
日本の公正取引委員会は4月15日、米Googleに対し、独占禁止法違反にあたる行為を行っていたとして排除措置命令を下した。
対象となったのは、GoogleがAndroidスマートフォンを製造・販売する国内メーカーとの契約において、自社アプリを強制的に初期搭載させたり、他社製の検索アプリや検索エンジンの採用を事実上制限していた点。
具体的には、GoogleはAndroid端末に「Google Play」を搭載させるための条件として、「Chrome」や「Google」アプリをプリインストールさせることや、それらのアイコンやウィジェットをホーム画面上の目立つ位置に配置することを求めていた。
また、Chromeの検索機能がGoogleの検索エンジンに固定されており、ユーザーが他の検索エンジンを使うことを前提としていない設計がされていた。加えて、検索広告による収益の一部をメーカーに還元する一方で、その代わりに競合の検索サービスやアプリを搭載しないよう求める、いわば “見返り” 付きの排除的条件も盛り込まれていた。
公取委はこうした契約条件が、メーカーの自由な選択を阻害し、他の検索サービスとの競争を不当に制限するものだと判断。これは独占禁止法第19条が禁じる「拘束条件付き取引」に該当するとし、違反行為の是正と再発防止措置を命じた。
公取委が米巨大テック企業への排除措置命令を下すのは初めて
命令には、Googleに対して今後5年間、外部の第三者による監視体制を設けるよう義務付ける内容も含まれている。日本国内でGAFAMに対してこのような強制力を伴う命令が下されるのは、今回が初めてのケースとなる。
なお、この措置は特定のメーカーに限られたものではなく、2023年12月時点で少なくとも国内6社が影響を受けていたとされる。これにより、販売中のAndroid端末のおよそ8割以上が、こうしたGoogleとの契約条件のもとに設計・販売されていたことになる。
Googleはこれに対し、Android端末メーカーや通信事業者はGoogleのサービスを強制されていたわけではなく、自由に選択した結果だったとする見解を示した。一方で、今回の命令内容を慎重に検討し、公正取引委員会と引き続き協力していく意思も表明している。
今回の行政措置の背景には、日本国内でのGoogleの影響力の強さがある。2023年時点での調査によれば、スマートフォンにおける検索エンジンのシェアはGoogleが81%を占めており、2位のYahoo! Japanを大きく引き離していた。AndroidというOS自体がGoogle製であり、世界的にもAndroid端末に搭載される検索エンジンの95%以上がGoogle検索であることからも、検索市場における圧倒的な優位性がうかがえる。
近年の検索体験の進化、すなわち生成AIによる情報検索の革新も、今回の措置と無関係ではない。ChatGPTやGoogleのGemini(旧Bard)などの登場によって、従来のキーワード検索型から、より会話的で文脈を理解する検索手段への移行が始まりつつある。こうした中で、Googleによる従来型の検索支配構造に対する問題意識が、政策面でも顕在化してきた格好だ。
今後は、Googleがどのような形で再発防止措置を講じるのか、また外部監視体制の具体的な運用内容が注目される。また、公取委が今回の命令を皮切りに、他のGAFAM企業、特にAppleやMetaといった他の巨大プラットフォーマーに対しても踏み込んだ対応を行うのかどうかも、大きな焦点となるだろう。日本のデジタル市場におけるルール形成が、いま大きな転換点を迎えている。
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