
Googleは自社の二大OS、「Android」と「ChromeOS」を将来的に統合する方針を明らかにした。これまで何年にもわたって囁かれてきた両OSの融合構想が、ついに公式の場で言及されたことになる。
発言の主は、GoogleでAndroidエコシステムを統括するプレジデント、サミール・サマット氏。英TechRadarのインタビューで、サマット氏は「ChromeOSとAndroidを単一のプラットフォームに統合する予定だ」と明言した。
両OSはすでに技術面では接近を続けていた。2024年6月には、Google自らが「ChromeOSをAndroidスタック上で開発していく」と発表しており、その時点で中核的な技術基盤の共有は始まっていた。今回の発言は、これまでの断片的な方針をひとつの文脈にまとめたもので、Googleが戦略としての「統合」を明示したのは実質的にはじめて。
Great to see so much interest in this topic! To reiterate what we announced in our 2024 blog post: we're building the ChromeOS experience on top of Android underlying technology to unlock new levels of performance, iterate faster, & make your laptop + phone work better together.… https://t.co/wIiiwkold3
— Sameer Samat (@ssamat) July 14, 2025
Androidが「Chromebook」の中核になる日
サマット氏は、「最近、人々がどのようにノートパソコンを使い、何を達成しているのかに関心を持っている」と語っており、これはスマートフォンだけでなく、ノートPCやハイブリッドデバイスへの本格進出を示唆するものと受け取れる。
現行のChromeOSは、2011年の登場以来、軽量・高速・セキュアなクラウド中心のOSとして展開されてきた。一方で、Androidはアプリ中心のモバイル体験に最適化され、世界最大のユーザー基盤を築いている。
近年では、ChromebookでAndroidアプリが動作するようになるなど、両者の融合は徐々に進んできたが、今回のような「単一プラットフォーム化」に関する発言は初。
2024年末に報じられたリーク情報では、GoogleがiPadに対抗する「PC版Android」の開発を進めているとされており、「Pixel」ブランドのノートPCに統合OSを搭載する構想も浮上していた。今回の発言は、そうした動きとも符号する部分があるとみられる。
Apple的エコシステムへの対抗か
Googleが目指すのは、Appleが展開するiPhone、iPad、Mac間のシームレスな連携に匹敵するクロスデバイス体験だ。Androidは現在、外部ディスプレイ対応やウィンドウのリサイズ機能を含む「デスクトップモード」の整備を進めており、UIレベルでもChromeOSと歩み寄っている。
「ユーザーがデバイスをまたいで移動しても、体験が断絶しない環境を作る必要がある」
かつてCNETの記者を務め、現在は『Android Faithful』ポッドキャストを共同で配信するジェイソン・ハウェル氏は、今回の発言を「避けられない方向への舵切り」と表現する。
Appleは、iCloudやHandoffなどを通じて、デバイス間の連携で大きな優位性を築いてきた。Googleが自社製スマートフォン「Pixel」やChromebookを持ちながら、それに近い体験を実現できていなかったのは確かだ。OSの分断が、その一因であることは否定できない。
とはいえ、現段階で統合の具体的な時期や製品は示されていない。Googleとしても段階的なアプローチを取る可能性が高く、まずはアーキテクチャの共通化、その後UIやUXの融合へと進むことになるだろう。
統合OSの流れと並行して、GoogleはAIの「Gemini」やXR分野の強化にも注力している。サマット氏は、Android XRについて「コンピューティングの未来を切り開く手段」と位置づけ、過去のGoogle Glassの失敗からも学びを得ていると語った。
つまり、Googleはモバイル、PC、XR、そしてAIを一体で捉える中で、OSの基盤を再定義しようとしている。その中心に据えられるのが、統合された「Android/ChromeOS」プラットフォームなのだろう。今後のGoogleの発表に期待したいことが、またひとつ加わったかたちだ。
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