Jaybirdから完全ワイヤレスイヤホンの新型モデル 「Jaybird VISTA」 が登場。8月8日から販売が開始されている。
同製品は、アスリート向けに特化したイヤホンを作る “Jaybirdらしさ” 満載のイヤホンだ。前モデルから大幅な進化を遂げた完全新型モデルになっている。
発売を前に同製品のサンプルを提供してもらうことができたため、当記事で 「Jaybird VISTA」 を数日間試してみた結果の感想をお届けしたいと思う。購入を検討している方必見だ。
超小型・軽量で耐久性もあり、ランナーにぴったりのイヤホンに
「Jaybird VISTA」 は、前述したように先代の 「RUN XT」 から大幅な改良が加えられた新型モデルだ。最大の特徴はシリーズ最小・最軽量設計。装着感を極力減らし、快適に使用できるようになっている。
本体重量はなんと4.7g (グラム) 。イヤーチップをつけてもわずか6g 。耳に装着してもほとんど重さを感じない、まさにランナーに優しいイヤホン。
さらに装着感はこれまでの完全ワイヤレスイヤホンの中でもおそらく最高レベル。VISTAを装着した状態でカラダを動かしてみるとその良さがハッキリと分かるほどで、重みで耳からイヤホンがズレたりすることはせず、耳にしっかりと収まり続ける。
この装着感の秘訣は、本体ボディの軽量さとイヤーチップに使用されている素材にある。イヤーピースに使用されているのはJaybirdが開発した独自イヤージェル。フニフニと非常に柔らかい素材で作られているが、このイヤーチップが耳の中にピッタリ吸着するようにハマるため、動いているうちに耳から外れることはほぼ心配しなくてOKだ。
また、VISTA のイヤーフィンとイヤーチップは一体型、イヤホンの硬い部分が耳に一切当たらない構造になっていて、長時間着けていても疲れ・不快感を感じることもない。マラソンなど集中を欠きたくない時に重宝するだろう。
イヤホン本体には操作用のボタンが用意されていて、1回押しで音楽の再生・停止、2回押しで曲送りが可能。長押しでイヤホンの電源を切ることができる。これは左右のイヤホンどちらも共通なので、どちらの耳でも操作できる。
完全ワイヤレスイヤホンと言えばイヤホンを充電するためのバッテリーケースだが、VISTAのバッテリーケースはかなりコンパクトな作りになっている。これは先代の 「RUN XT」 からの反省点を活かした成果だという。
RUN XTのバッテリーケースは丸さがあり 「可愛らしい」 と好評だったものの、少し大きさがあったことからパンツのポケットに入れるとボコッと存在感があり、小さなポケットではうまく入りきらないという問題があった。
これを解消すべく、Jaybirdはスポーツをする上で邪魔にならないようコンパクト化に着手。結果、ケースは74x24x26.5mmとかなりの小型サイズに。
AirPodsのケースに次ぐコンパクトさ
さらにケースは後続のランナーに踏まれても壊れないようにバッテリーケースの耐久性にもこだわった。
普通ならプラスチックでケースを作るところ、VISTAのバッテリーケースは表面にシリコン素材が使用され柔らかく、踏んだり強めにぶつけても壊れないようになっている。
ペアリングボタンはケース中央に存在
ケースの開閉にも一工夫。RUN XTはケースを開けるためのボタンがケース前面に用意されていたが、これではカバンの中に入れたり、小さなポケットの中に入れようとするとバッテリーケースの蓋が開いてしまうことがあった。
VISTAのバッテリーケースは蓋がマグネット式になり、勝手に開かないように改良されている。さらにイヤホンはマグネットでケース内に収まるようになっているため、逆さまにしても落ちないよう改良が加えられた。
すべて地味な変更点ではあるものの、これら複数の改良のおかげで使い勝手は大幅に改善されている。
Jaybird VISTAのバッテリー持ちはイヤホン単体で6時間、バッテリーケースを併用することで最大16時間の駆動が可能だ。バッテリーケースの充電ポートはmicroUSBからUSB Type-Cを採用するように。最近のガジェット界隈の流れを汲んだ重要な変更点。ちなみに、わずか5分の充電で1時間の駆動が可能になる急速充電機能も用意されている。
