ホームボタンが廃止され、ベゼルレスデザインが採用された現行の 「iPad Pro」 が登場してから約2年。いよいよその下のグレードであるiPad Airシリーズにもベゼルレスデザインが導入された。先日発売した 「iPad Air (第4世代)」 だ。
iPad Airシリーズには、2019年に従来よりベゼルが狭い10.5インチのディスプレイを搭載した 「iPad Air (第3世代)」 が登場していたが、今回の新型モデル 「iPad Air (第4世代)」 はホームボタンを廃止したことでさらにベゼルが狭くなったことで、上位モデルであるiPad Proとほぼ同じデザインをしたデバイスに生まれ変わっている。
今回筆者はこの生まれ変わった 「iPad Air (第4世代)」 を購入。発売日から数日使ってみたので、本機の特徴や筆者が感じたことなども含めた詳細レビューをお届けする。
発表前の情報では、「iPad Proほどのスペックはないものの、ベゼルレスのiPadが欲しいユーザー向けのミドルレンジモデル」 という印象が強かった同モデルだが、実際に使ってみると違う側面も見えてきた。購入検討中の方はもちろん、iPad選びで悩んでいる方にもぜひ参考にしていただきたい。
- iPad Air(第4世代)のデザインをチェック
- 画面性能:iPad Proとの違いは120Hz駆動の有無
- 新しいTouch IDの認証力は?
- プロセッサ性能とRAM容量
- カメラ性能:iPad Air(第4世代)にカメラは必要?
- ネットワーク:Wi-Fi 6に対応し高速通信が可能に
- バッテリー持ち:バッテリー駆動は10時間以上で実用的
- 充電仕様:最大30Wまでの充電に対応
- スピーカー性能:スピーカーが上下に搭載され快適に
- Apple Pencilで絵を描いたり、メモを書いたり
- Magic KeyboardやマウスでPCライクに操作可能
- iPad Proとの違いは?
- まとめ:どんなユーザーにオススメ?
iPad Air(第4世代)のデザインをチェック
今回筆者が購入したのは、「iPad Air (第4世代)」 のWi-Fiモデル。カラーは 「スカイブルー」 をチョイスした。
ブルーといえば、同時に発売した 「iPhone 12 Pro」 のパシフィックブルーが話題だ。iPhone 12 Proのそれは名前のとおり海を想像させるような深めの青だったが、iPad Airのスカイブルーは名前のとおり晴天の空のような水色に近い爽やかな青色。iPadシリーズで青系のカラーが採用されたのは今回が初めてとなる。ちなみに同じく初採用のカラーとして 「グリーン」 も用意されている。
パッと見たときのデザインやサイズ感は 「iPad Pro」 の11インチモデルとほぼ同じ。カクカクっとしたエッジに、薄い板状になったiPad Air(第4世代)は、実際に持ってみると1枚の板のように薄く、一般的なタブレットと比べると軽くて持ちやすい印象だ。
iPad ProとiPad Air(第4世代)を瞬時に見分けるポイントはカメラのレンズ数。iPad Proがデュアルレンズカメラを搭載しているのに対し、iPad Air(第4世代)はシングルレンズカメラを搭載している。
また、カラーでも見分けがつけられる場合がある。シルバーとスペースグレイは同じような仕上がりで難しいが、ローズゴールド・グリーン・スカイブルーの3色は現時点ではiPad Air(第4世代)にしか存在しないため、これらの3色であればiPad Air(第4世代)で確定だ。
デザインについて細かく見ていこう。
正面から見ると、とにかく筐体いっぱいに広がるディスプレイが目を引く。普段から11インチのiPad Proを使っている筆者からすれば見慣れたデザインではあるのだが、じっくり見比べてみると微妙にベゼルの太さが違う。
Apple公式の技術仕様によれば、画面の大きさはiPad Proが11インチ、iPad Air(第4世代)が10.9インチ。わずか0.1インチの差ではあるが、両モデルとも本体サイズは変わらないため、この差がベゼルの太さにも反映されている。
側面もiPhone 5のような直角エッジになっていて、従来の丸みを帯びた側面ではなくなった。おかげでiPad Proとデザインが共通化され、使用感もほとんど同じになった。
右側面には音量アップ/ダウンボタン、中央には磁気コネクタが搭載されている。この磁気コネクタは 「Apple Pencil (第2世代)」 をくっつけてペアリング&充電するためのもの。Apple Pencil(第2世代)にもマグネットが内蔵されているので、ピッタリくっつけることで勝手に充電が開始されるのは手軽でグッドだ。
上部にはトップボタン(電源ボタン)が搭載されている。ボタン位置は従来のiPad Airと変わらないが、このトップボタンにはボタン内蔵型の指紋認証 「Touch ID」 が搭載されている。Touch IDはこれまでホームボタンに内蔵されるのが通例だったが、今回のiPad Air(第4世代)にはiPad Airシリーズ、そしてApple製品としてはじめて電源ボタン内蔵型Touch IDが搭載されたことになる。
