Micron､「Crucial」29年の歴史に幕を引く。「AI全集中」のためメモリ事業転換

半導体大手Micron Technologyは12月3日（米国時間）、一般消費者向けメモリおよびストレージ製品事業からの撤退を発表した。同社が展開してきたブランド「Crucial（クルーシャル）」は、29年の歴史に幕を閉じることになる。

この決定の背景には、AI需要の爆発的な拡大がある。Micronは、AIによって牽引されているデータセンター市場においてメモリとストレージの需要が急増していることを、コンシューマー事業撤退の理由として説明している。

AI需要集中による事業転換。PC市場では品薄と高騰の懸念

Micron Technologyは、世界中の主要小売店、EC販売業者、販売代理店を通じて行われてきたCrucial製品の販売から撤退する。

同社エグゼクティブバイスプレジデント兼最高事業責任者であるスミット・サダナ氏は、今回の事業判断について、「データセンター向けのメモリ／ストレージ製品の供給とサポートを改善するため」であり、「この成長が著しいセグメントにおける大規模かつ戦略的な顧客への供給とサポートを強化するために、一般消費者向け事業から撤退するという苦渋の決断を下した」と述べている。

Today, Micron shared some news that comes with a heavy heart: we’ve made the difficult decision to wind down the Crucial consumer business. This means that sales of Crucial-branded products through retailers, e-tailers, and distributors worldwide will gradually come to an end.… pic.twitter.com/KlW6B40BHO
— Crucial Memory (@CrucialMemory) December 3, 2025

この動きは、長期的な収益性の高い成長路線へ事業を整合化させるためのポートフォリオ変革の一環であるとされる。

Crucialブランドのコンシューマー向け製品の出荷は、2026年2月末まで継続される予定だ。移行期間中、Micronはパートナー企業や顧客と緊密に連携し、製品に対する保証サービスおよびサポートを継続提供する。なお、企業ユーザー向けのMicronブランドのエンタープライズ製品の販売は、今後も継続される方針だ。

半導体大手であるMicronがコンシューマー市場から撤退し、供給能力を産業用途へ完全に振り向けることは、一般ユーザーの購買環境に少なからず影響を与える可能性がある。

すでにAI企業による需要急増に伴うRAM価格の高騰が続いているなか、Crucialの終了はRAM価格の高騰に悩むPCビルダーや愛好家にとって「大きな打撃となる」と指摘されている。この事業撤退により、一般消費者からはCrucial製メモリやSSDという選択肢がなくなることを意味し、市場に流通するメモリが一層減少する可能性が不安視されている。結果として、値上がりも加速していくことが懸念されており、当分の間、値下がりする要因は見当たらない状況だ。

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