ユニコーンAI企業「Genspark」が日本上陸。70超のAIモデルを束ねる法人向けAIエージェント基盤「AIワークスペース 2.0」投入

シリコンバレー発のスタートアップ企業「Genspark」は1月28日、日本市場での法人向け展開を本格化すると明らかにした。日本市場への上陸に合わせて、最新プラットフォーム「AIワークスペース 2.0」を展開することも発表している。

都内で開催された報道関係者向け発表会では、CEOのエリック・ジン(Eric Jing)氏が登壇し、日本事業の正式ローンチと今後の戦略を説明した。

Gensparkは2023年12月に米カリフォルニア州パロアルトで創業。Microsoft出身者を中心とするチームが立ち上げた企業で、「AIによって働き方を変える」ことを掲げている。創業から約20か月で企業評価額は12.5億ドル(約1,900億円)に達し、AIエージェント分野では世界でも最速クラスでユニコーン企業となった。

資金調達総額は約4.5億ドル。SBI InvestmentやSozo Venturesのほか、SalesforceやZoomに投資実績を持つシリコンバレーの有力ベンチャーキャピタルが名を連ねる。プロダクト公開から約9か月で年間ランレート(ARR)1億ドル(約150億円)を突破したという。

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“人に頼む感覚” で使えるAI基盤「Genspark エージェントエンジン」

Gensparkが展開するサービスの中核となるのが「Genspark エージェントエンジン」だ。ChatGPTやGemini、Claudeといったテキスト生成AIに加え、動画生成のSora、音声生成のElevenLabsなど、70種類以上のAIモデルを横断的に統合している。

ユーザーは、部下や同僚に頼むような感覚で指示を出すだけで、AIがタスクを自動的に分解し、150以上のツールセットと20以上のデータセットから最適な組み合わせを選びながら処理を進める。

対応範囲は広く、調査・分析・ファクトチェック・資料作成に加え、Webサイトやアプリ制作、メールの送受信、通話対応までを一連の流れで実行できる。専門的なAI知識がなくても、実務で使える成果物を得られる点が、従来の単機能型AIツールとの大きな違いだ。

今回の日本上陸に合わせて発表された最新プラットフォーム「AIワークスペース 2.0」では、以下の機能などが強化・追加された。

  • 音声入力で日本語を他言語に変換できるAI音声入力デスクトップアプリ「Speakly」
  • メールのトレイと連携し、トリアージ(優先順位付け)や自動返信などのワークフローを構築できる機能「AI受信トレイ」
  • 指示を出すだけで、プレゼンテーション資料や文書を自動生成・修正するAIスライド・AIドキュメント機能
  • 最新のAIモデルを活用したAI音楽・音声・動画生成

「この内容でスライドを作って」と話しかけるだけで資料が完成するほか、画像からポスターを生成したり、メール対応を自動化したりといった作業もワンプロンプトで完結する。

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日本市場を重要拠点に位置づけ、法人展開とセキュリティを強化

CEOのエリック・ジン氏

Gensparkは日本を米国、韓国と並ぶ重要市場と位置づけ、すでに日本法人を設立。ローカルサポート体制の構築も完了している。正式な法人向けプランの発表前から、複数の国内企業が導入を開始しており、経営層からの評価も高いという。

ジン氏は、日本市場について「日本企業の70%以上がAIを活用したいと考えているが、人材不足や使い方が分からないことが障壁になっている」と指摘。そのうえで「Gensparkは学習や専門知識なしに、AIを“人のように”使えるプラットフォームだ」と強調した。

技術的構造とセキュリティについて解説したCTOのカイ・ジュー氏

法人導入を見据え、セキュリティ面も強化されている。SOC 2 Type IIおよびISO 27001の認証を取得し、暗号化、アクセス制御、不正検知、厳格な運用管理を含むエンタープライズ水準の対策を実装した。

