2022年9月、Appleはユーザー待望の新型iPhone 「iPhone 14/14 Pro」 シリーズを発売した。
今年の新型iPhoneは、通常モデルがiPhone 14/14 Plus、上位のプロモデルがiPhone 14 Pro/14 Pro Maxの4モデル構成。画面サイズは通常モデルとプロモデルで共通となり、iPhone 14/14 Proが6.1インチ、iPhone 14 Plus/14 Pro Maxが6.7インチだ。
従来までのシリーズでも、通常モデルとプロモデルでカメラ数や画面のリフレッシュレートなどに違いが設けられていたが、今回のiPhone 14シリーズはさらに前面カメラ部分のデザインや搭載プロセッサの世代にも違いが設けられたことで、通常モデルとプロモデルの違いが顕著になった。
今回、筆者は上位モデルのiPhone 14 Proを購入。発売日から数日にわたりじっくり使い込んでみた。そのなかで感じた、iPhone 14 Proの良さやイマイチなところを本記事では詳しくお伝えしたい。
iPhone 14 Proの本体デザインをチェック
さっそく、iPhone 14 Proのデザインをチェックしていこう。
iPhone 14 Proは、先代のiPhone 13 Proシリーズのデザインを基本踏襲しながらも、画面上部のノッチがピルケース型パンチホール 「Dynamic Island」 に変更されるなど、いくつか変更が加えられたマイナーアップデートモデルだ。
採用するデザインは、最近のApple製品に多くみられる 「フラットエッジ」 。90°の角度でカクカクと折れ曲がるエッジのおかげで、手で持っている感覚が強く感じられることで安心感があり、筆者としてはとても気に入っている。
iPhone 12 Pro | iPhone 13 Pro | iPhone 14 Pro | |
---|---|---|---|
高さ | 146.7mm | 146.7mm | 147.5mm |
幅 | 71.5mm | 71.5mm | 71.5mm |
厚さ | 7.4mm | 7.65mm | 7.85mm |
重量 | 187g | 203g | 206g |
本体サイズは147.5 × 71.5 × 7.85 mm、重量は206g。大きさに関しては昨今のスマートフォンのなかでは一般的なサイズ感で片手で操作も十分に可能。
重量に関しては2年前のiPhone 12 Proから19g、昨年のiPhone 13 Proから3gほど重くなっている。従来機種からの変化には気付けないものの、200g超えのスマートフォンはやはり片手で長く持つと腕が疲れてくる。軽量スマートフォンが好きな方も多いと思うので、これだけはお伝えしておきたい。
前面 (ディスプレイ)
iPhone 14 Proの画面は6.1インチ有機ELディスプレイ。ブラウジングだけでなく、動画やゲームなども十分にできる、ちょうど良いサイズ感の画面になっている。
画面サイズは先代のiPhone 13 Proとおなじ約6.1インチだが、画面周囲のベゼル幅はほんのわずかに狭くなった関係で、横幅71.5mmを維持しながら画面の領域はわずかに大きくなっている。
また、最大の特徴として今年は画面上部のU字型ノッチが廃止になり、新たにピルケース型パンチホールが採用。上部の表示領域が広くなり、より全画面表示に近いデザインになった。
U字型ノッチに関しては、iPhone 12シリーズ→iPhone 13シリーズでだいぶ小型化されたものの、それでも異物感を指摘する人が多かった。ピルケース型パンチホールになったことで、それは多少解消されたように感じている。
このピルケース型パンチホール部分は 「Dynamic Island」 と呼ばれ、通知などによって黒色の領域がインタラクティブに動くようになっていて、パンチホールの存在が気にならないようにiOSで工夫されている。「Dynamic Island」 については今回の注目機能ということもあり、あとでもっと詳しく解説したいと思う。
ディスプレイをカバーする前面ガラスには、引き続きコーニングの 「Ceramic Shield (セラミックシールド)」 が採用されている。加えて、前面カバーとボディのエッジがおなじ高さになっていることで、ガラスの保護力を高めている。
ただし、落とし方によっては画面が割れてしまったり、最前面の耐指紋性撥油コーティングが剥がれることによる傷が発生するため、長く使うならやはりガラスフィルムなどの使用がオススメだ。
背面
本体背面には、リアカメラとAppleロゴが配置されている。
リアカメラは超広角と広角、望遠のトリプルレンズ仕様。性能についてはのちに詳しく後述するが、リアカメラ自体のサイズは毎年カメラ性能の向上とともに大きくなっていて、今年もiPhone 13 Pro用のケースを使い回すことはできなくなっている。
iPhone 14シリーズの背面には、ガラスパネルが使用されているが、下位モデルは通常の強化ガラスであるのに対して、上位のプロモデルには指紋などがつきにくいテクスチャードマットガラス(すりガラス)が採用されている。テクスチャードマットガラスは、iPhone 12 Proからの継続採用ではあるものの、筆者はこのサラサラな手触りと、ちょっぴり高級感が感じられる見た目を以前からとても気に入っている。
側面/底面
iPhone 14 Pro/14 Pro Maxの側面は、ステンレススチール仕上げ。アルミニウム仕上げのiPhone 14/14 Plusと比べると光沢が強く、横から見たときにかなりの高級感がある。ただし、相変わらず指紋はつきやすいため、気になる方はケースの使用をお忘れなく。
各種ボタン類の位置は従来モデルから変わらずで、左側面にミュートスイッチと音量アップ/ダウンボタン、SIMカードスロットが、右側面にサイドボタンが配置されている。
なお、米国モデルでは完全eSIM化が行われており、SIMスロットが搭載されていない。いずれ日本でもSIMスロットレス化が行われ、よりシンプルな見た目へと変貌するだろう。
底面にはLightningコネクタが搭載されている。ユーザーからはUSB-C化が望まれているが、今年の新モデルでもそれは残念ながら実現せず。USBのバージョンも 「USB 2.0」 で、転送速度は従来のままだ。
