
米Googleは2025年11月18日、最新世代の大規模AIモデル「Gemini 3」を発表した。前モデル「Gemini 2.5 Pro」を大きく上回る推論能力とマルチモーダル対応を備え、Google検索やGeminiアプリ、開発者向けツールで順次提供を開始する。
Gemini 3は、テキスト、画像、動画、音声、コードなど複数のモダリティを横断して理解・推論できることを前提に設計されたモデルだ。100万トークンのコンテキストウィンドウを持ち、長文や複雑な情報の処理に強みを持つ。Googleによれば、ユーザーのリクエストの背景にある意図や文脈を深く理解できる点も特徴で、情報を提供することだけでなく、問題解決のために「聞くべきこと」を示すよう設計されている。
「Gemini 3」ベンチマークで示す性能の高さ
Gemini 3は複数のAIベンチマークで優れた結果を示す。代表的な指標は以下の通りだ。
- LMArena:Eloスコア1501でリーダーボード首位
- Humanity’s Last Exam:ツールなし37.5%、Deep Thinkモードでは41.0%
- GPQA Diamond:91.9%、Deep Thinkモードでは93.8%
- MathArena Apex:23.4%
- マルチモーダル系:MMMU-Pro 81%、Video-MMMU 87.6%
- SimpleQA Verified:72.1%
- ARC-AGI(コード実行あり):45.1%(Deep Think)
従来モデルでは難しかった複雑な問題に対しても自力で規則性を見つけて解答する力が向上しており、LMArenaではEloスコア1501でリーダーボード首位に立ったほか、Humanity’s Last ExamではDeep Thinkモード使用時に41.0%、GPQA Diamondでは93.8%と高得点を記録した。
数学問題やマルチモーダル課題でも、Arc-AGIやMMMU-Proなどの指標で優れた結果を示しており、Deep Thinkモードを活用することで、より複雑で長期的な推論やマルチステップタスクの解決にも対応できる。
エージェント機能と開発者向け環境
Gemini 3はエージェント機能も強化され、複雑なワークフローや長期計画を自律的に遂行できる。Google AI Ultra加入者は、Geminiアプリのエージェントを通じて、Gmailの受信トレイ整理や旅行計画の作成など、複数ステップにわたる作業をモデルに任せられる。
開発者向けには新プラットフォーム「Google Antigravity」が提供され、Gemini 3はソフトウェアタスクの計画・コード生成・実行・検証を自律的に行える。さらに、ブラウザ操作モデルや画像編集モデルとも統合されており、Web操作や画像加工なども自動化可能だ。Vibe Coding機能により、Google AI StudioやVertex AIだけでなく、CursorやGitHub、JetBrains、Replitなどのサードパーティ製開発環境でも活用できる。
ユーザー体験面でも進化が見られる。Geminiアプリはデザインを刷新し、作成コンテンツを整理する「My Stuff」フォルダや、ショッピング情報を統合表示する生成UIを備え、動的な視覚レイアウトやインタラクティブツールをその場で作成できる。
Google検索のAIモードにおいても、住宅ローンの計算やスポーツフォームの解析、講義動画のフラッシュカード化など、さまざまなタスクに対応できるインタラクティブな機能が提供される。
性能の向上だけでなく、安全性と信頼性にも配慮している。Gemini 3は、過度に指示に従う傾向を抑制し、プロンプトインジェクションやサイバー攻撃への耐性を強化しており、Google史上最も包括的な安全性評価を受けたモデルとして公開された。これにより、ユーザーが安心して高度なAI機能を活用できる環境が整えられている。
提供は段階的に行われ、一般ユーザーはGeminiアプリやGoogle検索のAIモードを通じて利用可能となる。開発者はGoogle AI StudioやGemini CLI、Antigravity経由でAPIを活用でき、企業向けにはVertex AIおよびGemini Enterpriseが提供される。Gemini 3の上位版である「Gemini 3 Deep Think」は、数週間以内にGoogle AI Ultra加入者向けに提供予定で、より高度な推論能力とマルチモーダル理解力を備える。
GoogleはGemini 3により、テキストや画像の理解だけでなく、複雑な推論・計画・マルチモーダル情報処理・安全性の全てを高次元で統合し、生成AIの新たなフロンティアを示すモデルとして位置づけている。
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(画像:Google)
