
GoProは9月1日(米国時間)、光フォトニクス企業のStarman Opticalと合併する正式契約を締結したと発表した。今回の取引では、GoProの株主に総額2億8500万ドル(約420億円)が現金で支払われるほか、GoProの既存株主は合併後の会社の約10%の株式を保有する予定だ。
GoProは合併後もNASDAQに上場する公開企業として存続し、現在展開しているアクションカメラなどのコンシューマー向け製品やサブスクリプション、クラウドサービスも引き続き提供する。一方で、Starmanが手がける米国製の光トランシーバーを新たな製品群として加え、AIデータセンターや政府、防衛、航空宇宙、ロボティクスなどの市場へ事業を広げる方針だ。
今回の合併の背景には、GoProの厳しい業績がある。同社が8月10日に発表した2026年第2四半期(4~6月)の業績では、カメラの出荷台数が前年同期比38%減の約29万1000台、売上高が31%減の1億490万ドル(約153億円)となった。純損失は5100万ドル(約75億円)に拡大し、6月末時点の現金および現金同等物も2730万ドル(約40億円)まで減少している。
こうした状況を受け、GoProでは5月に取締役会が会社売却を含む戦略的選択肢の検討を承認。ニック・ウッドマン氏は8月の決算発表時、検討が「後半段階(later stages)」に入っていると説明していた。今回発表されたStarman Opticalとの合併は、こうした経営環境のなかでGoProが選んだ事業再編の具体策となる。
GoProが光技術企業と合併。カメラメーカーから事業領域を拡大
GoProは2002年の創業以来、アクションカメラを中心とした映像機器を展開してきた企業だ。高度な光学技術やイメージング技術を強みに、HEROシリーズや360度カメラのMAXシリーズなどを展開している。
同社はこれまでに米国で2500件を超える特許を取得しており、今回の合併では、こうした光学・映像技術や知的財産をコンシューマー市場だけでなく、商用・防衛分野にも活用していく。
背景にあるのが、AIインフラ市場の拡大だ。AIの処理能力が高まるにつれてデータセンターで扱うデータ量も増えており、サーバー間で大量のデータを高速にやり取りするための光通信技術への需要が高まっている。
今回GoProが組むStarman Opticalは、Starman Holding傘下の非公開企業。光トランシーバーや関連するフォトニクス技術の開発に加え、「Starman New Photonics」事業を通じて、光トランシーバーの米国内での製造にも取り組んでいる。
光トランシーバーは、データセンターなどで電気信号と光信号を相互に変換し、機器同士の高速通信を支える部品だ。Starmanの製品をGoProの製品ポートフォリオに加えることで、同社はこれまでのカメラ市場からAIデータセンター向けの光通信市場へ進出する。
GoProは今回の合併について、米国内での製造基盤を強化する狙いも示している。AIや国家安全保障に関わるカメラ、光学部品、AIインフラ向け部品では、海外に依存せず米国内で生産できる体制が重要になっているためだ。
Starman HoldingのCEOであるCharles Tebele氏は、AIや国家安全保障、経済にとって高度な光学技術とイメージング技術が重要になる一方、こうした技術を支える重要なハードウェアの多くが海外で製造されていると指摘。GoProが持つ光学技術や知的財産と、Starmanの光トランシーバー技術、米国内の製造基盤を組み合わせることで、重要部品の生産を米国へ戻す機会になるとしている。
合併後はAI・防衛・航空宇宙などへ。既存のGoPro製品も継続
今回の取引では、GoProの株主に1株あたり1.14ドル、総額2億8500万ドルの現金が支払われる。最終的な支払額は、クロージング時のGoProの運転資本に応じて調整される可能性がある。
また、GoProが抱える約9200万ドルの負債は取引完了時に全額返済される予定で、合併後は実質的に負債の少ない財務基盤になるとしている。GoProは引き続きNASDAQに上場し、現在の株主は合併後の会社の約10%を保有する見込みだ。
合併後の会社では、Starmanの米国製光トランシーバーを加えた新しい製品ポートフォリオを構築する。AIデータセンター向けの光通信に加え、政府、防衛、航空宇宙、ロボティクスといった分野への展開も進める。
なお、今後もHEROやMAXなどのコンシューマー向け製品、サブスクリプション、クラウドプラットフォームは継続して展開する。既存事業を支えながら、新たな市場に向けた投資も進め、製品ラインアップの拡充と事業領域の拡大を目指すとしている。
GoProの創業者兼CEOであるNicholas Woodman氏は、今回の合併によってコンシューマー、商用、防衛の各市場で事業を成長させ、カメラや光学技術、AIインフラを扱う米国企業として発展させたいとコメントしている。
合併はGoProとStarman双方の取締役会で承認済み。今後、GoPro株主による承認や規制当局の承認など、通常必要となる手続きを経て、2026年末までに取引を完了する予定だ。
なお、今回の合併に関する正式な委任状説明書などの資料は、今後GoProから米証券取引委員会(SEC)へ提出され、株主にも提供される予定。GoProは今後、取引完了時に今回の合併について追加情報を提供するとしている。
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