
長年にわたりPCとXboxのプラットフォームを中心に発展してきた『Microsoft Flight Simulator』が、ついにPlayStation 5へ登場する。
本作『Microsoft Flight Simulator 2024』は、シリーズの伝統となっているリアル志向のシミュレーションと、PS5独自のインタラクションを組み合わせ、家庭用機での体験を大きく前進させている。発売は12月8日で、早期アクセスは12月3日から開始される。
今回、Microsoftから本作のコードを提供いただき、正式リリース前にプレイしてみることができたので、インプレッションをお届けしたい。
ついにPlayStationに『Microsoft Flight Simulator』シリーズが登場
『Microsoft Flight Simulator 2024』は、2024年11月にPCとXbox向けに発売されたフライトシミュレーションゲーム。これまで本シリーズはPCとXboxコンソール向けのみに提供されてきたが、PlayStationに登場するのは今回が初めてとなる。
Microsoftは近年、マルチプラットフォーム戦略を大きく前進させている。2025年4月のPS5ダウンロードランキングでは、『Minecraft』『Oblivion Remastered』『Forza Horizon 5』が欧米でトップ3を占め、Xbox由来のIPがPS5市場で存在感を示す結果となった。
同社は「すべてのスクリーンがXboxになる未来」を掲げ、専用ハード依存からエコシステム中心のモデルへ移行しつつある。PS5版『Microsoft Flight Simulator 2024』の登場も、この流れに続くものだ。
開発チームは、「『Microsoft Flight Simulator』シリーズは40年以上にわたりパイロットやシミュレーター愛好家を魅了してきました。この素晴らしい体験を、初めてPlayStationにお届けできることを大変光栄に思います」とコメントしている。
PS5版でもゲームの基本的な体験はPC版やXbox版と変わらない。画質に関してもXbox Series Xでプレイするのと変わらないくらいだった。
注意点として、PS5版はPC・Xbox版とのクロスプレイには非対応で、PC・Xbox版で購入したコンテンツを引き継ぐことはできない。すでに他プラットフォームで遊び込んでいる場合は、PS5版を新規環境として割り切れるかどうかが判断材料になる。新たに始めるユーザーにとっては問題にならないが、乗り換えを考えている場合は気をつけたいポイントだ。
キャリアモードがもたらす目的のある飛行
従来のフライトシミュレーターは自由な飛行体験が中心だったが、『Microsoft Flight Simulator 2024』では「FLY WITH PURPOSE」をテーマに掲げ、飛ぶ理由そのものがゲーム性に組み込まれている。キャリアモードでは、航空キャリアの運営を軸に、経験を積みながら資格を取得していく。
医療搬送ミッションでは患者のもとへ迅速に向かい、貨物輸送では時間や重量の制限が求められる。空中消火や捜索救助といったミッションでは、地形や気象条件の把握が重要となり、航空機ごとの性能差がより明確に体感できる。操作の上達はもちろんだが、航空業務のプロセスを理解しながら進められる点が本作の大きな変化だ。
カジュアルに遊べる要素も充実している。精密着陸やラリーフライトで腕を競う「チャレンジリーグ」は短時間でも楽しめる上、競技性が高いためリプレイ性も高い。「世界の写真家」では、地球の名所を巡りながら撮影スポットを探し、記録として残していく。観光目的のフライトとしても十分楽しめる設計だ。
技術的進化:物理演算と地球表現の刷新
技術面では、シリーズの核となる「デジタルツイン」がさらに強化されている。物理演算システムは10,000以上の剛体表面に対応し、風に揺れる布やケーブル、気球などのソフトボディ表現も実装された。航空機の操作に直接関わる部分だけでなく、周辺環境の挙動も精密になり、飛行体験全体の説得力が増している。
航空機のシステムも細部まで再現されている。電気系統や油圧・燃料システムの挙動、Universal UNS-1 FMSやHoneywell Primus Epic 2などの複雑なアビオニクス(航空電子機器)も動作し、チェックリストに沿って飛行前点検を行うことも可能だ。ウォークアラウンドで機体外観を確認できるようになったことも、リアルな運用手順を追体験できるポイントとなっている。
地球全体の表現も大きく向上している。500を超えるTIN都市の精密モデル化に加え、10万平方キロメートル以上の写真測量データが新たに組み込まれ、地形の起伏や建築物の表現が格段に自然になり、さらに、航空機を降りて歩けるバイオーム探索も新要素として導入されている。季節によって変化する植生や地形を直接観察できるのも本作の見どころと言えるだろう。
DualSenseによるダイレクトな操縦感
PC・Xboxと大きく異なるのが、DualSenseワイヤレスコントローラーを活用したフィードバックだ。アダプティブトリガーは地上走行時の路面の違いや速度に応じて抵抗を変化させ、滑走路と草地での挙動差を指先で感じ取れる。離陸後は、機体の傾斜に対する抵抗感が再現され、操作そのものが空気の流れを伴っているように感じられる。
ATC通信がコントローラーのスピーカーから再生される仕組みも没入感を高める要素だ。ヘッドセットとは異なる位置から声が届くことで、実際のコックピットに近い音場が形成される。
機体の制御は、アナログスティックに加えて、ジャイロ操作にも対応する。ジャイロ操作はL1+L3の同時押しで有効化され、コントローラーを操縦桿のように傾けて機体制御ができる。
ジャイロ操作は、細かなロールやピッチの調整に向いており、アナログスティックとは違った精密さを感じさせる。ライトバーによる警告表示も視覚的なサポートとして有効で、計器を見続けなくても注意を促す仕掛けがある。
もちろん、より本格的な環境を求めるユーザーに向けて、Thrustmaster T.Flight HOTASシリーズやキーボード、マウスも使用できる。ユーザーの熟練度に合わせて遊び方を選べる柔軟性も本作の強みだ。
総評:PC・Xboxと変わらない品質に、DualSenseによるPS5版独自の体験が融合。マケプレも対応
PS5版『Microsoft Flight Simulator 2024』は、PC・Xboxと変わらないリアルなシミュレーションと、PS5ならではの直感的な操作性を高いレベルで融合させている。DualSenseによるフィードバックは操縦の理解と没入感を大きく支え、豊富なミッションやキャリアモードがユーザーに飛ぶ理由を与えてくれる。
シリーズの特徴である継続的なアップデート方針は、今後も変わらない。MicrosoftとAsobo Studioは、発売後も定期的に無料のワールドアップデートや大規模アップデートを提供する予定で、プレイヤーのフィードバックを取り込みながら進化し続ける姿勢を示している。
さらに、PS5版でもマーケットプレイスでのコミュニティクリエイターによる航空機や空港、シーナリーの追加が期待できる。ユーザーの創作活動がそのままコンテンツの厚みとして積み上がる点は、過去シリーズでも高く評価されてきた部分だ。
PC・Xbox版で築かれた完成度の高さに加え、PS5版ならではの操作体験と没入感が加わったことで、家庭用ゲーム機でも「本格的なフライト体験」が可能になった。これからフライトシムを始める初心者から、長年のシリーズファンまで、幅広いプレイヤーにおすすめできるタイトルだ。
