Appleは2024年10月23日、新型 「iPad mini (A17 Pro)」 を発売した。従来モデルのデザインを踏襲しつつ、SoCに 「A17 Pro」 を搭載し、処理性能を向上させたマイナーアップデートモデルだ。
これまで1世代前の 「iPad mini (第6世代)」 を愛用してきた筆者は、今回のアップデートを機に買い替えを決断。発売日当日に製品が手元に届き、数日間にわたり様々な検証を行うことができた。
本稿では、実機を使用した感想や検証結果をレビューとしてお届けする。
- デザイン:変わったのは背面の文字と磁気コネクタだけ
- 画面:ゼリースクロールは改善。できれば画面輝度は上げてほしかった
- SoC:A17 Proで性能向上、Apple Intelligenceにも対応
- ゲーム性能:『ゼンゼロ』など最新アクションゲームもやや快適動作
- 映像出力:解像度が4K/60Hzに
- ストレージ容量:最少容量が64GB→128GBに
- カメラ:性能変わらず、できれば写真撮影はスマートフォンで
- バッテリー駆動時間と充電速度:最大20Wで充電、10時間くらい駆動できる
- 通信:Wi-Fi 6EやBluetooth 5.3に対応
- Apple Pencil:Apple Pencil ProとApple Pencil (USB-C) に対応
- まとめ:「iPad mini (A17 Pro)」に買い替えするべきかどうか
デザイン:変わったのは背面の文字と磁気コネクタだけ
今回筆者が購入したのは 「iPad mini (A17 Pro)」 の最安モデルである、Wi-Fi/128GBモデル。今回のiPad miniのストレージ容量のラインアップは128GB/256GB/512GBの3種類が用意されており、最少は64GB → 128GBと倍になったため本モデルが最安モデルということになる。
今回選んだカラーはパープル。先代の「iPad mini (第6世代)」ではピンクを選んでいたが、その際パープルとかなり迷った。そこで今回ピンクが廃止されたのを機に、パープルを選択することにした。先代のパープルに比べてやや淡い色味になったものの、その落ち着いた色味が上品さを醸し出していて、やはり選んだのは正解だったととても満足している。
iPad miniは、iPadシリーズの中でも持ち運びに優れたコンパクトモデルという立ち位置の製品で、片手でヒョイっと持てるサイズ感・重量が特長だ。具体的なサイズは高さ195.4×幅134.8×厚さ6.3mm、Wi-Fiモデルの場合の重量は293g。
本体デザインに大きな変更はなかったことから、Smart Folioのようなカバーは先代モデルのものを使い回すことが可能。実際にiPad mini (第6世代) 購入時に一緒に購入したSmart Folio (エレクトリックオレンジ) を装着してみたところ問題なくフィットしたので、iPad mini (第6世代) → iPad mini (A17 Pro) への買い替えをする人は覚えておこう。
画面は、8.3インチのLiquid Retinaディスプレイ (液晶ディスプレイ) を採用。iPhoneやiPad ProなどのOLED (有機ELディスプレイ) に比べると発色等で劣るものの、それでも広色域 (P3) やTrue Toneなどのテクノロジーにより各種コンテンツをキレイに表現できる。
iPad miniは、先代モデルでホームボタンを廃止し、ベゼルレスデザインへと変更されているが、そのベゼルの幅はiPad AirやiPad Proに比べると同じくらいか、すこし広めになっている。狭ベゼルが一般的になっているため野暮ったく感じる人もいるかもしれないが、これはコスト面のほかに、デバイス全体の強度を高く保つためや各種センサーをベゼル内に搭載するためであることが考えられる。
画面上部には、前面カメラとして1,200万画素の超広角カメラが搭載されている。iPad Proと違ってFace IDには対応せず、あくまで自撮りやビデオ通話をするためのカメラだ。
本体上部には音量調節ボタンに加えて、指紋認証のためのTouch IDセンサーを備えたトップボタンが搭載。Touch IDの精度は先代モデルと同等。
本体右側面には、Apple Pencilを取り付けるための磁気コネクタが搭載。Apple Pencilをパチッとくっつけることでペアリングしたり、充電したりできる。
