唐突で恐縮だが、筆者は先日「MacBook Pro」2017年モデルを購入した。
もともと、2016年10月に発表された「MacBook Pro 2016」を購入し使っていたのだが、訳あって手放すことに。そのため、代わりに昨年6月に発表された2017年モデルを新たに購入した、というわけだ。
筆者が使っていた2016年モデルは、それまでの端末デザインが一新され、新たに「Touch Bar」や「Touch ID」が搭載されるなど、ユーザーの好奇心をくすぐる”仕掛け”がいっぱい用意されており、Apple製品を愛する人間のひとりとして、購入しないわけにはいかなかった。実際に1年ほど使ったが、その感想は約1年前にレビュー記事で書いた時と同じ。「MacBook Pro 2016」はとても良い製品だったと感じている。
ただし、残念なことに、2016年モデルは、一部ユーザーからGPUやキーボード関連で様々な問題が起こることが指摘されていた。
幸いなことに筆者は、こういった問題に遭遇する機会が少なかったわけだが(キーボードがエラー音を出し続ける不具合やグラフィックがおかしくなる不具合に一時遭遇したが)、これらの問題を改善したのが今回紹介する2017年モデルになる。2016年モデルの登場から、わずか半年のうちに登場した最新モデルだ。
今回、筆者は「MacBook Pro 2017」の13インチ&Touch Barありモデルを購入した。せっかくなら15インチモデルを購入するのもアリだと思うのだが、筆者のメイン端末は自宅の「iMac 5K Retinaディスプレイモデル」なので、持ち運びやすさと高い性能の両方を兼ね備えた13インチモデルが最適と判断。Apple公式サイトからカスタムし、注文した。
MacBook Pro 2017 Touch Bar搭載モデル |
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プロセッサ | 3.3GHz Dual-core Intel Core i5(第7世代Kaby Lake) |
グラフィック | Intel Iris Plus Graphics 650 |
メモリ | 16GB 2133MHz LPDDR3 SDRAM |
ストレージ | 256GB PCIe-based SSD |
キーボード | UK Keyboard |
価格 | 231,800円(税別) |
前置きが長くなったが、当記事では、購入し1週間ほど使ってみた「MacBook Pro 2017」の使用感を紹介しつつ、新型モデルは前モデルからどのように変化したのか。また、そもそも「MacBook Pro」の魅力はどこにあるのか、さらにどのような人が購入するべきなのか、詳しく触れていきたい。
開封:2017年モデルは2016年モデルから何が変わったのか、その違いを確認
まずは、「MacBook Pro」2017年モデルを紹介していきたい。
現行モデルの「MacBook Pro」は、本体の薄型化・小型化を実現しており、13インチモデルは厚さ1.49cm、幅30.41cm、奥行21.24cm。15インチモデルでも厚さ1.55cm、幅34.93cm、奥行24.07cmと、かなりコンパクト。
重さも13インチモデルが1.37kg、15インチモデルが1.83kgと軽量で、持ち運びもさほど苦には感じない。カバンに入れても中身を圧迫することもないため、「MacBook Pro」のほかに、書類や書籍、タブレットなど入れても余裕があるほど。もちろん、カバンの大きさにもよるのだが。
端末を開けて最初に目に飛び込んでくるのは、大きなトラックパッド。2世代前のモデルに比べて約2倍の大型化を果たしているため、普段のブラウジングやドラッグ&ドロップ作業もスイスイだ。
ちなみに、トラックパッドの大きさは15インチモデルの方が大きいが、個人的には13インチモデルでも十分。
むしろキーボードで文字をタイプする際に、指が誤ってトラックパッドに触れてしまうことがないため、13インチモデルの方が好みだったりする。
「MacBook Pro」に搭載されているポートは、USB-Cポートと3.5mmイヤホンジャックのみ。それまで当たり前だったUSB-AポートやHDMIポート、SDカードスロットなどのレガシー端子は全て廃止されており、全ての周辺機器をUSB-Cあるいは3.5mmイヤホンジャックで接続する必要がある。そういう意味では、USB-Cハブは必須アイテムとも言える。
