。

『Microsoft Flight Simulator』の歴史は実はかなり長い。初代作品(Flight Simulator 1.0)が登場したのは1979年。まだ筆者がこの世に生を受けていない時代の作品だが、SubLOGICという米国ソフトウェア会社がApple II向けに公開した白黒ワイヤーフレームをベースにした作品で、計器のほとんどが文字だけで表現されるなど、この時代ならではのシンプル設計になっていた。

それから1983年にカラーに対応した『Flight Simulator 2.0』が登場。そして1988年の新作からはMicrosoftが販売を担当するようになったことでタイトル名に同社の社名が入り、『Microsoft Flight Simulator 3.0』となった。

その後も7本の新作を世に出し続け、2006年の『Microsoft Flight Simulator X』がシリーズとしての最後の作品となっていた。

これら過去11作の登場の間ではさまざまな新しい技術が生まれており、『Flight Simulator』シリーズもそれらを積極的に導入してきたおかげで大きな進化を遂げ、フライトシミュの金字塔としての地位を築きあげてきた。

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新作『Microsoft Flight Simulator』の特徴

明日18日に発売する『Microsoft Flight Simulator』は、同フライトシミュレータシリーズの14年ぶりの新作だ。開発は仏Asobo Studioが行い、販売をMicrosoftが行う。

本作の舞台は地球上のすべての地域。米国やヨーロッパはもちろんのこと、日本を含むアジアや南米、アフリカなど世界のどこの地点でもフライトすることができる。

これらの風景は2ペタバイトもの衛星・航空写真やBingのマップデータなどをAzure AIで処理し、地形や建物、樹木などの3Dモデルを自動生成することで限りなくリアルに近いグラフィックで再現されている。Microsoftによると、本作には200万以上の都市や街、15億の建物、2兆本の樹木、37000箇所の空港が収録されているという。

実際のゲーム内の画面では、地球上の様々な場所が遠方まで緻密に描かれていることがわかる。さらにランドマークのような特徴的な建物には手が加えられており、より精巧に作られているとのことだ。東京スカイツリーやニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディング、パリのエッフェル塔などがそれに該当する。

また、風景だけでなく飛行機のコックピットや空力モデリングなどへの作り込みも半端なく、それこそ実写と言っても過言ではないレベルだ。

本作では世界中のほぼすべての空港がAIによる自動生成によって収録されているが、一部の国際空港は細部まで詳細に再現された 「Enhanced Airport」 として提供される。例えば東京の 「羽田空港」 や、米ニューヨークの 「ジョン・F・ケネディ国際空港」 、英ロンドンの 「ロンドン・ヒースロー空港」 、仏パリの 「パリ=シャルル・ド・ゴール空港」 、ドバイの 「ドバイ国際空港」 など。

この 「Enhanced Airport」 は3種類用意されているエディションによって収録数が異なるので注意が必要。エディションごとの違いはあとでもうすこし詳しく述べたいと思う。

実際に羽田-那覇間を飛行してみた。

本作の実力を図るべく、実際にフライトしてみた。

筆者がテストフライトに選んだのは、東京・羽田から沖縄・那覇空港までの約2時間30分の路線。現実世界で実際に運行されている全日空473便(NH473)と似たシチュエーションを『Microsoft Flight Simulator X』で再現してみた。

羽田空港を12時55分に出発し、那覇空港に15時30分に到着するスケジュール。機体だけは同型機種が用意されていないため完全再現には至らなかったが、同じシリーズ機であるボーイング787-10型機(ドリームライナー)を選ぶことで現実にそこそこ近いシチュエーションを作ることはできた。

『Microsoft Flight Simulator』のすごいところは、現実世界の気象条件をすべてシミュレータ内で再現できるところ。たとえば東京が雨なら、シミュレータの中も雨が降る。台風が来ていれば、その日の空は大荒れだ。

つまり、本当に飛行機を操縦しているパイロットと同じ条件でフライトに挑めるというわけだ。しかも、ユーザーは好きな時間を指定して飛行することができるが、その時の気象条件も過去の気象データから現実の条件を持ってくることができるため、たとえば昨日自身が乗った飛行機の操縦を、翌日自宅で体験できるというわけだ。これはすごい。

筆者がフライトした2020年8月15日の天気は快晴で、まさにフライト日和。新型コロナウイルスの感染拡大防止の重要性が叫ばれる昨今、現実では東京から沖縄というフライトはなるべく避けるべき路線かもしれないが、『Flight Simulator』ならそれを体験することが可能だ。

飛行機に乗り込み、電源を入れてエンジンを始動。その後プッシュバックを要求した。プッシュバック後はいよいよ自力での操縦となる。

エンジンのスロットルを上げてタキシングを行うが、うまく曲がることができず四苦八苦。空港の誘導路をグネグネと進みながら、ようやく滑走路に到達した。

管制塔から許可を受けて、いよいよ離陸。フラップを下ろして、スロットルを一気にあげて加速。まさに緊張の瞬間。

無事に離陸を完了したら、あとはのんびり飛行……といきたいところだったが、実際そうはいかず、すぐにオートパイロットのため前面の設定パネルに情報を入れていく。優雅な空の旅の裏側は、想像以上の忙しさだった。

すべての作業を終了し、水平飛行に移った頃にはいつのまにか東京湾上空を飛行していた。眼下には三浦半島が迫ってきており、遠くには雄々しい富士山が見えていた。美しい。

そこからしばらく水平飛行が続く。この日は全国的に晴れだったためほとんど雲もなく、ずっと遠くを見渡すことができた(といっても周りは海で陸地は見えないが)。揺れることもなく約1時間30分ほどコーヒーを飲みながらフライトを楽しんだ。

いよいよ那覇空港に向けてアプローチ。それまで飛行してきたルートからコースを変えて、着陸体制をとる。機首を下げて徐々に高度を下げていく。

空港まで10海里までの距離にきたら高度を2500フィート程度まで下げて、フラップを下ろしていく。ランディングギア(車輪)も下げて、速度も180ノットから140ノット程度まで落としていき、いよいよ着陸……!