また、3.5mmイヤホンジャックはもちろん非搭載。有線イヤホンを使いたい方はLightningコネクタを採用したイヤホン、あるいはLightningコネクタから3.5mmイヤホンジャックに変換するアダプタ 「Lightning – 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ (税込1,380円)」 など別途用意しよう。
本体カラー
iPhone 14 Proには、ディープパープル/ゴールド/シルバー/スペースブラックの4色が用意されているが、今回選んだカラーは新色の 「ディープパーブル」 。
国によっては 「おばあちゃん色」 と言われたりもしているようだが、深めの紫が落ち着いた雰囲気を醸し出しており、オシャレなカラーに仕上がっている。紫は2022年のトレンドカラーにも選ばれていることもあり、ファッションとも合わせやすそうだ。
ちなみに、今年も新型モデルにあわせて純正のシリコーンケースを購入してみた。カラーはエルダーベリー。シリコーンケースはラバー特有の滑りにくさがあり、手からiPhoneを落としたくない人にオススメ。
シリコーンケースはMagSafeにも対応しており、ケースを装着した状態でもMagSafeアクセサリを使用できる。
同梱物
同梱物は、USB-C – Lightningケーブル、そしてマニュアルとSIMピン、Appleのロゴシール。今回も、電源アダプタと有線イヤホン (EarPods with Lightning Connector) は同梱されていないので、必要な方は別途購入していただきたい。
ディスプレイ性能:滑らかで明るい有機ELディスプレイ
iPhone 14 Proには、従来モデルから引き続き 「Super Retina XDRディスプレイ」 という有機ELディスプレイが搭載されている。
同ディスプレイはMac Pro向けに開発されたディスプレイ 「Pro Display XDR」 の技術を応用したもので、HDR規格にも対応しており、明るい部分と暗い部分どちらの階調も犠牲にすることなく表示できる。写真や動画をプロレベルで編集できる画面クオリティをもっているため、写真や動画、3Dゲームなどを高画質で楽しむことが可能だ。
Apple製品ではお馴染みのTrue Toneディスプレイや広色域ディスプレイ(P3)が搭載されているほか、画面を長押ししたときに、振動によって通常とは異なる操作感を指先に伝える 「触覚タッチ」 も搭載。
プロモデルならではの特長としては、まずは画面輝度が通常モデルよりも高いこと。通常モデルが800ニトであるのに対して、プロモデルは1,000ニト。ピーク輝度(HDR)は通常モデルが1,200ニトで、プロモデルが1,600ニトだ。
プロモデルは屋外での使用時のピーク輝度が2,000ニトとなっていて、昨年のiPhone 13 Proよりも2倍画面が見やすくなっているという。あくまでピーク輝度であるため、実際の体験として2倍見やすいかというとそうでもなかったが、日差しの下でiPhoneを使うことが多い人は以前よりも快適に画面が見えるようになっているはず。
画面輝度:画面全体の明るさ
ピーク輝度:画面の一部を発光させたときに最も明るくなる箇所の明るさ
そして、iPhone 14 Proのディスプレイ性能を語る上でもっとも重要なのが、最大120Hzのアダプティブリフレッシュレートを持つ 「ProMotionテクノロジー」 が搭載されていること。
リフレッシュレートとは、1秒間に何回画面の書き換えが行われるかを示す数値のことで、120Hzというと1秒間に120回画面が書き換えされていることを示す。標準モデルのiPhone 14/14 Plusは60Hzであることから、iPhone 14 Proなら画面を2倍滑らかに表示できるということになる。
画面が滑らかに動くことで、目への負担が少なくなるという恩恵があるため、スマホを触っていて目が疲れやすいという人は、プロモデルを選ぶのがオススメだ。
また、iPhone 14 ProのProMotionテクノロジーは従来よりも進化を遂げており、画面を動かさないときのリフレッシュレートの最低値を1Hzまで下げることでバッテリー消費を最小限に抑えられるように。このおかげで画面の常時点灯にも対応している。
Dynamic Island:UIに溶け込むインタラクティブな浮島
もはやiPhoneのトレードマーク的な存在にもなっていたノッチは、今年からベゼル部から離岸し 「島」 と化した。Appleはこの島のことを 「Dynamic Island」 と呼んでいる。
Dynamic Islandには、インカメラや環境光センサー、赤外線センサーなどがパッケージされたTrueDepthカメラが内蔵されている。これまでノッチに搭載されていたコンポーネントがごっそり沖に出てきたかのようだ。
これらのコンポーネントは、画面上部のピルケース型の黒い領域に囲われ配置されている。ロック画面でみると、その存在感は江ノ島くらいあるだろうか。
これだけなら他社のスマートフォンにもありそうだが、iPhoneならではの機能としてこの黒い領域がシステム(OS)と連動してぐにょんぐにょんと形状を変えることで、UIの一部として溶け込んでしまう。
たとえば起動しているアプリケーションのショートカットボタンになってくれたり、音楽再生用のミニプレイヤーになってくれたり。もともとデッドスペースとなるはずだった島をうまくUIの一部にしてしまうという、まさにDynamic Island、Apple的なソリューションと言えるだろう。
実際の動作としてはマップで道案内をさせたり、ミュージックアプリで音楽を再生中にアプリを閉じると、Dynamic Islandにアイコンが移動され、タップするだけで各アプリに再度遷移できるようになる。
また、音楽/動画を再生中であれば、Dynamic Islandを長押しすることでミニプレイヤーを出現させることもできる。ミニプレイヤーを表示しながら別の作業をすることはできないが、わざわざミュージックアプリやコントロールセンターを開かずとも操作できるのは便利かもしれない。
また、電話の着信時にはDynamic Islandが大きくなり、発信者の名前と受話ボタンが大きく表示される仕組みになっている。そのほかにも充電を開始したときやバッテリー残量が減ったときの通知もアニメーション表示してくれる。ミュートスイッチのON/OFFなど各種ステータスの変更を大きく表示してくれるのは地味に便利なポイントと言えるだろう。
