
Googleは5月1日、「Google検索」 の実験的な機能「AIモード (AI Mode)」 を米国で本格的に解禁した。これまで一部ユーザーへの招待制として提供されていた同機能は、今回の発表により「Search Labs」から誰でも自由にオプトイン可能になっている。
さらに今後数週間以内には、AIモード専用のタブが 「Google検索」 の結果ページ上に表示され、一部ユーザーは直接アクセスできるようになる予定だ。
「AIモード」は何が新しいのか?──Gemini 2.0ベースの生成AI検索
AIモードは、GoogleのAI「Gemini 2.0」のカスタムモデルをベースにした生成AIによる検索体験だ。従来のキーワード中心の検索から一歩進み、ユーザーの曖昧な質問や複雑な意図も的確に把握し、視覚情報や構造化データを交えた「AI Overview (AIによる概要)」を提示する。
検索結果にはテキストのみならず、ビジュアルカードとして店舗や商品に関する写真付き情報が表示される。これにより、評価、レビュー、営業時間、リアルタイム価格、在庫状況といった詳細が一目で把握できる。旅行やショッピングなど、意思決定が伴う検索において高い実用性が期待されている。
「100ドル以下で折りたたみキャンプチェア」も一発表示
たとえば、「100ドル以下でバックパックに入る折りたたみキャンプチェア」といった具体的かつ長文の検索にも、AIモードは柔軟に対応する。検索結果には、複数の該当商品を表示するビジュアルカード一覧が展開され、販売サイトへのリンク、在庫状況、配送情報なども即座に確認できる。
これらの情報は、Googleのショッピンググラフや最新のローカルビジネスデータに基づいてリアルタイムで生成される。オンラインレビューや専門メディアからの情報も組み合わせており、ユーザーは検索画面から離れることなく検討が可能となる予定だ。
今回のアップデートでは、過去のAI検索履歴へのアクセス機能も追加された。ユーザーは左側のパネルから以前の検索に素早く戻ることができ、AIとの対話を引き継いで情報収集を深められる。
AIモードは、単なる検索ではなく、対話のなかで情報を探せる、新たなツールだ。検索・比較・意思決定・購入に至るまでの一連のプロセスを、一気通貫でできるこの検索体験は、これまでのGoogle検索の常識を塗り替えるものになるだろう。
AIによる検索はメディアを殺す?「クリックされないリンク」の時代へ
AIによるショッピング支援は、OpenAIのChatGPTにも拡張されつつある分野だ。ChatGPTの場合は、直近で商品提案機能を強化しており、ユーザーのニーズに応じて関連アイテムを表示できるようになっている。ただし、現時点ではアフィリエイト収益の導入には至っていない。
一方のGoogleは、すでに膨大な広告・ショッピングインフラを持ち、検索に基づく収益化モデルに強みを持つ。今後、AIモード経由で紹介された商品が購入された場合に、Googleがどのような収益構造を取るのかは不明だ。
AIモードの台頭は、従来型のブルーのリンク頼みのトラフィック戦略に大きな影響を与える可能性がある。ユーザーがAIによる概要のみで満足してしまえば、情報元となるパブリッシャーサイトへのクリックが減少し、広告収益モデルへの影響が避けられない。
Googleは「検索インデックス」という圧倒的な強みを持ちながら、AIによる直接回答へのシフトを推進しており、パブリッシャーにとっては「情報提供者としての価値」と「トラフィックの確保」を両立させるための新たな戦略が必要になる。AIに情報が吸われるだけ吸われて、メディアなどの媒体がどんどん死にゆく未来だけは回避しなければいけないだろう。
AIモードは現時点で米国限定の展開にとどまるが、日本を含む他地域へのロールアウトも視野に入れているとみられる。GeminiやAI Overviewなど、Googleの検索体験は急速に再構築されつつあり、SEOやAI SEOに取り組むメディア・EC事業者にとっては、早期の情報把握と対応が不可欠だ。
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(画像:Google)