着陸の直前まではオートパイロットで誘導してもらうことができるが、最後の最後はやはり手動。緊張で手がフルフルと震える。

着陸成功。無事に停止させられたときにはついガッツポーズが出てしまった。着陸自体は何度か練習していたものの、離陸から着陸までの一連の流れをすべてひとりで行うのは初めてだったため感動もひとしお。かなりの緊張感を味わったが、同時にものすごい達成感も感じた。

完全初心者でもフライト可能だが、一度飛ぶともっと上手に飛びたくなる

ここまで読んでいただいた方はもしかするとお気づきかもしれないが、実は筆者は『Flight Simulator』シリーズをほとんど触れたことがない初心者。そのため飛行機に関する知識は到底十分とは言えず、このレビューを書く直前まで本当に飛べるのかどうか不安な気持ちもあった。

しかし、『Microsoft Flight Simulator』にはトレーニングモードが用意されていて、飛行機を飛ばすためのイロハを教わることができるようになっている。また航空機の操作の一部を自動でやってくれるイージー設定も用意されているため、筆者のような初心者でもプレイできるように十分に配慮されている。

実際のところ、満足にフライトするにはある程度の知識は必要。今回筆者は先行レビューのため十分に予習をしたり、実際のパイロットの方に事前に助言をいただくなどをしたおかげで飛べた部分もあったが、もしあなたが航空機での飛行に興味があるのであれば、練習を重ねることできっと自由に大空を飛び回れるようになるはずだ。

筆者も離着陸できるようになったとは言え、まだまだ知識不足(そもそも間違っている箇所も多くありそう)で操縦もかなり荒々しいものだった。今後もっと練習してうまく離着陸できるようになりたいものだ。

ちなみに『Microsoft Flight Simulator』は世界で起きているすべての気象を再現するため、快晴から嵐まで描写することが可能だ。嵐の際は風が強く、飛行が難しくなり、雪が降ると視界が悪くなったり、着陸の難易度も上昇するなど、天候の変化は飛行に大きな影響を与える。

これらはすべて実際の気象データをもとに構築している。我々がインターネットから天気図を確認できるように、『Microsoft Flight Simulator』もそのデータをワールドの天気に反映している。さらに山や谷に気流がぶつかると乱気流などを生み出すことがあるが、それらもすべてシミュレートしており、リアルかつ正確に飛行機に影響を与えてくる。雲に入ると飛行機がガタガタと揺れるのも当然シミュレートされている。

メディア向けプレゼンテーションの中で、MicrosoftのJorg Neumann氏、Asobo StudioのSebastian Wloch氏、Martial Bossard氏らの解説によれば、雲のレンダリングはすべて水蒸気密度のデータを基にしたレイマーチング法で行っており、風景画のような “絵” を置いているわけではないと説明していた。

確かに厚い雲の中に突っ込むと光が遮られ、薄い雲の中にいると地上の様子や太陽の位置を確認できたりする。その違いを表現するには、確かに上記レンダリングでなければ不可能だろう。

要求スペック、エディションの違いなど

『Microsoft Flight Simulator』は要求スペックが非常に高いタイトルなため、自身のPCでプレイできるかが気になっている方も多いのではないだろうか。

参考までに今回筆者がプレイした環境は以下のとおり。これで最も高いグラフィックオプション 「Ultra」 でプレイすることができた。

CPU:Intel Core i7-10700K
RAM:DDR4 PC4-21300(48GB)
ストレージ:HDD 2TB/SSD 1TB
グラフィック:GeForce RTX2080 SUPER

ロンドンやニューヨークといった大量の建物の描写が必要な大都市において、急旋回やカメラをグルグル回したりすると流石に処理が重くなったりしたものの、通常のフライト視点では快適にプレイできたため、最高グラフィックでプレイしたい場合は筆者のPC構成を参考にしてみてはどうだろうか。

ちなみに、Microsoftの提示する理想環境は以下のとおりとなっている。

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『Flight Simulator』はスタンダードエディションとデラックスエディション、プレミアムデラックスエディションの3種類が用意されており、エディションごとに内容が異なる。

スタンダードエディションには20の航空機と30種類の空港、デラックスエディションには25の航空機と35種類の空港、プレミアムデラックスエディションには30の航空機と40種類の空港が収録される (ここでいう 「空港」 とは細部まで詳細に再現された 「Enhanced Airport」 のこと) 。

A320neoやB747-8 Intercontinental (愛称:ジャンボジェット)はすべてのエディションに同梱されるが、筆者が操縦したB787-10(ドリームライナー)はプレミアムデラックスエディションのみの収録となる。

空港についてはドバイ国際空港やロンドンのヒースロー空港、サンフランシスコ国際空港はプレミアムデラックスエディションのみの収録となっているため、これらの空港や航空機でプレイしたい方はぜひプレミアムデラックスエディションの購入を。

ローンチ時点での対応言語は英語・フランス語・イタリア語・ドイツ語・スペイン語・ポーランド語・ポルトガル語・ロシア語となっていて、日本語のサポートは残念ながらなし。今後サポートされるかどうかも現時点では不明だ。

『Microsoft Flight Simulator』は明日8月18日に発売予定。購入はMicrosoftストアもしくはSteamから可能だ。

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