
日本郵便は2025年5月26日から、従来の住所を英数字7桁で簡潔に表現できる「デジタルアドレス」の正式提供を開始した。
「デジタルアドレス」は、都道府県から建物情報までを含む詳細な住所を、個人ごとに発行される7桁のコードに置き換えることで、従来の煩雑な住所記載や入力の手間を大幅に軽減することを目的としたもの。
たとえば、ECサイトや病院、宿泊施設などでの住所入力が簡略化され、特に日本語が苦手な外国人や高齢者にとっては大きな利便性向上が期待される。
- 7桁の英数字で構成される住所識別コード
- 本人申請制で発行され、住所と紐づけて利用
- 利用者は「ゆうID」登録後、住所を1つのコードに変換可能
- 再取得時は以前のコードを再利用不可
◼︎ 一般向け
- 長い住所入力が不要になり、Webやアプリでの入力が簡単に
- 引越し後もデジタルアドレスは継続利用可能(転居届提出で紐づけ更新)
- 在日外国人・高齢者でも利用しやすく、正確な住所入力をサポート
- プライバシー配慮設計:逆引き不可、同居者情報や地理情報は含まれない
◼︎ 事業者向け
- 住所の入力ミス・書き間違い削減
- マンション名などの省略されがちな情報も正確に取得可能
- 名寄せ・表記ゆれ対応が容易になり、データ整備が効率化
- 用途別(部署・返品先・キャンペーン用など)の個別アドレス発行可能
- 地図・SNS・ガイドブックなどとの連携で来店促進にも活用可能
◼︎ 注意点
- 現時点ではデジタルアドレスのみでは郵便物は送れない(郵便番号・住所・氏名の記載が必要)
デジタルアドレスは、ユーザーが「ゆうID」に登録した住所に対して、個別にデジタルアドレスを発行する仕組み。郵便番号とは異なり、個人の申し込みに応じて発行する。
コードそのものに地理的な意味はなく、氏名や詳細な住所といった個人情報とも直接結びついていないため、プライバシーに配慮した設計となっている。
仮に第三者にコードが知られても、そこから個人を特定することはできない。さらに、引っ越しをしてもデジタルアドレスは継続で利用できるため、住所変更のたびに各種サービスで情報を更新する必要もなくなる。
現時点ではデジタルアドレスのみで郵便物を送ることはできず、宛名や従来の住所、郵便番号の記載が引き続き求められる。一方、日本郵便の「郵便局アプリ」では、ゆうパックの送り状作成時にデジタルアドレスを使って住所を自動入力する機能が既に導入されており、今後はECサイトや行政サービスをはじめとする多様な分野で対応が進む見込みだ。

また、日本郵便は同時に「郵便番号・デジタルアドレスAPI」の提供も開始した。これは法人や事業者向けの無料APIであり、郵便番号やデジタルアドレスを入力すると、最新の住所情報を取得できる。
漢字、カナ、ローマ字などの多言語表記に対応し、フリーワード検索も可能なため、外国人利用者への対応や業務効率の向上、データの整備などに役立つ。このAPIは「ゆうID」と組織登録を通じて利用でき、入力ミスや記載漏れの削減にも貢献すると見られている。
日本郵便は、今回の取り組みを郵便・物流業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する一環と位置づけている。将来的には企業向けにブランド名を使った「ブランドデジアド」の提供も検討しており、住所の扱い方そのものを見直すことで、より簡単で、正確かつ安全な住所利用の新たな基盤を築こうとしている。
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(画像:日本郵便)