ちなみに、今回のiPad miniは 「Apple Pencil Pro」 もしくは 「Apple Pencil (USB-C)」 のみに対応し、そのほかのApple Pencilには対応しない。先代モデルで利用できた 「Apple Pencil (第2世代)」 は使えないため、Apple Pencilを使いたい人は買い替えが必要となる点に注意していただきたい。
底面には、充電・データ転送用のUSB-Cコネクタが搭載。先代モデルもUSB-Cを搭載していたが、データ転送速度は先代モデルの2倍にあたる10Gbpsに高速化した。転送速度から察するに、おそらく 「USB 3.2 Gen 2」 相当をサポートするものとみられる。これまでは転送速度が5Gbpsだったので、「USB 3.2 Gen 1」 相当だった。
本体スピーカーはステレオ仕様で、端末の上下に1基ずつ配置されているため、本体を横向きにした状態でもコンテンツをステレオで楽しめる。
スピーカーの音質は、基本的にiPad mini (第6世代) からさほど大きな違いはないものの、若干だが音の広がりが良くなっており、また同時に中音域の再現度があがっている気がした。
本体背面は、中央に鏡面仕上げのAppleロゴ、左上にリアカメラが搭載されている。Smart Connectorはないため、Smart Connector対応のiPad用キーボードを使うことはできないものの、Bluetooth対応キーボードであれば接続可能なので、PCライクに使うことは一応可能だ。
細かい変更点にはなるが、本体下部の 「iPad」 の文字は今回から 「iPad mini」 に変更されている。
画面:ゼリースクロールは改善。できれば画面輝度は上げてほしかった
画面性能についてすこし深掘りしていこう。iPad mini (A17 Pro) には、8.3インチのLiquid Retinaディスプレイが搭載されている。最大輝度は500ニトで、広色域(P3)やTrue Tone、フルラミネーション、耐指紋性撥油コーティング、反射防止コーティングなどの仕様は引き続き採用されている。
フルラミネーションディスプレイ
ディスプレイのガラスと液晶をほぼ一体化させることで、Apple Pencilを使う際にペン先と実際に線が描かれる場所のギャップが少なくなる。
True Toneディスプレイ
周辺の光に合わせてディスプレイの色や明度を調節することで、画像などをより自然な色味で映し出す。iPadだけでなくiPhoneやMacBookなど多くのAppleデバイスで導入されている。
上記のテクノロジーにより、iPad miniでは正しい色味でコンテンツを楽しむことができる。また、Apple Pencilを使って書類に図やイラストなどを書き込む機会が多い人は、フルラミネーションディスプレイのおかげでペン先と実際に線が描かれる部分のギャップが少なく、快適に作業できるはずだ。
8.3インチのコンパクトなデザインながら、iPad ProやiPad Airなどの大きな画面を搭載したモデルと操作感はほぼ同じ。ホーム画面にも最大5×6でアプリを並べられる。唯一、使いづらさを感じるのは、Dockに表示されるアイコンが小さく誤って違うアプリを開いてしまうことがあること。Dockに置くアプリを少なくすることで回避することもできるが、ここは少し改善して欲しいと思うところ。
ちなみに、先代モデルでは、本体を縦向きにした状態で画面を上下にスクロールすると画面がグニャグニャと揺れるように見える 「ゼリースクロール (ジェリースクロール)」 という現象が報告されていたが、今回の新型モデルではどうなったのか。
実際にWebツールを使って検証してみた映像が以下。左が 「iPad mini (第6世代)」で、右が 「iPad mini (A17 Pro / 第7世代)」 だが、先代モデルでは白い線が波打っているように見えるのに対し、新型モデルはそれが軽減されている。ゼリースクロールの問題については 「改善された」 と結論づけて良いだろう。
念のため、横向きの状態でも検証してみたが、ほとんど気にならない程度の揺れになっていた。
前提として、ゼリースクロールはスクロール時の画面リフレッシュが一方向から順次行われることで起こる 「遅延」 によって発生する仕組みであり、一般的なPCや他のiPadでも普通に起きる現象だ。ただし、先代モデルではこの遅延が大きく、さらに縦向きで使うことが多いiPad miniだからこそ騒がれた問題だったように思う。