指紋を正確に認識するためか、トップボタンのサイズはiPad Proのものよりも大きくなっている。さらにボタンの触り心地も従来よりツルツルしたものに変更された。実際の使用感については、もう少しあとで詳しくご紹介したい。
底面にはLightningに代わって、新たにUSB Type-Cポートが搭載された。付属の20W電源アダプタとUSB-C to USB-Cケーブルを使うことで、従来のLightningよりも高速に本体を充電することができる。さらにUSB Type-Cハブを接続するとSDカードスロットやUSB-Aポートなどを拡張でき、これらに対応したアクセサリをiPad Air(第4世代)で使用することが可能だ。
本体側面の上部と下部には1基ずつスピーカーが搭載されていて、横向きにしたときにステレオサウンドが楽しめるようになっている。これまでは端末下部にしかスピーカーが搭載されていなかったため、音が片方しか聞こえてこない “違和感” の解消に至っている。iPad Air(第4世代)は映像や音楽を視聴するためのコンテンツ消費デバイスとして使用される機会が多いことを考えると、この変化はかなり重要だったように思える。
背面には中央に大きくAppleロゴが描かれていて(鏡面仕様)、左上にはシングルレンズカメラが搭載されている。2018年に発売した1世代前のiPad Proがシングルレンズカメラだったことから、背面だけ見ればiPad Proの旧型モデルにそっくりとも言える。
背面下部にはSmart Connectorが搭載。位置は11インチiPad Proと同じであるため、11インチiPad Pro用の 「Magic Keyboard」 と 「Smart Keyboard Folio」 をiPad Air(第4世代)でも使うことが可能だ。
画面性能:iPad Proとの違いは120Hz駆動の有無
デザインの部分でも触れたが、iPad Air(第4世代)の画面でもっとも大きな変化があったと言えるのは 「画面の形状」 だ。iPad Proのようなベゼルレスデザインの採用により、筐体いっぱいに広がる大画面でコンテンツを楽しむことができる。
画面サイズは10.9インチで、11インチiPad Proと比べると少しベゼルが太くなっている分、微妙に画面が小さいのだが、隣に並べてじっくりと見比べない限り気づくことができないレベルの差ではあるため、基本的には11インチiPad Proとほぼ同じような感覚で使うことができるはずだ。
さて、画面の形状は大きく変わったが、その性能はどれほど進化したのか。先に言ってしまうと、画面性能に関しては前モデルの 「iPad Air (第3世代)」 からほとんど変わっていない。耐指紋性撥油コーティング、フルラミネーションディスプレイ、反射防止コーティングが施されているほか、広色域(P3)やTrue Toneにも従来どおり対応している。
実際にiPad Airで動画を視聴してみたのだが、約11インチということでどんなコンテンツも見やすく、高いディスプレイ性能のおかげで綺麗な映像を楽しむことができた。
iPad Air(第3世代) | iPad Air(第4世代) | 11インチiPad Pro | |
---|---|---|---|
画面 | Retinaディスプレイ | Liquid Retinaディスプレイ | Liquid Retinaディスプレイ |
画面サイズ | 10.5インチ | 10.9インチ | 11インチ |
解像度 | 2,224 × 1,668 (264ppi) |
2,360 × 1,640 (264ppi) |
2,388 × 1,668 (264ppi) |
最大輝度 | 500ニト | 500ニト | 600ニト |
耐指紋性撥油コーティング | ◯ | ◯ | ◯ |
フルラミネーションディスプレイ | ◯ | ◯ | ◯ |
反射防止コーティング | ◯ | ◯ | ◯ |
ProMotionテクノロジー | × | × | ◯ |
広色域ディスプレイ(P3) | ◯ | ◯ | ◯ |
True Toneディスプレイ | ◯ | ◯ | ◯ |
※フルラミネーションディスプレイ:ガラス面・タッチセンサー・液晶を一体化させる加工技術。Apple Pencil使用時に線を描いた場所と実際に描かれる場所のギャップが少ない。
※広色域(P3):色域の広さを表す規格。sRGBよりも豊かな色の表現が可能。
※True Tone:周囲の光に合わせて画面の色と明度を調整し、より自然に見えるようにする技術。
ただし、最大120Hzのリフレッシュレートを実現する 「ProMotionテクノロジー」 には今回も対応せず。同テクノロジーは現時点では最上位モデルのiPad Proのみに搭載されており、ハッキリとiPad ProとiPad Airで違いが設けられた形だ。コンテンツスクロール時のあのヌルヌル感は残念ながらiPad Airでは体験できない。