ただ、画面上部をタップすることで、画面上まで自動スクロールできる機能が誤タップで使いづらくなった点はデメリットとして挙げられる。多用していたユーザーは最初ストレスに感じられるかもしれない。
常時表示機能:光り続ける画面でさまざまな情報をいつでも確認可能
iPhone 14 Pro/14 Pro Maxは、iPhoneの歴史上はじめて常時表示ディスプレイに対応した。画面の常時表示はApple Watchではすでに対応していた技術だが、いよいよiPhoneでも使用できるようになった。
従来まではiPhoneを一定時間 (設定アプリ内の 「画面表示と明るさ」 > 「自動ロック」 で設定した時間) 触らないでいると、iPhoneはスリープ状態になり画面が消えて真っ黒になっていた。iPhone 14 Proでは、このときに画面が真っ黒にならず、時刻や通知などの一部情報をうっすらと表示したまま暗く表示されるように。
上記が通常表示と常時点灯時の違い。常に画面が表示され続けるため、iPhoneの画面を確認したいときにわざわざ画面をタップするひと手間がなくなり、地味ながら便利に使えるようになった。
筆者は仕事柄、普段からiPhoneの通知がとても多いのだが、ただiPhoneを見るだけで情報をチェックできるようになったことで、通知の取りこぼしが少なくなったように感じている。
さらに、いつでも時刻を確認できるようになったことから、使わないときには置き時計のようなインテリアとしても活用できる。特にワイヤレススタンドなどとの相性が良さそうだ。
筆者は自分のデスクにBelkinの3-in-1ワイヤレス充電スタンド 「BOOST↑CHARGE PRO 3-in-1 Wireless Charger with MagSafe」 を設置しているため、組み合わせて使ってみたところ、ちょうど良い角度で時刻を確認しながら本体も充電でき、とても便利だった。
ちなみに、画面の常時点灯は設定アプリの 「画面表示と明るさ」 > 「常にオン」 のトグルからオフにすることもできる。また、Appleが公開しているサポートページによると、以下の場合には自動で常時点灯がオフになる仕組みであるとのことだ。
- iPhoneの画面が下向きになっているとき
- iPhoneがポケットやバッグに入っているとき
- スリープモードのとき
- 低電力モードがオンのとき
- CarPlayに接続しているとき
- Macの連係カメラとしてiPhoneを使っているとき
- しばらくiPhoneを使っていないとき (iPhoneがユーザーの行動パターンから自動で判断)
- iPhoneにペアリングされたApple Watchが離れたとき (再びiPhoneに近づくとオンに戻る)
Face ID:顔認証は横向きでも可能
「iPhone 14 Pro」 の生体認証機能は顔認証のFace ID。iPhone 14 Proに内蔵されたTrueDepth(インカメラシステム)に顔をスキャンさせることで、本人かどうか確認することができる。
マスクを装着した状態で顔認証ができなかったこともあり、一時はTouch IDの搭載が期待する声が高まったが、2022年3月に配信されたiOS 15.4でマスクを装着した状態でも顔認証がパスできるようになってからは、Touch IDの搭載要望の声も沈静化している。
Touch IDとFace IDのどちらが便利かは使い方によるかもしれないが、iPhoneを使うときは必ずと言っていいほど画面を注視しているため、必然的に顔を見せることになる。さらに手が乾燥してガサガサになったときに指紋認証の精度が落ちることがよくあり、筆者としてはFace IDのほうが便利に感じている。
ちなみにFace IDの認証速度や精度に関しては、昨年の 「iPhone 13 Pro」 からほとんど変わっていないが、今年9月から配信が開始されたiOS 16によってiPhone 13 Pro以降のモデルにおいて横向きでも顔認証が可能になっている。
これまでは必ず縦向きで認証しなくてはいけなかったため、とても便利。ただしマスク着用時の認証精度はあまり高くないので、ここは要改善ポイントだろうか。
CPU:先代モデルから10%前後の向上
iPhone 14 Proには、4nmプロセスで製造されたAppleの最新プロセッサ(SoC)の 「A16 Bionic」 が搭載されている。
同チップは160億以上のトランジスタを搭載しており、高性能コア2つと高効率コア4つの合計6コア構成。競合他社のSoCに比べて最大40%高速なほか、消費電力が20%低減されるなど省電力性能が向上しているという。
先代の 「A15 Bionic」 に比べてどれほどの性能向上が見られるのか。ベンチマークアプリ 「Geekbench 5」 でCPU性能を数値化してみた。
端末名 | iPhone 12 | iPhone 12 Pro | iPhone 13 Pro | iPhone 14 | iPhone 14 Pro |
---|---|---|---|---|---|
発売日 | 2020年10月 | 2020年10月 | 2021年9月 | 2022年9月 | 2022年9月 |
プロセッサ | A14 Bionic | A14 Bionic | A15 Bionic | A15 Bionic | A16 Bionic |
シングルコアスコア | 1586 | 1590 | 1728 | 1747 | 1870 |
マルチコアスコア | 3844 | 3984 | 4734 | 4795 | 5380 |
計測の結果、シングルコアスコアは1870、マルチコアスコアは5380となり、A15 Bionicと比べるとシングルコアスコアが約8%、マルチコアスコアが約14%向上していることが分かった。
昨年のA15 Bionicに比べると大幅な性能向上はないものの、iPhone 14 Proに詰め込まれた最新技術をスムーズに動かす役割を担っているA16 Bionic。スコアからも分かるように、世界の名だたるスマートフォンと比べても、トップクラスの性能を実現していると言えるのではないだろうか。
ちなみに、A16 Bionicには毎秒17兆回近くの演算が可能な新しい16コアのNeural Engineが搭載。機械学習に関連する処理を高速でこなしている。
GPU:先代モデルから6%向上
A16 BionicのGPUコア数は5つで、従来よりもメモリ帯域幅が50%多くなっているという。GPU性能についても、「Geekbench 5」 で計測してみた。