もしゼリースクロールの問題を考慮して先代モデルの購入を見送ったのだとしたら、今回の新型モデルは心配することなく購入していただきたい。
ゼリースクロールも改善され、画面についての心配事が減ったiPad miniではあるが、できれば液晶ではなくOLEDにしてほしいというのが筆者の願い。ただ、それだとコストの面や上位モデルとの差別化が難しいことから、おそらく搭載は難しいだろう。それなら液晶でも構わないが、せめて画面の最大輝度を上げてほしかったというのが筆者の本音だ。
同じモバイルデバイスであるiPhoneと並べて使うと、明らかに画面の明るさが違うことに気づく。直射日光下で使うと画面が見えないこともある。家族に写真や動画を見せたり、プレゼンテーション資料等を見せたりするのにちょうど良いデバイスであることから、コンテンツをよりキレイに表示したいところ。この点に関しては、次期モデルでの進化を望みたい。
SoC:A17 Proで性能向上、Apple Intelligenceにも対応
新型iPad miniには 「A17 Pro」 が搭載されている。A17 Proは昨年発売した 「iPhone 15 Pro/15 Pro Max」 に搭載された高性能SoCで、GPUのコア構成が異なる (iPhone 15 Pro/15 Pro Maxに搭載されたものはGPUコア数が6コア、iPad miniは5コア) 以外には、ほぼ同じくらいの性能を実現している。
先代のiPad mini (第6世代) に搭載された 「A15 Bionic」 と比べると、コア構成は変わらないものの、CPUパフォーマンスは30%、GPU性能は25%向上しているほか、Neural Engineも2倍高速化しているとAppleは述べている。
CPU性能
ベンチマークアプリ 「Geekbench 6」 でベンチマークスコアを計測してみた。
モデル | SoC | コア構成 | CPUスコア |
---|---|---|---|
iPad mini (A17 Pro) | A17 Pro | 6コアCPU 5コアGPU 16コアNeural Engine | シングル:2903 マルチ:7178 |
iPad mini (第6世代) | A15 Bionic | 6コアCPU 5コアGPU 16コアNeural Engine | シングル:2161 マルチ:5094 |
iPhone 16 Pro | A18 Pro | 6コアCPU 6コアGPU 16コアNeural Engine | シングル:3319 マルチ:7983 |
iPhone 16 | A18 | 6コアCPU 5コアGPU 16コアNeural Engine | シングル:3237 マルチ:7775 |
iPhone 15 Pro | A17 Pro | 6コアCPU 6コアGPU 16コアNeural Engine | シングル:2940 マルチ:7322 |
iPhone 15 | A16 Bionic | 6コアCPU 5コアGPU 16コアNeural Engine | シングル:2641 マルチ:6668 |
iPhone 14 Pro | A16 Bionic | 6コアCPU 5コアGPU 16コアNeural Engine | シングル:2629 マルチ:6600 |
iPhone 14 | A15 Bionic | 6コアCPU 5コアGPU 16コアNeural Engine | シングル:2412 マルチ:5768 |
iPhone 13 | A15 Bionic | 6コアCPU 4コアGPU 16コアNeural Engine | シングル:2402 マルチ:5742 |
iPad mini (A17 Pro) に搭載された「A17 Pro」のCPUスコアは、シングルコアスコアが2886、マルチコアスコアが7106。先代モデルと比較すると、シングルコアスコアは約34%、マルチコアスコアは約39%向上している。
体感的にも、動作は快適になっていた。先代のiPad mini (第6世代) は、今秋にリリースされた 「iOS 18」 でやや動作が重たく感じる場面があった。「A17 Pro」 でCPU性能が大幅に向上したこともあってか、とてもスムーズに動作していて快適だ。
GPU
モデル | SoC | コア構成 | Metalスコア |
---|---|---|---|