また、ProMotionテクノロジーはApple Pencilの反応速度を向上させ、滑らかで自然な描き心地を実現する役割もある。Apple Pencilで電子サインをしたり、PDFファイルにマーカーを引いたりする分には問題はないと思うが、本格的なイラスト制作などをする予定なら、iPad Air(第4世代)では力不足かもしれない。
ちなみに、iPad Air(第4世代)に搭載されている画面は 「Liquid Retinaディスプレイ」 という名称がつけられた 「液晶」 ディスプレイだ。最新iPhoneに搭載されているディスプレイが 「Super Retina XDRディスプレイ」 という有機ELディスプレイであることから、「液晶」 と聞くだけで性能が低いのでは?と感じる方もいるかもしれない。
確かに有機ELディスプレイはコントラストや最大輝度などが液晶ディスプレイよりも優れているのだが、Appleの 「Liquid Retinaディスプレイ」 は液晶ながらとても綺麗なことで有名。実際、上位モデルのiPad Proも 「Liquid Retinaディスプレイ」 が搭載されているのだが、プロのイラストレーターや動画クリエイターの方からの評価はそれなりに高い。決して 「液晶ディスプレイだから性能が低い」 というわけではないことは覚えておいていただきたい。
以上をまとめると、iPad ProとiPad Air(第3世代)の画面にはProMotionテクノロジーへの対応の有無、そして画面の大きさに違いがあるということになる。ちなみに画面輝度もわずかに異なるが、筆者が両モデルを使ってみた限りでは (一般的な使い方であれば) さほど気にする違いではないと感じている。
新しいTouch IDの認証力は?
「iPad Air (第4世代)」 の最大の特徴とも言える電源ボタン内蔵型の 「Touch ID」 。これまでのiPadシリーズでは前例のない新しい認証方法ということで、興味がある方も多いのではないだろうか。
Touch IDの使い方は従来とまったく変わらない。ただ指を当てる部分がホームボタンではなくトップボタン(電源ボタン)に変更になっただけだ。指を当てるとすぐに認証が行われ、瞬時に画面ロックが解除される。ベゼルレスデザインになってもこれまで同様スムーズに使い始めることができる。
指紋認証を受け付けるのは、iPadの画面が点灯しているとき、もしくはトップボタンを押した瞬間。いつもトップボタンを押す指を登録しておけば、必要なときに瞬時に開けることができるはずだ。
Touch IDは最大5つの指を登録できるため、iPadを縦向き・横向きのどちらにしても認証はこなせるはず。もちろん、家族の指紋を登録しておけば、家族みんなで使うことも可能だ。
Magic KeyboardやSmart Keyboard Folioなどを装着する場合は左手側にトップボタンがくることもあって、左手の人差し指を登録するユーザーが多いのではないだろうか。ちなみに筆者は両手の人差し指を登録していて、縦向きのときは右手、横向きのときは左手を使って認証している。
Touch IDが採用されたのはおそらくコスト削減のため、もしくは新型コロナウイルスによる指紋認証の需要拡大にあわせてのことだと思われるが、実際問題、Face IDとTouch IDのどちらが便利かというとやや答えるのが難しい。
筆者はiPad Proは自宅・自宅外の両方で使うことから、Face IDとTouch IDのどちらも有効と考えている。もし出先で使うのが前提なのであれば、Touch IDを搭載したiPad Air(第4世代)、自宅で使う(マスクを装着する必要がない)のが前提ならFace IDが搭載されたiPad Proが便利だろう。
ただしMagic Keyboardを装着するなら、Face IDを搭載したiPad Proがかなり便利だ。iPad Air(第4世代)はかならず電源ボタンに指を置く必要があるのに対して、Magic Keyboard装着時のiPad Proはキーを押すと自動的にFace IDが顔認証をはじめる仕組みになっている。Magic Keyboardと組み合わせての使用を検討している方は、この点についてもよく考えていただきたい。
プロセッサ性能とRAM容量
iPad Air(第4世代)に搭載されたプロセッサは、「A14 Bionic」 というチップ。同時に発売したiPhone 12シリーズに搭載されたプロセッサとまったく同じものになる。
5nmプロセスを使用した新開発6コアプロセッサ。従来の7nmプロセスを使ったA13 Bionicプロセッサに比べて集積度が向上し、トランジスタが118億に到達。CPUは4つの省電力コアと2つの高性能コアで構成されていて、Appleによれば従来のA13 Bionicプロセッサに比べて40%高速化、GPUも30%向上している(※iPad Air/第3世代に搭載されているプロセッサはA12 Bionic)という。
