10月21日、ASUSは今年8月にグローバル向けに発表された新型スマートフォン 「ZenFone 7」 「ZenFone 7 Pro」 を国内で発売することを正式に発表した。
「ZenFone 7 / 7 Pro」 は、先代モデル 「ZenFone 6」 で話題になったフリップカメラ、オールスクリーンディスプレイなどの特徴を引き継ぎつつ、さらなる進化を遂げた最新モデル。国内での価格は 「ZenFone 7」 が85,800円、「ZenFone 7 Pro」 が99,800円(どちらも税別)、発売は10月23日を予定している。
今回、ASUSから上位モデルの 「ZenFone 7 Pro」 の実機をお借りし、事前に使用感をチェックすることができたため、先行レビューという形で本デバイスの詳細をお伝えする。購入検討中の方はぜひ参考にしていただきたい。
「ZenFone 7」 と 「ZenFone 7 Pro」 の違い
「ZenFone 7」 シリーズは、下位モデルの 「ZenFone 7」 と上位モデルの 「ZenFone 7 Pro」 の2モデルが用意されている。
両モデルは筐体サイズやデザインなどの見た目はほぼ変わらないが、プロセッサやストレージ容量、カメラ性能が異なる。具体的な違いは以下の表のとおり。
ZenFone 7 | ZenFone 7 Pro | |
---|---|---|
プロセッサ | Snapdragon 865 (オクタコアCPU) | Snapdragon 865 Plus (オクタコアCPU) |
ストレージ | 128GB | 256GB |
カメラ | 広角:6,400万画素 超広角:1,200万画素 望遠:800万画素 |
広角:6,400万画素 (OIS対応) 超広角:1,200万画素 望遠:800万画素 (OIS対応) |
今回筆者がお借りしたのは上位モデルの 「ZenFone 7 Pro」 だが、デザインやサイズ感などは 「ZenFone 7」 とほぼ同じ。カメラ性能の違いも光学式手ぶれ補正機能の有無のみとなっていて、トリプルレンズカメラのレンズ構成や画素数は変わらないため、下位モデルの 「ZenFone 7」 を購入予定の方もぜひ本レビューを参考にしていただきたい。
デザイン・サイズ
こちらが今回お借りした 「ZenFone 7 Pro」 。カラーはパステルホワイト。ディスプレイが搭載されたおもて面は、フリップカメラにより前面カメラを配置する必要がなくなったため、パンチホールやノッチ(切り欠き)が存在しないオールスクリーンデザインが採用されている。
画面は6.67インチ(フルHD/2,400×1,080ドット)のAMOLED。数あるスマートフォンの中でもかなり大きめのサイズになっていることに加えて、パンチホールやノッチなど画面の邪魔になる要素がないため、大画面で動画を視聴したりゲームをプレイするのに適している。
ZenFone 6 | ZenFone 7/7 Pro | |
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画面サイズ | 6.4インチ | 6.67インチ |
本体サイズ | 約160 × 75.4 × 9.1 mm | 約165 × 77.2 × 9.6 mm |
重量 | 190g | 235g |
前モデルの 「ZenFone 6」 と比べると、画面はわずかに大型化。それに伴い本体サイズもわずかに大きくなっているが、ほとんど差はないため同じようなサイズ感で使えるはずだ。
ただし、重量は約235gと他のスマートフォンに比べて重めになっていて、使いづらさを感じることもある。バッテリー容量の関係もあるのかもしれないが、重量に関しては残念な点と言えるかもしれない。
画面カバーは高い落下耐性を持つGorilla Glass 6が採用
実際に持ってみたところ、手の小さな筆者に取っては 「かなり大きい」 というのが第一印象だった。オールスクリーンデザインにより、表示領域も画面の縁ギリギリまで広がっているため、基本的には多くのユーザーが両手で使うことになるだろう。
ちなみに、ZenFone 7シリーズは上位モデルと下位モデルが用意されているが、画面サイズと筐体サイズはどちらも同じになっている。モデルによってサイズが変わるわけではないので、この点には注意していただきたい。
こちらが背面。手触りはツルツル・スベスベと心地よく、端末側面がカーブを描いているおかげで、手に自然に馴染んで持ちやすい。「ZenFone 6」 で背面にあった指紋センサーは今回は電源ボタンに統合されており、背面のデザインはよりシンプルで美しくなった。