iPad mini (A17 Pro) | A17 Pro | 6コアCPU 5コアGPU 16コアNeural Engine | 25491 |
iPad mini (第6世代) | A15 Bionic | 6コアCPU 5コアGPU 16コアNeural Engine | 20128 |
iPhone 16 Pro | A18 Pro | 6コアCPU 6コアGPU 16コアNeural Engine | 32955 |
iPhone 16 | A18 | 6コアCPU 5コアGPU 16コアNeural Engine | 28043 |
iPhone 15 Pro | A17 Pro | 6コアCPU 6コアGPU 16コアNeural Engine | 28281 |
GPU性能を表すMetalスコアは25491。先代モデルに比べて約27%向上した。
CPU・GPU性能ともに最新のiPhone 16シリーズやMシリーズのSoCを搭載するiPad Air・iPad Proには敵わないが、同じA17 Proを搭載したiPhone 15 Proと比べてGPUコアが1つ少ないものの、スコア自体はさほど大きな違いもなく、実際にアプリなどを動かしてみてもかなり快適に動作していたように感じる。
ちなみにGeekbench 6の計測時に、RAM容量が8GBであることが分かった。
AI性能
次にNPU性能を計測するため、「Geekbench AI」 でスコアを計測してみた。
モデル | SoC | CPU | GPU | NPU |
---|---|---|---|---|
iPad mini (A17 Pro) | A17 Pro | S:3896 H:6785 Q:5525 | S:3695 H:4138 Q:4055 | S:3846 H:24313 Q:34541 |
iPad mini (第6世代) | A15 Bionic | S:3169 H:5466 Q:4423 | S:2694 H:2928 Q:2754 | S:3138 H:16342 Q:17864 |
iPhone 16 Pro | A18 Pro | S:4478 H:7720 Q:6151 | S:5775 H:6748 Q:6081 | S:4593 H:33141 Q:45101 |
iPhone 16 | A18 | S:4252 H:7350 Q:5881 | S:4098 H:4254 Q:4124 | S:4314 H:32143 Q:44590 |
iPhone 15 Pro | A17 Pro | S:3960 H:6872 Q:5627 | Si:5000 H:5927 Q:5253 | S:3913 H:24426 Q:34086 |
Single Precision Score (単精度スコア) | FP32 (32ビット浮動小数点) 演算の性能を示す。高い数値精度が求められる画像処理などのタスクで主に使用される。 |
---|---|
Half Precision Score (半精度スコア) | FP16 (16ビット浮動小数点) 演算の性能を示す。単精度よりも数値精度は低いものの、計算速度が速くメモリ使用量も少ないため、音声認識や顔認識などのリアルタイムアプリケーションなどで使用される。 |
Quantized Score (量子化スコア) | INT8 (8ビット整数) 演算の性能を示す。数値精度を若干犠牲にする代わりに、計算速度と効率を大幅に向上させるため、エッジデバイスやモバイルデバイスでのAI推論に適している。 |
上記の検証結果を見る限り、iPad mini (A17 Pro) に搭載されたA17 Proは、先代のA15 Bionicに比べてCPU性能が約20-25%、GPU性能が約35-50%向上していることがわかる。また、NPU性能の向上具合はもっと顕著で、特に半精度と量子化スコアで約50-90%の大幅な向上が見られる。
これらの結果から、iPad mini (A17 Pro) はAI関連のタスクにおいて大幅な性能向上を達成していることがわかる。特に、NPUの性能向上は、機械学習や画像認識などのAIタスクでより高速で効率的な処理が可能になることを示唆している。
同じ 「A17 Pro」 を搭載しているiPhone 15 ProともAI性能では同等であることから、iPad mini (A17 Pro)が 「Apple Intelligence」 のサポート要件を満たしているのも頷ける。日本ではまだ利用できないが、来週から米国英語環境で利用できるようになることから、英語が話せる方はぜひ利用してみて欲しいところ。
