
液晶ペンタブレットで知られるHUIONが、スタンドアローンで動作するAndroidタブレット「Kamvas Slate 11」を発売した。
本製品は、これまでPC接続を前提としていたKamvasシリーズの技術を活かしつつ、単体での描画体験に対応したモデル。軽量な筐体と描画性能の両立を目指した設計で、クリエイティブ用途から日常使いまで幅広く活用できる。
今回、HUIONから製品提供を受けて本製品を実際に使用し、その操作感や描き心地を検証した。
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コンパクトかつ堅実なデザイン

筐体は厚さ7.5mm、重量約500gと軽量で、A5ノートよりわずかに大きい程度のサイズ感に収まっており、持ち運びに優れる。メタル調の仕上げが施されたボディはシンプルで、見た目に派手さはないが手に持った際の剛性感は十分だ。
側面にはUSB Type-CポートとmicroSDスロットを備え、最大1TBまでのストレージ拡張に対応する。

画面は10.95インチのフルHD+(1920×1200)解像度。フルラミネーション構造のIPSパネルにナノエッチング加工が施されており、反射を抑えて目への負担を減らしつつも紙のような描画感を実現している。
光の映り込みが少ない関係で、屋内での作業や閲覧では快適だ。リフレッシュレートは90Hzに対応し、操作感は滑らか。発色はsRGBカバー率を意識した自然なトーンで、色味の再現性も高い。


ミドルレンジ構成ながら安定したパフォーマンス

プロセッサは「MediaTek Helio G99」を採用。ミドルレンジクラスのSoCながら、8コア構成と8GBメモリの組み合わせにより、描画アプリの動作は安定している。
アプリ切り替えやレイヤーの多い作業も大きな遅延は感じられず、普段使いのタブレットとしても十分な処理性能を備える。OSはAndroid 14で、Google Playから各種アプリを利用可能。HiPaintやibisPaintなど主要なペイントアプリを標準でサポートしており、初期状態ですぐに描き始めることができる。
また、分割画面表示にも対応し、ブラウザで資料を確認しながらスケッチを行うといった使い方も可能。バッテリー容量は8000mAhで、動画再生や軽い作業なら10時間前後の駆動が期待できる。急速充電にも対応し、約2時間半でフル充電が完了する。
H-Pencilの描き心地

付属の「H-Pencil」は、4096段階の筆圧感知と60度の傾き検知に対応するスタイラスペンだ。
金属製ボディによる適度な重量感とペン先の沈み込みを抑えた設計により、基本的な線の追従性は良好で、描き味もやや硬めで紙に近い摩擦感がある。ナノエッチングガラスとの組み合わせにより、滑りすぎず止めやすいバランスに仕上がっている。

実際に文字やイラストを書いてみるとどうか。ペン先の反応速度に関しては、実際に線を書いてから描画されるまでわずかな遅延が感じられる。また、太い線や強めに描き込む場合は問題なく反応するのだが、細い線は描き始めが掠れたり、反応が鈍く線が安定しないこともあった。

このことから、細かく線を描き込んでいくような本格的なイラスト制作用途というよりは、ラフスケッチや太めのブラシでの着色作業に適したタブレットだと感じた。細かい線や精密なハッチングを多用する場合は、描き方やブラシ設定で工夫する必要がありそうだ。


ちなみに、ペン使用時にはパームリジェクションが正しく機能していない関係で、手の側面が画面に触れると意図しない描画が発生してしまっていたが、付属の手袋を併用すればこの問題はほぼ解消できる。毎回手袋を装着しなければならない手間はあるが、このあたりの性能は価格相当と割り切る必要がありそうだ。
表現ツールとしての多用途性

Kamvas Slate 11は、一般的なタブレットとしても扱いやすい。4基のスピーカーは左右対称に配置されており、自然に音が広がる。試しに動画を視聴してみたが、人の声が明瞭に聞こえ、エンタメ用途でも不足はないように感じた。

カメラは背面13MP、前面8MP。オンライン会議やビデオ通話も問題なくこなせる画質で、描くだけでなく「使う」「撮る」シーンにも配慮されている。
また、HUIONが得意とする液タブ技術を応用し、PCと接続して外部ディスプレイとして使用することもできる。自宅では液晶ペンタブレット、外ではスタンドアローンタブレットという使い分けが可能で、利用シーンの幅が広い。

総評:気軽に描ける環境を求める人にオススメ

Kamvas Slate 11は、コンパクトな筐体とH-Pencilによる描画体験を両立したスタンドアローンタブレットだ。
線の反応速度や細線の安定感など、価格相応の制約はあるものの、ラフスケッチや太めのブラシを用いた色塗り、メモ用途であれば十分に実用的と言える。
さらに、動画視聴やオンライン会議、資料確認など一般的なタブレット用途も快適にこなせるため、自宅でも外出先でも1台で描く・観るを実現できる。
HUIONの液晶ペンタブレット技術を単体で活かしたこの製品は、手軽にお絵描きを始めたい人や、エントリー〜中級レベルのイラスト制作に適した選択肢と言えるだろう。
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