果たしてその実力はどれほどのものか。実際にベンチマークスコアを計測してみた。ベンチマークはお馴染みのGeekbench 5を使用した。
結果は下記のとおり。参考としてiPhone 12と先代のiPad Air(第3世代)、そしてiPad Pro(2020)のベンチマークスコアも計測しておく。
iPad Air(第3世代) | iPad Air(第4世代) | 11インチiPad Pro | |
---|---|---|---|
発売年月日 | 2019年3月18日 | 2020年10月23日 | 2020年3月18日 |
搭載プロセッサ | A12 Bionic | A14 Bionic | A12Z Bionic |
シングルコアスコア | 1121 | 1587 | 1123 |
マルチコアスコア | 2851 | 4166 | 4686 |
METAL | 4641 | 12629 | 9913 |
RAM容量 | 3GB | 4GB | 6GB |
上記ベンチマークスコアをみる限り、iPad Air(第4世代)は先代モデルからかなり性能が向上していることが確認できる。シングルスコアは1587、マルチコアスコアは4166。これは先代モデルに搭載されていた 「A12 Bionic」 に比べてシングルコア1.4倍、マルチコア1.7倍の性能になる。大幅な性能向上だ。
さらに驚くことに、iPad Pro(2020)とも対等に渡り合える実力だ。シングルコア1.4倍、マルチコア0.9倍ほどでおおよそiPad Pro(2020)と同等、もしくはそれ以上の性能ということになる。iPad AirとiPad Proにはいくつかの点で性能差が設けられているが、プロセッサの処理性能については現時点ではiPad Air(第4世代)のほうが良い場合もあるということになる。
GPU性能(METAL)についても、iPad Air(第4世代)は大きな進化を遂げている。筆者が計測したベンチマークスコアではiPad Air(第4世代)のMETALは12629。iPad Air(第3世代)は4641だったため、約3倍弱の性能向上があったことになる。そしてiPad Pro(2020)は9913だったことから、なんとiPad Air(第4世代)はiPad Proに比べてGPU性能は1.2倍になっている。つまり、現状最高のGPU性能を持ったiPadは、iPad ProではなくiPad Air(第4世代)であるということに。
これらの結果を総合すると、おおよそiPad Air(第4世代)はiPad Proよりも高い性能を持っていると言えるのではないだろうか (おそらく次期iPad ProはiPad Air(第4世代)よりも性能は高くなるだろうが) 。実際、iPad Air(第4世代)の動作速度はiPad Proと同等もしくはそれ以上に快適だ。グラフィックを必要とするアプリを起動しても動作にモタツキを感じることはほとんどない。
カメラ性能:iPad Air(第4世代)にカメラは必要?
iPad Air(第4世代)の背面にはシングルレンズカメラが搭載されている。レンズの種類は広角レンズで、画素数は1200万画素。前面カメラは700万画素のシングルレンズカメラ仕様だ。
背面カメラは前モデルのiPad Air(第3世代)よりも画素数が高くなるなど少しは性能が向上したものの、写真のクオリティが高くなったかと言われればそこまでではないというのが正直な意見だ。前面カメラに至ってはほとんど性能は変わっていない。
このカメラ性能はどれくらいなのかというと、上位モデルのiPad Proや最新の 「iPhone 12」 シリーズどころか、実は1世代前の 「iPhone 11」 シリーズにも劣るレベル。やや厳しめに言うならば、「iPad Air(第4世代)のカメラはオマケ」 とも言える性能だ。
iPad Air(第4世代)のカメラの性能がiPad Proのように大幅な進化を遂げていない理由は、iPadでカメラを使うタイミングはどんなときかを考えると割と納得できるのではないだろうか。
そもそもiPhoneにくらべて大きくて重たいiPadを使って写真を撮影する人はそんなに多いわけではなく、どちらかというとビデオチャット用途として背面カメラよりも前面カメラを利用する人の方が多いのではないだろうか (筆者は少なくともそう)。また、最近はiPhoneのカメラ性能がメキメキ向上しているため、写真撮影は完全にiPhone任せになっている方も多いだろう。したがって、iPad Air(第4世代)を購入する上でカメラ性能を重視している人は少ないため、Appleはそこをコスト削減の対象にしているのではないか、というのが筆者の予想だ。
この予想が合っているかどうかは分からないが、少なくともカメラ性能にこだわりたいのであればiPad Proを買うべきだろう。もしくは前述のとおりiPhoneにカメラを任せてしまうというのも手だ。
ちなみにiPad Proには1200万画素の広角レンズに加えて、1000万画素の超広角レンズも搭載されている。さらにAR体験を向上させてくれる 「LiDARスキャナ」 も搭載されていて、ARゲームや3Dスキャンを大画面で楽しむこともできる。