端末名 | iPhone 12 | iPhone 12 Pro | iPhone 13 Pro | iPhone 14 | iPhone 14 Pro |
---|---|---|---|---|---|
発売日 | 2020年10月 | 2020年10月 | 2021年9月 | 2022年9月 | 2022年9月 |
プロセッサ | A14 Bionic | A14 Bionic | A15 Bionic | A15 Bionic | A16 Bionic |
METAL | 9281 | 9433 | 14254 | 12862 | 15163 |
計測の結果、スコアは15163。A15 Bionicと比べると約6%の性能向上となった。
筆者がプレイしている『ポケモンユナイト』や『原神』などの3Dゲームをプレイしてみたが、いずれも快適に動作していた。まだ、画像編集などグラフィック性能を必要とするアプリも素早く作業できたことから、何をするにも困らないはずだ。
メモリ容量:シリーズ全機種で6GBに
前述の 「Geekbench 5」 でベンチマークを計測した際に、内蔵するメモリ(RAM)容量が明らかになった。
iPhone 14 Proのメモリ容量は6GB。これは先代モデルのiPhone 13 Proと変わらない容量になっている。
端末名 | iPhone 12 | iPhone 12 Pro | iPhone 13 Pro | iPhone 14 | iPhone 14 Pro |
---|---|---|---|---|---|
発売日 | 2020年10月 | 2020年10月 | 2021年9月 | 2022年9月 | 2022年9月 |
プロセッサ | A14 Bionic | A14 Bionic | A15 Bionic | A15 Bionic | A16 Bionic |
RAM容量 | 4GB | 6GB | 6GB | 6GB | 6GB |
Androidスマートフォンなどで快適な動作を得るためにはより大容量のメモリが必要になるが、一方のiPhoneは多数のアプリを開いても使用するメモリ容量がうまく管理されるようになっていて、動作速度に影響が出ないようになっている。
実際に、起動した多数のアプリをスイッチングしてみたが、切り替えはとてもスムーズで6GBの容量で十分とみられた。アプリスイッチャーの画面では使わないアプリをキルすることができるが、メモリ容量が不足しないよう適宜アプリキルをする必要はほとんどない。
ちなみに筆者は、iPhone 14シリーズが登場するまで、iPhone 13 miniとiPhone 13 Proの2台を使用してきた。それぞれのメモリ容量はiPhone 13 miniが4GB、iPhone 13 Proが6GBだった。4GBも6GBもどちらも動作に違いはなかったことから、メモリ容量の違いについてはあまり考える必要はないだろう。
なお、iPhone 14シリーズは全4機種いずれもメモリ容量が6GBであることが明らかになっている。
カメラ:カメラ性能は大幅に向上。初の4800万画素撮影が可能に
iPhone 14 Proの大きな変更点の一つが、背面カメラのアップデートだ。
カメラ構成は、広角+超広角+望遠のトリプルカメラとLiDARスキャナで従来モデルから変わらないのだが、各カメラの性能が向上している。さらに 「Photonic Engine」 の搭載により、明るさが足りない場所での写真の仕上がりが向上しているのが特長だ。
特に大きな変化があったのが広角カメラで、iPhone史上初のクアッドピクセルセンサーを採用した48MPのカメラが搭載されている。4つのピクセルを1つにまとめるビニング処理をするため、仕上がりは従来と同じ12MPながらも、より明るい写真が撮影できるようになっている。
もしビニング処理なしで48MPピクセルをフルに使って撮影したい場合は、カメラアプリ右上の 「RAW (ProRAW) 」 モードをオンにすれば良い。
RAWモードで撮影した写真を拡大してみると、通常モードよりも細かい部分まで綺麗に撮影できていることが分かるが、写真1枚あたりの容量が60MB以上と大きくなりがちで、ストレージ容量をあっという間に圧迫してしまう。スマホのような小さな画面で見る分には12MPで撮影したものと大きな違いはないため、ここぞというときの撮影のみに限定して使うようにしよう。
クアッドピクセルセンサーの恩恵は他にもある。センサーの中央部分の12MPを切り取って使うことで、デジタルズームを使用せずに2倍ズーム撮影をする 「クロップズーム」 が利用できるようになったことだ。
従来までは2倍ズームで撮影をする場合、広角カメラをデジタルズームで引き伸ばすことで実現していたため、画質がわずかに劣化してしまっていた。iPhone 14 Proのクロップズームでは、単純に撮影した写真の中央を切り抜いて2倍相当の倍率で撮影するため、画質の劣化なく綺麗な写真が撮影できるようになった。カメラアプリのUIにも 「2x」 が新たに追加されている。
さらに広角カメラはセンサーシフト光学式手ぶれ補正が第2世代に進化し、より手ぶれが少なくはっきりとした写真が撮影できるようになった。
上記が実際に広角カメラで撮影した写真。ビニング処理を使って明るい場所で撮影した写真(12MP)をiPhone 13 Proの広角カメラで撮影した写真と見比べてみたところ、ズームなしでは大きな違いはないように感じられた。
そして、上記がクロップズームで撮影した2倍相当のズームで撮影した写真。デジタルズームに比べて、すみずみまで綺麗に撮影できている印象だ。
2倍のクロップズームが使えるようになったことで、ポートレートモードでの撮影時にも恩恵があった。従来までは1倍と3倍しか選ぶことができず、「1倍だと遠すぎ、3倍だと近すぎ」 問題が発生していた。
iPhone 14 Proは1倍と3倍に加えて 「2倍」 も選べるようになったことで、ちょうど良い距離感でポートレート写真を撮影できるように。これでポートレートモードの撮影距離に悩まされることはかなり少なくなるはずだ。
恒例のストローチャレンジでは、iPhone 14 Proの方がiPhone 13 Proよりもハッキリとストローの先を捉えていた印象。ただし、ガラスの透明感は失われたことから、iPhone 14 ProとiPhone 13 Proとで得意・不得意が異なるのではないか、という結論に。
