
スクウェア・エニックスは5月14日、スマートフォン向けに開発していた位置情報ゲーム『KINGDOM HEARTS Missing-Link(キングダム ハーツ ミッシングリンク)』の開発中止を正式に発表した。
同作は『キングダム ハーツ』シリーズのスピンオフタイトルとして、現実世界とリンクするマップを活用した位置情報ベースのGPSアクションRPGとして開発されていた。プレイヤーは現実とよく似た「アストラル界」を行き来しながら、探索・バトル・マルチプレイ・強化要素などを楽しむ内容で、最大6人でのレイドバトルにも対応する設計がなされていた。
ゲームエンジンにはUnreal Engineを、地図プラットフォームにはMapboxを採用。基本プレイ無料のアイテム課金型モデルで、現実世界の移動や探索を取り込んだインタラクティブな体験を目指していた。
先んじてサービス開始の延期をお伝えしておりました、『KINGDOM HEARTS Missing-Link』は、このたび開発を中止することを決定いたしました。
— キングダム ハーツ ML公式 (@KHML_PR) May 14, 2025
サービス開始を楽しみにしてくださっていた皆様に、心よりお詫び申し上げます。…
長期運営を見据えた中での断念。運営型ゲームの厳しい現実

2022年4月、『KINGDOM HEARTS IV』とともに本作が発表されて以来、プロトタイプテストや複数回のクローズドベータテストが実施されてきた。2024年にはサービス開始を目指して準備が進められていたが、同年11月にリリース延期を発表。その後は続報が途絶え、沈黙の末に今回の開発中止が告知された。
スクウェア・エニックスは公式声明にて、開発中止の理由を「多くの方にお楽しみいただけるよう開発・調整を進めてきたが、長期にわたってご満足いただけるサービスの提供は困難と判断した」と説明。運営型ゲームとしての継続的な品質維持や収益確保の見通しが立たなかったことが伺える。
近年、スマートフォン向けの運営型タイトルは競争が激化しており、初期リリース後の継続的なアップデートとコミュニティ形成が極めて重要となっている。一方で、運営コストやプロモーション費用は年々増加傾向にあり、万全の準備をもってしても成功の保証はない。
とくに位置情報ゲームは開発コストに加えて、現実世界の変動や地域差への対応が求められるジャンルだ。本作もクローズドベータテストでの検証を重ねたものの、ローンチ後の長期運用に耐えうる手応えを得るには至らなかったと見られる。
『KINGDOM HEARTS IV』への期待

今回の開発中止に際して、スクウェア・エニックスはユーザーへの謝罪とともに、『キングダム ハーツ』シリーズの今後についても言及している。ナンバリング最新作『KINGDOM HEARTS IV』は現在も鋭意制作中であり、フランチャイズそのものが終了するわけではないと強調している。
『キングダム ハーツ ミッシングリンク』は、シリーズの空白の時代を補完する作品として期待されていただけに、その幕引きはシリーズファンにとっても少なからず衝撃を与えるニュースだ。しかし、それ以上に運営型モバイルゲーム市場の厳しさ、そして開発コストと収益性のバランスが問われる現代ゲーム産業の現実を象徴する事例と言えるだろう。
今後は『KINGDOM HEARTS IV』に注目が集まることは間違いない。果たしてナンバリング最新作が、再びシリーズに新たな熱狂をもたらすことができるのか。スクウェア・エニックスの動向に引き続き注視していきたい。
©Disney. ©Disney/Pixar. Developed by SQUARE ENIX
(画像:スクウェア・エニックス)