また、iPad Air(第4世代)に搭載された前面カメラはTrue Depthカメラ仕様ではないことから、ポートレートモードやポートレートライティング、さらにはアニ文字やミー文字を楽しむことができない。これらの機能が欲しい方も問答無用でiPad Proを選んでいただきたい。
ネットワーク:Wi-Fi 6に対応し高速通信が可能に
iPad Air(第4世代)は、現代の最新Wi-Fi規格 「Wi-Fi 6」 に対応したことで、従来よりも通信速度が向上した。Wi-Fi 6非対応だったiPad Air(第3世代)は最大866Mbpsだったのに対し、Wi-Fi 6に対応したiPad Air(第4世代)は最大1.2Gbpsの通信速度を実現している。
現時点でiPadシリーズの中で、Wi-Fi 6に対応しているモデルはiPad Proと今回のiPad Air(第4世代)だけ。自宅のWi-FiルーターがWi-Fi 6に対応しているのであれば、高速通信の恩恵を得ることができるだろう。
iPad Pro 2018 (Wi-Fi 5) |
iPad Air 第4世代 (Wi-Fi 6) |
|
---|---|---|
ダウンロード | 294Mbps | 320Mbps |
アップロード | 351Mbps | 362Mbps |
実際に筆者の環境で通信速度を計測してみた。比較対象はWi-Fi 5規格のルーターを使っていた頃にiPad Pro(2018)で計測したものになるため、正確な比較にはならないが、iPad Pro(2018)からiPad Pro(2020)に買い換えた際に計測したときも同じように通信速度が向上していたことから、Wi-Fi 5→Wi-Fi 6への対応によってiPad Air(第4世代)は先代モデルに比べて通信速度が速くなっているはずだ。
ただし実際にはそれぞれの環境によって結果が異なる可能性があるため、上記結果はあくまで参考程度に捉えておいていただきたい。
バッテリー持ち:バッテリー駆動は10時間以上で実用的
Appleが公開している技術仕様によると、iPad Air(第4世代)のバッテリー持ちは、Wi-Fi環境下でのインターネット利用・ビデオ再生時には最大10時間、4G通信など携帯電話データネットワークを利用してのインターネット利用時には最大9時間となっている。
公式発表のデータでは前モデルのiPad Air(第3世代)やiPad Proと同じバッテリー持ちということになるが、実際に使ってみるとどれほどのバッテリー持ちになるのかを検証してみた。
検証方法としては、画面輝度を半分にした状態で、Wi-Fi環境下でYouTubeをひたすら流し続けるというもの。検証結果は以下のとおりとなった。
経過時間 | バッテリー残量 |
---|---|
0:00 | 100% |
1:00 | 92% |
2:00 | 83% |
3:00 | 73% |
4:00 | 64% |
5:00 | 54% |
6:00 | 46% |
7:00 | 37% |
8:00 | 27% |
9:00 | 18% |
10:00 | 8% |
11:00 | 0% |
だいたい1時間に8~10%ずつバッテリーが減っていき、約11時間バッテリーが持ったことから、おおよそAppleの技術仕様に記載されていたとおりのバッテリー持ちであることが確認できた。
今年発売した11インチiPad Pro(第2世代)でも同じ環境で実験を行なっているのだが、その際にもほぼ同じくらいの結果になったため、iPad ProとiPad Air(第4世代)のバッテリー持ちはほとんど同じと捉えて良いだろう。
バッテリーに多いに越したことはないが、少なくとも画面のつけっぱなしで10時間程度もつのであればほぼ1日いっぱいは作業できることになるため、これでも必要十分な性能と言えるのではないだろうか。
充電仕様:最大30Wまでの充電に対応
iPad Air(第4世代)はPower Deliveryに対応していて、PD対応電源アダプタと接続することで高速に充電することが可能だ。
もちろん本製品に付属してくる純正充電器もPDに対応している。最大出力は20W、それなりに高速だ。
しかしながら、iPad Air(第4世代)はさらに出力の大きなPD電源アダプタに接続することで、もっと高速に充電することが可能。Appleは本製品の受電許容量について正確な数値を提供していないが、筆者の検証では最大30Wまでの充電ができることが確認できた。これはiPad Pro 11インチモデルと同等だ。
- iPad mini (第5世代) 30W
- iPad (第8世代/10.2インチ) 30W
- iPad Air(第4世代) 30W
- iPad Pro (11インチ) 30W
- iPad Pro (12.9インチ) 45W