背面上部にはフリップカメラが搭載。「ZenFone 6」 に比べてレンズがひとつ増えてトリプルレンズカメラになったことで、よりカメラの存在が際立っている。
このフリップカメラはモーターで稼働する。普段は背面カメラとして背面上部にしまわれているが、カメラを自撮りモードにするとウィーンというモーター音とともにカメラが持ち上がり、前面カメラに早変わり。動作もスムーズなので切り替え時のストレスはほとんどないはず。むしろメカが好きなユーザーには面白がられそうな仕組みだ。
本体右側面には音量ボタンと電源ボタンが搭載されている。左側面にはSIMカードスロット (nano SIM×2) が搭載されている。
ZenFone 7シリーズは電源ボタンに指紋センサーが統合されたことで、スリープ解除とロック解除が同時にできるようになり、手に持ったらすぐ操作し始めることが可能に。
さらに、前モデルではボリュームボタンの上に搭載されていた 「スマートキー」 も電源ボタンに統合された。スマートキーとは、素早く2回クリックすることで特定の操作を実行できるボタン。特定アプリの起動やBluetoothのオン・オフなど好みのアクションをあてがうことで、便利に使うことができる。
本体底面にはUSB-PDに対応したUSB Type-Cポートが搭載。最大30Wでバッテリーを充電することが可能だ。
また、有線イヤホン派の方には残念なお知らせだが、「ZenFone 6」 で搭載されていた3.5mmイヤホンジャックは今回の 「ZenFone 7」 シリーズから廃止となっている。まだワイヤレスイヤホンを持っていない方は 「ZenFone 7」 の購入と同時にワイヤレスイヤホンを購入することも検討してみてはどうだろうか。
ディスプレイ
「ZenFone 7 / 7 Pro」 は、液晶ディスプレイを搭載していた前モデルとは異なり、有機ELディスプレイを搭載している。
有機ELディスプレイは液晶ディスプレイよりもコントラストが高く発色に優れていて、画像や動画などをより綺麗に表示してくれる。また、「ZenFone 7」 シリーズは90Hzのリフレッシュレートにも対応していることからゲームプレイにも適している。
画面サイズは6.67インチで、解像度は2,400×1,080ドット (フルHD+) 。アスペクト比は20:9となっている。また、HDR10+のサポートにより(対応コンテンツを)よりダイナミックな映像を楽しむことができる。
ZenFone 7 | ZenFone 7 Pro | |
---|---|---|
画面 | ナノエッジAMOLEDディスプレイ HDR10+サポート |
|
画面サイズ | 6.67インチ | |
解像度 | 2,400×1,080ドット (フルHD+) | |
リフレッシュレート | 90Hz |
せっかくなのでお気に入りの海外ドラマを 「ZenFone 7 Pro」 で視聴してみた。映像の綺麗さはもちろんだが、オールスクリーンデザインのおかげで画面への集中度が高く、スマートフォンというよりは小型のディスプレイでドラマを観ているような感覚だった。コンテンツを最大限楽しむのに適した画面と言えるだろう。
また、広い画面のおかげで表示される情報量が多く、快適に使うことができるのも 「ZenFone 7」 シリーズの大きな特徴。みんな大好きTwitterも、タイムラインに多くのユーザーのツイートが表示され快適に使うことができる。
プロセッサ
「ZenFone 7 Pro」 に搭載されているプロセッサは、3.1GHzのオクタコアQualcomm Snapdragon 865 Plus。参考までに下位モデルの 「ZenFone 7」 には2.84GHzのQualcomm Snapdragon 865が搭載されている。
ZenFone 7 | ZenFone 7 Pro | |
---|---|---|
プロセッサ | Snapdragon 865 | Snapdragon 865 Plus |
動作周波数 | 2.85GHz | 3.1GHz |
Qualcomm Snapdragon 865 Plusは、2019年12月に発表されたSnapdragon 865の上位プロセッサ。動作周波数が2.84GHz→3.1GHzに増えたり、GPU (Adreno 640) のレンダリング性能が10%向上したことによって、より高いパフォーマンスを発揮できるようになっている。
実機でベンチマークスコアを計測してみた。ベンチマークスコアはおなじみAnTuTu Benchmarkで計測。結果は以下。