インターネット上から抽出したデータに対しては厳格な検証を行っており、20種類以上の高品質データセットを独自に収集・整理することで、ハルシネーション(誤情報生成)を大幅に低減。さらに「自己学習レイヤー」により、ユーザー利用を通じてシステムが自動的に性能向上する仕組みも備える。

ジン氏は最後に、「私たちは日本で成長し、日本に投資し、日本のお客様と共に歩んでいく。本日ここ東京でAIワークスペース 2.0を発表できることをうれしく思う」と語った。

COO ウェン・サン氏「日本企業がAI変革を牽引している」

COOのウェン・サン氏

イベント後半には、COO(最高執行責任者)のウェン・サン(Wen Sang)氏が登壇し、法人向け事業の成長状況と日本市場への期待を語った。

サン氏によれば、Gensparkは当初、個人向けサービスとして「Genspark」をローンチしたが、公開から約1~2か月の間に、世界各地の企業から導入要望が相次いだという。米国のコンサルティング企業や会計事務所、日本のプロフェッショナルサービス企業、韓国の家電メーカー、ドバイの政府機関など、業種・地域を問わず問い合わせが寄せられた。

「チームメンバーがGensparkを使い、とても気に入った。だからIT部門や経営陣に導入を求めた、という声が多く寄せられました」(サン氏)

こうしたユーザー主導の需要を受け、同社は2025年11月20日に法人向けサービス「Genspark for Business」を正式リリース。2~50席規模の中小企業向けプランと、大企業向けに高度なセキュリティ機能(SSOなど)を備えたエンタープライズプランを用意した。

その結果、リリース後の8週間で1,000以上の組織が導入・オンボーディングを完了。特に日本企業の比率が高い点が特徴だという。

導入企業の例として、日本の大手広告代理店ADKやSBIグループ、NTTデータ、パナソニック系企業とのパートナーシップを挙げ、「日本はAIトランスフォーメーションをリードする重要市場になっている」と強調した。

サン氏は、企業がGensparkを導入する最大の理由として「業務時間の再配分」を挙げた。

「人間は今、ビジネス成果の20%を生み出すために、80%の時間を雑務(Busy Work)に費やしています。Gensparkはその80%をAIに任せ、人間が顧客理解や価値創出といった本来の仕事に集中できる環境を作ります」

営業や事業開発チームが顧客との対話により多くの時間を使い、ニーズを理解し、意味のあるソリューションを構築できるようになることが、同社の目指す姿だという。

「AIは人間に取って代わるものではありません。人間は常に中心にあります。AIは人の能力を解放し、価値を高める存在です。それによってビジネスは成長し、社会全体が前進します。」

また、GensparkはMicrosoftやServiceNowなどのパートナー企業とも連携を進めており、世界水準のセキュリティと高品質なAIエージェント基盤を組み合わせたプラットフォームとして展開していく方針を示した。

イベント後半のトークショーでは、錦鯉とヒコロヒーさんが「Genspark」を体験
イベントの最後には「鏡開き」を実施

Gensparkは、日本法人の設立と「AIワークスペース 2.0」の投入を通じて、日本市場での本格展開に踏み出した。70種類以上のAIモデルと多数のツールを束ね、専門知識がなくても“人に仕事を頼む感覚”で業務を進められる点は、従来のAI活用のハードルを大きく下げるものだ。個人向けサービスとして始まったGensparkは、エンタープライズ水準のセキュリティと運用を備え、法人の業務基盤へと進化しつつある。

人材不足や業務の属人化といった課題を抱える日本企業にとって、Gensparkが掲げる「AIに雑務を任せ、人が価値創出に集中する」という考え方は現実的な選択肢になり得る。経営層主導ではなく、現場の支持から導入が広がっている点も象徴的だ。日本での成長と投資を明言する同社が、国内企業の働き方やAI活用のあり方をどこまで変えていくのか、今後の展開に注目していきたい。

IT取材
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