ゲーム性能:『ゼンゼロ』など最新アクションゲームもやや快適動作
iPad miniでゲームは快適にプレイできるのか。筆者が最近ハマっている『ゼンレスゾーンゼロ』をプレイしてゲームプレイ時の動作をチェックした。
『ゼンレスゾーンゼロ』は、『原神』『崩壊:スターレイル』などで知られるHoYoverseが、今年リリースしたばかりの最新アクションタイトル。画質がキレイな分、高いグラフィックス性能が求められるゲームだが、A17 Proの高いグラフィック性能もあってか快適に動作させることができる。
ただ、グラフィックス設定を 「高」 にするとコマ落ちが発生していたことから、「中」 設定に落としてみたところ安定してプレイできたので、iPad miniでのプレイ時には 「中」 設定が最適だと言えそうだ。
発熱もチェックしてみた。最高画質で30分ほどプレイし続けたときの表面温度は最高で41℃くらい。決して手に持てないほどではないものの、ずっと手に持ってプレイするにはやや不快感もあるため、ゲームをプレイする際にはコントローラー等を使用すると良いだろう。ちなみに、「iPad mini (第6世代)」 でも発熱具合をチェックしてみたところ、こちらも最高で41℃となっていた。発熱具合はあまり変わりなさそうだ。
映像出力:解像度が4K/60Hzに
iPad miniはUSB-C対応アクセサリを使うことで、外部ディスプレイへの映像出力が可能だ。USB-C経由で映像入力ができない外部ディスプレイを使っている場合は、HDMIに変換するアダプタや、HDMIを搭載したUSB-Cハブ等を使えば映像出力が可能だ。ただし、iPad miniはThunderbolt規格はサポートしないため、Thunderboltアクセサリは使用不可な点に注意が必要だ。
出力できる映像の解像度は最大4K/60Hz。先代モデルが最大4K/30Hzだったことから映像の滑らかさが向上したことになる。マウスポインタの動きが滑らかになったことで操作しやすくなっただけでなく、ゲームプレイ時にも60fpsでの映像出力をサポートすることになる。
複数のアプリを並べて表示したり、ウィンドウサイズを変更したりとPCライクに操作できる 「ステージマネージャ」 は、iPad miniは非対応。外部ディスプレイにフルスクリーン表示させることもできないため、これらを利用したい場合はMシリーズのチップを搭載したiPad ProやiPad Airを選んでいただきたい。
ちなみに、例外として 「Prime Video」 アプリは外部ディスプレイ出力時にコンテンツの再生を始めると自動で全画面表示になってくれる。このようにアプリ側で対応しているものに関しては全画面でコンテンツを楽しむことが可能だ。
ストレージ容量:最少容量が64GB→128GBに
新型iPad miniのストレージ容量は、128GB/256GB/512GBの3種類から選択可能になった。先代モデルは64GB/256GBの2種類だったことから、最少容量が2倍になり、さらに512GBという大容量オプションが追加されたことになる。
筆者の場合、作業用のメインiPadとして 「iPad Pro (M4)」 を使っており、よりカジュアルなシーンや荷物をできる限り少なくして外出したいときのお供としてiPad miniを使っている。そのため、iPad miniを購入するときには最少ストレージ容量を選ぶことで購入費用を抑えていた。
しかし、64GBでは保存できるアプリや写真、音楽の数に限りがあったため、次回の購入時にはもう少し大きな容量に変更しようと考えていた。幸いにも今回のアップデートで128GBが最少容量となったことで、結果的に購入費用を抑えながらも少し大きな容量を確保できたことは嬉しい誤算だった。
カメラ:性能変わらず、できれば写真撮影はスマートフォンで
iPad miniは背面と前面にシングルカメラを搭載している。それぞれ背面カメラは1200万画素の広角カメラ、前面カメラは1200万画素の超広角カメラで、先代モデルからスペックは変わらない。
光学ズームは対応しないが、デジタルズームは最大5倍まで可能。動画撮影は4K/60fpsでの撮影が可能だ。スローモーション撮影はHD画質で240fpsでの撮影に対応する。