実際に30W出力でバッテリー0%の状態から充電してみると、1時間でおおよそ50%強まで充電でき、2.5時間後には100%までフル充電することができた。一般的な使い方をするのであれば20Wの電源アダプタでも何ら問題はないと思うが、もし少しでも早く充電したいのであれば20W以上、もっというと30W以上の出力ができるPD対応電源アダプタを購入してみてはどうだろうか。
スピーカー性能:スピーカーが上下に搭載され快適に
iPad Air(第4世代)の嬉しい仕様のひとつとして、スピーカーが端末上下に各1基ずつ搭載されるようになったことが挙げられる。これにより、横向きにしたときにiPadの音が真正面から聞こえてくるようになった。
以前のiPad Air(第3世代)も同じステレオスピーカー仕様ではあったものの、Lightningポートの左右にそれぞれ1つずつという配置だったため、横向きにしたときに音が片方からしか聞こえてこなかった。iPad Air(第4世代)ではこの仕様が改善されたことで、ゲームや映画などをより臨場感あふれるサウンドで楽しむことができるようになった。
ただし、スピーカーについても上位モデルのiPad Proとは性能差が設けられている。iPad Proは上下左右に4基のスピーカーが搭載されていて、さらにDolby Atmosの立体音響技術にも対応しているため、より臨場感あふれるサウンドを楽しめるのはiPad Proということになる。Dolby Atmosは対応しているコンテンツのみで利用できるが、Apple TV+やNetflixの一部の作品は同規格に対応していることから、これらのサービスを利用しているユーザーはiPad Proの方がリッチな体験ができるだろう。
とはいえ、iPad本体から音を出すのではなく、AirPlayやBluetooth経由で他のスピーカーに音を出力してしまえばどちらでもほとんど変わらないサウンドを楽しむことができるため、基本的にiPadから音を出すことを前提としていなければ、iPad Air(第4世代)でも大きな問題はないはずだ。
ちなみにiPad Air(第4世代)のスピーカーの音質はスピーカーの数が2基ということもありやや物足りなさを感じることもある。iPad Proに比べると音の深みが欠け、やや平らで乾いた板から音が出ているという印象だ。YouTube動画やラジオを聴く分には何ら問題はないものの、Apple TV+などで動画を視聴するにはお世辞にも十分とは言い難いため、iPad Air(第4世代)で映画を堪能することを考えているのであれば、やはりHomePodなどの外部スピーカーやヘッドホンなどを用意したいと感じた。
Apple Pencilで絵を描いたり、メモを書いたり
iPad Airは先代モデルからApple Pencilに対応していたが、今回のiPad Air(第4世代)では、いよいよ最新の 「Apple Pencil(第2世代)」 が使えるようになった。
Apple Pencil(第2世代)は年にiPad Pro向けに発売した現行最新のスタイラスペン。第1世代よりも本体がコンパクト化し、表面がマット仕上げになったことで持ちやすさが向上。一部側面が鉛筆のように角ばったことでコロコロと転がっていくこともなくなった。
さらにiPad側面の磁気コネクタにくっつけるだけでペアリング・充電ができるようになったことも大きな変化だ。第1世代のApple PencilはiPadのLightningポートにApple Pencilを挿すというちょっぴりお間抜けなペアリング・充電方法だったため、スマートさが一気に増している。
これらの進化を遂げたApple Pencil(第2世代)がiPad Air(第4世代)で使えるようになったことで、同デバイスにおけるApple Pencilを使った作業はとても快適になった。
筆者はよくiPadとApple Pencilを使ってPDFファイルに書き込みをすることが多いのだが、側面にピタッとくっつけるだけで充電やペアリングができる快適さや、ダブルタップでマーカーと細ペンを瞬時に切り替えられるiPad Pro+Apple Pencil(第2世代)の組み合わせはとても重宝していた。今後はiPad Air(第4世代)でもできるようになったことで、ユーザーの選択の幅が広がったと言えるだろう。
ただし、iPad Air(第4世代)は最大120Hzのリフレッシュレートに対応する 「ProMotionテクノロジー」 を搭載していないため、Apple Pencilの描き心地は残念ながらiPad Proに劣る。スペック的にイラスト制作ソフトなどを快適に使えるレベルではあるものの、仕事などで本格的なイラスト制作をする予定ならやはりiPad Proを購入した方が良い(無難)かもしれない。
Magic KeyboardやマウスでPCライクに操作可能
iPad Proに近いデザインが採用されたことで、使い勝手もiPad ProライクになったiPad Air(第4世代)。その中でも大きな魅力のひとつになり得るのが、iPad Pro専用だったトラックパッド搭載純正キーボード 「Magic Keyboard」 がiPad Air(第4世代)でも使えるようになったことだ。