TARAH PROと同じドライバーの採用で音質が格段に向上
VISTAには、Jaybirdの人気ワイヤレスイヤホン 「TARAH PRO」 と同じ6mmのドライバーユニットが採用されている。
TARAH PROは音質面ではかなり評価されているイヤホン(レビュー記事)で、VISTAは同イヤホンと同じドライバーを採用し、さらに継ぎ目のない一体成型とすることで、先代の完全ワイヤレスイヤホン 「RUN」 や 「RUN XT」 よりもひずみを抑え、クリアな音に仕上がっているという。
一般的にイヤホンの音質を向上させるには、搭載されるドライバーユニットを大型化することで手っ取り早く音質を向上させることができるが、Jaybirdはこの6mmという大きさにこだわっている。
その理由としては、ドライバーユニットを大きくしてしまうことでイヤホン自体が大きくなってしまい、フィット感やコンパクトさが損なわれてしまうから。そのため、ドライバーユニットはあえて6mmにこだわり、それでいて音質の向上に努めているとのこと。
実際に音楽を聞いてみるとハッキリとその進化を感じることができた。筆者は前モデルのRUN XTも持っているが、同イヤホンよりもVISTAの音は圧倒的にクリア。臨場感あふれるサウンドを楽しめるようになった。
このVISTAでボーカル曲やピアノ、ジャズ、ゲーム音楽、クラシックに至るまで様々なジャンルの楽曲を聴いてみたが、高音域から低音域まで全体的なバランスが良く、どんな楽曲でも気持ちよく聞くことができる。例えば、筆者のお気に入りアーティストであるClean Banditの 「Symphony」 では、ライブを聴いているような音の広がりを感じた。
VISTAはスポーツ向けのイヤホンではあるが、音楽鑑賞用と紹介しても良いくらいの音質に仕上がっていて、完成度はかなり高い。運動時はもちろんだが、自宅での音楽鑑賞にも使えるイヤホンが欲しいなら、現時点ではVISTAが最有力候補になってくれるのではないだろうか。
ちなみに、VISTAは専用アプリ 「Jaybird MySound」 で音質を自分好みにカスタマイズできる 「パーソナルEQ」 機能が用意されている。重低音を増量したり高音域を強調したりと、オリジナルの音に不満がある場合でも大抵は同機能で補えるはずだ。
同機能を利用するには、「Jaybird MySound」 アプリ内の 「プリセット」 に表示されている 「パーソナルEQ」 をクリックすることで設定がスタート。イヤホンから聴力検査のようなトーンが発され、その音が聞こえるまで調節していくことで、自分の耳に合った設定を作ることができる。
カスタマイズはアプリを通じて行うものの、一度作ったEQはVISTA本体に保存される仕組みになっているため、スマートフォンを機種変更しても再度アプリをダウンロードしてVISTAを接続するだけですぐに適用されるようになっている。
接続の安定性と遅延が大幅に改善
VISTAはRUN XTにあった ”接続の不安定さ” と ”遅延” の問題を改善している。
筆者が特に重要だと思ったのは接続の安定感。RUN XTの場合はスマートフォンとイヤホンの接続がたまに不安定になり、直すには一度リセットしたり再ペアリングが必要になるケースがあった。この現象は筆者だけでなく海外のユーザーからも報告が上がっていたが、今回VISTAを使い始めてからは一度もこういった問題が起きていない。
さらに遅延も大幅に改善された。完全ワイヤレスといえば遅延がよく問題視される。特にYouTubeなど動画を視聴するとその影響は顕著で、動画の音声が映像とズレて聞こえてしまうことがあり、完全ワイヤレスイヤホンで動画を視聴するのはやや厳しいケースも多い。
これらの問題は、Jaybirdがとある会社と共同で開発したワイヤレスチップ 「JBS1」 によって解決できたという。