背面カメラはあくまでシングルカメラということもあり、複数のカメラを搭載したiPhoneなどのスマートフォンのカメラに比べれば撮影できる写真のバリエーションは少ない。日々の写真撮影は基本的にはスマートフォンに任せつつ、記録用として使うのが良さそうだ。
ちなみに、明るさが異なる写真を複数合成することで、明るい部分と暗い部分を両立させるHDR機能 「スマートHDR」 は3→4に進化している。とはいえ、ソフトウェアレベルでの変化にはなるため 「少し写真の仕上がりが良くなった」 程度に捉えておこう。
むしろiPadにおいて重要なのは、ビデオ通話などで活用する前面カメラ。超広角カメラのおかげで複数人でのビデオ通話も全員がフレーム内に収まりやすい上に、機械学習によってユーザーを中心に捉え続けるよう自動で調節する 「センターフレーム」 機能もあり、ビデオ通話はしやすいはずだ。
バッテリー駆動時間と充電速度:最大20Wで充電、10時間くらい駆動できる
iPad miniの技術仕様を確認すると、バッテリー駆動時間は最大10時間。昨今のiPadシリーズはほぼすべてのモデルが最大10時間となっているため、基本的にどのiPadを使っても同じくらいのバッテリー駆動時間になるはずだ。
実際にはどれくらい使い続けることができるのか、YouTube動画を画面輝度50%の状態で再生し続けて検証してみた。
経過時間 | iPad mini (A17 Pro) | iPad mini (第6世代) ※参考 |
---|---|---|
0時間 (検証開始) | 100% | 100% |
1時間後 | 94% | 91% |
2時間後 | 84% | 81% |
3時間後 | 74% | 70% |
4時間後 | 65% | 59% |
5時間後 | 55% | 49% |
6時間後 | 45% | 38% |
7時間後 | 35% | 28% |
8時間後 | 25% | 17% |
9時間後 | 16% | 8% |
10時間後 | 9% | 0% |
11時間後 | 0% | — |
検証の結果、約11時間動画を再生し続けることができ、iPad mini (第6世代) のときよりも1時間長く使い続けることができた。
ただし、ほとんどのユーザーは10時間以上にわたって同じアプリを使い続けるという使い方はしないと思われることから、作業内容によってバッテリー持続時間は大きく変わってくる。例えば、ゲームをプレイした際はバッテリー残量はぐんぐんと減っていく。また、OSのバージョンによっても多少は変化があるため、上記の結果はあくまで参考程度に捉えていただきたい。
iPadは画面の大きさに対してバッテリー容量が少ないからか、iPhoneに比べてバッテリー消費が大きい傾向にある。長時間の外出時にはモバイルバッテリーなどを持ち歩くと安心だ。
ちなみに、iPad mini (A17 Pro) は最大20Wで充電できる仕様だ。バッテリーをある程度減らした状態で充電速度を計測してみたところ、18.6Wで充電していたことが確認できた。
通信:Wi-Fi 6EやBluetooth 5.3に対応
今回のアップデートで、iPad miniはWi-Fi 6EやBluetooth 5.3に対応するなど、通信まわりが刷新された。
特に嬉しいのはWi-Fi 6Eへの対応。昨今は日本でもWi-Fi 6E対応ルーターの普及により、自宅はもちろん、職場やネットカフェなど高速通信を利用できる場所が増えてきていることから、その恩恵をiPad miniでも受けることができるようになる。
ちなみに、今回のiPad miniのWi-Fi+Cellularモデルは物理SIMスロットがなくなり、eSIMオンリーの対応となった。これまで物理SIMを使っていた人はeSIMに変更する必要があるので注意していただきたい。
Apple Pencil:Apple Pencil ProとApple Pencil (USB-C) に対応
iPad miniは、Apple Pencilを使って画面にイラストや文字を書き込むことができる。
先代モデルでもApple Pencilを利用することはできたが、対応するApple Pencilのモデルが変更になっている。先代モデルでも利用できた 「Apple Pencil (USB-C)」 に加えて、今年5月に新型iPad Proと同時に発売した 「Apple Pencil Pro」 だ。
先代モデルで利用できた 「Apple Pencil (第2世代)」 には今回は対応しないため、人によっては買い替えが必要になるかもしれない。