「Magic Keyboard」 は、iPad ProやiPad Airの本体下部に配置されている 「Smart Connector」 から電力供給を受けて動作する純正のワイヤレスキーボード。シザー構造が採用されていることで、MacBookシリーズのキーボードやMac用の同名のワイヤレスキーボード 「Magic Keyboard」 のようなキータッチになっていて、MacのようにiPadを使うことができる。パタンと折り畳めば本体を保護するケースとしても使うことが可能だ。
また、Magic Keyboardにはトラックパッドが搭載されており、MacBookのように複数の指を使ったマルチタッチジェスチャを利用できる点も便利。これに慣れてしまうとMagic KeyboardなしではiPadが使いにくく感じてしまうほどだ。
この便利なMagic KeyboardをiPad Air(第4世代)でも使えるようになったのはiPadユーザーにとって朗報なのではないだろうか。Magic Keyboardの使い心地については別途レビューを公開しているのでぜひ参考にしていただきたいが、筆者の感想としてはやはり11インチ級のコンパクトなサイズ感(MacBookに比べて)でタイプができるのがとても便利。新幹線や飛行機など狭い環境でもPCライクに作業できるためとても重宝する。最近は機会が少ないが、取材などにも役立つMagic Keyboardを筆者は高く評価している。
ただし、iPad Air(第4世代)はFace IDではなくTouch IDを搭載しているため、指をiPad Airの電源ボタンに当ててロック解除をしてから使い始めなければならないという一手間が必要になる。iPad ProならMagic Keyboardのどこかのキーを2回叩くだけで、画面点灯とFace IDによる顔認証の両方を一瞬でこなしてすぐに使い始めることができるため、Magic Keyboardとの相性がより良いのはiPad Proと言えるだろう。
ちなみに、iPadOSのアップデートにより、iPadでワイヤレスマウスが便利に利用できるようになったことも忘れてはいけない。一般的にPCでマウスを使うときのように、左クリックや右クリック、ホイールによるスクロールなどが利用できるため、Excelなどをソフトを使う際にPCのように便利に操作することができる。iPadをPCライクに使いたい方はぜひワイヤレスマウスとセットで使うことも考えていただきたい。
iPad Proとの違いは?
今回のアップデートで、上位モデルであるiPad Proにかなり近いミドルレンジモデルとして生まれ変わったiPad Air(第4世代)。今回のレビューではiPad Proとの違いについて度々触れてきたが、ここで改めて11インチiPad ProとiPad Air(第4世代)の違いについてまとめておきたいと思う。
まずは画面について。画面サイズはiPad ProとiPad Airではベゼルの太さが異なっている関係で、iPad Airの方が微妙に画面が小さくなっている。具体的なサイズはiPad Proが11インチ、iPad Airが10.9インチだ。画面性能はほぼ一緒だが、最大輝度が異なるほか、最大120Hzのリフレッシュレートに対応する 「ProMotionテクノロジー」 はiPad Proのみに搭載されていて、iPad Airは非搭載となっている。
iPad Air(第4世代) | 11インチiPad Pro | |
---|---|---|
画面サイズ | 10.9インチ | 11インチ |
ベゼル | 太 | 細 |
リフレッシュレート | 最大60Hz | 最大120Hz |
カメラは背面・前面ともにiPad Proの方が優れている。背面カメラはiPad Airが広角レンズのみのシングルレンズカメラなのに対して、iPad Proは広角+超広角のデュアルレンズカメラとLiDARスキャナが搭載されている。前面カメラはiPad ProがTrue Depthカメラ、iPad Airが通常のFaceTimeカメラになっていて、iPad Proのみポートレートモードやポートレートライティング、アニ文字・ミー文字を楽しむことができる。
iPad Air(第4世代) | 11インチiPad Pro | |
---|---|---|
カメラ性能 | シングルレンズ 12MP/広角 |
デュアルレンズ 12MP/広角+10MP/超広角 |
LiDARスキャナ | × | ◯ |
ミー文字とアニ文字のサポート | × | ◯ |
そのほか、生体認証はiPad ProがTrue Depthカメラによる顔認証機能 「Face ID」 、iPad Airが電源ボタン内蔵型の指紋認証機能 「Touch ID」 になっていて、スピーカー数はiPad Proが4基、iPad Airが2基となっている。
iPad Air(第4世代) | 11インチiPad Pro | |
---|---|---|
生体認証 | Touch ID | Face ID |