ちなみに余談になるが、先日リリースされた 「iOS 16」 では、ポートレート撮影時に被写体の後ろのものだけでなく、前にあるものもぼかすことができるようになった。同機能はiPhone 13シリーズから利用できるため、対象機種を持っているならぜひ試してみていただきたい。本物の一眼レフカメラで撮影したかのような本格的なボケ感が楽しめるはずだ。
これまで紹介してきたように、従来よりも大きな進化を遂げた広角カメラだが、唯一の弱点はセンサーの大型化による弊害なのか、近くの被写体へのピントが合わせにくくなったこと。しっかりピントを合わせるなら、少し被写体から離れるか、2倍のクロップズームを活用するようにしよう。
iPhone 14 Proは超広角カメラも変更が加えられている。絞り値がわずかに下がってしまったものの、代わりにセンサーサイズが大きくなっており、従来よりもシャープな写真が撮影できるようになった。
超広角カメラは引き続きマクロ撮影にも対応している。
広角カメラで撮影すると生花っぽく見えるこちらのお花も、ググッと近づいてマクロ撮影してみるとこのとおり。造花だということがハッキリと分かる。
ただし、マクロ撮影においてはセンサーサイズの大型化による恩恵をあまり感じることができなかったため、「綺麗なマクロ写真が撮影できるようになった」 とまでは断言できないという結果に。マクロ撮影はiPhone 13 Proでも利用できるため、単純にマクロ撮影の機能が欲しいだけならiPhone 13 Proでも十分と言えるだろう。
望遠カメラについては、画素数やズーム倍率などのスペックは従来から変わっていない。上記は広角カメラで遠くのフットサルコートを撮影したものだが、望遠カメラで3倍ズームで拡大してみると……。
高層ビルの上層階からも練習している様子がしっかりと撮影できた。
iPhone 14 Proの望遠カメラは、スペック上の変化はあまりないものの、従来よりも写真の仕上がりが良くなった印象だ。
たとえば上記の写真では、ポストの質感やペットボトルの水滴、遠くから走ってくるバスのライトなど、細かい部分がしっかりと表現できている。望遠撮影が多くなりがちな観光地での撮影が捗りそうだ。
そのほか、背面カメラで撮影した写真を作例として以下に並べておく。
iPhone 14 Proでは、広角カメラをはじめ、トリプルカメラ全体の性能が向上し、Photonic Engineによって明るい写真が撮影できるようになったものの、今回撮影をしてみて感じたのがiPhone 13 Proの性能も悪くなかったということだ。
iPhone 14 Proには広角カメラのビニング処理など唯一無二の特長はあるものの、実際の写真の仕上がりを見てみるとiPhone 13 Proも負けないくらい綺麗な写真を撮影できている。iOS 16で進化した部分もあるとは思うが、カメラ性能のためだけにiPhone 13 ProからiPhone 14 Proに買い換えることによる恩恵はそこまで大きくはないと感じている。
ただ、iPhone 12 Proからの買い替えや、そもそもiPhone 13などの通常モデルからの買い替えを検討しているなら、カメラ性能の大きな違いを感じるはずだ。カメラ性能を理由に買い替えるなら、これらのモデルからの買い替えを個人的にはオススメしたい。
また、iPhone 14 Proは動画撮影の性能も向上している。
iPhone 13シリーズで利用できるようになった、浅い被写界深度で映画のような映像を撮影できる 「シネマティックモード」 は、画質が1080p/30fpsから4K HDR/30fpsに向上。より高画質な映像作品を撮影できるようになった。
さらに、動きながら映像を撮影する際に、大きな揺れや振動を調整して滑らかな映像に仕上げる 「アクションモード」 という新モードが搭載。アクションカメラを用意せずともiPhoneだけで滑らかな映像が撮影できるようになった。
ちなみに、iPhone 14 Proは前面カメラの性能も向上している。具体的には従来まで固定フォーカスだったのが、今回オートフォーカスに対応したことで、複数人のセルフィー写真でも全員の顔にピントを合わせて撮影できるように。
ピント調節は暗い場所での撮影時にも高速で、ストレスなくセルフィーを撮影できるようになった。
LiDARスキャナ:オクルージョンにも対応する3Dスキャナー
iPhoneのプロシリーズには、物体や空間を3Dスキャンできる 「LiDARスキャナ」 機能が搭載されている。
このLiDARスキャナは、センサーから発された光が物体に反射して返ってくるまでの時間を計測することで、iPhoneとの距離を正確に測定できるというもの。これを利用することで街中にある銅像や、部屋の構造などあらゆるオブジェクトを3Dデータとして保存しておくことが可能だ。
実際に、LiDARスキャナで3Dスキャンしてみた。計測には 「3dScanner App」 を使用した。
今年のスキャン対象は千葉県成田市の観光キャラクター 「うなりくん」 。正味5分ほど、iPhoneを持ってうなりくんをぐるぐる周りながら撮影した。
結果は以下のとおり、うなりくんの魅力を減衰させることなく、正確にスキャンすることができた。昨年よりも気持ち上手く計測できるようになった気がしたが、これはおそらくアプリ側の精度が良くなったからではないかと個人的には予想している。
LiDARスキャナでオブジェクトをスキャンする機会は一般のユーザーはそんなに多いわけではないだろうが、実はAR系のアプリで効果を発揮することがある。
具体的には、ARオブジェクトが別のオブジェクトと被ってしまい、不自然なAR表示になることを防いだりすることが可能(オクルージョン)。
また、光がなくとも距離を計測できるLiDARの特徴を生かした機能として、夜間でもポートレート撮影ができる 「ナイトポートレートモード」 も利用できる。性能は昨年のiPhone 13 Proとあまり大差なかったため割愛するが、暗所でも綺麗なポートレート写真が撮れるため、ぜひご活用いただきたい。
GPS:高精度2周波GPSでさらに高精度測位が可能に
iPhone 14 Proは、新たに 「高精度2周波GPS」 をサポートしたことで、従来よりも正確な位置情報が得られるようになった。
高精度2周波GPSとは、従来のL1周波数(中心周波数1575.42MHz)に加えて、新たにL5周波数(1176.45MHz)の両方を受信できるというもの。L5周波数はL1に比べてより出力が高く、樹木や建造物といった障害物の影響を受けにくく正確に受信できるという特長がある。
