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「Webパブリッシングは死んでいない」 サンダー・ピチャイCEOが語る、GoogleのAI戦略とWEBの未来

GoogleのCEOサンダー・ピチャイ氏は、米テックメディアThe Vergeの編集長ニレイ・パテル氏との対談において、近年急速に進化しているAI検索とWebパブリッシングの関係について率直な見解を示した。

パテル氏が、Googleの 「AI Overviews (AIによる概要)」 「AIモード」 がメディアや出版に及ぼす影響を厳しく追及するなか、ピチャイ氏は「Webは進化している」と繰り返し強調し、「Webパブリッシングは死んでいない」と話した。

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AI時代でもWebは「拡大」している

ピチャイ氏によれば、過去2年間でGoogleがクロールしたWebページ数は45%増加しているとし、これはAIツールによって生成されたコンテンツが増えただけでは説明ができないと説明した。そのうえでピチャイ氏は、「人々はより多くのコンテンツを作成しており、消費している。これは拡張の時代だ」 と述べ、Webが依然として情報消費の重要な基盤であることを強調した。

「2015年には『Webは死んだ』という有名なミームがあったが、今もそれを思い出す。予測というものは常に存在するが、Webは深く進化している」

インタビューの中でパテル氏は、「いまThe Vergeを立ち上げ直すなら、TikTokやYouTubeからはじめる。今のようなWebサイトは選ばないだろう」と主張。しかし、ピチャイ氏はこれに対して「完全には同意できない」と即答し、次のように語った。

「もし再びThe Vergeを始めるなら、きっと素晴らしいWebプレゼンスを築くはずだ」 「5年後もWebへ多くのトラフィックを送る」

これは、Webが「オワコンである」という意見に対するピチャイ氏の反論で、Googleとしては今後もWebを重要視し続けていくというメッセージと捉えられる。

さらにピチャイ氏は、Googleが他社とは異なり、Webへのトラフィック誘導を「最優先事項」としている点を強調した。

「他の新興企業を見てほしい。彼らはWebへトラフィックを送るつもりがないと公言している。我々だけがそれを高い優先度で考えている」

「AI Overviews (AIによる概要)」 についても「ユーザーに文脈を与え、Webの多様性へ導く手段」として位置付けており、検索体験が完結するのではなく、むしろWeb全体を探索する導線になるという。

ピチャイ氏はまた、Googleが送るトラフィックは量だけでなく質も高まっていると述べている。ユーザーが送られた先でより長く滞在し、より多くの時間を費やしていることを、データで把握しているという。

「検索でのリファラルトラフィックの質も上がっている。AIによる概要表示が進んでも、長期的には成長し、より多くのトラフィックを生むと信じている」

この発言は、AIがコンテンツの中間流通を担っていくなかで、Googleが 「Webの入り口」 であり続ける姿勢を明確に示したものだ。

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それでも感じるギャップ。メディアとの認識のズレ

興味深いのは、このやりとり全体を通じて、Google側とメディア側の見方に大きなギャップがあることだ。ピチャイ氏は今後もWebへのトラフィックが増えると確信しているが、一方でパテル氏は、「Webメディアとしての現状はかつてないほど厳しい」と率直に指摘している。

Googleは、AIの進化がWebにとって「破壊」であるどころか、「進化」の過程であると信じている。しかし、メディア側から見ると、AIによる要約や回答がユーザーの離脱を招いており、サイト維持が困難になる構造的問題が存在する。

Webの未来をどう見るか

ピチャイ氏の言葉を信じるなら、GoogleはWebの未来を見捨てていない。むしろAIの力を使って、より良質なWebトラフィックを生み出そうとしている。しかし、それが実際に現場のパブリッシャーやメディアにとって「プラス」と感じられるかは、まだ別の話だ。

Googleは過去にも「検索アップデート」「スニペット導入」など、幾度となくWebのルールを変え、そのたびに業界は適応を迫られてきた。今回のAIモードも、その延長線上とも言えるが、AIが生成したものをGoogleが提示するという仕組みのなか、Webパブリッシャーが供出する情報の価値がどう守られていくのか。その答えを出すのは、Googleだけではなく、Webの価値を信じ創り続けるすべての制作者たちにかかっている。

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(画像:Google)