今回のアップデートにより、iPad miniでApple Pencilの 「ホバー」 機能が利用可能に。同機能はApple Pencilのペン先を画面に近づけたときに、画面のどこにペン先が当たるのか、現在のペンツールと太さはどれくらいなのかを事前にプレビューする便利機能で、自分が予想していた場所よりも少しズレたところに線を書き込んでしまったり、間違ったペンツールで書き込んでしまうのを防ぐことができる。
またApple Pencil Proを使えば、指で強く押すことでツールパレットを表示する 「スクイーズ」 や、ジャイロスコープによって本体の回転を検知してペンツールの向きを変える 「バレルロール」 といったApple Pencil Proならではの機能が利用できる。
Apple Pencilのペアリングや充電は、Apple Pencilを本体側面の磁気コネクタに取り付けるだけでOK。磁気コネクタの磁力はそれなりにあるが、絶対に落下しないとは言い切れないため、外を持ち歩くときにはできればApple Pencilをカバンに入れて持ち運ぶことをオススメする。
iPad mini+Apple Pencil Proの実力を試すべく、ちょっとしたイラストを描いてみた。やはり画面が小さく頻繁に指での拡大・縮小をする必要があることから、本格的なイラスト制作をするにはiPad AirかiPad Proの方が便利だと感じたが、Apple Pencil Proの使い勝手が良いためか、作業自体はそれなりに快適だった。
▶︎ Apple公式サイトで 「Apple Pencil (USB-C)」 を購入する
▶︎ Apple公式サイトで 「Apple Pencil Pro」 を購入する
まとめ:「iPad mini (A17 Pro)」に買い替えするべきかどうか
iPad mini (A17 Pro) は筐体デザイン変わらず、SoCの刷新などマイナーアップデートに留まったわけだが、最新の 「Apple Pencil Pro」 に対応したり、ストレージのラインナップに変更があったりと、地味ながら重要なアップデートもあったことで、日々の使いやすさは向上したと言えるだろう。
特に筆者が嬉しかったのが最少ストレージ容量が倍になったこと。64GBでは多少アプリを入れるとOSアップデートのたびにアプリを削除する必要があり、いざアプリを使おうとしたときにインストールから始まったりと利便性が損なわれていたことから、128GBになったことでかなり使いやすくはなりそうだ。
しかも最少ストレージ容量が倍になったのに価格が安くなったのも嬉しい点。前回の価格変更時から円安が少しはおさまったこともあり、iPad miniを買い替えるには今回が絶好のタイミングとも言えるだろう。
あとはA17 Proになったことの恩恵として、Appleのパーソナルインテリジェンスシステム 「Apple Intelligence」 に対応することがあげられる。日本語を含む多言語への対応は2025年以降になる予定だが、ラフスケッチから本格的なイラストを作る 「Image Playground」 などはiPad miniのような小さなデバイスでも十分に活躍してくれるはず。リリース後にはiPad miniの使い勝手がまた数段と良くなりそうだ。
3年ぶりの新型モデルといえども進化した箇所がやや少ないため、「iPad mini (第6世代)」 から買い替えるべきかどうかと言われたら難しいところだが、強いていえば 「Apple Intelligence」 を利用したいかどうかが大きなポイントになってくるのではないだろうか。
「Apple Intelligence」 がどのように生活を便利にできるのか現状では未知数ではあるものの、今後のAppleデバイスのトレンドは 「Apple Intelligence」 をサポートしていること。これはある意味、Macの 「Apple Silicon化」 と同じく将来的なデバイスのサポート期間にも関係してくる可能性がある。より長く使いたいなら、iPad mini (A17 Pro) にアップグレードしておくのもありなのではないだろうか。同時にゼリースクロールも解消されて快適になるはずだ。
iPad mini (A17 Pro) はApple公式サイトで78,800円(税込)から購入できる。小さいけどパワフルになったiPad mini、ぜひお手に取ってみてはどうだろうか。