総合スコアは約63万点。現行のAndroidスマートフォンのなかでは最高レベルの性能を持っていると言っても過言ではないはずだ。
試しにスマートフォンゲーム 「PUBG Mobile」 をプレイしたり、ブラウジングをしてみたり、動画を視聴してみたり、写真や動画を編集してみたりといろんな用途で使ってみたが、ベンチマークスコアの数値のとおりとても快適に使用することができた。
そもそも60万点という数字はゲーミングスマホレベル。コアゲーマーでさえも納得の高性能さがあると言えるだろう。
メインメモリ(RAM)容量は、「ZenFone 7 Pro」 「ZenFone 7」 どちらも8GB。ストレージ容量は 「ZenFone 7」 が128GB、「ZenFone 7 Pro」 が256GBだ。メモリとストレージは高速なPDDDR5、UFS3.1を採用しデータレートを向上。ボトルネックを最少限に抑えている。
ちなみに、「ZenFone 7」 シリーズにはゲーマー向け機能として 「Game Genie」 というツールが搭載されている。
同ツールは端末温度やCPUクロック、表示フレームレートなどの情報をリアルタイムで表示したり、ゲームプレイ中に他のアプリからの通知を表示しないようにするなどの設定が可能。また、ゲームプレイの録画やライブ配信などもできるようになっていて、配信者向けとしても使うことが可能だ。
「ZenFone 7」 シリーズでゲームをプレイするなら、ぜひとも活用していただきたい。
カメラ性能
「ZenFone 7」 がスマホユーザーの物欲を刺激するのは、その特徴的なフリップカメラなのではないだろうか。
前モデル 「ZenFone 6」 で初めて採用されたフリップカメラは、通常時は背面に格納されていて背面カメラとして使うことができるものの、セルフィーモードにするとカメラが自動で180°立ち上がり、前面カメラとしても機能するという画期的な仕様。高性能な背面カメラによるクオリティの高いセルフィーを撮影することができる。
左:ZenFone 6 / 右:ZenFone 7 Pro
「ZenFone 7」 ではカメラの数がデュアルからトリプル仕様になり、広角・超広角カメラに加えて、新たに望遠カメラを搭載。これにより前モデルを超える高クオリティな写真が撮影できるようになった。
各カメラレンズの仕様は以下のとおり。
広角 | 超広角 | 望遠 | |
---|---|---|---|
画素数 | 6,400万画素 | 1,200万画素 | 800万画素 |
絞り | F/1.8 | F/2.2 | 不明 |
OIS | ◯ | – | ◯ |
特徴 | ・暗所の撮影に特化 | ・視野角115° ・4cmマクロ撮影 |
・光学3倍ズーム ・12倍デジタルズーム |
メインの広角カメラは通常の撮影はもちろんだが、高感度センサーの採用により、夜景や暗所などの光の少ない場所での撮影も得意とする。夜景モードと組み合わせて使えば、より綺麗な写真が撮影可能だ。
iPhone 11 Proで撮影
ZenFone 7 Proで撮影
上記写真は広角レンズ×夜景モードの組み合わせで撮影した写真。iPhone 11 Proのカメラと比較すると、全体的に明るくハッキリとした仕上がりになっていることが分かる。また、「ZenFone 7 Pro」 ならOIS機能が搭載されているため、手ぶれがなくクッキリとした写真が撮影できる。
超広角カメラは115°の広範囲を撮影可能で、旅行先で風景などを撮影するのにぴったり。「ZenFone 7」 シリーズの超広角カメラは歪み補正がしっかりと効いていて、違和感が少ない写真に仕上げることができる。
また、超広角カメラは被写体に4cmまで寄れるマクロ撮影にも対応している。上記の写真のように、被写体にググッと寄った面白い写真も撮影できるので、ぜひ試してみていただきたい。
望遠カメラは光学3倍ズームとデジタル12倍ズームに対応していて、遠くの被写体もバッチリ撮影可能。望遠カメラでの撮影は手ぶれが発生しやすいが、「ZenFone 7 Pro」 ならOIS機能が搭載されているため、せっかくの写真が手ぶれでぼんやりしてしまうことも防ぐことができる。
以下、筆者が 「ZenFone 7 Pro」 で撮影した写真を掲載しておくので、参考にしていただきたい。
これほどまでに多機能な 「ZenFone 7」 のカメラは、超高性能なセルフィーカメラとしても使用可能。夜景をバックに印象的なセルフィーを撮影したり、超広角カメラで複数人でのセルフィーを撮影したりも自由自在だ。