スピーカー数 | 2 | 4 |
さらに搭載されているプロセッサが、iPad Proは 「A12Z Bionic」 、iPad Airは 「A14 Bionic」 となっていて、現時点ではプロセッサの世代の関係もあってiPad Airの方が優秀ではあるのだが、プロセッサは常に新しいものが開発されているため、次期iPad Proのプロセッサがどうなるかによってこの上下関係は変わる可能性があることに注意が必要だ。
iPad Air(第4世代) | 11インチiPad Pro | |
---|---|---|
発売年月日 | 2020年10月23日 | 2020年3月18日 |
搭載プロセッサ | A14 Bionic | A12Z Bionic |
シングルコアスコア | 1587 | 1123 |
マルチコアスコア | 4166 | 4686 |
METAL | 12629 | 9913 |
RAM容量 | 4GB | 6GB |
これらの違いに加えて、最小ストレージ容量と最大ストレージ容量も異なっている。iPad Airは最小64GB、最大256GBとなっているのに対し、iPad Proは最小128GB、最大1TB。ストレージ容量別の価格は以下の表のとおりとなっている。
iPad Air(第4世代) | 11インチiPad Pro | |
---|---|---|
ストレージ&価格(税込) | Wi-Fi 64GB:69,080円 256GB:87,780円 Wi-Fi+Cellular |
Wi-Fi 128GB:93,280円 256GB:105,380円 512GB:129,580円 1TB:153,780円 Wi-Fi+Cellular |
まとめ:どんなユーザーにオススメ?
ここまでiPad Air(第4世代)を紹介してきたが、総評として最後にどんなユーザーにオススメかをお伝えし、このレビューを締め括りたいと思う。
今回登場した 「iPad Air(第4世代)」 は本体デザインや仕様が大幅に刷新され、iPad Proとの性能差が大幅に縮まる結果になった。内蔵プロセッサがA14 Bionicになったことでなぜか上位モデルであるiPad Proを処理性能で上回るという現象も起きたものの、それ以外はおおよそ順当なアップデートになっていて、ちょうどいい具合のミドルシップモデルという印象を筆者は抱いている。
また、今回のアップデートでiPad Airの立ち位置がより分かりやすくなり、これまで若干カオス化していたiPadラインナップが幾分かシンプルになったのではないだろうか。自ずとiPad Airを購入すべきユーザーがどんなユーザーなのかも分かりやすくなったと思う。
iPadシリーズの中からあえてiPad Air(第4世代)を選ぶべき理由の最も大きな点はTouch IDを必要とするか否か、だろう。昨今のコロナ事情を考えると、出先でiPadを使う機会が多いユーザーはTouch IDの方が便利ではあるものの、そもそも自宅などマスクを使用しない環境で使う想定ならば、Face IDを搭載したiPad Proの方が便利なはず。その利便性を捨ててTouch IDが必要と考えるのであれば、それはおそらくiPad ProよりもiPad Air(第4世代)をとるべきだろう。
またプロセッサの性能については確かにiPad Air(第4世代)の方が高い側面もあるが、iPad Proも決して処理性能が遅いわけでもないため、あまり気にする箇所ではないように思える。むしろiPad AirがiPad Proの性能を超えてきたということは、すなわち近い将来に新型iPad Proが登場する証拠なのではないだろうか、とも筆者は考えている。
つまり、性能面だけでiPad Air(第4世代)を選ぶとのちに後悔する可能性があるということ。大事なのは、iPad Air(第4世代)は現状のプロモデルと同等かそれ以上の性能を持っている、という絶対評価だけだ。
ちなみに、筆者としては今回のiPad Airの出来にはかなり満足している。そのためiPad Proのにはない上位機能(ProMotionテクノロジーなど)を必要としないユーザーには、十分に 「買い」 と思っていることを読者の皆さんにしっかりとお伝えしておきたい。最新のベゼルレスデザインの採用に加えて、Apple Pencil(第2世代)やMagic Keyboardなどの最新アクセサリへの対応、高性能プロセッサの搭載などにより、今後数年使い続けることも十分に可能なモデルとなったからだ。
それでいて、iPad Proより約2万円もお得に購入することができる点も見逃せない。お得で高性能な 「iPad Air(第4世代)」 、ぜひお手にとってみてはどうだろうか。
関連記事
・iPad Pro 2020 レビュー | 伝えたい11インチモデルの魅力。初のマルチカメラで大胆構図の写真も
・iPad 2020 全種類の性能・違いを比較。iPad Pro・iPad Air・iPad mini・無印iPad、あなたにオススメはどのモデル?