USB-Cポートは全部で4つ。13インチモデルは左右でわずかながら性能が異なるとのことだが、正直なところこの差に困ったことはなく、普段はあまり意識せずに使っている。ただし、13インチモデルの「Touch Barなし」モデルに関してはUSB-Cポートが2つしかないため、できれば4ポートあるモデルを購入したほうがいいと思う。
USB-Cポートは急速充電規格「USB-PD」に対応しており、13インチは最大61W、15インチは最大87Wで充電することが可能だ。
純正の電源アダプタと接続すると、みるみるうちに充電されていき、わずか1~2時間でフル充電が完了するため、もし移動中にバッテリーがなくなってきたとしても、カフェなどで電源を借りながらゆっくりとコーヒーをすすれば、また安心してMacBook Proを持ち運びできるようになる。この充電能力はやはり心強いものだ。
ちなみに、「MacBook Pro 2017」のバッテリー持ちは約6時間~8時間ほどとなっている。やはり「Touch Bar」が搭載されていることから、バッテリー消費は大きく、お世辞にも長時間駆動できるとは言えない。
そして、最後にキーボードと「Touch Bar」周りについて。
2016年モデルから、「MacBook Pro」のキーボードは第2世代バタフライ構造キーボードに置き換えられている。
このバタフライ構造は、従来のシザー構造に比べて、キーの端がグラつかないように改善されており、キーの先端をタイプしたとしても文字入力が正確できるというものだ。
このバタフライ構造キーボードに変わってから、「MacBook Pro」での文字入力はかなり快適になった。その代わりに、タイプ音がわずかに大きくなっており、人によっては好みの分かれるところとなっているが、個人的には「カチッ」というタイプ音が小気味よく気に入っている。
次に、「MacBook Pro」の最大の特徴となる「Touch Bar」および「Touch ID」について。
「Touch Bar」は、キーボード上部にファンクションキーの代わりとして搭載されている細長い有機ELディスプレイ。ユーザーはこの「Touch Bar」を直接タッチすることで「MacBook Pro」を直感的に操作することが可能だ。同仕組みは、2016年モデルで初めて搭載されたもので、2017年モデルでも引き続き採用されている。
このTouch Barを使える機会は案外多く、画面の明るさ調整や音量調節から、再生中の動画・音楽のシークバー操作、画像編集アプリでコントラストや露光量、彩度などのスライダー調節に至るあらゆる場面で使うことができる。
「MacBook Pro」を購入した当初は、慣れ親しんだファンクションキーがなくなり不便を感じたこともあったが、1年近く意識的に「Touch Bar」を使えば最近ではさほど不便に感じることもなくなった。
そして、忘れてはいけないのが「Touch ID」。iOSでお馴染みの指紋認証センサーだが、「MacBook Pro」に限りMacでも利用することが可能だ。
これは、同じプロ向け端末「Mac Pro」や「iMac Pro」でも利用できない機能となっており、指紋認証によってApple Payでオンライン決済をすることも可能。指紋の読み込みもとても早いため、端末のロック解除もスムーズにできるようになっている。
ちなみに、「MacBook Pro」の背面にあるAppleのロゴは光らない仕様になっている。これは2016年モデルからの仕様になっており、一部ファンからは残念がる声も挙がっている。
以上が「MacBook Pro」13インチモデルの本体デザインについて。やはりAppleの主力製品ということもあり、改善の余地も見いだすことはできないほど本体デザインは完成し尽くされている。
本体サイズもコンパクトで、持ち運びにも向いており、飛行機や新幹線など狭い場所で作業することも容易い。とても優れた端末だ。
2016年モデルからの変更点
さて、ここまでは2017年モデルを舐め回すように見てきたが、どの角度から何度見返したとしても、2016年モデルと変化があったようには見えない。果たして、2017年モデルが登場した理由はどこにあるのだろうか。
以下に、2017年モデルになって変わった点や新機能についてまとめてみた。確認してみていただきたい。