このJBS1が従来製品に搭載されていたチップと異なるのは、スマートフォンなどとの”接続方法”だ。具体的には、まず左右どちらかのイヤホンが先にスマートフォンと繋がり、もう片方のイヤホンはその電波を盗み取るように繋がる形式をとる。これまでの完全ワイヤレスイヤホンは片方のイヤホンをマスター機として接続し、そのマスター機からもう片方のイヤホンにブリッジさせるのが基本だった。
このブリッジが遅延や接続の不安定さを生むきっかけだったが、左右のイヤホンがそれぞれ別々に接続される状態に近づけたことで接続が安定し、遅延が少なくなっている。
YouTubeで動画を視聴してもほんのちょっとのズレしかなくなっているため、ほぼ実用レベルに達したと言っても問題ないだろう。
充電ポートは本体正面下部に
ちなみに、「JBS1」 という新型チップのおかげで片方のイヤホンだけで音楽を聴くことも可能だ。普通であれば両耳につけて音楽を楽しむところだが、屋外のアクティビティなどで使用する際に、車の走行音など周囲の音が聞きたい時に役立つかもしれない。
Jaybirdによると、片耳だけで使用する場合のバッテリー持ちは単純に倍、つまり最大32時間の使用が可能になるということだ。片方のイヤホンをバッテリーケースに収納し、もう片方のイヤホンを取り出すと自動的に接続先がスムーズに切り替わる仕組みになっている。
IPX7等級の防水性能
Jaybirdのイヤホンは防水設計が基本だが、当然VISTAもそれを引き継いでいる。
VISTAは雨が侵入しないよう、IPX7等級の防水性能を備えている。このIPX7というのは水深1mに30分間水没し続けても内部に水が浸水しない程度の防水規格で、ゲリラ豪雨のような突然の強い雨にも耐えることができる。イヤホンの丸洗いもできてしまうくらいだ。
また、VISTAはスポーツ時に使用することを前提にしたイヤホンのため、防水性能だけでなく汗への耐性にもこだわった。Jaybird独自の設計により、塩分や油分など汗に含まれる成分からもイヤホン本体をしっかりガードしてくれる。大量に汗をかくようなハードな運動をするときにも安心して使うことができるはずだ。
ただし、防水を謳っているのはあくまでイヤホン本体のみ。バッテリーケースに関しては設計上は雨などのシーンを想定してなるべく故障しないような設計になっているというが、試験を通してはいないようなので過信は禁物だ。
VISTAの欠点を強いてあげるなら遮音性
ここまでVISTAの特徴を紹介してきたが、これといって欠点は見当たらなかった。しかし、そうは言っても完璧な製品ではない。
欠点を敷いてあげるなら、やはり遮音性が完璧でないということくらいだろうか。繁華街など混雑した街中では周囲の雑音を消すことができない。AirPodsやPowerbeats Proに比べたら遥かにマシではあるのだが、周囲の音をシャットアウトして完璧に音楽に没頭したい場合は同イヤホンは適さない可能性がある。
とはいえ、そうは言っても筆者はこの遮音性に関してはそこまで問題だとは考えていない。
なぜかというと、同イヤホンはもともとランナー向けのイヤホンとして開発されたもの。繁華街のど真ん中で使うことよりも公園など比較的静かな場所で使うことが多いと想定されるため、ノイズキャンセリング機能などは当初から必要ない場合もある。
また、屋外のアクティビティとして利用するのであれば周囲の音は少なからず聞こえた方がいい場合もある。例えば近くを通り過ぎる車や自転車など、これらの音が聞こえないのはむしろ危険というもの。スポーツ用途として購入するならむしろJaybird VISTAがオススメかもしれない。
まとめ
Jaybird VISTAは、RUNやRUN XTの欠点や問題を確実に克服した完全新型モデルとして登場したが、その実力は想像以上。今後の完全ワイヤレスイヤホンのメイン機として使用することになりそうだ。
やや音質に関してはダイナミックさがあったほうが面白かったような気もするが、性能は十分。スポーツユースだけでなく、日常利用もできる優れた製品だと感じている。
もしコンパクトで高音質な完全ワイヤレスイヤホンが欲しいなら、Jaybird VISTAを選んでみてはどうだろうか。