日本では準天頂衛星システム 「みちびき(QZSS)」 がL1とL5のGPS電波を発しており、高精度測位が可能だ。
どれほど正確に位置情報を得られるのか、移動経路を表示してくれるGPSロガーアプリ 「ルートヒストリー」 を使ってテストしてみた。
上記がテスト結果。iPhone 13 Proはたまに歩道から外れて歩いているようなログになってしまっているが、iPhone 14 Proはほぼ歩道から外れることなく記録できている。
また、帰宅ラッシュ&電車遅延で大混雑となっていた渋谷駅や新宿駅でマップアプリを開いてみたが、位置情報が狂ってしまうことはほぼなかったことから、位置情報は従来に比べるとかなり正確に取得できるようになったと考えて良いだろう。
スピーカー性能:ステレオでダイナミックな映像体験が可能
iPhone 14 Proの内蔵スピーカーは、従来とおなじくステレオに対応している。
スピーカーの性能は先代モデルからほぼ変わっていないものの、ピーク音量で再生したときの音割れがやや少なくなった印象を受けた。通常の音量での再生に関しては特に違いはなかったことから、あまり気にするポイントではないと思うが、映画やドラマを視聴するような場面ではスピーカーの性能は没入感を高めるため地味に重要なポイントだろう。
バッテリー駆動時間:バッテリー持ちは先代と同じ、画面常時表示はすこしだけ食うかも
iPhone 14 Proは搭載しているバッテリーの容量が105mAh大きくなったが、その恩恵はあるのだろうか。
Apple公式サイトで公開されたiPhone 14 Proのバッテリー持ちをiPhone 13 Proと比べてみたところビデオ再生時のバッテリー持ちは最大1時間増えたとのこと。そのほかについては先代モデルと変わっていないようなので、ほぼiPhone 13 Proと同等の駆動時間になっている。
実際に使ったときのバッテリー持ちはどれくらいになっているのか。筆者の手元にあるiPhone 14 ProとiPhone 13 Proで実験してみた。iPhone 13 ProはFeliCaの修理で本体ごと交換対応になったばかりの新品で、バッテリーも劣化なし(容量100%)の状態なので、かなり正確な比較ができると思う。
検証は、YouTube動画を画面輝度50%の状態でずっと試聴し続けるというシンプルなもの。当サイトでいつも行っている検証方法だ。今回は検証映像として、YouTubeチャンネル 「Our Planet 4K」 の 「日本4K-美しい自然ビデオと一緒にリラックスした音楽(4KビデオウルトラHD)」 を利用させてもらった。
検証結果は以下のとおりで、Appleのビデオ再生最大17時間は実現できなかったが、昨年のiPhone 13 Proと同様のバッテリー駆動であることが確認できた。
iPhone 13 Pro | iPhone 14 Pro | |
---|---|---|
0時間 | 100% | 100% |
1時間後 | 97% | 98% |
2時間後 | 89% | 90% |
3時間後 | 82% | 84% |
4時間後 | 74% | 77% |
5時間後 | 67% | 68% |
6時間後 | 59% | 59% |
7時間後 | 51% | 52% |
8時間後 | 44% | 45% |
9時間後 | 36% | 36% |
10時間後 | 29% | 29% |
11時間後 | 21% | 22% |
12時間後 | 13% | 14% |
13時間後 | 6% | 7% |
14時間後 | 0% | 0% |
また、画面の常時表示がバッテリー持ちに差があるのかも確認してみたところ、3時間放置でおよそ2~4%程度の違いしかなかったことから、あまり気にする必要はないと思うが、すこしでもバッテリー持ちを長くしたいのなら常時表示機能はオフにすると良いだろう。
有線充電:有線充電は最大20W
iPhone 14シリーズは、本体底面に搭載されたLightningコネクタをつかうことで有線で充電できる。コネクタ形状はUSB Type-Cにはならず、引きつづきLightningコネクタとなるため、付属するUSB-C – Lightningケーブルをつかって充電しよう。
iPhone 14シリーズは最大20Wの高速充電に対応する。Appleによると30分の充電で最大50%までバッテリーを回復させることが可能だ。時間がないとき、急いで充電したいときに便利だ。
高速充電を利用するには、20W以上の出力に対応したUSB-PD電源アダプタが必要だ。iPhone 14シリーズには電源アダプタが付属しないため、持っていない場合には別途購入する必要がある。
かつてiPhoneに同梱されていたUSB-A – Lightningケーブルを持っている方は、同ケーブルを利用しての充電も可能だ。ただし、USB-A – Lightningケーブルを使った充電は12W出力以下となってしまうため、急いで充電したいときはやはり20W以上のUSB-PD対応電源アダプタとUSB-C – Lightningケーブルを使った充電が便利だ。
なお、iPhone 14 Proは最大20Wだが、iPhone 14 Pro Maxは最大27Wまでの充電に対応する。iPhone 14 Pro Maxを購入した方は27W以上の出力の充電器を購入しよう。
ちなみに、iPhone 14シリーズのLightningポートは、依然としてUSB 2.0仕様。転送速度はこれまでどおり。有線でのデータ転送やバックアップはかなり時間がかかるため、来年以降の新モデルではそろそろUSB 3.0以降をサポートしてほしいところだ。
MagSafe/ワイヤレス充電:MagSafeで無線充電、最大15Wで充電可能
iPhone 14は、MagSafeに対応する。iPhoneの背面に円形のマグネットが搭載されており、磁力によってワイヤレス充電器との位置ズレを防ぎ、最大効率でワイヤレス充電することが可能だ。
iPhone 14 ProのMagSafe充電は、最大15W出力に対応する。MagSafeに対応しないワイヤレス充電器は7.5Wまでしか受け付けないため、高速にワイヤレス充電したい場合はやはりMagSafeが一番だ。
実際にMagSafe充電器を使ってiPhone 14 Proを充電してみた。検証は、iPhone 14 Proのバッテリー残量をあえて0%程度まで減らし、そこからMagSafe充電器で充電を開始するというもの。