- キーボードのタイプ静音化
- キーボードの印字が一部変化
- 処理性能の向上(CPU/GPU)
以上が変更点。これだけ?そう、これだけだ。
実際に使ってみて良く分かったのだが、「MacBook Pro 2016」と「MacBook Pro 2017」の違いはかなり少ない。
本体がコンパクト化・軽量化しているかといえばそうでもなく、「Touch ID」の読み込み速度が上がっているわけでもなく、「Touch Bar」の仕様も変更点はなし。また、スピーカーの音質や画面の綺麗さもほとんど変化はみられないため、パッと見て2016年モデルと2017年モデルを見分けるのは、もはや不可能。
ただ、外見上の変更点があるとすればキーボード周り。2017年モデルはキーボードの一部印字が変更されており、「caps」「shift」「tab」「delete」キーが記号に。キーボードの印字が少しくらい変わったところで、特に使用感に違いは生まれないものだが、良い影響があったとすればキーボードの一部が記号になったことで、よりシンプルなデザインになり、見やすくなったということ。
あと、個人的に嬉しかったのはキーボードのタイプ音がマイルドになったこと。「MacBook Pro」は2016年モデルで第2世代バタフライキーボードを搭載したわけだが、タイプするたびに「ペチペチ」という音が響き、静かな環境でタイプすると少し五月蝿く感じる時もあった。
しかし、2017年モデルでは「ペチペチ」音がわずかに減少しており、周りの環境を気にすることなく文字をタイプすることができるようになった。少し大げさかもしれないが、文字を打つ機会がとても多い筆者にとって、タイプ音の変化はかなり重要だった。
前モデルで第2世代バタフライキーボードが搭載したと大騒ぎをしたことを覚えているが、それと同じくらい嬉しかったのがこの変化だった気がする。
とはいえ、これらの変更点だけでは、新型「MacBook Pro」が登場するにはやはり不十分。おそらく、新型モデルには隠された秘密があるに違いない。
そうだ、きっと性能が向上しているはず。「新型モデルの登場=処理性能の向上」の方程式は今回も健在。なぜなら、新世代プロセッサ「Kaby Lake」が搭載されているからだ。
ここまでは本体デザインについて紹介してきたので、次は処理性能について軽く触れておきたい。
ベンチマークで性能を比較 2016年モデルと2017年モデル
「MacBook Pro 2016」と「MacBook Pro 2017」とでは、どれほどの性能差があるのだろうか。
まずは以下の表で、筆者が2016年10月に購入した2016年モデルと、2018年1月に購入した2017年モデルのスペックを比較してみた。
13インチ MacBook Pro 2016 | 13インチ MacBook Pro 2017 | 15インチ MacBook Pro 2016 | 15インチ MacBook Pro 2017 | |
---|---|---|---|---|
画面サイズ | 13インチ | 15インチ | ||
解像度 | 2,560 × 1,600ピクセル(227ppi) | 2,880 × 1,800ピクセル(220ppi) | ||
ストレージ | 256GB / 512GB / 1TB | 256GB / 512GB / 1TB / 2TB | ||
プロセッサ |
1.3GHz Intel Core i5 (2コア) 1.4GHz Intel Core i7 (2コア) |
2.9GHz Intel Core i5 (2コア) 3.1GHz Intel Core i5 (2コア) 3.3GHz Intel Core i7 (2コア) |
2.6GHz Intel Core i7 (4コア) 2.7GHz Intel Core i7 (4コア) 2.9GHz Intel Core i7 (4コア) |
2.8GHz Intel Core i7 (4コア) 2.9GHz Intel Core i7 (4コア) 3.1GHz Intel Core i7 (4コア) |
メモリ | 8GB / 16GB | 16GB | ||
グラフィック | Intel Iris Graphics 550 | Intel Iris Graphics 650 | Intel HD Graphics 530
Radeon Pro |
