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ASUS創業者ジョニー・シー会長の来日インタビュー。「AI PCの本番はこれから」その先に見据えるロボットとAIグラスの未来

ASUS JAPANは6月17日、法人向けイベント「ASUS Summit 2026」を開催した。当日はASUS共同創業者であり会長を務めるジョニー・シー氏が来日し、基調講演を実施。AIを軸としたグローバル戦略や、日本市場への取り組みについて説明した。

基調講演後には、国内メディアによるシー会長へのグループインタビューが行われた。AI PCやAIサーバー、ゲーミング市場の未来に加え、ロボットやAIグラスといった次世代デバイスまで幅広いテーマが語られた。

本稿では、グループインタビューで語られたAI PCの進化やROGの未来、ロボットやAIグラスといったフィジカルAIへの展望をレポートする。

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シー会長「私は今でもエンジニア」。製品開発を支える「だるまラボ」で究極のエンジニアリングを育成

今回のインタビューの中で、筆者の頭に印象強く残っていた言葉があった。それはシー会長が繰り返し口にした「Extreme Engineering(究極のエンジニアリング)」というものだ。ASUSの製品開発を支える考え方であり、同社のDNAそのものだという。

シー会長は自身について、「今でも技術に夢中なエンジニアだ」と語る。現在も社内のトップエンジニアを集めた「だるまラボ」を自ら率いており、論文や理論研究を深く読み込みながら、それを実際の製品へ落とし込む取り組みを続けているという。ASUSではこうした開発姿勢を「Extreme Engineering」と呼んでいる。

同社では15年以上前からデザインシンキングに取り組んできた。ユーザーが感情的に「欲しい」と感じるデザインと、性能や使い勝手といった実用面を両立させる考え方だ。

ASUS独自開発のセラルミナムを筐体に採用した「Zenbook SORA」

そうした理想を形にするために必要になるのが「Extreme Engineering」だ。薄型で美しいデザインと長時間駆動、大容量バッテリーと軽量化、高級感のある金属筐体と安定した無線通信など、一見すると相反する要素を両立させるために、エンジニアリングを極限まで突き詰めることを意味する。そのためには表面的な改良だけでなく、物理学や数学、さらには電磁気学の基礎理論にまで遡って課題を解決する必要があるという。

シー会長は、「Extreme Engineering」を象徴するエピソードとして、Intelとの協業についても語った。多くのメーカーがチップメーカーの設計方針に沿って製品開発を進めるなか、ASUSは設計段階から積極的に意見を提案してきたという。また、会長自身もIntelのチーフアーキテクトと直接議論を重ね、CPU設計そのものに提案を行った経験があると話した。

また、日本市場については、高い品質や性能が求められる市場だからこそ、エンジニアにとって挑戦しがいのある存在だと語った。製品の外観や機能だけでなく、その土台となるアーキテクチャレベルまで踏み込んで最適化を目指す姿勢に、ASUSらしいエンジニアリング文化が表れているように感じた。

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AI PCはこれからが本番。「アシスタント」から「エージェント」へ

ASUSは2024年6月以降、Copilot+ PCの国内シェアNo.1を維持

今回のインタビューで最も多く語られたテーマが「AI」だ。シー会長は、これまでのAIは質問に答える「アシスタント」だったが、今後は自ら計画を立て、ワークフローを実行しながら目的達成を支援する「AIエージェント」が中心になるとの見方を示している。

そして、その変化によってPCの役割も大きく変わるという。AIエージェントは個人情報や業務データを扱う機会が増えるため、すべてをクラウドへ送るのではなく、PC上でAIを動作させるローカルAIの重要性が高まると説明する。

また、AIが複雑な推論を行うようになることで、CPUやGPUの性能だけでなく、メモリー容量や帯域幅、冷却性能を含めたシステム全体の設計が重要になるとも語った。

AI PCはこれから本番を迎えるーー。シー会長はそう強調し、AI時代のPC市場に大きな期待を寄せた。

「ROG」ブランドが20周年。AIがゲーム体験そのものを変える時代

台北で実施されたROGの20周年イベントにも登壇していたシー会長

今年はゲーミングブランド「ROG (Republic of Gamers)」が20周年を迎える節目の年でもある。シー会長は、「COMPUTEX TAIPEI 2026」に合わせて台湾・台北で実施された20周年記念イベントに世界中のファンが集まったことに触れ、ROGブランドの成長に大きな手応えを感じていると語った。

AI時代のゲームについては、「AIエージェント化したNPC」の可能性に言及した。従来のNPCはあらかじめ決められたシナリオに沿って行動していたが、今後は自ら学習し、プレイヤーの行動に応じて変化する存在になる。プレイヤーごとに異なる体験が生まれ、ゲームの世界そのものが進化していくとの見方を示した。

一方で、ROGの製品開発において重要なのは、最新技術だけではないという。最高性能を求めるユーザーもいれば、価格や携帯性とのバランスを重視するユーザーもいる。そうした多様なニーズを理解し、それぞれに適した製品を生み出すことこそが重要だと語った。

「スマホの次」を見据えるASUS。ロボットやAIグラスへの期待

COMPUTEX TAIPEI 2026のASUSブースで展示されていた「Zenbo Junior」

シー会長は今年1月に開催されたイベントで、スマートフォンのラインアップを今後大きく拡大する考えはないと説明していた。その一方で、今回のインタビューではロボットやAIグラス、ドローンといったフィジカルAI領域への期待を何度も語っている。