結果は、約1時間で50%程度まで回復し、約3時間ほどで100%まで増えた。先代のiPhone 13 Proからわずかにバッテリー容量が増えているものの、充電に時間がかかる時間は先代モデルとほぼ同じだ。
もちろん有線充電に比べてやはり充電スピードは劣るものの、ワイヤレス充電器にピタッとくっつけるだけで充電できる手頃さはMagSafeに方がやはり便利。
MagSafeと有線充電のどちらで充電するかは、充電するシーンをあわせて変えるといいだろう。急いで充電するときは有線充電(20W)、自宅に帰ってきたときや就寝前はMagSafeといった具合に。
MagSafeを使ったワイヤレス充電は、対応ケースを装着した状態ならそのままケースを取り外すことなくワイヤレス充電を利用できる。対応ケースはApple純正のケースを始め、サードパーティからも多数登場しているので、ケース選びの際には 「MagSafe対応」 を目印に購入するのがオススメだ。
ただ、ワイヤレス充電は熱を発生させやすく、バッテリー劣化を促進させてしまう可能性がある。今回の検証中に触れないほど熱くなるということはなかったものの、長く使いたいのであれば有線充電も適宜行ったほうが良いかもしれない。
ちなみに、純正レザーケースを装着した状態でMagSafe充電すると、レザーケース側にMagSafeの円形の跡がくっきりと残ってしまうことがあるとのこと。気になりそうな方は、純正ケースの中でも跡が残らないシリコーンケースやクリアケースを使用していただきたい。
なお、Appleの純正アクセサリとして 「MagSafeデュアル充電パッド」 という製品があるのだが、本製品で保護ケースを装着したiPhone 14 Proを充電しようとすると、リアカメラの部分が干渉してしまい、iPhoneがすこしだけ浮く。充電はできているもののややお粗末感もあるため、MagSafe充電器として 「MagSafeデュアル充電パッド」 を購入することは個人的にはオススメしない。
耐水性能:IP68で水辺での使用も安心・安全
スマートフォンをキッチンのシンクに落としたり、テーブルの飲み物をこぼして水没故障させてしまった経験のある人はいないだろうか。しかし、そんな事故はiPhone 14では起こらない。
Appleによると、「iPhone 14」 シリーズの防水等級はIP68相当。水深6メートルで最大30分間耐えることができるレベルとなっている。これは昨年の 「iPhone 13 Pro」 シリーズとおなじ耐水性能で、3年前に発売した 「iPhone 11 Pro」 よりも高い防水性能になっている。
ただし、長く使用しつづけるなかで耐水性能が低下する可能性があることはAppleも認めているとおりで、もし運悪く水没してしまった場合はApple Care+の保証対象にはならないことから過度な安心は禁物だ。
ましてや、長時間水に浸けるといった使い方はあまりオススメしない。また、不純物が多い海の水に浸けることもなるべく避けたほうが良いだろう。
先日、台風の影響で関東では大雨が1日中降り続く日があった。筆者はその日、仕事で1日中外を出歩く必要があり、iPhone 14 Proは何度も大粒の雨に濡られたが、それでもまったく問題なく動作していた。
いまお持ちのスマートフォンに耐水性能がないなら、iPhone 14を購入することで横殴りの雨のなかでも使える安心感が得られるだろう。
ネットワーク:Wi-Fi 6に引き続き対応。5GはSub 6のみ
iPhone 14は、第5世代移動通信システム 「5G」 が利用できる。従来の4G/LTEよりも高速/低遅延/大容量のデータ通信が可能となっており、さらに同時接続数が多くなった関係で、ターミナル駅のような混雑した場所であっても高速通信が利用できる。
5Gには、ミリ波帯(mmWave)とSub6帯(6GHz未満)の2種類の周波数帯が用いられるが、国内で販売されるiPhone 14シリーズはいずれもSub6のみのサポートとなる。
ミリ波とSub6の違い
Sub6帯(6GHz未満)は広範囲に電波が届きやすいという特徴がある反面、周辺の電波の干渉を受けやすい。対するミリ波帯(mmWave)は直進性が高く広範囲を網羅するにはやや不向きなものの、電波干渉を受けることが少なく人口密集エリアなどでの展開に向いているとされている。
実際に 「iPhone 14 Pro」 で5G通信を利用してみた。検証はNTTドコモのネットワークを使用。最も効果を発揮するであろう、大勢の観客で賑わう野球スタジアム近くでスピードテストを実施した。
何度か計測してみたところ、最大で下り902MB/s、上り23.3MB/sという結果に。この環境で映画を1本丸々ダウンロードしてみたところ、わずか数分程度でダウンロードを完了させることができ、非常に高速で快適だった。
また、東京都心部や地方都市(千葉県成田市)などでも計測してみたが、概ね 下り143.2MB/s、上り21.4MB/sで通信することができた。
もちろんまだまだ利用できるエリアは多くないものの、5Gサービスがはじまってから利用できるエリアは徐々に広がりつつあるため、まだ5Gスマートフォンをお持ちでない方もこれを機に買い替えてみても良いかもしれない。5G通信が利用できるエリアについては、各キャリアがマップを公開している(NTTドコモ/au/ソフトバンク/楽天モバイル)。
ただし、5G通信はバッテリー消費も多い。iPhoneのバッテリー駆動時間は徐々に増えているものの、5Gを使用することでバッテリーがどんどん減ってしまうこともある。iOSには、4Gと5Gを状況に応じて自動で切り替えてバッテリー消費を抑える 「スマートデータモード」 という機能が搭載されている。同機能をうまく活用してバッテリー消費を最小限に抑えつつ、高速なモバイルインターネットをお楽しみいただきたい。
スマートデータモードの設定は、「設定」 アプリ内にある 「モバイル通信」 で利用しているプランをタップすると表示される 「音声通話とデータ」 という項目から変更することが可能だ。
そのほか、iPhone 14 ProはWi-Fi 6をサポートする。2022年9月より日本でも利用できるようになったWi-Fi 6Eはサポートしないため、すでにWi-Fi 6対応ルーターをお持ちの方はルーターを買い替える意味はないだろう。
Bluetooth 5.3に:将来的には音質向上もあり得る?