Intel HD Graphics 630
Radeon Pro |
赤文字になっている部分が2016年モデルからの変更点。プロセッサの処理能力が向上しているのがお分かりいただけるだろう。
ちなみに、前モデルに搭載されていたプロセッサは第6世代CPU「Skylake」だが、2017年モデルは第7世代CPU「Kaby Lake」が搭載されており、1つ分だけ世代が新しくなっている。そのため、より高い処理性能と効率化が実現しているはずだ。
今回のレビューのため、実際に筆者の持っている端末でベンチマークスコアを計測してみた。計測は「Geekbench 4」で、計測データはシングルコアスコアとマルチコアスコアの2種類。
ちなみに筆者が購入したのは、「3.3GHz デュアルコア Intel Core i5(TB使用時最大3.7GHz)」を搭載したモデル。おそらくベンチマークスコアは以前よりも高くなっているはず。
結果は以下の通り。
MacBook Pro 2016 | MacBook Pro 2017 | |
---|---|---|
シングルコア | 3812 | 4243 |
マルチコア | 7614 | 9151 |
ベンチマークスコアは確かに向上しているものの、割合にすると大きな変化は見られない。プロセッサの世代が新しくなり、処理能力の向上が期待されていたが、期待とは裏腹に飛躍的な向上はないことがわかった。
2016年モデルから買い換えるほどの性能差はないということだ。
まとめ:「MacBook Pro 2017」誰にとって必要な端末か
以上の結果から、「MacBook Pro 2017」はキーボードの変更点と性能の向上(10%未満)以外に、前モデルから変更点がないことがわかった。
Appleは製品の刷新を定期的に行なっているが、その間は毎年のようにマイナーアップデートを行なっている。そのほとんどはデザイン変更は行わず、処理性能の向上など一部の細かい変更のみであることが多い。
2017年モデルはその典型的な例と言えるだろう。しかし、大幅刷新のあった2016年モデルの登場からわずか半年で発表されたことを考えると、Appleは何かアップデートを急ぐ必要があったのではないだろうか。
その理由は明らかになっていないが、個人的には2016年モデルの相次ぐ不具合やユーザーからの不満を解消するべく、改良した新型モデルを登場させ、自身の信頼回復に努めたかった、そう予想する。
実際のところ、2016年モデルを買った人にも配慮し、これから2017年モデルを購入する人からは不満が出ない端末、それを出すことがAppleとして重要だったのではないだろうか。
つまり、2016年モデルを購入した人は買い換える必要性はほとんどなく、あるとすれば2016年モデルの性能に不満を持っている方だけ。
今回、2016年モデルから2017年モデルから乗り換えてみたが、わざわざ20万円以上の高い金額を払って乗り換えるほどのものでもない、というのが個人的な見解だ。むしろ、2016年モデルも最新モデルに劣っていないとも言える。もし、2016年モデルを持っている方がいたら、ぜひその端末を売っぱらったり、捨てたりせずに、大事に大事に使ってあげてほしい。
ただし、「MacBook Pro」の2015年モデル以前の端末を持っている方や、そもそも「MacBook Pro」を持っていない方には、「MacBook Pro 2017」はかなりオススメな端末となっている。
性能が高いだけでなく、コンパクトでデザインに優れたプロ向け端末。充電速度も速いため、電源に1時間ほど挿せば、再び数時間は使えるようになるほどのパワフルさ。
さらに、画面も綺麗で、スピーカーの音質も最高。「Touch ID」でスムーズに端末のロック解除、オンライン決済が完了。これまでの生活が、きっとスマートになるに違いない。
また、2016年モデルのように問題も報告されていないため、購入後に不具合に見舞われる心配もない。満足度はとても高いはずだ。
もし、新型「MacBook Pro」に興味があるなら、ぜひ店頭に行って触ってみてほしい。もしくはApple公式サイトで眺めてみてほしい。きっと、「MacBook Pro」の良さがわかるはずだ。誰にとってもオススメできる、それが「MacBook Pro」だ。
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