また、フリップカメラの角度は自由に調節可能となっていて、真上を撮影することもできるようになっている。一般的なスマホでは撮影できないような場所にある被写体も、「ZenFone 7」 なら楽々撮影することができるはずだ。
自由に動くフリップカメラを活用した撮影方法として、自分で本体を動かさずともカメラが自動で回転して周囲を撮影してくれる 「オートパノラマ」 も便利。多くのスマートフォンはユーザーが自分で回転して風景を撮影するため、所々に違和感のあるパノラマになってしまうことが多いが、「ZenFone 7」 の場合はユーザーが動く必要がないため、クオリティの高いパノラマ写真を撮影することが可能だ。
ちなみに、フリップカメラに初めて触れるユーザーにとって、一番心配なのが耐久性だろう。カメラを何度もフリップしたり、カメラが飛び出しているときに本体を落としてしまったらすぐに壊れてしまうのではないかーーー。しかし、「ZenFone 7」 はかなりタフな構造をしているため、その心配はほとんど不要だ。
まずはカメラのフリップについてだが、公式見解では最大20万回ものフリップに耐えることができるという。たとえ1日に100回の上げ下げを行なったとしても5年以上持つ計算で、多くのユーザーが1日に100回もフリップすることはないと思われるため、フリップ回数による故障はほぼないと考えても良いだろう。
また、「ZenFone 7」 シリーズのフリップカメラには、本体の落下を自動検知してカメラを収納する機能が備わっている。万が一カメラが飛び出しているときに本体を落としてしまったとしても、カメラが飛び出した状態では地面に落下しないため、カメラ部分が取れてしまうなどの事故につながることはほとんどないはずだ。
バッテリー持ち
「ZenFone 7」 シリーズには、前モデルの 「ZenFone 6」 に引き続き、5,000mAhもの大容量バッテリーが搭載されている。そのためバッテリー持ちもかなり優秀で、筆者が1日中使い続けてもバッテリーが30〜40%以上残っていることが多かった。
さらに 「ZenFone 7」 はバッテリー持ちだけでなく、バッテリーの充電速度も優秀。付属の30W充電器を使用して充電することで、約93分でフル充電まで持っていくことができる。
このバッテリー容量と充電速度なら、もし朝起きて充電を忘れていたことに気づいたとしても、とりあえず家を出るまでに充電しておけばなんとか1日分のバッテリーは確保できるのではないだろうか。
ちなみに 「ZenFone 7」 には、バッテリー節約モード、アプリバックグラウンド通信を制限する機能が搭載されている。バッテリー持ちが長く感じたのは、おそらくこう言った機能が導入されていることも影響しているのだろう。
また、バッテリーそのものを劣化させないための機能として、90%または80%で充電を停止する充電制限、そして充電時の出力を最大10Wに制限することで発熱を抑える低速充電2.0が利用できる。これらの機能を活用することで、より長くZenFoneを使用することが可能だ。
まとめ:高性能なだけでなく使いやすさも兼ね揃えた万能スマートフォン
「ZenFone 7」 は、ユニークな3眼フリップカメラや余計なものが一切ないオールスクリーンディスプレイ、ゲームも快適な高性能プロセッサなど、何から何まで申し分ない性能を兼ね揃えたハイエンドスマートフォンだ。
特にトリプルレンズ仕様になったフリップカメラは、ありとあらゆる撮影シーンで活躍できる性能にアップデートされたことで、旅行やイベントなどの写真撮影も 「ZenFone 7」 があれば大抵は事足りるのではないだろうか。もし予算が許すのであれば、OIS機能が搭載された 「ZenFone 7 Pro」 を購入すれば、大事なシーンを手ぶれで台無しにしてしまうことなく安心して写真を撮影できるはずだ。
バッテリー持ちがよく、電源ボタンと指紋センサー・スマートキーが統合されているなど、高性能なだけでなく使いやすさが考慮されているのも良いところで、多くのユーザーを満足させてくれる性能と言えるだろう。
気になる点はひとつだけ、やはり本体重量が重いこと。広い画面で動画を楽しもうと思っても、普段から持ち運ぶにもずっと手に持ち続けているとどうしても疲れてしまいがちだ。画面の大きさゆえ仕方ない部分もあるとは思うのだが、この点については次期モデルで改善されることを願いたい。
「ZenFone 7」 の価格は85,800円で、上位モデルの 「ZenFone 7 Pro」 は99,800円 (いずれも税別) 。国内での発売は10月23日(金)を予定している。