iPhone 14 Proは、新たにBluetooth 5.3をサポートするようになった。
また、ほぼ同時に発売する 「AirPods Pro (第2世代)」 についてもBluetooth 5.3をサポートすることから、Bluetoothに関するパフォーマンスはさらに向上する可能性がありそうだ。
Bluetooth 5.3は、次世代Bluetooth Audioである 「LEオーディオ」 をサポートし、かつ新オーディオコーデック 「LC3」 が利用できる規格となる。
具体的には、LC3/160kbpと従来のSBC/345kbpsの音質は同等(LC3のほうが音質が良いわけではない)とされており、より消費電力を少ない状態でこれまでと同等の音質や低遅延を実現できるとされている。また、将来のアップデートでロスレス品質での再生も可能になるされるLC3plusにも対応する可能性もあるが、Appleはこれらのサポートは発表していないため、現時点では利用することはできない。
ただし、Apple Musicがロスレス再生に対応した今、AirPodsシリーズでもロスレス品質で再生したいと思うユーザーも多くなっている。iPhoneとAirPodsシリーズが同時にBluetooth 5.3をサポートしてきたことから、Appleとしては近い将来、AirPodsシリーズにおいてロスレスオーディオの再生をサポートする計画があるのかもしれない。
iPhone 14 Proの良かった点
ここまでiPhone 14 Proをレビューしてきたが、個人的に感じてiPhone 14 Proの良いところ、悪いところをご紹介しようと思う。
まず良かったところは4点。
- Dynamic Island
- 常時表示ディスプレイ
- カメラ性能が向上
- GPS測位精度の向上
まずディスプレイについては、今年も順当に進化してきたことを高く評価したい。特にノッチ→ピル型パンチホール(Dynamic Island)へのシフトは、はじめてノッチを導入したときのようにユーザー間でも意見が分かれるものになると予想していたが、iOSのUIでうまくパンチホールそのものを活用する工夫を見出し、あたかも存在しないように振る舞うのは賢いやり方だと思った。操作する上で邪魔には感じられないし、個人的には良い改良だと感じている。
そして画面の常時表示については仕事柄時間を確認したり、通知を見る機会が多いため地味ながら嬉しい機能だ。ディスプレイが予想以上に明るく、バッテリー持ちが悪くなるんじゃ……と密かに懸念していたが、検証ではON/OFFでほとんど差がなかったため、筆者は同機能をONにして生活したいと思っている。
あとはカメラ機能とGPSの測位精度は出かける機会の多い筆者としては嬉しいアップデートだ。地図を読むのが苦手な筆者は都心の細かい路地を右往左往する機会が多いためGPSの精度向上はとても嬉しい変更点だった。
iPhone 14 Proの残念だった点
iPhone 14 Proの残念だった箇所は2点。
- コネクタ形状がLightning、仕様はUSB 2.0
- 本体重量はさらに重く(206g)
まずは、Lightningを継続し、USB 2.0を継続している点。USB4という規格が出ている時代にも関わらず、フラグシップモデルのiPhoneが依然としてUSB 2.0というのは個人的にはあまり納得がいっていない。しかもRAW画像やProResを扱う機会の多いプロモデルで、1TBの大容量ストレージを搭載したモデルも存在するのにだ。
筆者は定期的にiPhoneのバックアップを取るようにしているのだが、256GBのストレージをパンパンにしているためバックアップにもかなりの時間がかかってしまう。iPadやMacのようにUSB 3.1 Gen 2やThunderbolt 4だったらどれほど時間を節約できたのだろうか。来年以降はUSB-Cポートになるとの噂もあるが、コネクタ形状はとにかく、せめて現行世代のコネクタ仕様に対応してもらいたいところ。
そして毎年思っていることだが、iPhoneのプロモデルは200g超えが基本となっていて、ケース等を装着するとさらに重く感じられてしまう。今年はミニモデルも廃止されてしまい、片手で軽々と操作できるデバイスは存在しない。ユーザーから求められる駆動時間が長くなっているので仕方ないことだとは思うが、もう少し軽ければ嬉しいところ。
まとめ:iPhone 14 ProはiPhone 13 Proよりも高い完成度を誇るデバイス
今回は、iPhone 14 Proをレビューした。昨年のiPhone 13 Proから大幅に性能が向上したとは言えないものの、着実な進化を遂げた良いデバイスだと感じている。
特に大きな進化したポイントはディスプレイとカメラ。あとはGPS測位精度の向上だろうか。
ディスプレイに関しては、ノッチからDynamic Islandに変更されただけなのにまるで別端末のような印象を受けた。使いはじめるとこれまでとおなじiPhoneであることはすぐに気付くが、画面上部にあった邪魔なノッチがなくなったかのような錯覚さえ覚えるギミック(UI)は、ハードウェアとソフトウェアを一体開発するAppleならではと言えるポイント。まさに “魔法” とも言えるかもしれない。
また、カメラ性能とGPS測位精度の向上は、屋外で使う機会の多いiPhoneには重要なアップデートだった。個人的にはGPS精度は道に迷いやすく、目的のビルを見つけ出すのに苦労する筆者にとってはとても嬉しい変化。Apple WatchもGPS精度が向上していることから、取材会場に時間ギリギリで駆け込むといったことは少なくなりそうだ。
もちろん、一部の機能や仕様についてはまだまだ改良の余地もあると思ってはいるが、昨年のiPhone 13 Proよりも完成度は高いと個人的には感じている。先代からの買い替えには弱いが、iPhone 12 Pro以前のモデルからの買い替えであれば、その進化は結構大きく感じられるのではないだろうか。
ちなみに、iPhone 14シリーズのうち個人的にオススメなのは今回紹介したiPhone 14 Pro。パフォーマンスとコンパクトさの両方を実現した同モデルであれば、プライベートや仕事、旅行や出張などあらゆるシーンであなたの生活をアシストしてくれるはずだ。
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