ASUSは過去に家庭向けロボット「Zenbo」を投入した経験を持つ。しかし、当時はAI技術が十分に成熟していなかったこともあり、本格的な普及には至らなかった。

ところが現在は状況が大きく変わったという。生成AIによってロボットの「頭脳」が飛躍的に進化し、フィジカルAIが現実味を帯び始めているからだ。当面は工場などで活用されるロボットが中心になるとしながらも、将来的には家庭向けロボットの普及も進むと予測する。

ROGとXREALが共同開発した「ROG XREAL R1」。こちらはゲーミング向けのARグラス

また、スマートグラスについても重要な成長領域と位置付けている。シー会長は、今後注目されるのは単なる表示デバイスとしてのARグラスではなく、「AIグラス」だと説明する。ユーザーと同じ景色を見て、同じ音を聞き、その状況を理解しながら支援するAIエージェントとして機能することが重要になるという。

さらに、ドローンについてもフィジカルAIを構成する重要な領域のひとつに挙げた。日本では飛行に関する規制も多いものの、将来的には大きな市場へ成長すると予測しているという。

現在は、会長自らが率いる「だるまラボ」において、人型ロボットやAIグラスと並行してドローンの研究開発も進めている。そこではASUSが掲げる「Extreme Engineering」と「Design Thinking」の考え方を取り入れながら、新しい体験や価値の創出に取り組んでいるという。

シー会長は、こうした領域へ本格的に取り組めるようになった背景として、生成AIによる進化を挙げる。従来のソフトウェア中心の時代には、人間があらかじめルールを定義する必要があり、ロボットやドローンの可能性にも限界があった。しかし現在はAIという「頭脳」が飛躍的に進化したことで、フィジカルAIが現実的な市場になりつつあるとの見方を示した。

AIサーバーから法人市場まで。「All in AI」を加速

インタビューではAIサーバー事業についても触れられた。シー会長は、AIサーバーの競争力を左右するのはGPUそのものではなく、熱設計や配線設計、液冷システムを含めたエンジニアリング力だと説明。「結局は物理学だ」という言葉も繰り返し用いていた。

シー会長によれば、AIサーバーにおける差別化の考え方は「AI PC」と共通している。ただし、AIサーバーの方が求められる性能や設計要件はさらに厳しく、ASUSの技術力を発揮しやすい領域だという。

例えば最新のAIサーバーでは、多数のGPUが膨大なデータをやり取りするため、高速なケーブルや基板設計、信号品質の確保が欠かせない。GPU単体の性能だけではなく、データをどれだけ効率よく供給できるかがシステム全体の性能を左右する。

シー会長は、メモリー帯域幅やデータ転送速度、さらには電磁気学の基礎となるマクスウェル方程式まで遡りながら設計を行うことが重要だと説明した。AIサーバーもAI PCも、本質的には同じ物理法則の上に成り立っており、その理解の深さが製品の完成度につながるという考えだ。

また、高性能化が進むAIサーバーでは冷却技術も重要になる。ASUSは液冷サーバーだけでなく空冷サーバーにも対応しており、長年培ってきた熱設計のノウハウをサーバー分野にも展開しているという。

さらに将来的には、ラック間通信などで光インターコネクトの活用も進むとの見方を示した。AIインフラの進化に伴い、チップそのものだけでなく、システム全体を最適化する技術がますます重要になると語った。

また、ASUSは法人市場を今後の重要な成長領域と位置付けている。AI PCやAIサーバーへの需要拡大を追い風に、法人向け事業をさらに強化していく考えだ。

ASUSが描くAI時代。その根底にあるのは「究極のエンジニアリング」

今回のインタビューを通じて見えてきたのは、ASUSがPCメーカーから、AI時代の総合的なコンピューティング企業へ変わろうとしている姿だ。シー会長はAI PCやAIサーバー、ROG、ロボット、AIグラスといった異なるテーマについて語りながらも、その根底に流れる考え方は一貫していた。それが「Extreme Engineering」だ。

AI PCについて、「本番はこれから」と強調したシー会長。AIがアシスタントからエージェントへ進化することで、PCは作業端末から、ユーザーの業務や意思決定を支援する存在へ変わっていく。その時代にはCPUやGPUの性能競争だけではなく、メモリーや熱設計、システム全体の最適化が重要になるという。

AIサーバーについても同様だった。会長は「結局は物理学だ」と何度も口にし、マクスウェル方程式や熱設計、信号品質といった基礎理論への理解こそが競争力につながると説明した。AIという言葉が先行しがちな時代だからこそ、その土台を支えるエンジニアリングの重要性を訴えていたようにも見える。

一方で、シー会長の視線はすでにPCの先にも向けられている。今回のインタビューでは、ロボットやAIグラス、ドローンといったフィジカルAIの可能性について多くの時間が割かれた。かつて家庭向けロボット「Zenbo」を投入したものの、市場や技術が追いついていなかった。しかし生成AIによって「頭脳」が大きく進化した今、ようやく本格的に取り組むべきタイミングが来たという認識だ。

その研究開発を担うのが、シー会長自ら率いる「だるまラボ」だ。論文や理論研究を読み込みながら、次世代の製品や体験を形にしていく。その姿勢は、創業者でありながら今もなお「私はエンジニアだ」と語る会長らしい。

ASUSは今、「All in AI」を掲げている。しかし今回のインタビューで印象的だったのは、シー会長がAIそのものよりも、その可能性を現実の製品として成立させるエンジニアリングについて熱心に語っていたことだ。AIの進化が加速するなかで、ASUSはその先にあるロボットやAIグラスの時代を見据えながら、新たな挑戦を続けようとしている。

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